~:}?`ì,第 - 北海道畜産草地学会

反すう家畜用飼料への緩衝剤の添加
進
酪農学園大学西埜
ると報告している。さらに,
過去 1
0数年の聞に,乳牛および肉牛の生産性は
これらの報告から第
濃厚飼料の多給によって大幅な向上が示された口
一胃液の pHと揮発性脂肪酸組成の聞には明らかな
これは主として穀類が大量に,
関係がないものとみなされる。
しかも安価に供給
第一胃内では,飼料の摂取にともなって大量の
されるようになり,そのため組飼料よりも濃厚飼
料を多給した方がより一層経済的になるからであ
揮発性脂肪酸が連続的に生産され,
ったロしかし,反すう家畜に対する過度な濃厚飼
内発酵の聞に生産される量は,理論的には第一胃
料の多給は,第一胃内の過剰な酸性によって,徴
液をかなりの酸性に低下せしめるものであるにも
生物相に異状をきたし,同時に第一胃内発酵が抑
かかわらち~~胞似性雄主らあまり.
制され,そのため種々の代謝障害が発生する,
これが第一胃
左きぷ 変るこーとはなど。その変動の範囲も比較的
_
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
,.
5
.
6
"
.
T
)
と
--
している。すなわち,穀類を多量に含有した高ェ
μ
-叩~<".."_..
せまいもりとなってい、る. 0 ノ反すう家畜が第一胃
長こま:.5_f生周,ー唾液朱一一液の pHを i匡常に保つ要因に~'ì,唾液の流入量,揮
ネルギー飼料を摂取すると,_
_
義民K~防酸り生産量と吸収量および飼料摂取量な
ム主主よ立第ニユ再肉発酵による正常な緩衝作用なよ二
が低下するからである口
どがあげられている。唾液は分泌量が多く,その
したがって,第一胃内の緩衝物質が唾液からあ
炭酸塩の濃度も高く,常に間断なく分泌されてい
まり供給されなければ,別になんらかの形で緩衝
るから,唾液が第一胃内の酸度を緩衝する重要な
物質を補給することを考慮、しなければならない。
役割をはたしている。
反すう家畜に緩衝剤を用いるという概念はそんな
しかしながら,反すう家畜に対し濃厚飼料の給
に 新 し い こ と で は な し す で に 1伺 9年頃に牛およ
与量を増加すると,
これにともなって粗飼料の摂
びめん羊の飼料に緩衝剤を加えることの重要性は
取量が減少して,第一胃内の揮発性脂肪酸の生産
認識されていたI,との報告がある。その後はほと
が著しく
量が多くなり,その結果,第一胃液の pH
んど無視され 1950年代に見直されるようになった。
shio~:}?'ì,第
低下することになる。たとえば, O
最近は多くの研究者が関心を持っているもののひ
一胃内における揮発性脂肪酸の生産速度は,高穀
とつに,反すう家畜の栄養および生理に対する緩
類飼料を給与した方が同時に乾草を併給した場合
衝剤の価値をあげることができる。
も
に比べて速くなる傾向がみられ,第一胃液の pH
ι
そこで,本稿では反すう家畜における炭酸カル
警 か 低 不b;
ーそのー最低 ι約 4
.
5
が示さーれた。矢野
シウムと重炭酸ナトリウムの役割および添加効果
ぷもめん羊の濃厚飼料多給時には揮発性指肪酸ゐ
などに関するこれまでの研究の概要について総説
濃度が高くなり,第一胃液凶も 5.~ぐらいまで下っ
することとした。
た,などと報告している。さらに,去勢牛を粗飼
料のみからトウモロコシ主体含有飼料へと切り換
Hと緩衝剤添加
第一胃液 p
えると,第一胃液の pHはおよそ 2週間ぐらい経過
第一胃液の pHは,通常の飼養条件下で、は飼料広三
1
0
)
J
すれば有意に低下する,との報告がみられる。
摂取によって急速に低下して,一間もなく最低値に
以上の濃厚飼料多給時における第一胃内発酵に
達1
孟工会3
ヴ後ロラぎの飼料を摂取するまでの聞は
関する報告は,いずれの実験でも粗飼料には乾草
徐々に上昇して,つぎの飼料を摂取する直前は大
が用いられている。このことについて,和泉千,
一一一一2")ー
q)
一体も主.~値に戻っている。和泉らか第一胃液の酎
乾草,牧草サイレージおよびトウモロコシサイレ
は揮発性脂肪酸濃度の変化とは逆の関係にあると
ージと濃厚飼料の給与比率を変えて検討し,乾草
し
, Toppsdみこの両者の聞に負の高い相関があ
では濃厚飼料の給与比率が増加するとともに第一
- 16 一
日本畜産学会北海道支部会報第 25巻第 2号 (1983)
・
a
よ~-"""""そ
胃液の pHは直線的に低下したが,Jfま葉土ご仁左よ同ミム.
