徳 救急科開設から3カ月 大 隅 鹿屋病院 診療 ・ 教 育 の 両 面 で 効 果 期 待 け入れをためらう雰囲気 おおすみかの や 大隅鹿屋病院(鹿児島県)は救急科を開設した。救急搬送をより円滑に受け入れ も感じられた。 一方、教育面では研修 る体制づくりや、統一した教育体系の整備が狙い。同科創設以後、救急の搬送受 け入れ件数が増加するなど、少しずつ効果が現れ始めている。同科に所属する有 見え始めた。そのひとつ 医をはじめ若手スタッフ 「たとえ満床でも、当院 が救急搬送受け入れ件数 への対応が課題になって の方法などが異なり、研 で診られる患者さんは、 の増加だ。4月以降、過 いた。医師によって診療 修医が困惑する姿も散見 去5年間の同じ時期と比 留大海医長と森本真由子・後期研修医は「大隅半島に住んでいる方のため、徳洲 る傾向が見られた。 また、地域に慢性期病 できる限り診たいと思っ 会の代名詞ともいえる救急をしっかり形づくっていきたい」と意気込んでいる。 教育の両面から同 院 の救急の底上げを 図 ています」と有留医長。 こうした問題を解決す された。 病院である同院でもベッ 床が少ないため、急性期 従来、同院では 当 較し、受け入れ件数が増 るのが目的だ。 教 育 に つ い て も、 「従前 カバーする地域が広く、 るため、同院は救急の担 若手医師の確保にも余 ドが空きづらく、満床が これまで看護師が対応 現在は1年次研修医がい 番制を敷き、研修 医 していた救急隊とのホッ えている(表2) 。 な診療方法を教わること トラインの担当を医師に のスタイルは、いろいろ ができる良い面もあった 当医を固定化。来院する ケースの多くが内科関連 と思いますが、後輩にき 続くと救急患者さんの受 の疾患であることから ER で看護師にアドバイスを送る森本医師(左) 。指導体系 の統一も救急科創設の狙いのひとつ 救急医療体制の整備を進める大隅鹿屋病院 という。 笠利病院 奄美空港で救難訓練 奄美空港は、鹿児島県最大の離島である奄美大島の空の玄関 口。笠利病院は7月1日、同空港が立地する笠利町の救急医療体 制協議会のメンバーの一員として、奄美空港管理事務所・大島 地区消防組合が主催する奄美空港消火救難訓練に参加した。 これに先立つ6月には協議会メンバーに加え、笠利総合支所(市 役所の分所) 、奄美空港、自衛隊、周辺の地域包括支援センター、 大島郡医師会、名瀬徳洲会病院など関係者らが集い、救難訓練 の事前勉強会を実施。救護所のレイアウトやトリアージ(重症度 選別)の手順など詳細を詰めた。 当日は航空会社など関連各社の関係者も合流、総勢196人が、 乗客の乗ったリムジンバスを事故機に見立て臨場感あふれる消火 訓練を行った。救護所として使用する予定だった格納庫が使用で きないハプニングがあったものの、参加者は臨機応変に対応、 次々と搬送されてくる傷病者を迅速にトリアージしていた。 参加した相原雅永・看護部長は「災害に想定外は付きも の。良い訓練になりました。訓練参加は今回で3回目で すが、年々、参加機関との連携が良くなっています」と評価。 相原部長は、笠利町に救急車が1台しかなく、近隣の龍 郷町、奄美市から応援が到着 するまでの救護は同協議会の 使命であるとし、 「今後の課題 は情報管理と傷病者の搬送手 段の確保。病院・施設の車の 出動など、実施可能な対策を 協議会メンバーで検討してい 最終便が発った夜の奄美空港で救 きます」と意欲を見せている。 難訓練 地域一丸となり対応協議 くりを目指したいと考え “ 断 ら な い 医 療 ” を 継 承 課題は教育体系の整備。 ています」と 有. 留医長。 するのは自分たちの役割。 2,127 2,136 (表1)、総合内科医を目 2011年 227 181 186 152 166 163 163 202 159 173 169 186 2010年 180 145 163 172 181 162 168 172 175 181 186 251 を含め各診療科の 医 師が交代でER( 救 急外来)を担当。 す 1,869 2,037 なかには搬送されるまで 2013年 144 123 139 157 133 154 162 161 154 169 154 219 2012年 168 172 197 152 151 158 157 194 172 171 164 181 念 が な い。 「当院には救 1,286 2,110 ないこともあり、有留医 2015年 202 179 170 167 199 179 190 2014年 159 167 172 174 168 153 194 181 171 162 187 222 変更。対応の判断がより 合計 ちんと一貫して教える体 表2 救急受け入れ件数年統計 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 指す有留医長、森本医師 1,286 ます」と意気軒高だ。 202 179 170 167 199 179 190 していた。しかし、専 門 31 大隅鹿屋病院が救急科 11 1時間かかるケースもあ 2 急対応もできる内科医を 4 長は「試行錯誤の状態」 2 迅速になり、円滑に受け 3 制づくりの必要性を感じ 3 を配置した。有留医長は 6 分野が異なるケースや 、 0 その他 を立ち上げたのは4月。 0 るので、将来は仲間を増 13 0 希望する医師が多く在籍 21 0 入れられるようになった。 と評する。それでも朝7 20 0 医師となり8年目。初期、 ました。診療開始までの 27 0 研修医が当番の日など で 8 0 月〜土曜日の午前中まで 12 やしドクターカーで出向 8 0 くことはできればと思い 109 整 形 形 成 しています。