第 13 講 移住・住みかえアドバイス②

第 13 講 移住・住みかえアドバイス②
── 50 代からの戦略──
1 二地域居住、お試し居住・ロングステイ(¶6-9)
50 代ではまだ仕事や学校がありますから、アクティブシニア期のような移住・住みかえはで
きません。しかし、50 歳になるとそろそろ人生Ⅱが具体的に視野に入ってきます。自分が定年
退職したあとどうなるのかについて真剣に考え出す時期でもあります。もし、アクティブシニア
期に移住・住みかえに踏み切る可能性が高いなら、まだバリバリ仕事ができて十分に収入がある
うちから移住・住みかえ先を確保しておいたほうがよいかもしれません。
また、仕事にせよ子育てにせよ往年の疲れが出だす時期ですが、一方で、管理職や経営職にな
ると責任は増えますが、時間的な拘束は減ってきます。週末に子どもを遊びに連れ出す必要もな
くなりました(…というかむしろ拒否されます)
。週末に田舎でスローライフを楽しめば、英気
と判断力も養われるのではないでしょうか。これまでは忙しすぎてあまり話すこともなかった夫
婦にとっては、会話を取り戻す時期としても重要です。
こうして、プレ移住・住みかえともいうべき二地域居住やお試し居住・ロングステイ型旅行に
注目が集まっています。
⑴ 二地域居住
¶5-9
二地域居住は、現在のマイホームを軸とした生活は維持したまま、異なる環境での生活を享受
する、定年退職・子育て完了後に完全移住する予定で週末居住等を行う(住みかえ先先行取得型)
といった目的で、セカンドハウスを取得するものです。別荘や実家との往復も含まれますが、狭
義には、都会に暮らす人が農山漁村で暮らすことを意味する場合が多いようです。1 年間の一定
時期だけを別の地域で過ごす場合も含まれます。
別荘との違いは、2 つの住まいに主従の差がないことにあります。
どこと二地域居住するかについては、
前講で検討した 8 パターンのすべてがあてはまります
(¶
5-7 以下)。
二地域居住については、地域振興の観点から各地でさまざまな支援策がとられつつあります。
⑵ お試し居住・ロングステイ(滞在型旅行)
一方、
「お試し居住」
「ロングステイ(滞在型旅行)
」は、
移住・住みかえを行う前提で、
あるいは、
移住・住みかえがどんなものかを体験する目的で、一次的に住みかえを行ったり、長期間滞在す
るものです。
旅行との違いは目的がその地の名所を見て回る観光(sight-seeing)ではなく、その地域に住
─ 40 ─
むことそのものだという点にあります。自分にとって住むことの魅力とは何なのかを知るための
試行錯誤だといってよいと思います。
観光地に住んでいる人は意外と観光スポットには訪れません。それと同様、観光名所の有無は
ロングステイ先としての魅力にはあまり関係ありません。だからといって素のままで「来る者は
拒まず」という地域の場合、
実際に住みかえようとするとかなりの「見えない障壁」があります。
お試し居住やロングステイを積極的に受け入れている地域はそれなりにそうした
「見えない障壁」
を取り除く努力をしています。
⑶ 二地域居住と金融
問)二地域居住の話を聞いて、A 氏が「二地域居住と簡単に言うが、50 代になって住宅ローンを借りてま
で 2 件目を取得できるような人はいわゆるセレブに限られる。そもそも今住んでいるマイホームの住宅
ローンの残高が 1 千万円以上残っているのに、さらに住宅ローンを組むことなど無謀もいいところだ。
」
して 2 件目を取得できるか、金融まで含めたうまい提案がないか考えてください。
図 79 二地域居住先先行取得と完全住みかえに伴うローンスイッチング 概念図
第 13 講
移住・住みかえアドバイス② と質問してきました。庶民にとって二地域居住は「手の届く」ものなのでしょうか。どうやったら安心
代からの戦略
50
¶5-10
確かに政府や学者の唱える二地域居住は、
「二地域居住してもらう側」の都合でバラ色の絵が
描かれてはいるのですが、普通の庶民が、それをどうやって「資金的に手の届くもの」にするか
という視点が欠けています。これでは普通の庶民が容易に手を出すことができません。そこで、
