67号 夏季研分科会・講演録(pdf)

第37回社会科夏季研究集会「分科会」
「講演」記録
【3学年 分科会】
提 案 者
古前小学校 教諭 中神 香菜
単元「わたしたちのまちはどんなまち」
萩ヶ丘小学校 教諭 山下 創
単元「見直そう わたしたちの買い物」
指導助言者
青葉小学校 校長 藤井 英貴
〈協 議〉
○ 地図上で表す際にマークを使って記号化したことで、たんけんしてわかったことの発表場面で、
子どもによる地図を使った効果的な説明を引き出す効果があった。
○ スーパーマーケットの販売の工夫について、課題別グループ編成でなく生活班グループ編成で学
習活動を進めたことで、話し合い活動のより活性化を図ることができた。
○ 話し合い活動を通して自分の考えを再構成することが可能になり、考える力の醸成に有効だった。
本実践以外の単元や他の教科でも、学習経験を積んでいくことで話すことへの習熟が図れる。
〈指導・助言〉
◇ 両単元とも、五感を使って体験した活動を生かすことがポイントになる。まちを調べる学習では
絵地図から地図へと移行する際に、地図上に表すための記号化といった、基礎・基本の内容を押さ
えた上で、取り組むことが重要である。買い物調べでは保護者の協力を前提として、子ども一人一
人に課題解決のための見通しをもたせ、表現していく楽しさを味わわせることが必要である。
【4学年 分科会】
提 案 者
沼小学校 教諭 居原まどか 単元「昔から今へと続くまちづくり~猿喰新田」
指導助言者
吉田小学校
校長 宮下 義郎
〈協 議〉
○ 猿喰新田について、その広さや当時の様子についてイメージをつかませるため、実際に行って確
かめる代わりに、地図や田んぼ・農作業の絵、また飢饉に苦しむ難民の写真を提示するなどの工夫
をした。資料が多かった為に読み取りが十分にできなかった。厳選の必要があったのではないか。
○ 学習ノートの指導に関して、予想を毎時間書くようにしたのは良い。書く能力の差があるので、
大切な事柄に絞って徐々に指導を重ねていき、書く力を伸ばしていった。
〈指導・助言〉
◇ 問題解決学習を進める上で、
「①子ども自身の解決すべき問題となっているか ②子ども主体の
活動になっているか ③思考を伴う活動になっているか」が大事なポイントである。
◇ 猿喰地区・二枚の地図比較から変化に気付かせたり、年表で確かめたりして、資料の有効活用を
図れば更に効果的だった。また、実際に見たり聞いたりして確かめることは大切で、公共施設をた
ずねる・地域人材の活用するなど、具体的な学習活動を積極的に取り入れてほしい。
【5学年 分科会】
提 案 者
曽根小学校
教諭 濱田 次郎
単元「自動車工場をたずねて」
指導助言者
長尾小学校
校長 宇治野 博信
〈協 議〉
○ 車のよさを捉えさせる資料として「パンフレット」を重点的に活用した実践であるが、工場で働
く人へのインタビューや教科書・HPを必要に応じ、活用することも有効な方法である。
○ 一台の車をつくるのに、
多くの人による目に見えない工夫や努力があるという気付きが出ていた。
また、自動車づくりにおいては、人気のある車をつくることと同時に、消費者ニーズを区別して「人
にやさしい→身障者に向けて、環境を考えた→地球にやさしい」といった、福祉面や環境面を考えた
自動車をつくることが大切であることに気付かせたことは、学習の価値がある。
〈指導・助言〉
◇ 教科書・HP・パンフレットなど、その資料から何を調べるか、教師が意図をもって活用するこ
とが大切である。また、附箋は個別の内容を、いくつかの視点に集約・焦点化する役割を果たす。
◇ 授業を楽しいものにしていく要因として、
「①自分から学んで理解するように仕向ける ②効果
的な資料活用を仕組む ③体験的活動を増やす ④身近なものに気付かせる ⑤教師が知っている
ことを話し過ぎない」が挙げられる。社会的見方・考え方を育てる上で、大切な姿勢である。
【6学年 分科会】
提 案 者
八枝小学校
教諭 森川 麻衣
単元「武士の政治が始まる」
指導助言者
則松小学校
校長 村田 雅子
〈協 議〉
○ 貴族と武士の時代の特徴を表す絵図資料を比較して、既習内容への理解を更に深めたと共に、
