マンション管理―しっ得ナビ - 愛媛県マンション管理士会

一般社団法人愛媛県マンション管理士会
マンション管理―しっ得ナビ 2015 秋号
通巻第4号
マンション管理情報
発行元(一社)愛媛県マンション管理士会
事務局 松山市北土居 5 丁目 8 番 60 号
TEL
089-969-8058
FAX
089-969-8052
通巻第 4 号
◇管理委託契約の更新について
~契約の手順と注意点~
マンション管理業者との契約の手順は、マンション管理適正化法で定められています。
適正化法では、契約の自動更新は認められていませんので、管理業者は従前と同一の条件
で契約更新を行う場合でも、事前に組合員全員に「重要事項説明書」を交付し、そのうえ
で、管理者(理事長)に契約内容を説明することとされています。(適正化法第 72 条)
従前と同一の条件とは…
 管理業者の商号・名称・登録番号・登録年月日の変更
 更新前の契約と委託業務内容・実施方法は同一であるが、委託料を減額する場合
 更新前の契約に比べて業務内容・実施方法の範囲は拡大するが、委託料を据え置く
か、減額する場合
 更新前の契約より、委託料の支払時期を後に変更しようとする場合
 更新前の契約より、委託料の契約期間を短縮する場合
 管理業務の対象となるマンションの所在地の名称が変更される場合
管理委託契約は、更新を含めて総会での決議事項となっています。(標準管理規約第 48
条)
「どのような業務内容を委託するのか」、
「どのような契約条件とするのか」について法
律の定めはありません。管理業者は、管理組合との委託契約に基づいて業務を行いますの
で、適切な維持管理委託契約を結びましょう。
「マンション標準管理委託契約書」には、契約期間や更新についての条項がおかれてい
ます。
(第 20、21 条)比較することで、マンションの管理委託契約に不備がないかどうか
確認することができます。
委託した業務が円滑に履行されるには、管理組合と管理業者双方が、契約内容について
共通な認識をもち、対等な立場において関係を構築することが肝要です。マンション管理
の主体は、管理組合です。すべてをマンション管理業者任せにすることなく、組合員全員
で協力し、管理組合運営に努めることが期待されます。
◇マイナンバー制度~管理組合は?~
マイナンバー法の公布によって平成 27 年 10 月から、個人は 12 桁、法人は 13 桁の番
号を与えられることが制度化されました。では、管理組合はマイナンバー制度の導入で、ど
のような影響を受けるのでしょうか。
管理組合が法人の場合は、マイナンバーが指定されることはもちろんですが、法人でな
い管理組合の場合には、税申告の有無がキーポイントになります。駐車場・共用施設の外
部貸しや携帯電話基地局設置による収入、建築士・役員などに報酬を支払っていて税申告
をしていれば、法人番号が指定されます。
一般社団法人愛媛県マンション管理士会
◇判例紹介
☆
仙台高裁 平21.12.24
窓ガラス等の改修工事の費用負担
マンションで区分所有者5名が、窓サッシ戸車・クレセント・レール、網入磨ガラスへの
変更、玄関扉のタイトゴム等の改修工事を行いました。この工事の発注及び工事代金の
支払いは、管理組合において行われました。(費用は定期総会決算で承認済)。
その後、管理組合の執行部が替わり、工事代金は各区分所有者が負担すべきものとして
管理組合への返還を求め訴訟に至ったケースです。
仙台地方裁判所の判断
このマンションの管理規約は、標準管理規約と同じように窓枠や窓ガラスは専有部分
に含まれないとし、専用使用権のある部分と定められています。地裁はこの規約に照ら
し、5 名が行った改修工事は専用使用権のある共用部分だと判断しました。つぎに、専
用使用権を有する共用部分の改修に要した費用は、通常の使用に伴う費用(標準管理規
約第 21 条)か、それ以外の費用かが争点になりました。
裁判所は、複数の区分所有者が同じ時期に工事を必要としたことは、その原因は経年
劣化に伴うもので、
「通常の使用に伴う管理には該当しないと解するべきである」としま
した。通常の使用に伴う管理に当たるかどうかが不明の場合は、総会決議に基づき管理
組合負担で実施することが可能で、この費用負担を記した決算報告書が定期総会で承認
されているとし、その改修費用は管理組合負担としました。
仙台高等裁判所の判断
仙台高裁は 1 審判決を取り消し、管理組合の請求を認めました。
判決理由は、この工事箇所は専用使用権のある共用部分ではあるが、この改修工事は「網
入り窓ガラス並びにサッシの戸車及びクレセントについてされたもの」であり、「日常的
な使用に伴い必然的に劣化していくものと考えられるのであるから、これらの部分の劣化
は、専用使用権者の通常の使用に伴うものと認められる」としました。一方、「通常の使
用に伴わないもの」とは「計画的に一斉修繕したり、住宅の性能向上のために一斉交換す
る場合」を言い、経年劣化は「通常の使用に伴うもの」と判断しました。
管理組合として
管理組合が専用使用部分の消耗部品の取り替えや更新を長期修繕計画に取り上げ計画
的に維持管理を行っているマンションは少ないと思います。専用使用権のある部分の改修
工事で、費用負担に関して管理組合としては判断が難しいケースが往々にしてあります。
あらかじめ管理組合で費用の負担などの取り扱いを確認し、決めておけば、後のトラブル
を回避できるのではないでしょうか。