具体的に、50 歳でマイホームの住宅ローン残高がある状態で二地域居住先の取得のためにさら
に住宅ローンを借りて問題なく返済できる方法がないか検討してみましょう。
住みかえ先先行取得型の場合、住宅金融支援機構のセカンドハウスローンを使えば、1 件目と
同条件でフラット 35 を借りることができます(¶6-9 のファイナンスの項参照)
。民間金融機関
でも比較的低利でセカンドハウスローンを取扱うところがあります。二地域居住を考える人の多
くは 50 歳代なので、返済比率からすればかなりの金額を借りることができるのですが、60 歳
を超えて返しきれるのかが悩みになります。
しかし、もし定年後は先行取得した二地域居住先に住みかえるのであれば、次のようなやり方
─ 41 ─
で無理なく対応することができます。
まず、とりあえずセカンドハウスローンを利用して二地域居住先を取得します。ギリギリまで
借りると月の返済額はかなり大きな金額になりますが、年収は相応にありますし、子どもの負担
も減るので、定年までなら何とかなる人が多いのではないでしょうか。ローン返済に加えて毎週
末に旅行に行った場合の出費と比較すればむしろ安いぐらいかもしれません。
その上で 60 歳になったら、現在のマイホームについてマイホーム借上げ制度を利用し、さら
に住みかえ支援ローン(¶4-21)を用いて、セカンドハウスローンを借り換えます。
少し複雑かもしれませんが、表 40 はこれを具体的に数字にしてみたものです。
表 40 二地域居住先先行取得と完全住みかえに伴うローンスイッチング
これをみると住みかえ支援ローンが確実に借りられるなら、むしろ 50 歳代で移住・住みかえ
先を先行取得しておいて、稼げる間にローン残高を減らしておけば、60 歳からはマイホーム借
上げ制度を活用して賃料でゆっくり返済していくという戦略が決して非現実的でないことが分か
ります。もちろん表 40 で想定している年収は決して少ない額ではありませんが、セレブと呼ば
れる人々よりはずっとハードルが低い水準です。三大都市圏で官庁やそこそこの規模の企業に勤
める人ならこの程度の年収に達している人は多いはずです。
また、二地域居住の対象となる家は通勤・通学を前提としない家なので、かなり安く購入する
ことができます(¶2-15)
。1500 万円〜 2000 万円程度借りられれば非常に大きな可能性が広
がるはずです。
2 お金を生む家、下宿になる家
¶5-11
マイホーム借上げ制度の展開のひとつとして、賃貸併用住宅の借上げ特例について説明しまし
─ 42 ─
た(¶4-7、¶4-29)
。50 代は子どもが成長して家族数が減り出して、マイホームに空間的な余
裕が生じ出す時期にあたります。また、親の家を引き継いだ場合はもちろんですが、30 代、40
代前半に建てたマイホームであっても、まだまだ続く残りの人生を考えて増改築や建替えを考え
る人も少なくありません。本節では、そうしたニーズに関するいくつかの事例を検討してみるこ
とにしましょう。
⑴ 賃貸併用住宅
問)A 氏は長男ということもあり、実家に両親と同居していますが、建物は築後 50 年を超えてさすがに
老朽化が激しくなってきたし、地震も心配です。折しも 50 歳で部長に昇進したことや娘が就職、息子
が地方の大学に進んだため家を出たことから、思い切って建て替えることにしました。親の世話も考え
ると将来移住・住みかえをする可能性はゼロです。住宅メーカー数社の営業マンから話を聞きましたが、
いずれも「部長のステータスに羞じない立派な家にしましょう」などと少しでも大きな家を作らせよう
A 氏は、今は収入も 1,000 万円を超えて、かなりの金額を銀行から借入れることができますが、役員
になれる見込みはゼロなので、退職後にローンの返済不安が残らないようにしたいと考えています。幸
い敷地は相応に広いので、1 階に 2 戸アパート部分を設けて、2 階、3 階と居宅部分としてはどうかと
ひらめきました。そこで、住宅メーカー B 社に聞いたのですが、「A 部長の家のある地域にはうちの不動
産会社の支社がないため借上げができない」といいます。また、銀行は「アパート部分には住宅ローン