「ひ
と・もの・こと」の視点に分類した学び方プリントの活用は意義がある。違いや共通点を浮き彫り
にでき、その時代の捉えが確かなものになり、見方・考え方の深まりにつながった。
○ 調べたことと考えたことの区別したり、関係図にまとめたりする学習をすることで、文章表現を
苦手とする児童の表現意欲を高めたり、個別指導に生かしたりするのに有効だった。
〈指導・助言〉
◇ 教師は教材研究を通し、授業で大切なものをつかむことで、授業の7割は成功したことになる。
教師が教えたいものを子どもが学びたいものに、また、見えないものを見えるものに変えていくこ
とが、教師の役割であり、その力量にかかっている。そのためには、資料を見て気付いたことを短
時間で把握したり、
根拠をもって発言したりできるように、
普段から鍛えておくことが重要である。
演題「北九州市の環境に関する取組」
講 師 北九州市環境局 環境学習課
課長 東田 倫子 様
1.これまでの環境に関する取り組み
1901 年八幡製鉄所、1920 年には TOTO、1925 年には安川電機が設立され、工業地帯として北九
州市は発展してきた。1950 年代当時は、煙突から出る煙は七色の煙としてもてはやされる一方、小学
校が廃校になり、洞海湾のスクリューが溶けてしまう程の汚染があった。それが今では、青空と美し
い海を取り戻した。普通であれば自治体から取り組むところを、北九州市は、市民・自治体・企業を
動かして克服した。1980 年代には、公害克服の技術やノウハウを、公害・未克服の諸外国に教えてい
る。
次に、循環型社会のモデルとして、日本初の「エコタウン」ができた。平成 15 年から世界の環境
都市を目指し、市民と自治体・企業が一体となって取り組んできた。
「環境モデル都市」とは低炭素都
市そのものであり、平成 20 年全国6都市の中から北九州市が選ばれた。現在、20 箇所ある「環境未
来都市」は、低炭素社会を目指すだけでなく、高齢者・子どもの福祉面や経済面といった全てを包括
したものである。本市はその二つに属し、2011 年 OECD の「グリーン成長モデル都市」に選定され
た。
2.最近の環境に関する取組(市環境局による環境基本計画・4本の柱)
まず初めは、市民と一体となって取組む「市民間協力」がある。一番メインなのは、北九州市エコ
ライフステージである。その他の取組も年々増え、最近では小学校で始めている「環境首都検定」や
「環境みらい学習システム」
「ESD の取り組み」
「まち美化運動の推進」などがある。
次に、次世代エネルギーをつくっていく「低炭素社会づくり」がある。特に地球温暖化については
問題視されているので、北九州市は「モデル都市行動計画」をつくり、二酸化炭素の削減に取り組む
と同時に、いろいろなプロジェクトを進めている。
「紫川エコリバー構想」
「城野ゼロ・カーボン先進
街区の形成」
「次世代エネルギーパーク」
「スマートコミュニティ創造事業」などある。また、
「アジア
低炭素化センター」では、諸外国と企業の橋渡しをしている。
三番目に、ごみの適切な処理と循環・再利用を推進していく「循環型社会づくり」がある。
「北九州
市エコタウン事業」はリサイクル工場を集めて推進している。「北九州市環境産業推進会議」では、
600 社近い企業が参加し、話し合いを行っている。
最後に、自然や生物の保全を進めていく「自然共生社会づくり」や記念日に木を植えることを進め
る「まちの森プロジェクト」がある。響灘は野鳥の通り道になっていることから、
「緑の回廊創成」と
「響灘ビオトープ」が一体となって進められている。
3.持続可能な開発のための教育(ESD)
持続可能な社会とは、環境と社会と経済のバランスがとれた社会のことで、国連が推進してきた。
学校では、授業で行っている社会見学などが ESD と言える。しかし、気付きで終わるのではなく、
今後、自分にできることを考えどのように行動に移すかが大切である。北九州市では、
「北九州まなび
と ESD ステーション」など様々な取り組みを行っている。
【 文責: 千代小
善 明 修 】
【 講 演 】