平成28年度 税制改正・予算要望

平成28年度 住宅リフォーム関連税制改正要望
住宅関連予算要望
平成27年8月
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会
平成27年8月25日
国土交通省住宅局長
由木 文彦 様
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会
会 長 吉田 忠裕
平成28年度住宅リフォームに関する税制改正・予算に関する要望
住宅リフォーム市場は、平成26 年 4 月に実施された消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動か
らの回復が進まず、依然厳しい状況にある。
一方、新築住宅市場は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要反動により依然厳しい状況にあるだ
けでなく、そもそも少子化による人口減少、空き家の増加、品確法施行以降の住宅性能向上による耐
久性の向上、長寿命化などによって社会構造的に新築住宅需要は減少しており、この傾向は変わら
ないと考えられる。その結果、性能の低い住宅の建て替えは進まず、社会資産である住宅全体の性
能の底上げは、今後は既存住宅のリフォームが主流となって実現されていくと考えられる。
そのような状況の中、昨年度の国の税制大綱においては、住宅リフォームについて「贈与税の非課
税枠の拡充・延長」、「住宅ローン減税の適用期間の延長」、「買取再販で扱われる住宅の取得に係る
非課税措置の創設」が盛り込まれた他、平成26年度補正予算において「省エネ住宅ポイント制度」の
創設のための予算が計上された。
しかしながら、住宅の長寿命化が求められているなか、リフォームを必要とする住宅ストックのさらな
る増加に対応して、住宅リフォームによって住宅の質の向上をより積極的に図っていく必要がある。
こうしたことから、減税制度を含む様々な政策によって既存住宅の質の向上を促進するとともに、消
費税の再引き上げに対する緩和及び景気刺激策として、住宅投資が安定的に行われるよう更なる税
制や予算措置が必要である。
リフォームによる耐震化・バリアフリー化・省エネ化といった住宅の質の向上を進めるためには、減
税制度を含む公的支援が不可欠であり、特に住宅リフォームの場合は施主の50%以上が 60 歳以上の
高齢者という、新築とは異なる市場に合った補助金や給付金、ポイント制度などの政策を行うことが必
要である。
こうした観点から、当協議会では、住宅リフォーム市場の更なる環境整備と需要喚起のため、平成
28年度住宅リフォーム関連税制改正・住宅関連予算に関し、次のことを要望する。
1
Ⅰ.リフォーム税制の簡素化など
当協議会で毎年実施している「住宅リフォーム実例調査」によれば、リフォーム減税制度の利用
率は相変わらず低いといった結果になっている。これは、手続きが複雑で分かりにくいことなどが
主な理由となっている。
1.制度の手続きの簡素化など
リフォーム減税制度は、工事証明書の発行や申請書類の記載が多岐にわたるなど申請方法
が複雑なことにより使いにくい制度になっている。
(1)減税専用ホームページの創設
申請書類の記入例等を掲載したウェブサイトから直接、申請書類の作成が可能になるような
住宅リフォーム減税専用のホームページの制作への支援をお願いしたい。
(2)リフォーム工事証明書発行者枠の拡大
現在は、工事証明書の発行者は事務所登録をしている建築士となっているが、事務所登録
をしていない建築士でも発行が可能となるよう枠の拡大をお願いしたい。
Ⅱ.リフォーム減税制度について
1.固定資産税の減額措置の延長・拡充
固定資産税の減額措置について、性能向上リフォームの定着と、築年数の浅い物件のリフォ
ームについても促進するため、減額措置の適用期間の延長と、対象の拡充を要望する。
(要望内容)
現
行
要
望
【適用期間】
【適用期間】
耐震:平成27年12月31日まで
耐震:平成31年3月31日まで
バリアフリー:平成28年3月31日まで
バリアフリー:平成31年3月31日まで