が貸せないので、その部分は事業用ローンという扱いになるが、事業実績がないので、住宅メーカーの
① 賃貸併用住宅の考え方
仮に自己居住部分のみを建て替える場合、親の代から住んできた場所ですから、住めればよい
というものではなく、それなりの広さが必要になります。仮に 2 階建てとして建替えに 3,000
万円の総費用がかかるとしましょう。この費用を全額住宅ローン借入れで調達する場合、50 歳
からですと、最終返済時年齢の制限(ほとんどの場合 80 歳)のため最長で 30 年のローンしか
組むことができません。仮に借入金利が 3% だとすると、毎月の返済額は約 126,500 円になり
ます。住み続けることが前提ですと、60 歳以降これだけの金額を返済していくことには大きな
不安が伴います。だからといって
築 後 50 年 を 経 た 住 宅 に あ と 30
図 80 賃貸併用住宅の基本図式
年以上何事もなく住み続けられる
可能性は低いので、建て替えを決
断したのならできる限り無理な
く実現できる方法を検討すべきで
す。
では、敷地を有効活用する観点
から、A 氏の計画のように容積率
(¶2-17)をギリギリまで使って
─ 43 ─
50
代からの戦略
借上げがないと審査が通せない」といいます。何かうまい方法はないでしょうか。
第 13 講
移住・住みかえアドバイス② という意図が明らかなピントのはずれた提案しかしてくれません。
1 階部分に 2 戸の賃貸用住戸を加えたらどうなるでしょう。建築費は自己居住部分の 0.5 倍とし
て 1,500 万円としましょう。そうすると、総工費は 4,500 万円に増えますので、これを全額借
入で調達すると、毎月の返済額は約 189,700 円に増えます。しかし、もしこの 2 戸をそれぞれ
6 万円程度で貸すことができれば 12 万円の賃料収入が見込めますから正味返済負担は 69,700
円となります(図 80)
。
② マイホーム借上げ制度の特例利用
ただし、実際には常に入居者が確保できるとは限りませんから、多くの場合施工業者やその関
連会社に一括借上げ(サブリース、¶3-1)してもらって安定収入化を図ります。しかし、通常
のアパートと異なり 1 棟に 2 戸しか賃貸住戸がないものは 1 戸でも空き室が発生すると 50% の
収入減になりますから収益のブレが大きいため、民間事業者はサブリースを受けることを嫌がる
傾向があります。このため、すでに学習したように、建物全体が移住・住みかえ支援適合住宅の
要件を満たす場合で、賃貸部分の面積が住戸全体の 50% 以下である場合には、当初から事業用
目的であっても JTI が借上げる特例が認めら
れています(¶4-7)
。これを活用する場合、
表 41 マ イホーム借上げ制度利用の場合の正味返済額比
賃料の 15% を JTI が控除しますから、正味
較
受取賃料は 51,000 円になります。それでも
月の返済負担は約 87,700 円と、自己居住部
分のみを建築した場合より約 4 万円軽減さ
れます。さらに JTI の場合、一度入居者が決
まったあとは、空き室になっても最低保証
家賃(通常の場合 85% 控除後の 51,000 円、
¶3-22 を復習のこと)が支払われますので安心です。
すでに ¶4-28 で学習したように、賃貸併用住宅の取得促進のため、①賃貸併用部分も含んだ
住戸全体について通常の住宅ローンを借入れ可能とする、②返済比率要件を緩和して賃貸部分の
ために増加した総工費も賄えるようにする、という対応を行ってくれる提携ローンが利用可能で
す。
③ 期限前弁済による負担削減
問)A 氏は JTI のマイホーム借上げ制度を利用した提案に対し、「初めてまともな提案をもらった。ただ、
60 歳から 9 万円近く返済することには依然として不安がある。一方、子どもも一人前になりつつあるの
で、当面は月に 20 万円程度の返済なら何とかなる。定年までにできるだけ返して、シニア期以降の負
担を軽減する方法はないか」と聞いてきました。どうすればよいでしょうか。
¶5-12
この場合は、1 年間の賃料を貯めておいて毎年期限前弁済していくとよいでしょう。毎年