多給してい石乳牛呼おいても,重炭酸ナトリウム
3三はー定の傾舟t会長か ,9~tら~よ~k::S-",~"~~る。すなわ
ち,彼は組飼料の種類により結果が必ずしも一致
有意に増加 L,プロピオン酸の波少することが示
の給与は第一胃液の pH
に差を生じないが,酢酸は
.
1
9
) _.
されてい~二とくに,
しないことを強調している。
~~.,
_
a
)
)
Kilmerらb
土分娩前の粗飼料
また,穀類を多給した場合にもっとも多く生産
多給から分娩後の高エネルギー飼料への切り換え
される代謝最終産物が乳酸であって,この酸は易
時における重炭酸ナトリウムの給与は,体液の酸
発酵性炭水化物を多く含む飼料を給与することに
・塩基平衡を酸性側の方に傾くのを防ぐ効果があ
より多く生産される傾向がある。 lrwin 判土めん
る
,
羊にブドウ糖を多く含む精製飼料を第一胃内に投
を用いて,大麦主体の基礎飼料に重炭酸ナトリウ
は低下し,乳酸濃度が高
与すると,第一胃液の pH
ムを 60~ 添加しても,第一胃液の PItおよび揮発性
としている。しかし, Kellawayザ守主離乳子牛
くなった,としている。これと大体同じようなこ
脂肪酸における各酸の割合に差異はなかった。
とを述べた報告が他にもみられる 13,14)
R
u
s
s
e
l
lら。も去勢牛でこれとほぼ同じような成績
.そこも乳牛および肉牛の濃厚飼料多給時にお
を認めている。
ける第一胃内環境を変え,それによって第一胃内
「以王万阪
、
b
-れた報告によって要約すると,穀類 k
発酵を調節することができれば,乳および肉生産
「を多給している乳牛および肉牛に炭酸カルシウム J
な山ようになった口
f
は上昇するが,重炭
_
反すう家畜飼料へ q底酸ぶとと2.>-~ 添加が第
酸ナトリウムを添加山ほとんど変化凶九も
i
i
;のと言える。この場合に重炭酸ナトリウムを給与!
I
胃液の pHに有効で、あるかを確認した報告停多くなニ j すると,揮発性脂肪酸の酢酸割合は増加するが,
6
4
ぃ
。 R
usse1
l ?:1,肉用去勢 正 お 件 ト 五 日 コ シ を
均して炭酸カルシウムを1.
8
%添加すると,第一胃
iプロピオン酸の割合は減少することを認竺主教え!
L
主計三た,と結論づけ快り」
液のpHは有意に高くはなるが,揮発性脂肪酸の生産量
に有意差はなく,その組成にも変化がなかった口
下部消化管および糞の pHと緩衝剤添加
Wheeler
反すう家畜における消化管内の pH
と給与飼料と
d
t去勢牛にトウモロコシ主体飼料を給
与し,これに石灰岩を添加すると,第一胃液の pH
の関係については,
まだ十分に知られていない。
は酸性から中性へと有意に増加した口しかも小腸,
kemRは乾草給与時における第一胃,第四胃,
結腸および、糞 pHの増加も大きかった。この場合の
回腸,盲腸および結腸の p!l土それぞれ 609,3.1,
石灰岩添加区はいずれも中性に近かったが,
これ
@は対照区の酸性から有意に増加したものであっ
た
,
としている口
7.3, 7.0および 7・2であった,
としている。こ
のことから,全消化管のうち第四胃内は明らかに
a混同hこ=v'-;g:誼昌三':?.....=.F-'~同"'t'~/';::出品-";<"'"'':''-'~.~::::~- -.~-'~~' '".仏い叫:..::....