省エネ:平成28年3月31日まで
省エネ:平成31年3月31日まで
【対象】
【対象】
バリアフリー:平成19年1月1日以前から所在する住宅
左記要件の撤廃
省エネ:平成20年1月1日以前から所在する住宅
2
2.耐震リフォーム減税の対象住宅の要件の撤廃
耐震リフォームによる所得税及び固定資産税の減税の住宅等の要件が新耐震基準以前に
建てられた住宅となっているが、建築年の要件を撤廃し、自ら居住する住宅で現行の耐震基
準に適合させる工事全てを対象とするよう要望する。
(要望内容)
現
行
要
昭和56年5月31日以前に建築された住宅
望
撤 廃
3.省エネリフォーム対象工事の見直し
(1)省エネリフォームの要件緩和措置の延長
省エネリフォームのローン型減税の対象工事の「改修工事後の住宅全体の省エネ性能
が現状から一段階相当以上上がること(ワンランクアップ)
」という要件は、市場的に
はかなり厳しい要件であり、省エネリフォームの芽を摘みかねないため、現行の要件
緩和措置の適用期間の延長を要望する。
(要望内容)
現
行
要
適用期間:平成27年12月31日
望
適用期間:平成30年12月31日
(2)対象工事の「全ての居室の窓全部の改修工事」の緩和
居住人数の減少や改修費用の負担大、またヒートショック防止のためにも、省エネリフォーム
減税制度の対象工事の範囲を「全ての居室の窓全部の改修工事」から「主たる居室の窓」や
「居室以外の浴室や洗面所の窓」の部分断熱改修への緩和を要望する。
(3)対象工事への高機能設備の取替工事の追加
節水型便器や高断熱浴槽など省エネ効果の高い高機能設備への取替工事を、省エネリ
フォームの減税(投資型)の対象工事への追加を要望する。
4.バリアフリーリフォーム減税の工事対象者要件の撤廃
バリアフリーリフォーム工事は、高齢者や障がい者などだけのものではなく、転倒による骨折
の予防や将来の在宅介護に対する備えであり、「できるだけ多くの人が利用可能であるような
デザインにすること」というユニバーサルデザインに通じる考え方を住宅リフォームでも取り入
れるためであることから、工事対象者の要件を撤廃することを要望する。
3
(要望内容)
現
行
要
望
対象者の要件:①50歳以上の者
②要介護又は要支援の認定を受けている者
③障がい者
撤廃
④65歳以上の親族又は②もしくは③に該当する親族のいずれかと
同居している者
5.非同居親族が親の住宅をリフォームした場合の減税制度の要件拡充
親の住宅を子供がリフォームする場合に、現行の減税制度では親との同居が要件となってい
るが、同居していない親の住宅をその子供がリフォームをした場合でも、減税制度が適用とな
るよう要件の拡充を要望する。
(要望内容)
現
行
要
リフォームした住宅への親との同居が要件
望
親と同居しなくても減税対象
6.耐久性の向上に必要なメンテナンス工事の追加
住宅の耐久性向上には「メンテナンスをする」ことが必須であるので、屋根・外壁の塗装工事
について減税対象の工事に追加することを要望する。
7.買取再販における登録免許税の軽減措置の実施期間の延長
買取再販制度による登録免許税の軽減措置は、良質な中古住宅の供給といった面での
有意義な制度なので、現行で平成28年3月31日となっている適用期間の延長を要
望する。
(要望内容)
現
行
要
適用期間:平成28年3月31日まで
望
適用期間:平成31年3月31日まで
4
Ⅲ.住宅関連予算要望について
1.空き家の利活用についての特例措置の創設
空き家の利活用は国の重要な施策の一つであり、既存住宅の質の向上の面からも、空き家
をセカンドハウスやサービス付高齢者向け住宅、シェアハウス等にリフォームした場合の補助
制度の創設を要望する。
2.マンションの大規模修繕促進のための補助制度
マンション共用部外壁塗装等の大規模修繕においては、施主が管理組合で支払いも修繕積
立金から管理組合が行う一方、住宅ローン減税制度を利用する場合は、申請は区分所有者
が個々に行う必要があることから、手続きが非常に煩雑でほとんど使われていない。大規模
修繕が必要なマンションが増えていることから、これらの促進のため、修繕工事費への補助