当院の売り 19 は田村幸大副院長をはじ 2 時半に森本医師と前日の 3 救急の振り返りや、症例 4 の滞在時間が短くなった 2 時間にしても、もう少し 「 救 急 隊 か ら も、 現 場 で 5 短いのが標準と教えた 2 後期研修を大隅鹿屋病院 1 で受け、昨年1年間は故 34 脳 外 は、専門医のコンサル タ 2 ントを受けたり、診断 を 45 4 の日勤帯に、有留医長と 50 5 森本・後期研修医の2人 52 3 と好評です」 (有留医長) 。 検討会を看護師に週1回、 めとした総合内科だと思 43 9 い」と意欲を見せる。 35 4 郷の宮崎県内の病院に勤 39 7 つけるため、さまざま な 49 を基本的に配置、加えて 313 外 科 心 外 っているので、救急を手 300 救急隊に月1回、実施。 36 院内でも医師をはじめ負 28 救急科創設から3カ月 49 務していたが、今年に入 34 検査を実施したりし、 治 39 厚くすれば研修医が来て 59 救急の患者さんが来ない 55 担軽減につながっている 480 循 内 が経ち、効果が少しずつ 81 くれると考えています」 71 時間を利用し、自ら 65 森本医師も「徳洲会の 56 と期待を寄せる。 71 内視鏡など手技的な 60 トレーニングを積ん 合計 76 だり、森本医師 は慢性疾患をフ ォローする技術 を習得しようと 外来に入ったり している。 「たとえば、超 音波の技術を得 たいと思っても、 病棟を受けもっ たりすると、そ の時間がありま せん。そうした 若手の要望に応 えられる病院づ 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 合 計 り再入職した。 副作用を抑え効果的な薬物療法 りゅう 内 科 「少しずつ当院の救急を形づくっていきたい」 と有留医長(左)と森本医師 到着した救急車に対応する有留医長(右) 。救急科創設後、 受け入れ件数は増加 へんとうせん 表1 救急搬送件数の各診療科内訳(2015 年) 週に1〜2日、後期研修 ぼう 平成 27 年 8 月 10 日 月曜日│No.992 ❹ 聞 療開始までに時間を要 す 武蔵野徳洲会病院が挑む ひょう 新 医1人が加わる。診療と 武蔵野徳洲 会病院(東京 都)の診療科目のひとつ、血液 内科では悪性リンパ腫や多発性 骨髄腫、白血病といった血液が んに加え、血小板減少、貧血、 血液凝固障害など幅広い血液 疾患に対応。抗がん剤や分子 「地域の患者さんた ちが地元で安心して 標的薬、免疫抑制療法など専 治療を受けられるよ 門的な治療に取り組んでいる。 う尽力したい」と若 杉部長 同院が立地する西東京市に は、同院を含め計7病院があるが、血液内科を標 榜する病院は少数。同院は血液疾患に対する診療 機能の提供を通じ、地域医療の充実に貢献してい きたい考えだ。 血液内科の若杉恵介部長は「専門的な治療を受 けるために、遠方まで出向いている患者さんもお られると思います。移動にともなう患者さんの負担 は少なくありません。地域の患者さんたちが地元 の医療機関で安心して治療を受けられるよう尽力し ていきたい」と意気込みを見せる。 若杉部長によると、長寿化などを背景に固形が んと同様、多発性骨髄腫や悪性リンパ腫といった 血液がんや骨髄異形成症候群などの血液疾患の患 者さんは増加傾向にある。 血液がんの治療で大きなウェートを占めるのは、 分子標的薬を含む抗がん剤による化学療法だ。固 形がんに比して血液がんは、分子標的薬の開発が 第2 回 進んでいる分野であり、若杉部長はさまざまな抗 がん剤や分子標的薬を駆使し、副作用を抑えなが ら効果的な薬物療法の提供に努めている。 また化学療法に関しては、今後、外来化学療法センター の立ち上げも視野に入れており、他科との連携を推進し、 血液がんに限らず、がん全般を対象とした化学療法に取り 組んでいきたい考えだ。化学療法にかかわるスタッフの育 成などチーム医療の体制を整備しながら同センターの開設 を目指す。 血液疾患に加え若杉部長は、不明熱への対応や、状態 が安定しない術後の患者さんに関する院内コンサルトへの 対応、救急搬送の患者さんにひととおりの処置を行ったも のの状態が改善しないケースへの対応など、総合内科的に 幅広い診療も手がけている。 たとえば40度の発熱で受診した20歳代男性のケースでは、 当初、扁桃腺炎の診断で入院。状態は回復せず、リンパ節 の腫れがあり、心膜炎も併発。院内コンサルトの依頼を受 けた若杉部長は、診察内容や検査結果、症状などから、A 群溶連菌によるリウマチ熱と診断。ペニシリンの投与により 症状は快方に向かった。 また他院で以前、腹部大動脈瘤の治療のためステントグ ラフト (バネ状の金属を取り付けた人工血管)手術を受けた ことがあり、感染による発熱を理由に武蔵野病院に入院し た患者さんの例では、入院・加療中に血小板減少を認め たことから、院内コンサルトの依頼を受けた。若杉部長は 抗血小板療法が必要と判断、同療法を実施したことで患者 さんの病態は改善に向かったという。 若杉部長は日本血液学会認定血液専門医に加え、日本 感染症学会が認定するインフェクションコントロールドクター (ICD)の資格ももつ。ICD資格を生かし、院内感染管 理者として同院の感染対策にも携わる。血液内科を中心に 幅広い診療能力を生かして地域医療に貢献していく考えだ。 血液内科 洲 べてのケースに対 応 地域医療の充実に力 い の ち 生 命だけは平等だ
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