酸性ではあるが,その民去の消化管内は大体中性
_
"
-
-句岨耐出向迂幽"'"丞誕Ã.".,.;;zrE;:::i~:Ii;::;斗~:'";ょ τ,,---_,.占~;.:,..,.;:.:.:..-也、ユレー-::_--~: .~-ニ
他方,豆底酸ナトリ?ムについては, Mcknight
~~~粉砕トウモ iコシZZ給している去勢牛に,
-ームー:,...-::-,..--'-....._-・‘{‘
""~崎
丘返E
L
金J
主主ーと4
9
;解
刃e
?
t
s
?一方,穀類多給時に
は,第一胃,小腸および結腸内の pHば 5.4から
重炭酸ナトリウムを飼料の約 2
.
3%添加しでも,第
6.7ぐらいになり,乾草給与時に比べるといずれ
二
買
事OpH争
型
君
主j
主なか?たが,海道出銭酸
における義監"?...Wl岳忠義弟ム品芸名£まと堅企i
_
_
,
の範囲にあった。しかも小腸内と糞の聞には大き
ね~ì.波三主主ゑ銀鼠にあったと報告している。第一
な差はなく,糞の pHが小腸内のそれのよい指標で
内緩衝能は幼齢子牛の方が成牛に比べて低いもの
あることが示唆されている 230
i
とされている。こうし、分 用子手に, Wheeler診
もかなり低くなったが,第四胃内は 203から 305
反すう家畜に穀類を多給すると,第一胃内で発
は重炭酸ナトリウム含量 5
.
0
“海の人工乳を無制限給
酵されないかなり量のデンプンが小腸の方へ移行
与すると,第一胃液の pH
に影響を与えることなく,
し,そこで十分に消化されずに糞中へ排池される
揮発性脂肪酸の酢酸と酪酸は有意に増加し,プロ
ことになる。これについて, Armstrongand
ピオン酸が減少する F としているロまた,穀類を
Beever29
は,小腸内 pHがデンプン分解酵素(アミ
- 17 -
J
i
3
ラーゼ〉活性が最適となるものよりかなり低くな
らに, i )
1
は高水分のトウモロコシ飼料に石灰岩を
ると,小腸におけるアミラーゼ活性が低下し,そ
Hと糞中デンプン
添加して去勢牛に給与し,糞の T
のためデンプン消化率が減少する,
含量との関係について検討した。その結果,糞の
と説明してい
pHは対照区が酸性で、あったが,石灰岩添加区はほ
る
。
そこで,反すう家畜の濃厚飼料多給時に緩衝剤
ぼ中性となり明らかに高くなった。また,糞中デ
を添加して過遡お座些~型開主b尚一飼料中のデ
4%であったが,
ンプン含量は対照区が乾物中 32.
:(-7~-"'/--:JJ,~ よ ζ利用されるだろう,よという仮説が持
石灰岩添加区は 9.2%と著しく減少した,と指摘し
たれた D この仮説は, Wh
eelerらお)が高穀類飼料に
ている。このことについて,著者らも離乳子牛の
石灰岩または石灰岩のマグネシウム塩を約27%添加す
人工乳主体給与時において,糞のpHは炭酸カルシウ
ることにより,糞の pHを高め,糞中へのデンプン
を添加した方が無添加の酸性から有意に高くなっ
損失量を減少したことによりたしかめられた。さ
たが,デンプン消化率には差異はなかった
Table1
.Apparent 均
dほ
i
g
群
叩e
白伊
s
叫
t
仕
i
from calve
白sf
edaddedc叫
alciumcarbonat
臼e
Trial
Items
a
Group
No• calves
D Mintake,k!
l
,
Aay
Grudep
'
r
o
t
e
i
n, % / D M
M
Calciu m, %/D
Digestibility, %
Drymatter
Crudeprotein
Aciddetergentfiber
Aciddetergentcellulose
Cellwall
Starch
Fecalp H
Calciumbalance,'
J
,
Aay
Intake
Excretion
Fecal
Urinary
Absorption
Retention
Phosphorusbalance,ず /day
Intake
Excretion
Fecal
Urinary
A bsorption
Retention
E
Trial
2
1
皿
1
2
6
3
.
