事故事例1~8

26年度
管内事故事例
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目
次
<事例1> 電気設備点検作業中における感電死亡事故
<事例2> コンクリート打設作業時における感電死亡事故
<事例3> 200Vコンセント接続時におけるアーク負傷事故
<事例4> 200Vブレーカー交換作業時におけるアーク負傷事故
<事例5> 440V電源電圧確認時におけるアーク負傷事故
<事例6> 構内引込第1柱上AOGの充電部に蛇が接触したことによる波及事故
<事例7> 建屋外壁の洗浄中に窓から水が浸入したことによる波及事故
<事例8> 保護継電器の電源が確保されていないままSOGを投入したことによる
波及事故
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<事例1> 電気設備点検作業中における感電死亡事故
【事故発生場所】愛知県
【主任技術者選任形態】専任
【事故発生月・天候】11月・曇り
【使用電圧】:6,600V
【事故発生箇所】キュービクル内の高圧
ケーブルヘッド
【事故原因】被害者の過失
【被害内容】感電死亡
【経験年数】30年 (作業者)
<事故概要>
・当該事業場は高圧需要家である。
・被災者は、検査請負業者の従業員であり、他の作業者6名と一緒に高圧ケーブルの絶
縁状態の検査を行っていた。
・作業は全停電で行っていたが、作業を中断して一部に送電する必要が生じたため、被災
者は作業責任者と二人で、復電作業を行った。
・被災者は作業責任者の指示を受け、キュービクル内の上下2段に施設されたLBSのう
ち、上段のLBSを投入し送電した。
・作業責任者が送電した旨を他の作業員へ無線機で連絡するため、被災者から目をお離
した時、被災者が投入したLBS2次側の高圧ケーブルヘッドに触れ感電した。(地絡保護
継電器が動作)
・救急車にて病院に搬送されたが、死亡が確認された。
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<事故原因>
・被災者は、LBS投入後に停電していると錯
誤し、充電部に触れたものと推定。
・作業責任者が作業中断を指示した後、再開
の指示がない状況で、充電部に近づき、触れ
た。
送電のため
投入したLBS
停
電
箇
所
・活線近接作業で保護具を着用していなかっ
た。
感電箇所
<再発防止>
・復電後は配電盤の扉を閉めるなど、作業手順書の見直し
・活線近接作業時の保護具着用等基本ルール遵守の再徹底
・感電事故防止教育の実施
・安全パトロール強化による事故防止の徹底
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<事例2> コンクリート打設作業時における感電死亡事故
【事故発生場所】岐阜県
【主任技術者選任形態】専任
【事故発生月・天候】8月・晴れ
【使用電圧】:6,600V
【事故発生箇所】高圧配電線
【事故原因】被害者の過失
【被害内容】感電死亡
【経験年数】-年 (公衆)
<事故概要>
・被災者は、建設会社の孫請会社の社長(一人親方)であり、元請の建設会社の作業員1
名とコンクリートポンプ車を使用して住宅基礎の型枠にコンクリートを流し込む作業に従事
していた。
・被災者はコンクリートポンプ車のブームの先につながれたホースを腕に抱えながら、リモ
コンによりアームを操作していたところ、誤って高圧配電線に触れ、被覆を損傷したため感
電した。(ホースはゴム製であるが、鉄線入りであった。)
・直ちに救急車を手配し、病院へ搬送されたが、2日後に死亡した。
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<事故原因>
・被災者と元請会社の作業員は、上空に高圧配
電線があることは知っていたが、リモコンの操作
に集中したため、高圧配電線に近づいたことに
気付かなかった。
・高圧配電線付近で作業を行うにあたり、あらか
じめ電力会社に連絡していなかったため、高圧
配電線の保護がされていなかった。
<再発防止>
・今回の施工に関わった関係者への事故防止PR
の実施
・各地区建設協会の安全大会において事故防止P
Rの実施
・建築現場における災害防止PRの実施
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<事例3> •200Vコンセント接続時におけるアーク負傷事故
【所在地】長野県
【主任技術者選任形態】外部委託
【事故発生月・天候】10月・晴れ
【使用電圧】3相200V
【事故発生箇所】コンセント
【事故原因】電気工作物不良
【被害内容】アークによる負傷
【経験年数】-年(公衆)
<事故概要>
・当該事業場は高圧需要家である。
・被災者は、当事業場の従業員であり、配膳車を使用して昼食の準備のため、配膳車の