51,000 円× 2 戸× 12 か月 =1,224,000 円ずつ追加的に返済していくことになります。この結果、
60 歳段階ではかなり残高が減りますので、その後の返済額が圧縮されます。
表 42 はこれを実際に計算したものです。これによれば 10 年後には残高が約 2,350 万円に減
りますので、その後の月返済額は 130,295 円となります。その後は、賃料収入である 51,000
円× 2 戸 =102,000 円を返済に回すことにすれば正味負担額は 28,295 円となり、61 歳からの
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負担を大幅に軽減することができます。
表 42 当初 10 年間の賃料を期限前弁済に充てた場合
移住・住みかえアドバイス② 第 13 講
代からの戦略
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¶5-13
なお、この事例で期限前弁済を年 1 回とした理由は、期限前弁済に事務手数料がかかる上、
手続がめんどうな銀行が多いからですが、最近は非常に簡単に比較的少額でも期限前弁済を認め
てくれるところがあります。また、相殺型といって預金残高に見合う部分については住宅ローン
の金利をゼロにする特約付きの住宅ローンを提供するところもあります。相殺型住宅ローンを利
用すれば、期限前弁済しないでも同じ効果を得ることができます(¶4-15)
。
④ デンマーク方式(1.5 世帯住宅)
問)A 氏(50 歳)の両親はすでに他界していますが、妻のほうは母が健在です。妻の母 B は夫の死後も妻
の実家にあたる郊外の一戸建てにひとりで暮らしていますが 75 歳になり、ひとり暮らしを不安がるよ
うになってきました。A 氏は大企業勤めで転勤が多かったことから、未だに社宅住まいですが、最近は
会社から早く家を買えとプレッシャーがかかるようになっています。折しも、B のほうから、「一軒家に
ひとり暮らしは物騒なのでいっしょに住んでもらえないか。ただ、家は築後 40 年を超えているので A
夫婦の好みで建替えてもらってよい。ただ、自分もここまで気ままに来たのでお互い気兼ねしたくない。
土地が狭いので別棟にはできないと思うが、自分の住む部分は狭くてよいので A 夫婦の住む部分とは分
離してほしい。B の夫が残した預金が 1,500 万円程度残っているが、全額建替え資金として使ってもら
ってかまわない」といってきました。A 氏としては世間体もあるので建替え資金は全額自分で出すつも
りですが、B は娘婿に世話になるのだからけじめをつけたいと言ってききません。A 氏も本音では B の
要求通りの家だと高くつきそうなので事実上援助してもらえると助かるなとは思っています。どういう
提案が考えられるでしょうか。
デンマークには、老親や高齢者が快適にすごせる賃貸部分を増築し、独立した家計を営む老親
や第三者に賃貸しておき、自分達がエージドシニア期になったら、こんどはそこに住みかえて自
己居住部分を貸すという、賃貸併用住宅の一種が見られるそうです。これをデンマーク方式とか
1.5 世帯住宅といいます。
これまでは、比較的裕福な親が、子どもが同居してくれることを期待して、2 世帯住宅を作る
という文脈が多かったように思います。しかし今後は、そろそろエージドシニア期に入る親を抱
えた 50 代の建替え・増改築戦略として、デンマーク方式が普及するのではないでしょうか。親
からしても、自分の居場所を作ってくれる子どもに対して贈与ではなく、あくまでも独立した世
帯として適正な賃料を支払ったほうが、気持ちがすっきりしますし、税務上も単純な贈与よりは
有利です。
設問の A 氏の場合、A 夫婦の家族用部分と、B のためのシニア仕様の部分に分離してデンマー
ク方式で建てることが考えられます。ここまでの事例と同様、前者に 3,000 万円、後者に 1,500
万円かかるとします。この場合まず、A 氏が 4,500 万円借入れて建替えを行い、B との間で賃貸
借契約を締結し、周辺の賃料水準からみて相当と考えられる賃料を払ってもらうことにします。