37
22.2
0.42
6
3.32
24.8
1
.
26
4
3.24
17
.
7
0.49
4
3.20
4
18.
1.40
72
.
4
73.8b
52
.
2
59.1
62
.
2
74.2
79.6c
54
.
6
61.5
63.9
70.2
68.6b
47.1
56
.
3
57
.
8
90
.
3
6
.
6b.
70
.
9
72
.
7c
51
.
0
57
.
7
50
.
2
92
.
7
7
.
5c
6
.
0b
7
.
4
,
13
.
91b
41.74c
15.71b
44.57c
5.22b
0
.
16
8.75b
8.59b
26.48c
0
.
08
15.26c
15
.
18c
6.52b
0
.
04
9.22b
9.21b
23
.
07c
0
.
19
21
.51c
.32c
21
13
.
20b
14
.
67c
12.
44
13.03
6.45
1.92b
6.59
4.67b
5.83
0.24c
6.61
6.37c
7.36
0
.
10
5.85b
5
.
75b
6.20
0.05
8
.
47c
42c
.
8.
a
1
ciumcarbonate; Group2,calciumacrbonatesupplemented。
Groupl,nosupplementalc
a
b.c Meansont
h
e samet
r
i
a
lwi也 d
i:
f
f
ぽentsuterscriptsaresignificantlydifferent (P 0
.
05).
<
- 18 -
•
2
6
)
(Table1)0 R
n
s
s
e
l
lらも肉用去勢牛に粉砕トウ
内における重炭酸ナトリウムの緩衝作用を裏書き
している口
モロコシを多給すると,糞のデンプン排池量は増
加するが,プンプン消イヒ率に有意差は認められな
か♀五ニ ,否定=的 な瓦解芝窓ささ¥7'{',右アぎらとだ
飼料の消化率と緩衝剤添加
泌乳牛および肉用去勢牛の生産におよぼす亙広主
穀類の主要な炭水化物はデンプンで、あって,古
r
ι
一
一
一
一
ε
J
添加の影響について飼養試験が行なわれている。
くから反すう家畜に濃厚飼料を多給すると,飼料
z
!
)
e
:
r
鳴
り
としている。 NelsoJ
たとえば, Wheel な,泌乳牛に石灰岩を 2.7%添
の消化率が低下する,
加した完全飼料を給与すると,要L
主主は石灰岩を添
泌乳牛に粗飼料対濃厚飼料の割合を変えた完全飼
処 k
.
l
1;
1
!
添P
日に比べて有意に多くりたが,
料を与えた結果は,濃厚飼料の給与割合が高くな
飼料摂取量はほぼ同じであっーた。しかも糞の p
H
:は
るにつれて,エネルギーと蛋白質の消化率は直線
i
J
糞の pHは重炭酸ナトリウムの有無に関係なく一定
であった。糞のデンプン含量にも主主炭酸ナトリウ
.