電源プラグを天井から下げられたコンセントに差し込んだところ、コンセント内部で短絡し、
アークが発生して負傷した。(主幹漏電遮断器(3P75A)は動作していない。)
・救急車にて病院に搬送され、入院することとなった。
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<事故原因>
・当該コンセントは設置後約11年が経
過しており、その間、毎日配膳車の電
源プラグを抜き差ししていたことから圧
着端子の締め付け部が緩んだか素線
切れが発生し、電源プラグを差し込ん
だ際、圧着部が動いて相間短絡したと
推測。
・コンセント内圧着端子の圧着部には
端子キャップがなかった。
【短絡したコンセントの接続ケー
ブル】
【短絡したコンセント接
続端子部】
<再発防止>
・全てのコンセント内圧着端子の締め付
け状況を確認するとともに、同コンセン
ト内圧着端子の圧着部に端子キャップ
を施した。
・全ての電源プラグ内部を点検し、緩み
がないこと及び圧着部に端子キャップ
が施されていることを確認した。
・専用の漏電遮断器(3P30A)を設置す
る。
【短絡したコンセント差込部】
【他のコンセント内部】
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<事例4> 200Vブレーカー交換作業時におけるアーク負傷事故
【事故発生場所】静岡県
【主任技術者選任形態】専任
【事故発生月・天候】12月・晴れ
【使用電圧】3相200V
【事故発生箇所】動力分電盤
【事故原因】作業方法不良
【被害内容】アークによる負傷
【経験年数】11年(作業者)
<事故概要>
・当該事業場は特別高圧需要家である。
・被災者は工事の下請会社の従業員であり、元請会社の担当者と下請会社の被災者外
1名の3名で工事を行っていた。
・予定より工事が早く終了したため、当日の作業予定にはない動力分電盤内のブレー
カーの取替えを開始した。
・被災者はブレーカーをネジ止めしようとしたが、誤ってドライバーを銅バーに接触させ、
線間短絡したため、アークにより顔面等を負傷した。
・救急車にて病院に搬送され、入院することとなった。
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<事故原因>
・急な作業予定の変更のため、作業手順も決める
ことなく作業に掛かった。
・原則禁止している活線作業を行った。
・低圧絶縁保護シートなどの安全対策を怠った。
・日々の工事内容は電気主任技術者と元請会社
との間で連絡を取り合っていたが、その日に関し
ては変更の連絡、停電の相談がなかったため、
作業を把握できなかった。
<再発防止>
・各方面に周知済みの作業予定を現場のみで変
更しない。
・活線作業の原則禁止を再徹底
・作業員の受入教育やTBMを更に充実させ、安全
意識を強く持たせる。
・現場作業者と電気主任技術者との連絡を更に
密にする。
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<事例5> 440V電源電圧確認時におけるアーク負傷事故
【事故発生場所】愛知県
【主任技術者選任形態】専任
【事故発生月・天候】5月・晴れ
【使用電圧】440V
【事故発生箇所】低圧配電盤
【事故原因】作業準備不良
【被害内容】アークによる負傷
【経験年数】40年(作業者)
<事故概要>
・当該事業場は高圧需要家である。
・被災者は外注工事業者の従業員であり、他の作業者4名と440V低圧配電盤の設置
工事を行っていた。
・工事が終了し、被災者はテスターにて低圧配電盤の電圧確認をしようとしたところ、テ
スターが破損して短絡したため、アークにより負傷した。
・業務用車にて病院に搬送され、入院することとなった。
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<事故原因>
・適切な測定器を使用していなかった。※
・どういったテスターを使用するかのルールが無
かったため、適切な測定器使用の指示をしな
かった。
・被災者は保護具を着用せず、素手で作業を
行った。
※安全規格IEC61010(JIS C 1010)によりカテゴリⅠ~Ⅳに分類
される。同じ使用電圧であっても、過渡的な過電圧(インパルス電圧)
を含むことがあるため、その過渡過電圧にも耐える測定器を選ぶ必要
がある。次はその例(イメージ)である。
カテゴリⅣ:引込み線から分電盤までの回路
カテゴリⅢ:分電盤からコンセントまでの回路
カテゴリⅡ:コンセントからコンセントに接続する機器までの回路
カテゴリⅠ:コンセントに接続する機器内部のトランスの2次側回路
<再発防止>
・作業前ミーティング時に、作業時に使用する測定器、保護具が適切かどうかの確認を行う。
・440V電源電圧確認時の検電要領書を作成する。
