情報デザイン

授業概要
グラフィック・シンボル
 情報アーキテクチャ
 情報の意味づけ

情報デザイン
2015年度 秋学期
堀 雅洋
2
講義資料

教科書は使用しない


成績評価の方法

資料の提示による

授業終了後,資料(PDFファイル)を以下の
ページで公開する

定期試験(筆記試験)と平常成績による
総合評価

定期試験: 80%
レポート等: 20%
インフォメーションシステムの講義連絡を参照
http://www.res.kutc.kansai-u.ac.jp/~horim/course/InfoDes.html
3
4
絵で表された⾔葉
グラフィック・シンボル

絵柄によって意味を伝える





案内用図記号
図と地の視認関係
レイアウトの基本原則
サイン・デザイン

見ただけでその意味が伝わる
これらの「しるし」は表現手段としてどのような
特性をもつのか?
5
6
サイン(sign)

シグナルとシンボル
意味を伝えるためのしるし



外界でのさまざまな状況を伝える
その情報は受け手によって知覚・解釈される
シグナル・サイン



人間に限らず生物が外界から受け取るもの
(五感で感知できるもの)全てを含む





視覚:
聴覚:
触覚:
嗅覚:
味覚:

雲行き,足跡,赤信号
鳴声,草木が揺れる音,クラクション
刃の鋭さ,点字
花の香,都市ガス
苦味,甘味
【注】サインには「署名」(signature)の意味もあるが,「しるし」(sign)とは区別される
シンボル・サイン


7
自然環境に存在・生起するもの(自然発生的)
生物全般にあてはまるサイン
人間がつくり出したもの(人為的,象徴的)
経験を共有化するためのサイン
8
ピクトグラム(絵文字)
グラフィック・シンボル(図記号)

図化されたシンボル・サイン



具象記号
抽象記号
グラフィック・シンボル
(Graphic Symbol)は
国際標準化機構
(ISO)の公式用語

意味するものの形状を使って,その意味概念
を理解させる記号

具象記号によって図化されたシンボル・サイン

事前の学習によるのではなく,生活の実践によっ
て共有されているイメージから,容易に理解でき
ることが求められる
「図記号」は
日本工業規格
(JIS)の公式用語
文字・数字記号
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ピクトグラムは
グラフィック・シンボルの一種


グラフィック・シンボルの
表現⼒を高める
異なる種類の記号を組み合わせる
ピクトグラムの本質的な特性

10
具象記号による象徴作用
(描かれたものを実物とみなす)
具象記号
具象記号によらない図記号の例

レストランの等級を表す星印(★★★)
抽象記号
 夜空の星を表しているわけではない


四則演算の記号(+,-,×,÷)
抽象記号
文字・数字記号
文字・数字記号
 意味するものの形を表していない

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サインの種類: まとめ
<問1-1>
サイン
(意味を伝えるしるし)
シグナル・サイン
(自然発生的)

以下の各図記号で用いられている記号の種
類に○印を付けなさい
シンボル・サイン
(人為的,象徴的)
記号の
種類
グラフィック・シンボル
(図記号)
具象記号による
グラフィック・シンボル
⇒ 「ピクトグラム」
具象
抽象
具象記号
抽象記号
文字・数字
文字・数字記号
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⾔葉の壁を越える

国際道路標識
ヨーロッパでは多くの国が地続き


自動車や列車で1時間移動すれば,国境を越え
ることも少なくない
1909年にヨーロッパ9ヵ国が参加して制定

国際的な合意に基づく初めての警告サイン
交差点

言葉の壁を越えて共通の意味を伝える手段
が必要


二重カーブ
凸凹道
踏切あり
現在の標識も当初のデザインを反映
フランス
(1949年制定)
道路や鉄道に関係する図記号(標識)の共通化
が早くから求められていた
日本
15
1950年
1950年
1967年
1950~86年 1986年~
16
道路標識から国際イベント

東京オリンピック(1964年)
道路標識



法律で形と意味を定め,その指示通り
行動するように義務づけることができる
日本では1963年まで道路標識に
文字表記が用いられていた

案内・誘導を必要とする競技種目と関連施設のサイン
をピクトグラムとして制作(約60種類)



例.「右折禁止」 「右折及直進禁止」
(1950年制定,1963年廃止)

国際イベントにおけるサイン



法律による強制が期待できない
事前学習を期待できない
来日する外国人への配慮
体系的にデザインされたピクトグラムが,国際イベントで
使用されたのは東京オリンピックが初めて
当時は「絵文字」「絵ことば」「シルエット」等と呼ばれた
(「ピクトグラム」という言葉はなかった)
アート・ディレクターを務めた勝見勝(1909-1983)が
ピクトグラムの使用を提案
家紋の例


日本古来の家紋にヒントを得た
制作者に著作権の放棄を求めた
梅
日の丸扇
玉垣
17
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東京オリンピックにおける
ピクトグラム(1964年)

競技種目
サッカー

案内所
(競技ルールは世界共通)
陸上
関連施設
<問1-2>
重量上げ

レスリング
記号の
種類
体操
意味
(生活習慣は世界共通ではない)
救急
トイレ
シャワー
更衣室
以下のピクトグラムの意味を推測して答えなさい
洗濯場
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20
男⼥のシルエットによる
「トイレ」のサイン
ピクトグラムの⽇常的な利⽤に向けて

東京オリンピック
(1964年)