2倍にすると,デンプン消化率が低くなっ
倍から 3
ム添加の差がなかった。 Erdman♂も濃厚飼料 60
た
,
%の乳牛用完全飼料に重炭酸ナトリウムを 1.5%添
くなると,
加しでも,糞の pHおよびデンプy含量に対する影
世されることがわか
小腸の消化を逃れて糞中に排 j
響はなかった。また,
Wheelel~の報告によれば,
と述べている D このように飼料摂取水準が高
とくに飼料中のデンプンが反すう胃と
った。
幼齢子牛に重炭酸ナトリウム 5.0%含有している人
そこで,消化管内環境を変えるため,飼料に緩
工乳を自由摂取せしめても,いずれの飼料のデン
衝剤を添加することが比較的古くから行なわれて
3
①
いた。 Warnerらは,肉用去勢牛の濃厚飼料多給時に
プンも完全に消化され,糞へのデンプン排池も徴
量であった口重炭酸ナトリウムの給与は糞の pHを
』炭酸カノレシウムを~,Q:Lι君、添加給与士ると,有機物 v
高めるが,その範囲は中性付近を越えるものでな
ー_-k&J~L;:;~ お守よーび晃一ネルιがかの各消化率が改善 4さ叩て
かった,などとしている。これらの報告が消化管
れるとしている。この場合はとくにセルロース消
- 19 -
化率の向上が著ししこれが有機物の消化率の改
消化試験を行なったが,有機物および窒素の消化
善に大きく寄与したものと推察されている。これ
率には明らかな差異は認められなかった。さらに,
と同様に, Wheele~r/ も泌盆ごと2蓋豆飼料多給時に
トウモロコシ主体の肥育飼料に重炭酸ナトリウム
盃民~~約五回滋組士主主と匹より,乾帯広~1雪
白質,エネルギー,細胞壁構成物質およびデンプ
を 5.0%添加しても,乾物,粗蛋白質,酸性デター
z
i
っ
ジエント繊維およびデンプンの各消化率に差異は
牛の人工乳主体給与時に皐蕗品必ぷ九舎を人工乳
なかっ次としている口こ
ωのよ
υうな報告に対し,
Pm
民 蜘
に3.5%添加し,乾物,繊維成分およびデンプンの消
重炭酸ナトリウムを1.2,
久
52
.
5
0お
よひび、 7.50勿添加す
化率に影響はなかったが,粗蛋白質消化率は有意
に高くなることを認めた CTabl
よ50Tfe五
日e36J
ると,重炭酸ナトリウム添加量の増加にともなっ
ンの消化率は高まるとしている。著者らも離乳子
てわずかに乾物消化率のみが高くなることを認め
は酸.塩基の不均衡は蛋白質の代謝に悪影響をお
ている。しかし,
よぼすとしている。おヒを:__Q_丈第ご三胃内が酸性から
告はほとんど見あたらない。
、~-性以よι!f~.ふー飼[料虫色蛋白質が分解されや
これを支持する他の研究者の報
以上の報告から,反すう家畜用飼料に重炭酸ブ.
ι
t
工忌去厨E
立
:
主
z
1
主
;
芦
存
ζ
[
:
;三空至:覇肩尉j
H
すゴな ごり1 第でて:官門懲~物一のP.Jt:l雪主侭1きされ, し
唇
刷
き
予
)
d
影響しないものと考えられる D
ちこーが'-_?~消化率出高くなるrの?立あ:るう。このよう
に蛋白質の利用性が改善されるのは,濃厚飼料を
多給している場合であって,粗飼料を相当含むも
ミネラル代謝と緩衝剤添加
のに緩衝剤を添加しても蛋白質の節約作用は認め
反すう家畜において,第一胃内発酵が正常に行
なわれるためには,第一胃内に各種ミネラルが適
られない。
以上述べてき主尿酸点止よみ弘会、企給与効果も,
当量含まれていなければならない。第一胃内に存
緩
i
I
1
f
t
比
」
二
段
笠
聖
母L
j
h
f
主的立性質 仁よって話
在する各種ミネ ~21;Yl,第一胃内に棲息する細菌
様でないことが考えられる。たとえば, Wheeler
やプロトゾア伐栄養均になると同時にそれらが第
は,炭酸カルシウムの反応速度とカルシウム摂取
一胃内微生物の主目境を構成する因子として重
水準の影響をたしかめるたゐ飼養試験を 3回行
要な役割をはたしているからである。これに関し
なった。その結果は炭酸カルの反応速度が速くな
て,古くは Hubbertら と か Chamb
e
r
l
a
i
nら が
F
.
(
二
._,,_.
:
5
:
司
。
り,カルシウムの摂取水準が高くなるにつれて,
i
nv
i
t
r
oで第一胃内微生物の活性に対する各種ミネ
乾物,有機物,細胞壁構成物質およびデンプンの
ラル添加の影響とか,あるいはこれに対する各ミ
消化率が有意に高くなることを認めている。また,
ネラルの相互作用を検討している口
濃厚飼料 85%を含む完全飼料を給与している去勢
通常の飼養条件下における第一胃液のミネラ.
