農林水産省 林野庁長官 今井敏 様 2015 年 7 月 17 日 違法伐採及び違法木材製品調達を抑止する有効な法制化の緊急性について 拝啓 私たち、下記の非政府組織は、日本における違法木材製品の取引を禁止する有効な法制化のた めに日本政府が早急に行動を取られるよう要請します。 現在、日本の木材製品の消費は違法 伐採リスクの高い供給源に深く依存しており、責任ある消費国としての日本の国際的な信用が 損なわれています。 こうした中で日本市場への違法木材の流入を阻止する法制化について日 本の国会議員の間で議論が行われていることを歓迎します。私たちは、2005 年の G8 グレンイ ーグルズ・サミットで G8 諸国が違法木材・木材製品の国際取引を停止させる行動を自ら約束 したことに沿って、2016 年の G8 サミットの前に有効で強制力のある法制化を行うよう日本政 府に要請します。 日本に輸入される木材製品の約 12%は違法性リスクの高い供給源に由来すると推定されてい ます。i 下記の団体による独立した調査により、日本で消費されている合板、製材、紙など の木材製品が違法伐採の疑いのある森林地域及び業者から供給されていることが確認されて います。G8 も認めているように違法伐採は「最貧国の人々の暮らしに被害を及ぼし、政府の 歳入に損失を与え、市場や取引を歪め、紛争を維持している」ばかりでなく、「環境劣化、生 物多様性の損失及び森林減少」を引き起こしています。ii 日本に輸入される合板の約半分はマレーシア・サラワク州から来ていますが、同州では違法か つ持続不可能な伐採が横行していることが独立調査により確認されており、その影響で熱帯林 減少率が世界有数の高いレベルに達しています。iii 最近、サラワク州政府は違法伐採対策を 強化していますが、林業部門で横行する腐敗のため難題を抱えています。 iv 残念ながら日本 企業は、住宅及び建設事業のためにサラワク州から熱帯材合板を輸入し続けています。 東京 都が最近、熱帯材合板の持続可能性と合法性、及び日本の建設業が熱帯材合板に依存し続けて いることについて、憂慮の念を表明したことは注目に値します。v 熱帯材合板のほか、中国とインドネシアからの木材製品にも高い違法性リスクがあります。 中 国は世界最大の違法木材輸入国でありvi、現在は日本への最大の木材製品輸出国でもあります。 vii 中国の原木輸入の約 20%はロシアから来ています。 独立した調査により極東ロシアで伐 採されている木材の 80%もが違法であることが判明しています。viii 調査者は、ロシアから中 国に流入する違法木材を追跡し、それが日本向けの構造用木材や家具として大量に加工されて いることを発見しました。 さらにインドネシアでは違法伐採のリスクが続いており、インド ネシアの木材製品の合法性を保証するシステムが不十分なままであることが最近判明しまし たがix、日本のコピー用紙製品の少なくとも四分の一はインドネシア産木材に由来します。 日本市場への高リスク木材製品の流入は、日本政府の現行の違法伐採対策が不十分であること を示しています。日本政府が過去に G8 において違法伐採対策を約束したにも関わらず、グリ ーン購入法では日本の木材製品輸入の約 5%を占めるに過ぎない公共調達でしか、木材の合法 性証明が義務付けられていません。グリーン購入法の政府による実施状況に関する独立調査で、 アンケートに回答した政府機関の四分の一が木材製品の合法性を適切に確認していないとこ とが判明しましたがx、同法には順守を促す罰則がありません。また、この法律では、政府の ために業務を行う企業に、その購入した木材が本当に合法かどうかを確認するデュー・ディリ ジェンスの義務を課していません。デュー・ディリジェンスは、腐敗レベルの高い国や地域か ら木材を調達する際には特に重要です。なぜなら、脆弱なガバナンスは、林業部門における違 法行為、例えば、違法な許可証の発行、公文書の偽造などと結びついているからです。先日エ ルマウ城で行われた G7 サミットで日本を含む先進国の首脳たちは「サプライ・チェーンの透 明性及び説明責任を向上させるため,我々の国で活動し又はそこに本拠を置く企業に対し,[中 略] そのサプライ・チェーンに関するデュー・ディリジェンスの手続を実施するよう奨励す る」ことを合意しました。