・配電盤に短絡事故発生箇所と明示し、作業者へ注意を促す。
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<事例6> 構内引込第1柱上AOGの充電部に蛇が接触したことによる波及事故
【事故発生場所】長野県
【主任技術者選任形態】外部委託
【事故発生月・天候】6月・晴れ
【使用電圧】6,600V
【事故発生箇所】AOG
【事故原因】鳥獣接触
【被害内容】2,000kW、118分間
【経験年数】-
<事故概要>
・当該事業場は高圧需要家である。
・事業場内が停電したため、調査を行ったところ、構内引込第1柱上のAOGのヒューズ
筒充電部に蛇がぶら下がっているのを発見した。
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<事故原因>
・AOGの充電部に蛇が接触したが、ZCTの
電源側であり保護継電器の範囲外であった
ため、波及事故となった。
<再発防止>
・構内引込第1柱に防蛇テープを付け、支
線に蔓返しを取り付ける
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<事例7> 建屋外壁の洗浄中に窓から水が浸入したことによる波及事故
【事故発生場所】岐阜県
【主任技術者選任形態】外部委託
【事故発生月・天候】5月・晴れ
【使用電圧】3相200V
【事故発生箇所】屋内変電所内ナイフス
イッチ
【事故原因】公衆の故意・過失
【被害内容】900kW、87分間
【経験年数】-
<事故概要>
・当該事業場は高圧需要家である。
・当事業場の従業員がホースにより建物外壁の洗浄を実施していたところ、窓枠から水
が浸入し、ナイフスイッチに水が掛かったため、電源側で地絡、短絡となった。
・保護継電器によりVCBが開放したが、同時に配電線路にある遮断器(LCB)が開放し
たため、波及事故となった。
※LCBとは配電線の亘長が長い場合に配電線の途中に施設し、過電流を検知した場合に開放する遮断器。配電線の亘
長が長い場合、末端で過電流となっても変電所で過電流を検知できない場合があるため配電線の途中に設置される。変
電所の過電流継電器よりも早く動作するため、自家用構内に設置される過電流保護継電器と同時に動作する場合がある。
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<事故原因>
・腐食により窓枠に穴が空いて
いたため、その穴から水が浸入
した。侵入した水がナイフスイッ
チに掛かったため、短絡した。
【穴の空いた窓枠】
<再発防止>
【洗浄に使用したホース】
・窓枠の穴をコーキングし、水が浸入しないように処置する。
・「禁水」表示札を該当の壁に設置し、水の侵入を防ぐ。
・従業員に対して電気設備の取扱いと安全教育を実施する。
【焼損したナイフスイッチ】
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<事例8> 保護継電器の電源が確保されていないままSOGを投入したことによる波及事故
【事故発生場所】静岡県
【主任技術者選任形態】外部委託
【事故発生月・天候】12月・雨
【使用電圧】6,600V
【事故発生箇所】VCT
【事故原因】作業者の過失
【被害内容】1,300kW、95分間
【経験年数】30年以上
<事故概要>
・当該事業場は高圧需要家である。
・事故当日の夕方、事業場が停電したため、委託している電気管理技術者に連絡し、原
因調査を行った。
・受電用遮断器(PF+LBS)及びSOGを開放し、この区間を5000Vメガーで絶縁状態を
確認したところ500MΩであった。
・その後SOGを投入したところ、波及事故となった。
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<事故原因>
・VCTが過去の落雷により損傷していたものと推定。
・管理技術者は、絶縁状態の確認後、高圧ケーブル、碍子、SOG周りを目視確認を行った
が、その後のSOGを投入する際にLBSが開放されていることを失念しており、地絡保護継
電器の電源が確保されていないままSOGを投入した。
・5000Vメガーによる絶縁測定では500MΩであり、慎重に対応する必要があった。
※高圧受電設備規程(JEAC8011)では、5000Vメガーで測定した場合、次のような判定としている。
良 :5,000MΩ以上
要注意:500MΩ以上~5,000MΩ未満
不良 :500MΩ未満
<再発防止>
・復電操作は十分に注意し、LBSの投入等保護継電器の電源が確保されてい
ること、その他接地の取り外し等を指差呼称してからSOGを投入する。
・絶縁測定の結果を基に、慎重に判断し、対応する。
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