牛に,反応速度全速ど底酸卒ぷ品込みを飼料に 1
.
8
濃度の変化については,つぎ、のような報告がある。
~~.2;2%添加宇るFと;$~.乾物,ー、有機物,組蛋白質,細-
矢野守土,飼料摂取後にカルシウム,マグネ、ンウム
E
包壁構成物質およびデンプンの消化率が増加す
および塩素濃度はいくらか増加して,最高値はそ
る
の後 2,,-, 4時間目に達しF 以後漸減する傾向を示
Lとし ているロ
4
他方,裏庭酸:
T
_
.
J
:
'
.
.
V
d
弘ム添加飼棋の消化率に関
す。これに対しカリウムおよびリン濃度にはとく
a
s
s
i
t
e
rand
しても-いくつかは報告されている。 L
に変化なく,ナトリウム濃度は逆に減少する傾向
砲は,肉用雄子牛および去勢牛を用いて,ベ
Cook
がある,
としている。さら ι,沢伊はめんー羊にミネ
レツト飼料に重炭酸ナトリウムを 0.5勿添加した飲
ラル組成の異なる飼料を給与した場合に,第一胃
水を与えても消化率には影響しなかった。しかし,
液のミネラル濃度の経時変化は, カノレシウムとマ
めん羊では飼料の組繊維と組脂肪の消化率が高く
グネタウムが主としてそれぞれ摂取量の影響を受
は,大
なった, としているロまた, Nicholsonp
けるのに対し,ナトリウムは唾液の影響を受け,
麦,エンバク主体の飼料を粉砕か圧ぺんにして,
カリウムおよび塩素は両方の影響を受ける,
.
7%添加して去勢牛に給与し
重炭酸ナトリウムを 5
ている口第一胃液のカルシウムおよびマグネシウ
- 20 ー
とし
のは飼料からの溶出によるものとされている。したが
重二買.主主弘ふネヲ'
i
k
.
濃度巴F
主
堅
'
9
些
酸
マ
竺
'
/
Zム過剰摂取の影響 ιついての報告はつぎ?とお
って,第一胃液のカルシウム濃度は,給与飼料の
【
り3三あよるロ著者らは,離乳子牛の人工乳主体給時
種類,あるいはカルシウム摂取量に強く影響され
における第一胃液のカルシウム濃度は,炭酸カル
ることになるであろう。
シウムを添加した方が無添加に比べて有意に高く
ム濃度が,
このように飼料の摂取により上昇する
F
守
Table2. Ruminalmineralconcentrationsincalvesfedaddedcalciumcarbonate
f
e
e
d
i
n
g
Grou♂
Trial
E
Trial
Timea
f
t
e
r
2
1
皿
2
1
i
J
/dQ
Calcium, m
3
.
2b
3
.
6c
5
.
6c
6
.
'5b
4
.
0c
4
.7b
3
.7b
3
.
5c
4
.
2c
4
.
5b
,
•
ohr
1
.6b
1
3
6
Av.
3
.
6b
2
.
3b
1
.9b
2
.
4b
。
Phosphorus,
5
.
6c
1O
.6c
7
.
2c
7
.
9c
7
.
8c
mg/dQ
19
.3
18
.
6
19
.
4
2O
.8
19
.5c
27
.
9
28.4
27.3
28
.
3
28.0b
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Group1,
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0.05 ) .
(P
a
<
なったのに対し,
てその過不足を調節している。したがって, カル
リン濃度のそれは逆に低下する
傾向がみられた CTahle2 )。このことについて,
シウム摂取量が適切なある範囲を越えた場合に比
矢野 ~6)~ì,めん羊に濃厚飼料を 80 姶む飼料のカ
家畜はなんらかの形で ζ の過剰に対応することに
ルシウム含量を乾物中で、約 0.
4
, 1
.
