平成28年度 保健所行政の施策及び予算に関する要望書

全国
保健所長会
だより
平成
年度
保健所行政の施策及び
予算に関する要望書
久保 秀一
千葉県印旛健康福祉センター長(印旛保健所長)
(全国保健所長会渉外担当常務理事)
果たせば災害による死傷者が減る
して与えられています。保健所が
エボラ出血熱を封じ込めるために
必要な課題を要望としています。
地域医療連携
健康危機管理とは別に、保健医
療分野では、高齢化が進む中、医
療需要の急激な増加と財政的な制
約の相反する課題を抱えていま
す。地域医療構想は、地域の医療
予算に関する要望書」
を提出してい
るために「 保 健 所 行 政の施 策 及 び
労働省に公衆衛生対策をより進め
全国保健所長会は、毎年、厚生
難している人の情報把握に時間が
が被災したことから、避難所に避
いては、自治 体・保健 所そのもの
としています。東日本大震災にお
かを議論し、まとめたものを要望
い保健所がどう応援すればいいの
染症で致死率が高く、世界で大規
す。特にエボラ出血熱は、一類感
に起こるようになってきていま
出血熱と数年に1回の割合で確実
ルエンザ、そして昨年度のエボラ
題は、SARS以降、新型インフ
国際感染症の国内への影響の問
【重点要望】
いう形で示しています。
う機能をもてばいいのかを要望と
るか、そのために保健所がどうい
場に保健所が具体的にどう関与す
をどう進めるか、その話し合いの
ます。地域の医療機関の相互連携
資源の効率的な利用をめざしてい
ます。今年6月、厚生労働省に平
かかり、被災地域外から応援に入っ
模感染を起こすこと、それに伴い、
1.災害医療
国際感染症対策
年 度の要 望 書 を 提 出しまし
た医療救護チームの適正配置が迅
日本国内の対策の必要性が示され
のか、それを全国の被災していな
た。提出に先立って、日本医師会
速に行えませんでした。避難所に
たと言えます。
医療、国際感染症対策、地域医療
今年度は重点要望として、災害
動けばいいのかという課題に答え
生の実践部隊である保健所がどう
最大限効果的に行うために公衆衛
国の都道府県の援助を受けながら
人とその周りのごくわずかな人だ
熱感染者が入国しても、感染者本
保健所は、もし国内にエボラ出血
は 日 本 国 内 へ の 流 入 を 阻 止 し て、
エボラ出血熱に対して、検疫所
の行政機関・保健所が被害を受け
しています。DHEATは被災地
を補佐するDHEAT創設を要望
て、保健医療活動の指揮調整機能
地震等の災害が起きた場合に備え
成
会長にも説明し、医療関係者の理
避難している人々の健康管理を全
連携の3つを取り上げています。
るため「災害時健康 危 機 管理支援
る中、被災していない地域の災害
災害医療については、東日本大
災害医療
けを感染者と限定して、エボラ出
に備えた公衆衛生の専門家チーム
チーム
( Disaster Health Emergency
血熱が国内で大規模感染を起こさ
震災における反省を踏まえて、保
:DHEAT)
」創
Assistance Team
設を要望しています。
が被災地域に入り、現地の行政・
重点要望の第一として、大規模
解に努めています。
はじめに
28
ないよう封じ込めることが役割と
健所がどういう役割を地域の中で
公衆衛生情報 2015.7
33
28
況の 把 握 、 避 難 所 の 被 災 者 の 健 康
保健 所 と と も に 医 療 機 関 の 被 害 状
定感染症指定医療機関と第一種感
しています。エボラ出血熱は、特
査体制について具体的な要望を出
ザ対策も要望しています。また、個
型インフルエンザと鳥インフルエン
このほか、国際感染症として、新
分 類 す る こ と を め ざ していま す。
回復 期 機 能、慢 性期 機 能の4つに
を 高 度 急 性 期 機 能、急 性 期 機 能、
次医療圏ごとに、地域の医療病床
状 態・ 衛 生 状 態 等 の 把 握 を し て、
染症指定医療機関で治療すること
討することを要望しています。
必要 な 人 的 ・ 物 的 資 源 の 適 正 配 置
が 全 国 的 な 課 題 と なってい ま す。
これを地域で進めるのが「地域医療
〝衛生研究所の法制化〟を要望して
その具 体 像を示すこと、国として
別の感染症対策ではなく、システム
います。全国保健 所長 会との連携
地方自治体に示すマニュアルあるい
になっていますが、そういう感染
国立国際医療研究センターが日
