レジュメ - 測地学講座

課題演習DC測地
2015年11月16日
重力データ解析(3回目)
潮汐計算
測地学研究室
風間卓仁
今日の流れ
導入: 潮汐について
潮汐が生じる原因
潮汐に伴う重力変化とその補正法
演習: 潮汐変化の予測計算
WindowsのUnix系ソフト Cygwin
Unix系コマンド (gfortran, gnuplot, etc)
レポート課題に関する説明
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トカラ列島・中之島の潮位変化
気象庁 > 防災情報 > 潮位観測情報
2
潮汐 (固体地球潮汐) とは?
知恵蔵2015: 地球と他の天体
が接近・離反する時、相互の
引力の働きで、引き起こされ
る固体地球の変形。地球内部
は、近似的には弾性体なので
外力で変形し、それがジオイ
ド面の変化(地面の傾斜や鉛直
線方向の変化)となって表れる。
右図は波数1の潮汐変形。
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半日周の分潮が生じる理由
潮汐は異なる周期の波の重ね合
わせ  1個1個を分潮という
(月による起潮力) = (月の引
力) + (月との公転に伴う遠心
力) を考えると、波数が2に
しかも地球は1日に約1回自転
しているので、ある地点では起
潮力の極大 (満潮) と極小
(干潮) を2回経験する
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潮汐に伴う重力変化
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潮汐の効果をポテンシャルを使って議論すると、
潮汐変動に伴う重力変化は以下のように書ける
Δ𝑔𝐸𝑎𝑟𝑡ℎ
𝑛+1
2
𝑛𝑉𝑛
∝ 1−
𝑘𝑛 + ℎ𝑛 ∙
≡ 𝛿𝑛 ∙ Δ𝑔𝑟𝑖𝑔𝑖𝑑,𝑛
𝑛
𝑛
𝑎
n は潮汐ポテンシャル V の展開次数 (※分潮の
次数とは別物)、Δgrigid,n は地球が剛体の場合の
重力変化、δn は地球が弾性体の場合の重力増
大率 (=δファクター)
潮汐ポテンシャル V の主要項 n=2 を考えると、
δ2 ~ 1.16 となる
実際に地球で起きる潮汐変形
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天体由来の起潮力に伴う地球の変形 (固体地球
潮汐変形) は非常に正確に計算できる
しかし、地球は弾性的かつ粘弾性的で、構造の
不均質も存在する  δファクターは場所に
よってわずかに異なり、天体公転との時間差
(位相ずれ) も生じる
特に、海の潮位変化に伴う固体地球の副次的な
荷重変形を 海洋潮汐荷重変形 という
潮汐補正:超伝導重力計の場合
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重力変化 (つまり潮汐変動) を連続的に観測可
各分潮の周期は既知なので、各分潮の振幅と位
相ずれをfitting等により求めればよい
有名なソフトウェアが BAYTAP (天文台水沢)
潮汐補正:絶対重力計の場合
器械上の制約から連続観測しづらい
固体潮汐 (~百 μGal) は理論計算によって補正
海洋潮汐 (~数 μGal) は海洋潮汐モデルを用い
て補正: 有名なのがNAO.99b (天文台水沢)
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潮汐補正:相対重力計の場合
9
主に移動観測に用いるため、連続観測や海洋潮
汐モデル計算もしづらい
固体潮汐+海洋潮汐の重力変化の経験値から、
δ~1.2, 位相ずれ0を仮定して固体潮汐予測ソ
フトで計算: 有名なのが tide4n (天文台水沢)
今日やること
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潮汐予測プログラム tide4n (国立天文台水沢・
田村氏) で潮汐重力変化を計算する
WindowsのUnix系ソフト Cygwin を使ってコ
ンパイル (gfortranコマンド)
白浜の潮汐重力変化を計算  風間の計算結果
と合うことを確認 (gnuplotコマンド)
設定ファイルを変更して京大の潮汐重力変化を
計算  dg/dz測定データに潮汐補正を施すと
結果がどうなるかを確認
Cygwinの使い方 (1)
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Cygwinアイコンをダブルクリック  黒いター
ミナル画面が出てくる
pwd を入力  /home/geodesy がホームディ
レクトリであることを確認
ただしこのディレクトリは、Windows上では
C:¥cygwin¥home¥geodesy になる(※デス
クトップにショートカットがあります)
Cygwinからデスクトップを見たいときは、cd
/cygdrive/c/Users/geodesy/Desktop
Cygwinの使い方 (2)
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Cygwin上のホームディレクトリに DC2015 と
いうフォルダを作る
cd
mkdir DC2015
ls
Windows上でもこのフォルダを確認する
DC2015の下に gravity というフォルダを作る
cd DC2015
mkdir gravity
Cygwinの使い方 (3)
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いま使っている黒いターミナル画面だと、
Emacs (エディタ) や gnuplot (グラフ表示)
の別ウィンドウが開かない
なので、別ウィンドウを開けられるターミナル
を startxwin & で呼び出す
白いターミナル画面が現れるはず
tide4n のダウンロード
ブラウザ上で以下にアクセス
http://goo.gl/M0xpD8
3つのファイルをダウンロードし、先ほど作っ
た gravity フォルダに入れる
3つのファイルの中身を確認
Windows: メモ帳、ワードパッド、TeraPad
Cygwin: emacs, vi, cat, more, less
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tide4n.f
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Fortran 77で書かれた潮汐予測プログラム
サブルーチン TIDE4N は田村さん、メイン部