2および1.9婦にして
なる。そこで,反すう家畜がミネラル摂取量の大
きな変動に適応する主な径路は, (
a
)吸収, (b)尿へ
.えたところ,第一胃液のカルシウム濃度は上昇
したが,
,
世 (
c
)組織への蓄積,但)乳への分泌およひ、 (
e
)
の排j
リン濃度は逆に減少する傾向にあったと
糞への内生的排 j
世などである,
い大体において著者らと同じようなことを言っ
としている。カル
ている口このようなことは,反すう家畜にカルシ
シウムは 2価の陽イオンであり,これの主要な調
ウムを過剰摂取せしめると,
節径路は吸収量の変化であるという。このことに
リンが欠乏しやすく
なるという一般的な相互作用が,第一胃内のミネ
?
4
7
?
土去勢牛に給与した半精製飼料
ついて, ChiccoC
ラル聞にも存在していることのあらわれであろう D
のカルシウム含量を乾物中で 0.13弱から 0.78%に
反すう家畜のカルシウム吸収機序に関する見解
あげたら,高カルシウム飼料の方がカルシウムの
は必ずしも一致していないが,おおかたの意見は
糞中排世量および血築中濃度が有意に増加した,
カルシウムも第一胃から吸収されるが量的にはあ
としている。さらに DunhanandWar
まり重要でない, としている。反すう家畜が摂取
後の泌乳牛に給与する飼料のカルシウム含量が1.
0
c
f
8
l
工分娩前
する粗飼料その他飼料中のカルシウム含量には非
%以上であれば,
常に大きな幅があるため,家畜は常に変動するミ
ウム濃度が高くなる。志
ネラノレ摂取量に対し生体恒常性による制御が働い
これに関連して血疑中のカルシ
:
;
1
もめん羊に対し炭酸カ
ルシウムを添加給与すると, カルシウムの糞中排
- 21 一
池量および尿中排池量を著しく増加し,同時に血
血中ミネラノレ濃度との関係は不明であった。
清中のカルシウム濃度も有意に高くなった,
VerdarisandEvansの報告におけるカルシウム出
ている口
とし
5
D
納成績もこれらと大体同じような傾向であった。
、
3
7
)
しかも Kincaid1?5~ ~必乳牛の飼料カルシウム含量
これに対し, Wh
e
e
lei-は肥育去勢牛の濃厚飼料
(乾物中〉を炭酸カルシウムで1.0%から1.8%に
75%よりなる完全飼料に,炭酸カルシウムを 0
.
6,
2Aおよび 2.4%添加給与すると,カルシウムの添加
高めても,血築中のカルシウム,マグネシウムお
水準が高くなるにつれて,カルシウムの糞中排世
よび無機リン濃度には影響しなかった,
量と体内保有量は有意に増加したが,血清中のカ
る。著者らが離乳子牛に乾草を自由に摂取させ,
ルシウム,
としてい
1日に人工乳を 2
.
0
3
.
0
k
,備与して,その人工乳に
リン,マグネシウム,ナトリウムおよ
.
0
3
.
5%添加した 2回の実験に
炭酸カルシウムを 2
びカリウム濃度に影響があらわれなかった。
Davisona吋 Woodgo)
は去勢めん羊にトウモロコシ
おいても,血清中のカルシウムおよびリン濃度に
主体の基礎飼料を制限給与し,
対する炭酸カルシウム摂取の影響は明らかでなか
ζ れに炭酸カルシ
ウムを日量 ~14~ 添加したところ,
カルシウムの
世量は明らかに増加した。しかし,
糞中排 j
これと
った
CT
仙
e
3)0
以上のように,
これまでの報告によれば炭酸カ
Table 3 Serummineralconcentrationsi
ncalvesfedaddedcalciumcarbonate
0
Period
Trial
a
Group
35 day of age
49
63
70
77
84
91
98
105
126
Av.
1
9.13
9.61
9.73
10.20
9
.
59
8.59
9.47
I
Trial
2
a
2
1
r
;
/dQ
Calcium,m
10.32
10
.
81
7.91
5.94b
5.50b
10.29
6.37
6.38
9.37
8.38
8.92
8.48
9
.
03
6.99b
9.79
Inorganicphosphorus,m
r
;/dQ
8
.
12
8.06
7.53
7.86
4.61
7.00b
7.77
7
.
03
4.06
6.78b
7
.
17
6.44b
6.95
7.11
7.83
7.64
6.97
8
.
12b
6.79c
7.81
7
.