の下、全保健 所の体 制 整備や訓練
は研修 等の技術援助を要望してい
をめ ざ す も の で す 。 現 在 、 全 国 の
本の感染症のナショナルセンター
の状況を的確に把握したう えで国
ます。これは、地域医 療 構 想だけ
構想調整会議」
で、その中で、具体
を開 催 し て 、 保 健 所 間 の 情 報 共 有
の役割を担っていますが、中核機
に施策を考えてもらいたい点、人材
でなく、地域包括ケアシステムでも
としての対策として〝保健所と厚生
と意 見 交 換 を 行 っ て い ま す 。 国 立
関としての機能強化、そして国立
の 育 成 で は、国 立 感 染 症 研 究 所、
同様のことが言えます。
症指定医療機関でもエボラ出血熱
保健 医 療 科 学 院 で は 、 D H E A T
国際医療研究センターを中心とし
国 立 国 際 医 療 研 究 センター 等 に、
また、保健 所は研究 事 業である
保健 所 で D H E A T 構 築 を め ざ す
構築 に は 公 衆 衛 生 の 専 門 家 に ど う
た感染症指定医療機関の相互連携
緊急のテーマに合わせた研修も計画
地 域 保 健 総 合 推 進 事 業 を 通 して、
的に保健所がどう役割を果たすか
いう 形 の 研 修 を す れ ば い い か を 検
を要望しています。また、患者搬
してほしいとの要望をしています。
地域の実情を把握しています。保健
労 働 省の 連 携 強 化〟〝 人 材の 育 成〟
討中 で す 。
送に関しては、多くの地方自治体
衛生研究所の法制化に関しては
所が積極的にかかわるには、どうい
の治療経験のある医療従事者はき
その他、災害医療としては、支
で保健所が行うことになっていま
長年の課題で、感染症における検
うことが必要かを要望しています。
ため 、 災 害 時 の 保 健 所 の 公 衆 衛 生
援側に対する物資の〝全国調整シ
す が、 重 症 者 の 搬 送 に 関 し て は、
査 業 務 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ る 中、
わめてわずかなのが現実です。
ステムの構築〟〝災害時要配慮への
搬送時の治療の問題、救急搬送の
機能強化対策の一環として法制化
活 動 の あ り 方 に つ い て、 地 域 ブ
対応〟〝災害時のメンタルヘルス対
問題等、保健所単独で行うには困
の検討を要望しています。
エボ ラ 出 血 熱 に 備 え る た め に 、 ①
という点です。保健所長会として、
い感 染 症 が 国 家 レ ベ ル で 流 行 し た
異な る の は 、 致 死 率 の き わ め て 高
いま す 。 い ま ま で の 国 際 感 染 症 と
流行 が あ り 、 い ま も 流 行 が 続 い て
西アフリカでエボラ出血熱の大
検査体制がいいのかを国として検
実性を考えた場合、どういう国内
ことになっています。迅速性と確
在、国立感染症研究所だけで行う
ボラ出血熱の検査に関しては、現
しての施策を要望しています。エ
で消防機関との協力を築ける国と
そこで、一部地域ではなく全国
ケ ア シ ス テ ム の 推 進〟〝 医 療 の 安
需要と病床の必要量を推計して二
想では、2025年に向けて医 療
療 構 想が出てきています。この構
効率的な利用という視点で地域医
上がっており、地域での医療資源の
療をどうするかという課題が持ち
高齢化が進む中で日本の地域医
3. 地域医療連携と保健所機能強化
所属自治体が違う中でも公衆衛
に地域における質の高い公衆衛生
としての専門性を確保するととも
ままになっています。保健所医師
なる中、公衆衛生専門医がいない
門医資格を取得することが基本と
た、すべての医師が基本領域の専
りそのことも要望しています。ま
する人材の確保・育成が必須であ
担えるように保健所長をはじめと
ロックごとに〝地域連携推進会議〟
策の推進〟を要望しています。
難な問題を抱えています。
治療 体 制 ② 患 者 搬 送 体 制 ③ 検
要 望しています。具 体 的には、治
全〟
があります。
さらに、保健所が十分に役割を
2. 国 際 感 染 症 対 策
を確 保 す る た め に も 、 公 衆 衛 生 専
療終了後の管理検診の簡素化、潜
い て、 全 国 の 保 健 所 の 情 報 共 有、
生活動をするという意味合いにお
