身体活動の促進を目指した地域全体介入の方法 身体活動の

身体活動の促進を目指した地域全体介入の方法
山口 幸生(やまぐちゆきお:福岡大学スポーツ科学部)
【はじめに】
以下キーコンセプトやメッセージの事前市
疫学研究は不活動が,がん,呼吸循環器系
場調査(40%),キャンペーン全体の事前検
疾患,糖尿病,高血圧,肥満などのリスクフ
証(25%),連携可能な地域住民・集団のリ
ァクターであることを示している.そのため
ストアップ(80%以上)などが報告されてい
地域において,様々な身体活動量促進のため
る.また,準実験計画デザインが最も使用さ
の介入がなされ,一定の成果を上げている.
れ,自己報告による知識向上が最も測定され
しかし,これまでの取り組みは、自発的な参
ている.費用対効果の分析はほとんどない.
加申し込みに基づいた小集団を対象にする
【討論のポイント】
ことが多い.また日本では,地域全体の非自
発表者らは,地域全体介入を視野に入れた
発的申込者に対する介入・キャンペーンの研
試験的取り組みをいくつか行ってきた.具体
究的取り組みは非常に少ない.
的には,a) 特定健診を題材とし,保険者が
地域全体を対象とした介入を進める上で
行った受診プロモーションに対する注目度,
エコロジカルモデルやソーシャルマーケテ
理解度,質的評価の実施,b) 健康教育プロ
ィングの視点が重要視され始めている.
グラムの参加に関する募集用チラシの評価
エコロジカルモデルでは,個人の知識や効
および効果的な関係性マーケティング手法
力感という認知レベルから,公共政策や物理
の検証,c) ダイレクトメールによる効果的
的要因といった社会環境レベルまでを包含
な参加者募集方の開発,などである.
した,包括的な取り組みの重要性が指摘され
これらの研究データと,理論・モデル、文
ている.またソーシャルマーケティングは,
献レビューを絡めた討論を本ラウンドテー
商用マーケティングの手法を,対象の個人や
ブルで行いたい.また地域全体介入を検討す
集団の健康,ウェルビーイングの改善を目指
る際,自治体と連携した取り組みは不可欠で
したプロモーションに活用する.
ある.しかし,1)エコロジカルモデルやソ
後者のソーシャルマーケティングの過程
ーシャルマーケティング的思考とノウハウ
は,主に1)計画段階(形成的評価を含む)
,
の欠如,2)行政的思考と組織体制,3)低
2)メッセージと教材作成,3)予備的実行,
予算,などの問題が山積している.これらの
4)本格的実行,5)評価・修正,の 5 段階
問題を踏まえ,実現可能な地域資源に応じた
に分かれる.この過程は,Plan-Do-See
効果的な介入方法についても参加者と議論
に近いが,そのサイクルはより高頻度で回り, したい。
実践的なものと言える.
R. Alcalay & R.A. Bell (2000)は,ソーシ
ャルマーケティングを活用した身体活動促
進と適正な栄養摂取を目指した 50 の取り組
みを概観している.この分析では,明確な達
成目標の設定をしている取り組みが 30%,
連絡先
山口 幸生(福岡大学スポーツ科学部)
〒814-0180 福岡市城南区七隈 8-19-1
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