33
6.14b
35
49
63
70
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91
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.
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8.35c
6.98
7.61
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8
.
17c
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3.90
4.34c
4.75c
6.72
6
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45
5
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carbonatesupplemented.
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.
<
- 22 -
•
ル シウム摂取が血清中のミネラル濃度におよぼす
結論と今後の問題
影響については,必ずしも同ーの傾向を持った成
乳牛および肉牛の生産量を高め,その生産効率
1
績ではなく,炭酸カルシウム摂取が少量でもカル
を改善するために泌乳牛と肥育牛の濃厚飼料には
シウム濃度が上昇したかと思うと,他方,極めて
高エネルギー含量のものが推奨されてきた。しか
大量の給与でもカルシウム濃度が増加しないとい
し,一般に泌乳牛および肥育牛の生産能力があが
うことが示された。このような差異を生ずるのは,
ればあがるほど,濃厚飼料を多給してみても期待
これに炭酸カルシウム摂取以外の因子が関与して
されるような飼料効率の得られないことが多い。
いることの示唆であろう。
そこで,高エネルギー飼料の多給時に緩衝剤を
家畜のミネラル代謝は,その様式が個々のミネ
添加すれば,濃厚飼料に対する家畜の適応も容易
ラルによって異なっている。反すう家畜が重炭酸
であり,またこれが穀類主体のものであれば消化
ナトリウムを摂取すると,第一胃内でナトリウム
率を改善する効果もあろう,
世さ
の多くが吸収され,過剰の分は急速に尿へ排 j
かし,
と言われてきた。し
これまでの報告から,濃厚飼料多給時にお
.る。すなわち,反すう家畜が過剰のナトリウム
ける緩衝剤とすれば,重炭酸ナトリウムは第一胃
摂取に適応するのは主として尿排粧の径路と言え
内および下部消化管内の過剰酸性を抑制する効果
る
。
はほとんどないだろう。これに対し,炭酸カルシ
重炭酸ナトリウム摂取が第一胃液のナトリウム
ウムは飼料のカルシウム源になると同時に第一胃
濃度に与える影響について,今泉 ~3?ì;濃厚飼料
内および下部消化管内の両方の酸性を中和するこ
に重炭酸ナトリウムを 3
.
0%と 6
.
0%の割合で添加
とができる 2つの目的を持った緩衝剤と言えるこ
し,乾乳牛に粗飼料と濃厚飼料を半分づっ給与し
となどがわかった。
た口その結果によれば,第一胃液の pHは重炭酸ナ
このような緩衝剤の使用に際していくつかの間
トリウム添加と無添加の聞に顕著な差はなかった。
題が予想されるロその潜在的問題のひとつに緩衝
これに対し,ナトリウム濃度は飼料摂取後 1
"
"
"
'
"2
剤を長期間使用した時における微量ミネラルの利
時間目が最高となり,その後は下降した。この場
用についてではあるが,現在のところほとんど知
合にナトリウム濃度の上昇はナトリウム添加量に
られてない。したがって,第一胃内および下部消
比例した,としている。
化管内の環境を飼料の利用にとって望ましい状態
つぎに重炭酸ナトリウム添加飼料のミネラル出
に維持できるような有効な緩衝剤を見出すため,
納成績についてみると, Hadjipanayiotou~l工去勢
さらに多くの研究が必要になろう。
めん羊に重炭酸ナトリウムを 4.0%添加した飼料を
.時量給与したところ,重炭酸ナトリウム添加は
ナトリウムの尿中排池量を増加した口同時に飲水
世量と
量 も 多 く な れ こ れ と ナ ト リ ウ ム の 尿 中 排j
の聞に正の相闘が認められた,
としている。矢~5)
もめん羊に重炭酸ナトリウムを飼料の1.5 および
30%添加給与したら,重炭酸ナトリウムの給与は
カルシウぷとナトリウムの尿中濃度および尿中排
池量を増加したが,血清中の各ミネラル濃度には
著明な変化はなかった,
と報告している。
以上の成績から重炭酸ナトリウム摂取が血中
ミネラノレ濃度におよぼす影響はありえないものと
みなされる。
- 23 一
文献
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