門医 の 検 討 を 要 望 し て い ま す 。
在性結核感染症治療の短期多剤レ
ンタ ー〟〝 保 健 福 祉 事 務 所〟な ど と
の組 織 と統 合されて〝 健 康 福 祉セ
型保健所、市型保健所、さらに他
保健所は各地方自治体ごとに、県
て ほ し い とい う 要 望 で す。 現 在、
限の役割とは何かを具体的に示し
の地域の拠点として保健所の最低
のとは別に、国として、公衆衛生
地方自治体が独自の施策を進める
理対 策 の 推 進 を は じ め 全 分 野 に
一般要望としては、健康危機管
散発食中毒に対応するための広域
を要望しています。その他、「広域
在の知見を取り入れた形での改定
在まで改正されていないので、現
血 性 大 腸 菌 症 の 治 療 手 引 き」は 現
次、二次医療機関のための腸管出
に、平成9年8月に改定された
「一
準の設定を要望しています。さら
食用食肉に関する具体的な規格基
牛肉以外の鶏肉・鹿肉などの生
3.食品衛生対策の推進
接種」
についても要望しています。
他、
「HIV感染」「院内感染」「予防
医 療 機関 網の整備などです。その
ント体制構築、結核診療対応可能
健所長会の渉外担当常務理事とな
個人的には、今年度より全国保
ていきます。
約するのによりよいのかを検討し
う方法が全国の保健所の意見を集
したが、来年度に向けて、どうい
た段階で全保健所に意見照会しま
また、今年度は、要望案を作成し
の 評 価 を し て い こ う と 思 い ま す。
動向を見ながら、今年度の要望書
ざまな審議会・検討会・研究会の
今後、国の法改正、通知、さま
う意味合いでは同じ基盤の上にそ
本の公衆衛生を支える保健所とい
まざまになってきていますが、日
の日本の公衆衛生の課題が何かが
はなく、要望書を読むことで今日
所が国に要望を出すというもので
算 に 関 す る 要 望 書」も 単 な る 保 健
れます。「保健所行政の施策及び予
が図れるかが大きな課題と考えら
ば、各地域の公衆衛生活動の充実
をどう国に要望して改善していけ
して困難な課題は何か、その困難
体が違っても、保健所として共通
意見交換をする場として全国保健
なっている保健所もあります。ど
情報システムの構築」「腸管出血性
り要望書のまとめ係を担当するこ
れぞれ存在しているので、多くの
ジメン化、小児結核症例コンサルタ
のような組織であっても、国民の
大腸菌の発生届の見直し」「食品防
と と な り ま し た。 昨 年 度 ま で は、
若い医師、専門職の人とも意見交
【一般要望】
目から見て、そこに保健所機能が
御( フ ー ド デ ィ フ ェ ン ス)に つ い
富山県の大江浩先生が渉外担当常
換しながら、現在の日本の公衆衛
関し て 要 望 を 出 し て い ま す 。
1. 地 域 保 健 対 策 の 推 進
国民にわかりやすいように、各
〝 健 康 危 機 管 理 対 策〟〝 人 材 育 成〟
このほか、要望の項目としては
等も変わり、全国保健所長会とし
た。毎年、少しずつ要望書の体裁
書を取りまとめてくださいまし
なお、要望書全文は全国保健所
うと思います。
生の課題とは何かを把握していこ
各地域で、保健所のあり方がさ
と考えています。
わかるようなものにしていけたら
所長会があるので、所属地方自治
あるということをわかるようにし
て」「 消 費 者 対 策 の 充 実 に つ い て」
務理事ということで4年間、要望
今年度の評価と
来年度に向けての課題
てほしいとの要望も出しています。
の要望を出しています。
います。結核では「低蔓延化を見据
〝 精 神 保 健 福 祉〟〝 健 康 増 進 運 動〟
ての積極的な姿勢を示すものと
おわりに
2. 結 核 ・ 感 染 症 対 策 の 推 進
えた今後の結核対策に関する研究
〝 母 子 保 健 対 策〟〝 難 病 対 策〟〝 医 療
長会のホームページ( http://www.
)
に掲載予定です。
phcd.jp/
国際感染症を除く課題を扱って
報告書/提言(石川班提言)
」
に従う
連携、医療介護連携等の地域包括
なっています。
形で保健所の結核対策の再構築を
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2015.7 公衆衛生情報
公衆衛生情報 2015.7
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