藤本昇特許事務所 白井 里央子◇弁理士 当社はマンションデベロッパーであり、数年前から関東を中心として「プレミアティ」とい う名称のマンションをシリーズ化して販売しています。この名称を商品「マンション」を指 定して商標登録することはできますか？ １．マンションは商標法上の 商品に該当するか （神奈川県 Ｋ．Ｋ） このように、シリーズ化されたマン ①『ライオンズマンション』シリーズ ションの名称は、マンションの分譲販 登録第4980601号 一般に商標法上の「商品」とは「独 売に際して行われる役務提供の際に使 権利者：株式会社大京 立して商取引の目的たりうるべき物、 用されるものであり、建物の販売役務 商標： 特に動産」であり（ 『工業所有権法逐 の提供にあたって、販売役務の提供を 条解説』 第18版参照） 、① 独立性、② 有 受ける者、すなわちマンションの購入 償性、③ 流通性、④ 動産性が必要だ 希望者が購入予定物件の内容の案内を と解されています。 受けるなどの際に使用されるものです。 マンションは不動産の一種ですが、 よって、マンションの名称に係る商標 ②『ブランズ』シリーズ 登録第5682000号 不動産は商取引の対象として商標を付 は、商品 「マンション」 ではなく、 「建物の 権利者：東急不動産株式会社 して流通に乗せることができないた 販売」 に係る役務について使用されるも 商標： め、商標法上の商品には該当しないと のと考えられます ［平成12年９月28日東 考えられます。よって、 貴社は商品 「マ 京高裁平成11 （ネ） 5876参照］ 。 ンション」を指定して商標登録を受け 以上、貴社は商品 「マンション」につ いて商標登録することはできません ③『プラウド』シリーズ しかしながら、わが国では現実にシ が、第36類の 「建物の売買」 に係る役務 登録第5065990号 リーズ化されたマンションが多数販売 を指定した商標出願を検討してくださ 権利者：野村不動産株式会社 されており、シリーズ化されたマン い。そうすることで、貴社商標を適切に 商標： ションの名称には商標登録のニーズと 保護できる可能性が高まるでしょう。 ることはできません。 商標法で保護すべき一定の業務上の信 用があることは明らかです。 ２．他社の商標登録例 ④『プレミスト』シリーズ 実際に、シリーズ化されたマンショ 上述したとおり、シリーズ化された ンの名称は、マンションの建物自体の マンションの名称は、第36類 「建物の売 登録第5151923号 名称に限らず、モデルルーム、定価表、 買」 を指定役務として商標法で保護さ 権利者：大和ハウス工業株式会社 取引書類その他の売買関係書類、 看板、 れるべきものであるとされています。 商標： ノボリ、チラシ、パンフレット等のマ 以下では、国内の有力なデベロッ ンションの販売行為に関連して多数使 パーによって実際に商標登録されてい 用されることが想定されます。 る例を幾つか紹介します。 2015 No.2 The lnvention 67
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