分とサブルーチン cal2doy は風間によって作
成されたもの
標準入力から設定パラメータを読み込む
サブルーチンの中で SORTED.DAT を読み込む
設定されたパラメータから出力ファイル名
(YYYY DOY .txt) を自動生成し、そのファイ
ルに予測潮汐を出力する
Shirahama.dat
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南紀白浜の潮汐変化を計算するために、必要な
パラメータを並べたファイル
2~26行目: 各分潮のファクター(=1.2)と位相(=0)
29~46行目: 潮汐計算のためのパラメータ
サブルーチン TIDE4N の冒頭部分に各パラメータ
の意味が書いてある
異なる場所や時刻における潮汐変化を予測した
ければ、AEAST~NUM の項目を書き換えた上
で、新しいファイル (例: kyoto.dat) を作る
SORTED.DAT
サブルーチン TIDE4N で
読み込まれる分潮表
この分潮表では1200個の
分潮を網羅している
Shirahama.dat では1200
個の分潮を25の周波数帯
域に分けてパラメータを設
定している(長周期潮汐は
ファクター値 0 を仮定)
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とりあえず動かしてみる
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コンパイル: gfortran tide4n.f -o tide4n.exe
普通のUnixでは tide4n.out だが、Windowsでは
実行形式ファイルは *.exe なのでこれに合わせる
実行: ./tide4n.exe < Shirahama.dat
2015285.txt が作られるので見てみる
「メモ帳」ソフトで見ると改行がおかしくなる
WindowsとUnixで改行形式が異なるため
unix2dos 2015285.txt とすると改行形式を替える
ことができる (逆コマンド: dos2unix)
グラフを描いてみる
gnuplot
plot ’2015285.txt’ using 4:5 with line
set grid; set xtics 3
set xlabel ’Hour in 2015/10/12 (JST)’
set ylabel ’Gravity [microGal]’
set title ’Tidal Gravity at Shirahama’
replot
以前渡したグラフと同じになるか確認する
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グラフを保存する
方法1: キャプチャ画像 (*.png) として保存
グラフの画面で Alt + PrintScreen
「ペイント」ソフトで貼り付け
適当なファイル名 + .png で保存
方法2: ベクトルデータ (*.eps) で保存
set terminal postscript enhanced eps color
set output ’Shirahama.eps’
replot
exit
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課題(1)
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2015年11月9日の京都大学における潮汐重力
変化を計算するために、新たな設定ファイル
(例: Kyoto.dat) を作成する
tide4n.exe で上記のファイルを読み込み、
2015年11月9日の潮汐重力変化を求めた上で
この計算結果を描画する
この潮汐データを用いて、前回演習時に取得し
た相対重力データに対して潮汐補正を施し、各
階間のdg/dz値を再計算する
注意点
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京都大学理学部1号館の座標は地図情報などか
ら取得すべし
tide4n で得られる潮汐変化は物理量であり、
単位は μGal である。単位 mGal の重力観測
データを潮汐補正するには、tide4n の結果を
1/1000 にして差し引けばよい。
潮汐重力変化のグラフが描けた時点で周りの人
と比べましょう。座標値がわずかに違っていて
も結果には大差がないはず。
課題(2)
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tide4n.f のメインプログラムあるいは設定ファ
イルのパラメータを書き換えて、任意の場所・
年月日における各分潮 (Q1からM4までの短周
期23分潮) の潮汐変動を出力させる
各分潮の振幅値 (peak to peak) を計算し、振
幅値が大きい分潮ベスト4を探す
上記4つの分潮の角周波数 (deg/hour) および
周期 (hour) を示した上で、これらの分潮が発
生する要因を調べる
ヒント
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例えば Q1 分潮の重力変化だけを求めたい場合、
他の分潮のファクター値を 0.0 にすればよい
東京湾の潮位変化に潮汐解析を適用し、各分潮
の振幅値を求めた結果は以下にある(各分潮の
角周波数も書いてある!)
http://goo.gl/WYc6Gn
長周期潮汐のうち、例えばMm分潮(周期27.32
日)は月の公転によって、 Sa分潮(周期365.24
日)は地球の公転によって生じる分潮である
提出等について
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課題(1): 潮汐重力変化の描画結果、dg/dzの再
計算結果、およびこれに付随する文章(1つの
ワードファイルとして作成してもOK)
課題(2): 自分のやったことや計算結果につい
て、不足のないように自由にレポート
提出先: 風間のメールアドレスに添付
提出期限: 2016年1月17日 (DC最終日の前日)
参考文献も忘れずに書きましょう!
スライド作成時に参考にした情報
26
T. Herring (2009), Treatise on Geophysics
(Volume 3): Geodesy. http://goo.gl/inaNca
測地学テキスト http://goo.gl/YPgflX
2-3-3 潮汐
2-3-3-1 分潮
2-3-3-2 ラブ数, 志田数
4-7 起潮力ポテンシャル
海洋潮汐 (1~4)
遠心力に関する記事 http://goo.gl/UEbew6