金の適用や、工事費の借入により実施した修繕については、借入金の利子補給の対象とす
ることを要望する。
3.既存住宅の性能向上リフォームと既存住宅流通を促進するための補
助制度
リフォームにより住宅ストックの品質・性能を高め、既存住宅流通により循環利用されるストック
型の住宅市場を形成することが、今後の住宅市場のあり方として、官民一体となって進められ
ている。そこで、性能向上リフォームをさらに促進するために、以下の要望をする。
(1)省エネ住宅ポイント制度実施期間の延長
平成26年度の補正予算において「省エネ住宅ポイント制度」が創設されたが、性能向上リフ
ォームを促進するために平成28年度以降も継続して実施することを要望する。
(2)省エネ住宅ポイント制度内容の拡充(性能向上リフォームポイントへの転換)
性能向上リフォームを促進するために、住宅ポイント制度を省エネリフォームだけでなく、耐
震、バリアフリー及び耐久性向上といった省エネ以外の性能向上リフォームも対象工事とした
内容に拡充することを要望する。
(3)インスペクションを実施した住宅への補助制度の導入
既存住宅の質の向上のために、「瑕疵保険の事前検査」(インスペクション)を行った場合、そ
の検査費用の一部もしくは全部を補助する他、補修すべき箇所の改修に要した費用を補助
する制度の導入を要望する。
(4)不動産業界、金融業界への制度活用促進
既存住宅流通促進のためには、仲介者である不動産業界、及び住宅ローンを提供する金融
業界もリフォームに関する補助制度についての周知と理解が重要であることから、そのため
の支援をお願いしたい。
5
(5)地域におけるリフォーム推進事業の促進
住宅リフォームは、地場のリフォーム事業者により実施されることがほとんどであることから、地
域ごとでのリフォーム関連事業者の連携と、消費者支援体制を強化することが、住宅性能、さ
らには消費者の住生活環境の向上には不可欠である。
そこで、今後も地域住宅リフォーム推進事業を促進し、継続的に体制を強化していくための
支援をお願いしたい。
Ⅳ.消費税引き上げ後の落ち込み対策について
平成26年4月の消費税率の引上げにより、住宅市場はリフォームも中規模から大規模を中心
に駆け込みとそれに対する反動が大きくあった。(グラフ1参照)
当協議会が会員対象に行った調査でも、消費税引き上げの影響があったとの回答が過半を
占めた(グラフ2参照)。
平成29年4月に消費税率を10%に再引き上げした場合は、更なる落ち込みでリフォーム業
界は需要減退が予想されるため、住宅リフォームについても以下のような対策を要望する。
1.リフォーム給付金制度の創設
住宅リフォームの施主は 60 歳以上が 50%以上と高齢者がボリュームゾーンであるが、それは
つまり年金生活者など所得が比較的少なく、よって所得税納税額が少なく、またローンが組
みにくいこのゾーンがリフォーム市場の主たる消費者であることを示している。このゾーンは、
消費税増税の影響が大きく、一方で所得税減税ではメリットが出にくい。新築住宅に適用した
給付金制度は、低所得者や高齢者への救済策であるが、リフォームについても、まさにこの
ゾーンへの救済、かつ消費税引き上げ後の落ち込み対策として、リフォーム特有の給付金制
度の創設を要望する。
6
グラフ 1 受注件数、受注高の年度別推移
出典:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」(平成 26 年度上半期受注分)
グラフ 2 消費税率引き上げの影響
あまり影響はなかった
影響があった
H26(n=519)
0%
26.0
67.1
20%
わからない
40%
60%
80%
不明
4.2
2.7
100%
出典:(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム実例調査」(平成 26 年度版)※
※住宅リフォーム実例調査:(一社)住宅リフォーム推進協議会が、リフォーム事業者を主体とした会員団体を通じて、
平成15年度から毎年リフォーム事業者に、平成25年9月~平成26年8月に施工完了
した物件を対象に、アンケート方式で実施している調査
7