xi 日本で 2020 年のオリンピック開催の準備が行われている現在は、特に新しい法制化の必要性 が高まっています。日本が持続可能なオリンピック開催の約束を果たすためには、その使用す る木材製品の合法性を保証することは不可欠な第一歩です。オリンピック大会の準備と開催に 際して違法性リスクのある木材製品が使用されないよう保証するため、2020 年東京オリンピ ックまでに日本政府が違法木材の取引を防止する法律を制定し、施行することを期待していま す。グリーン購入法は違法木材製品の使用を禁止するには不十分であり、新国立競技場などの 事業で違法木材が建設に使われるリスクが残っています。 このため、日本市場への違法木材流入阻止の法制化について、日本の国会議員の間で議論が行 われていることは喜ばしいことであり、日本政府に適切な対応を行うよう要請します。私たち の団体は、それぞれ米国と EU の違法伐採対策法の確立と実施に貢献してきました。日本の方 策は、違法木材取引を禁止し、違法伐採のリスクのレベルに見合ったデュー・ディリジェンス 実施の義務と不順守に対する重罰を企業に課す、米国及び EU のこれまでの法制化の取組を補 完する、有効で強制力のあるものであるべきです。 違法木材製品の輸入を防止するためのよ り強力な措置は、日本の林業や地域経済を再活性化し、木材製品の主要な消費国として日本が 国際社会において責任を果たすことにも資するでしょう。 違法木材製品の取引を禁止するための日本政府の取組に関して、ご協力できることがあれば、 情報や支援をご提供させて頂きたいと存じます。 敬具 レインフォレスト・アクション・ネットワーク 環境調査エージェンシー グローバル・ウィットネス 国際環境法センター マーケッツ・フォア・チェインジ フォレスト・トレンズ 自然資源防衛協議会 クライエント・アース アメリカ野生動物連合会 シエラ・クラブ Cc: ファーン ブルーノマンサーファンド 文部科学省 環境省 外務省 国土交通省 i 籾井まり「Trade in Illegal Timber: The Response in Japan」チャタム・ハウス(2014 年 11 月) 2005 年 G8 グレンイーグルズ・サミット G8 環境・開発大臣会 閣僚声明・議長総括 iii グローバル・ウィットネス「衝突する二つの世界」 (2014 年 12 月) ; Hansen 他「High-resolution global maps of 21st-century forest cover change」 、Science 誌(2013 年 11 月) iv 最近のマレーシアからの報道による。例えば、次を参照: btu.weekly、2014 年 11 月 23 日、サ ラワク州議会でのサラワク州首席大臣アデナン・サテム氏のスピーチ: www.bintulu.org/2014/11/23/sarawak-cm-adenan-satem-speech-at-the-state-legislative-asse mbly.php ii v 東京都「持続可能な資源利用に向けた取組方針」(2015 年 3 月) vi Lawson, S. and MacFaul, F. 「Illegal Logging and Related Trade: Indicators of the Global Response」 、チャタム・ハウス(2010 年 7 月) vii 籾井、同上 viii Environmental Investigation Agency、 「門戸開放: ロシア産違法材の輸入を防ぐことのでき ない日本の失敗」 (2014 年 6 月) ix レインフォレスト・アクション・ネットワーク「False Assurances(誤った保証)」 (2015 年 4 月) x 地球・人間環境フォーラムおよび FoE Japan「木材・木材製品の調達にあたっての合法性の確認に 関するアンケート結果まとめ」(2014 年 5 月) xi G7 エルマウ・サミット首脳宣言
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