月刊人材ビジネス 7 月号 - サーチファーム・ジャパン

月刊人材ビジネス
7 月号(2015 年 7 月 1 日
発売)
■新興リクルーティング台頭で問われる「エージェントの役割と価値」
世界人材獲得競争の中の「人材紹介業の存在力」
~「経歴詐称」という採用リスクに人材会社としていかに向き合うか?~
「経歴詐称」という採用リスクに
人材会社として、
いかに向き合うか?
スク以外の何物でもありません。
「他薦」「自薦」での違い
――イメージとしては人材側がダ
イレクトに求人企業に応募する求
人広告サイト経由であれば、そう
歓 迎 す べ き 状 況 と い え ま す。 た
自体は、人材紹介会社にとっては
す。企業の採用意識が高まること
――人材紹介マーケットが好調で
ケースも少なくないことが分かっ
態のキャリア」の齟齬に起因する
「 自 己 申 告 上 の キ ャ リ ア 」 と「 実
と、採用選考時における人材側の
して、その発生要因を調べていく
事例は数多く発生しています。そ
で、中途採用における早期退職の
武 元 康 明 氏( 以 下、 武 元 )
企業
の採用意識が高まっている一方
での発生率の違いというのはあり
武 元 人 材 紹 介 会 社 を 経 由 す る
ケースで言うと、「他薦」と「自薦」
リスク、
事例はあるのでしょうか。
称の人材を紹介してしまうという
ケットにおいても、同様に経歴詐
社が介在する人材紹介というマー
できます。ただ、第三者の人材会
いう弊害が起こりうることも想像
だ、市場が活況になると、身近な
てきました。
「早期退職」発生要因にも
問題点に対するガードが甘くなり
で は、 内 定 を 出 す 直 前 の 段 階 で、
す。それに対して「自薦」の場合
想をお聞きします。
内でも先駆的な存在です。
問題への取り組みに関しては業界
確認代行業務」も行うなど、この
貴 社 の 場 合、 企 業 の 採 用 支 援
サービスとして「経歴詐称防止の
その一つといえます。
れ た サ ー ビ ス が、
「経歴詐称防止
に、企業の採用活動向けに始めら
――その「科学的な根拠」をもと
ただ、それを信じて採用してし
まうことは、企業側にとってはリ
れているような印象を受けます。
キャリアを誇張する目的で悪用さ
クもないと判断したのか、自らの
場合は「前職確認」をされるリス
よく見受けられます。倒産企業の
いう詐称の事例は、近年、比較的
を、自らの履歴書に書き連ねると
うものが、そもそも業界内ではあ
境、つまり「抑止する環境」とい
つ、それを許してしまっている環
としての共有課題としてはもう一
をもとに人材を発掘し、企業に紹
ニュース、そして業界通の関係者
聞などのメディアからの業界
の手この手で、それこそ雑誌、新
エージェントが候補者の情報をあ
掘手法であり、われわれのような
わゆるオープンソースでの人材発
「他薦」というのは人材紹介の
枠組みで言えばサーチ型です。い
ます。
がち、
などの弊害も想定されます。
例えば拓銀や山一証券など、倒
産した有名企業での架空の職歴
本人同意の上、経歴確認をかけま
の確認代行業務」なのですね。
「経歴詐称」による採用リスクも
すが、こちらの経歴詐称の発生率
大きな問題であると感じていま
まり機能していない。私はここが
などから入手したオープンソース
す。
は
「他薦」
に比べるとかなり上がっ
最初に、求人市場全体における
経歴詐称の現状認識についての感
一方の「自薦」は、求人サイト
経由で人材を発掘する登録型人材
介をするというプロセスを踏みま
紹介であり、人材側の自己申告情
てしまいます。
確認」のさらなる正確性を担保す
の登録型人材紹介における「経歴
ます。しかし、日本にはそうした
歴詐称の抑止的な効果が期待でき
働いていることで、少なからず経
米国社会では求人市場におい
て、リファレンスチェック機能が
す。
る べ く、 経 歴 詐 称 の「 ゼ ロ 目 標 」
グを行い、企業に人材を紹介して
を掲げた取り組みをしています。
置 付 け で は あ り ま す が、「 自 薦 」
――そうですか。その違いから浮
「科学的な根拠」は何か
かび上がるキーワードは「経歴確
いくモデルです。
ジネスモデルではありますが、補
当 社 の 場 合、「 他 薦 」 の サ ー チ
型が、人材紹介における主たるビ
完的に「自薦」の求人サイト経由
環境がまだ整ってはいません。
一人ひとりの経験値による目利
武元 そこが一番重要だと思って
います。本来ならコンサルタント
し た 見 方 を す る の で は な く、「 自
が高くても仕方がないという諦観
――「自薦」なのだから、発生率
歴詐称を減らしていくという視点
――「抑止」を働かせることで経
くケースもあります。
その自社の経験のみに限定して
言えば、そもそも「他薦」の場合
き。それによって経歴詐称を見抜
ならば業界として、そのための
環境設定の視点は持つべきではな
は人材発掘のプロセスからも、経
けることが理想的なのかもしれま
武元 そもそも経歴詐称の疑いの
ある人を見抜く、調査するという
いかと思うのです。
歴詐称の事実は過去に数件のみ
性」の把握に努めることで、発生
はとても興味深いです。
率の軽減につなげていくというス
薦」においても「経歴確認の正確
で果たして100%、詐称が見抜
タンスですね。
せん。しかし、自分の目利きだけ
けるものかといえば、私自身もそ
う観点からも、それは取り組むべ
武元 人材業界の信頼性、そして
人材紹介のクオリティの向上とい
そ、
「抑止する環境」の仕組みが
こ ろ で は あ り ま せ ん。 だ か ら こ
こと自体、人材を活かすビジネス
科学的根拠が欲しい。それが経歴
必要なのだと考えています。具体
に関わる者として、本意とすると
確認の正確性へのアプローチで
き課題だと思っています。
的には・・・。 (次回に続く)
ずです(笑)
。そうなるとやはり、
す。
また、経歴詐称に関しての業界
ンサルタントはおそらくいないは
うですが、そこまで言い切れるコ
で、ほぼ皆無に等しいのが実情で
「抑止する環境」の視点
認の正確性」でしょうか。
サーチファーム・
ジャパン株式会社の武元康明氏
の登録型人材を活用させていただ
武元 ええ。もちろん当社自身に
おいても、サーチ型の補完的な位
報をベースにしてコンサルティン
インタビュアー 伊藤秀範
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2015. 7. 1/vol.348
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勤務経験のない会社の職務歴を履歴書に書き込む「経歴詐称」。エージェントが介在した中での「経歴詐称」は、人材紹
介会社のヒアリング力やチェック機能に対する信頼低下にもつながるだけに、看過できない問題だ。では、人材会社と
して「経歴詐称」といかに向き合うべきなのか?人材紹介会社として、企業の採用活動における経歴詐称防止の確認代
行業務も行っているサーチファーム・ジャパンの武元康明代表取締役社長に聞いてみたい。今回はその前編である。
23回
第
新興 リクルーティング
台頭 で問われる
「エージェント の役割 と価値」
【世界人材獲得競争の中の「人材紹介業」の存在力】