熱帯医学病院(Fundacao de Medicina Tropical Heitor Vieira

熱帯医学病院(Fundacao de Medicina Tropical Heitor Vieira Dourado –FMT – HVD)
2015 年 6 月 23 日
1.
熱帯医学病院の歴史
1970 年、アマゾナス医科大学教授の 2 人、Heitor Dourado 氏と Carlos Borborema
氏によりアマゾナス州における熱帯病の診断・治療専門の施設として開院された。当時
は Clinica de Doencas Tropicais という名称で病床数は8床であった。
その後、病院は敷地面積、病床数ともに拡大し、現在は病院棟(160 床)、研究・教育
棟を有する一大施設となっている。
当施設の目的は、住民に対する医療アシスタンス、感染症・寄生虫症の予防活動、熱
帯感染症・寄生虫症に関する技術的・科学的知識を普及させ熱帯医学分野の人材育成に
貢献すること、である。
2.
施設概要
(1)外来・病棟
外来は、Ambulatorio と呼ばれる昼間の予約外来(07:00~17:00)の他、Pronto Socorro
と呼ばれる 24 時間対応の救急外来にわかれている。救急外来には、救急外来専用のベ
ッドが多数あり、入院病棟への転病棟待ちの患者が入院している。
現在では、熱帯医学に限定せず、感染症一般を扱っており、肝炎、結核等の治療も行
っている。また、トラベルクリニックもあり、患者はここで黄熱病のワクチン等を受け
ることができる(要事前予約)。
感染症・寄生虫症の他、抗ヘビ毒血清があるため毒ヘビに咬まれた人も州の森林部か
ら搬送されてくる。
院内の施設としては、CT、超音波、X線の検査器械がある。血液透析も可能。
手術室は、小手術室のみであり、中心静脈カテーテル挿入、組織生検、脊椎穿刺、胸腔
ドレナージなどの処置を行う。
集中治療室(ICU)は成人用 7 床、小児用 8 床がある。成人用 ICU の 7 床のうち 2 床
は隔離室となっている。成人用 ICU は満床で人工呼吸器管理中の患者が収容されている。
医療機材は比較的整っている印象。
小児用 ICU は 1 名の入院患者しかおらず、部屋も広々として成人用よりもきれいだと
いう印象を受けた。小児用 ICU では、肺炎や髄膜炎の患者が多いが、後者はワクチン(髄
膜炎菌性髄膜炎ワクチン)の普及により減少中であるとのこと。
病床は ICU も含め、すべてに通し番号がつけられており、160 床ある。一般病棟のう
ち 13 床が隔離病棟となっている。
Melhor em Casa というアマゾナス州の在宅医療推進プログラムのもと、マナウス市内
の患者を対象に、入院ではなく家庭での療養を推進するケアが行われている
(2)研究施設
寄生虫学、微生物学、ウイルス学、昆虫学等の研究室がある。ウイルス学の研究室には
BSL(bio safety leve)3 の実験施設があり、アマゾナス州の感染症指定病院(エボラ出血熱
疑い患者等を収容する病院)となっている。
3.
その他(各論)
(1)マラリア
ブラジルでは三日熱マラリアが圧倒的多数であり、森林部の奥深くでは熱帯熱マラリ
アもみられるが、都市部では三日熱マラリアが主である。マナウスの都市部ではマラリア
の危険は考えなくてよいであろうとのこと。マラリア治療は、三日熱マラリアに対しては
プリマキン、クロロキンを使用。熱帯熱マラリアに関してはメフロキンとアーテメーター
の併用療法を行う。
(2)HIV
保健省の AIDS/HIV 疫学報告書によると、ブラジル全国における HIV 感染率の順位
ではアマゾナス(AM)州はリオグランジ・ド・スル(RS)州につぎ、第 2 位となっている(人
口 10 万人当たりの感染者数は RS が 41.3 で AM が 37.4)。現在、HIV 治療薬は輸入では
なく国内生産されている。
(3)結核
HIV 感染の有無にかかわらず、結核感染者数も RS と AM が多いため、マラリアと
結核に関する研究が当施設でとくに積極的に行われている。2014 年には HEPA フィルタ
ー(High Efficiency Particulate Air Filter)が設置された結核病棟が新設され(13 床)、米
国 NIH(National Institute of Heath)の協力により、新研究が始まる予定である。
(4)リーシュマニア症
保健省発表の疫学データによると、アマゾナス州では、皮膚リーシュマニア症患者は毎
年、千~2 千人の患者が発生しているのに対して、内臓リーシュマニア症患者はゼロであ
る(隣接するパラ-州では内臓リーシュマニア症が毎年、数百人発生している)。
(5)毒ヘビ咬症
1日に1人程度の頻度で、毒ヘビに咬まれた人が来院する(1年で約 300 人の患者数)。
患者は必ず入院させ抗毒素血清のほか、抗生剤も投与して経過観察を行う。予後は体内に
入った毒の量とヘビの種類によるが、死亡することは珍しい。筋肉の壊死によりミオグロ
ビン血症から腎不全を引き起こすが、腎不全にならなければまず救命可能といえる。患者
の治療と転帰につきデータをとって研究が行われている。どの抗生剤が効果があるかなど
も調べている。分析の対象は受傷後6時間以内に来院し治療を開始した者が対象。治療開
始が早いほど、結果はよい。