たとえば、適正な賃料水準が月 8 万円〜 10 万円程度だとすれば、A 氏の正味返済額も 8 万円〜
10 万円に収まります。1,500 万円を当初にもらって 3,000 万円を借入れた場合の月返済額は約
126,500 円でしたから、当面の資金負担はむしろこのほうが楽になりますし、B が独立した家計
を営んでいる限り、贈与税の心配はありません。
B の健康状態に不安があり、長期間貸し続けるかどうかがよく分からないのであれば、最初か
─ 46 ─
ら賃貸併用住宅の特例を使ってマイホーム借上げ制度を利用し、当面 B に転貸しておき、万が
一の場合は次の入居者を捜してもらうことも考えられます。
もちろんそのままでは将来に不安が残りますから、元気で収入も多い 50 代のうちに ¶5-12
と同様、できる限り期限前弁済をして将来負担を下げるようにする必要はあります。
その後、B が亡くなり、さらに A 氏がなくなった場合には(縁起でもないですが…)
、団体信
用生命保険で残債務は返済されますので、A 氏の妻はもと B のいた場所に移って、子どもに自分
達の場所を貸したり、マイホーム借上げ制度を活用して第三者に貸したりすれば、十分な老後の
生活費を確保することができます。
図 81 デンマーク方式概念図
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代からの戦略
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⑵ 賃貸可能住宅
問)A 氏(50 歳)は親の代から長年住んできた住宅を建替えようと思っています。せっかくなので 3,500
万円程度かけてそれなりに立派な家を建てたいと思っています。現在住宅ローンの金利は 3% なので、
80 歳まで期間 30 年で建築資金の全額を借入れると毎月の支払は約 147,600 円になります。しかし、当
面は十分な収入があるし、子どもも就職したので無理をすれば月に 20 万円程度なら返済できそうです。
しかし、65 歳をすぎて年金生活をするようになったら、返済負担をできるだけ圧縮したいと考えていま
す。うまい方法はないでしょうか。
賃貸可能住宅は、当初はすべてを居住用とするが、家族数が減少してきたら賃貸に転用できる
よう、最初から設計において配慮のある住宅のことをいいます。具体的には界壁を厚めにして防
音効果を高め、トイレやユニットバス、流し台、外部への独立したドアや(2 階以上の場合)階
段等を設けて住戸としての独立性を高めておきます(¶3-12)
。
賃貸可能住宅の場合、当初は賃貸しませんので、賃料収入を返済にあてることができません。
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しかしその結果、全体が自己居住目的の住宅になりますので、取得資金を通常の住宅ローンで調
達することができます。しかし、賃貸可能住宅として作っておけば、将来マイホーム借上げ制度
を利用して賃貸化が簡単にできます。それまでの間は、社会人になった子どもが独立した生活を
営める部屋として利用しておけばよいでしょう。
設問の事例ですと、1 部屋を賃貸可能部分として設計した家を建てておくことが考えられます。
その上で、期限前弁済を手数料なしで自由に認めてくれるタイプの住宅ローンや相殺型住宅ロー
ンを活用して 60 歳まで毎月 20 万円ずつ返済していけば、10 年後の残高は約 1,928 万円まで
減り、11 年目からの返済は約 107,000 円になります。60 歳の時点で退職金を使って 500 万円
程度余計に返済すれば、11 年目からの返済は約 8 万円に減ります。こうしておいて、65 歳か
ら賃貸可能部分についてマイホーム借上げ制度を活用すれば、毎月の返済はほとんどゼロに近
くなります(なお、借上げの時点で原則として既存ローンを借り換える必要がありますが[¶
3-35]、この際 JTI 提携ローン等を利用して期限を延ばせばより返済負担を引き下げることが可
能になります)
。
図 82 賃貸可能住宅概念図
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