成田空港
(1972年)


当時は何を意味するのか理解されなかった
大阪万国博覧会(1970年)を契機に普及し始めた



札幌オリンピック
(1972年)
日本で最初に使用されたのは東京オリンピック(1964年)


大阪万国博覧会
(1970年)
国際イベントで繰り返し使用されることで,ピクト
グラムの有用性が理解されるようになった
1960年代以降,様々な場所で日常的に有用な
ピクトグラムの策定が試みられた

特に,地方在住者には理解されなかった
「男子便所」 「女子便所」の貼紙が後から掲示された
国際イベントでは,ピクトグラムの使用期間と場所が
限定される
交通機関のターミナル(駅,空港),各種施設案内,
事務機器の操作,繊維製品・梱包製品の取り扱い,
車の運転操作,安全・防災 など
札幌オリンピック(1972年)では混乱なく理解された
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いろいろな図記号(1)
22
いろいろな図記号(2)
ロッカー
(Baggage Locker)
遺失物取扱所
(Lost and Found)
レンタカー
(Car Rental)
案内所
(Information)
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オリンピックにおける
競技種目のピクトグラム
いろいろな図記号: 出典
Rudolf Modley 『ピクトグラフィ ハンドブック』 産調出版 2006
各図記号の制作機関/制作者
サッカー
O‘72
ドイツ航空当局, M. Karmpen and H.
W. Kapitzki
1972年ミュンヘンオリンピック大会, デザイ
ンディレクター: Otl Aicher Gerhard Joksch,
Rolf Muller, and Elena Winschermann
Pg
ATA
航空輸送協会, Arnold Thompson
Associates
ピクトグラフィックス, Paul Arthur and
Associates
SP
BAA
英国航空当局, Kinneir, Calvert, and
Tuhill
ニューヨーク・ニュージャージー港湾当局,
航空局のデザインスタッフ: Owen Scott
S/TA
D/FW
ダラス・フォートワース, Henry
Dreyfuss Associates
シアトル・タコマ空港, Donald J. Gerands
and Richardson Associates
TA
東京国際空港, 村越愛策
DOT’74
1974年運輸省, グラフィックアーツ
協会, Cook and Shanoski Associates
TC
カナダ輸送機空港, 航空輸送省のデザインス
タッフ
ADCA
オーストリア民間航空局, Kinneir,
Calvert, and Associates
ADV
IATA
国際航空輸送協会, デザインスタッフ
UIC
国際鉄道連盟, デザインスタッフ
ICAO
国際民間航空機構, デザインスタッフ
X‘67
KFAI
スウェーデン, Ciass Tortie
1967年モントリオール世界博覧会, Paul
Arthur and Associates
NRR
オランダ鉄道, デザインスタッフ
X‘70
1970年大阪世界博覧会, 栄久庵憲司, GK
Industrial Institute, 磯崎新, 福田繁雄
共通のシンボル・システムを世界各国に普及させることは
非常に難しい
ミュンヘン
(1972年)
Olympic Games Museum http://olympic-museum.de/index.html


東京オリンピック
(1964年)
メキシコオリンピック
(1968年)
大阪万国博覧会
(1970年)


ミュンヘンオリンピック
(1972年)
札幌冬季オリンピック
(1972年)
ヨーロッパ
鉄道や道路の国際交流が中心

洗練された説得力のあるシンボル・システムを生み出していく
該当する国際行事の開催期間中という暫定条件が,この課題
に取り組むことを容易にした
国際連合による標準化
アメリカ


道路標識には文字主体の標識が多かった
第二次世界大戦後の航空界をリードしてきた


ボーイングやダグラスによる航空機の売り込み
アメリカ運輸省(USDOT)の政略

27
26
ピクトグラム普及への国際的な動き
(1970年代)
例.国連の国際交通標識の普及 ⇒ 国際鉄道連盟(UIC)や
国際民間航空機構(ICAO)等による反発
世界各地で開催される国際イベントで,国際シンボル・シ
ステムを引き継ぐ(リレー方式)

体操
メキシコ
(1968年)
国際シンボルのリレー方式

レスリング
東京
(1964年)
[勝見勝 1971]

重量上げ
北京
(2008年)
25

陸上
国連とも協調して案内用図記号の策定に動いた
28
アメリカの34の提案
アメリカを中心とした標準化の動き

「シンボル・サイン国際統一化への34の提案」
(1974年)


1974年 34種類 ⇒ 1981年 50種類
米国運輸省(USDOT)が全米のデザイナー組織(米
国グラフィックアーツ協会 AIGA)の協力を得て作成
国際標準化機構(ISO)とは別に,案内用図記号の標
準化を進めた



著作権フリーとしたことで普及が進んだ
デザインのレベルが高く,国際的にも大きな影響を与
えた

日本でも,東京の帝都高速交通営団(現: 東京メトロ)が
「禁煙」のピクトグラムを採用した
http://125.pratt.edu/gallery/artist/cook
29
米国による国際統一化への提案:
結論(1974年)

図記号の有効性はきわめて限定されている



トータルなサイン計画に組み込まれなければ,
図記号は有効に機能しない


具体物によって表現できるものには有効
プロセスや行為は適切に表現することが難しい
図記号単独で使用すると混乱を招く恐れがある
過度の図記号は不足より有害

重要なメッセージを,あまり重要でないものと一緒に
表示すると伝達力が弱まる
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