271 - 協同総合研究所

 所報
平成3年9月15日創刊 平成27年6月15日発行・毎月1回15日発行・No. 271
一般社団法人 協同総合研究所 ISSN 1344-7300
第
特集
271号 2015.6
21世紀の協同組合運動①
(コミュニティと協同組合)
◎労働者協同組合が仕掛ける地域再生の協同組合コミュニティモデル(提案) 津田 直則
◎地域でとりくむ再生可能エネルギー事業を事例に、コミュニティ協同組合の可能性と課題を考える 田中 夏子
◎再生可能エネルギーと「地益」
−「プラス」と「マイナス」をシェアする地域のあり方を考える- 藤谷 岳
■海外レポート
◎
【連載第5回】
イギリスにおける労働者協同組合の現状-今日的到達点と新たな動き-
松本 典子(駒澤大学経済学部准教授/協同総研会員)
◎フランス 生産協同組合の規定に関する法律(労働者協同組合法/2015年版)
(1)Loi n°78-763 du 19 juillet 1978 portant statut des societies coopératives de production, version consolidée au 15 juin 2015
島村 博
■協同の広場
◎「協同労働」の探究~名古屋からの報告~ 橋本 吉広
一般社団法人 協同総合研究所
JAPAN INSTITUTE OF CO-OPERATIVE RESEARCH
題字/藤原 桂州
目 次
■ 第 271号 2015. 6 ■
■巻頭言
ダイナミックな協同組合地域社会づくりを構想してみる
�� 藤木 千草(ワーカーズ・コレクティブ及び非営利・協同の社会的企業等の活性化支援組織準備会/協同総研理事)
■特集 21世紀の協同組合運動①(コミュニティと協同組合)
・21世紀の協同組合運動①(コミュニティと協同組合)を特集するにあたって
����������������������������� 相良 孝雄
(協同総研事務局長)
・労働者協同組合が仕掛ける地域再生の協同組合コミュニティモデル(提案)
���������������������� 津田 直則
(桃山学院名誉教授/協同総研理事)
・地域でとりくむ再生可能エネルギー事業を事例に、コミュニティ協同組合の可能性と課題を考える
������� ��������������� 田中 夏子(協同組合研究者/協同総研理事)
・再生可能エネルギーと「地益」
−「プラス」と「マイナス」をシェアする地域のあり方を考える-
���������������������� 藤谷 岳(久留米大学経済学部/協同総研会員)
■海外レポート
・【連載第5回】イギリスにおける労働者協同組合の現状-今日的到達点と新たな動き-
�������������������� 松本 典子(駒澤大学経済学部准教授/協同総研会員)
・フランス 生産協同組合の規定に関する法律(労働者協同組合法/2015年版)
(1)
Loi n°78-763 du 19 juillet 1978 portant statut des societies coopératives de production,
version consolidée au 15 juin 2015
������ 訳責 協同労働法制化市民会議 / 日本労協連法制化対策部 島村 博
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4
6
15
28
35
41
■協同の広場
「協同労働」の探究~名古屋からの報告~
������������������������� 橋本 吉広
(協同総合研究所 常任理事) 55
■労協連だより�������������������������������田嶋 康利
■研究所だより�������������������������������上平 泰博
59
61
No.271
巻 頭 言
ダイナミックな協同組合地域社会づくりを
構想してみる
藤木 千草(協同総研理事/ワーカーズ・コレクティブ及び非営利・協同の社会的企業等の活性化支援組織準備会)
1980年のICA(国際協同組合同盟)大会で
活クラブ生協に関連する団体が行政区ごと
発表された「レイドロー報告」は、協同組
に「地域協議会」を形成し、まちづくり活
合が西暦2000年に向けて優先的に取り組む
動をおこなっている。私が所属する一般社
べき分野を4つあげた。1つは食糧問題「世
団法人ワーカーズ・コレクティブぷろぼの
界の飢えを満たす協同組合」で、協同組合
工房は、当初からの活動拠点である国分寺
が生産者と消費者をつなぐ食糧政策を確立
市と空き家を借りることのできた府中市の
し、農業支援などを行うということ。2つ
2つの地域協議会に参画している。国分寺
目は雇用問題「生産的労働のための協同組
市 で は、 生 活 ク ラ ブ 生 協 ま ち 国 分 寺、
合」で、所有者・経営者・労働者という区
NPO法人ワーカーズ風ぐるま(子育て支
別なく、信頼と協同に基づく働き方の労働
援・家事援助)、企業組合ワーカーズコレ
者協同組合を再生し発展させること。3つ
クティブ・ラ・ママン(パン製造販売)、
目は消費と流通について「保全者社会のた
NPO法人健康体操指導ワーカーズ(体操指
めの協同組合」で、消費者協同組合は倹約
導)、ワーカーズ・コレクティブぶるぅべ
を強調し浪費を止めさせるということ。4
り ぃ( 生 協 店 舗 運 営 )、 環 境 ま ち づ く り
つ目は地域づくり「協同組合地域社会の建
NPOエコメッセ国分寺(リサイクルショッ
設」で、生活におけるさまざまなサービス
プ)、たがやす準備会(農業支援)、国分寺・
を提供する多くの協同組合をつくり小さな
生活者ネットワーク(政治団体)がメンバー
経済圏をつくること。
で、毎月会議を開き、学習会や調査の企画
ワーカーズ・コレクティブ運動は、主に、
実施や地域に必要なものをどう作り出すか
第2分野の労働者協同組合の再生発展と第
について検討している。昨年、3か年計画
4分野の協同組合地域社会づくりを実践し
をつくり、「自然エネルギーを地域で拡げ
ようということで、生活クラブ生協の組合
る」
「石けんの利用を拡げる」
「食のワーカー
員が中心となって始まり、全国に拡がった。
ズづくり」「多世代の居場所づくり」「ハン
それぞれの地域で、各種の協同組合が連携
ディのある人と共に働く」「移動サポート
する活動が展開されている。東京では、生
の検討」「社会のありかたについて考える」
2015.6
2
巻頭言
「リサイクルの場や情報提供」といったこ
ている。構成団体はパルグム信用協同組合・
とについて取り組むが、活動の輪を生活ク
原州生協・尚志大学生協・原州医療生協・
ラブ生協の関係だけでなく、もっと広げて
原州ハンサルリム生協・カトリック農民会・
いくことが課題である。
原州共同育児協同組合ソークプマダン保育
協同組合地域社会づくりを他の協同組合
園・原州自活貢献機関などで、競合する複
とも連携してすすめられないだろうか?そ
数の生協が入って協議会をつくっているこ
こで、国分寺市にどれだけの協同組合があ
とに驚いたのを覚えている。韓国では80年
るか調べてみた。まず、農協は「JA東京む
代に協同組合運動が弾圧された後、新しい
さしの」の支店が2つとファーマーズマー
協同組合運動が起こり、今では農業保護や
ケット1か所、生協は「コープみらい」が
環境問題、貧困問題、弱者救済などのため
2店舗、
「生活クラブ生協」のデポーが1店
に協同組合の結束が必要とのことだった。
舗、東京経済大学生協、宅配では「コープ
当時、この協議会は事業課題の一つに「新
みらい」
「生活クラブ生協」に加え、
「パル
規協同組合設立支援」
(ワーカーズ・コレク
システム」
「東都生協」
、三多摩医療生協の
ティブ創設)をあげていたが、どうなって
国分寺診療所、信用金庫では「多摩信用金
いるだろうか?
庫」の支店3店舗、
「西武信用金庫」の支
韓国ではその後、社会的企業育成法(2007
店1店舗、事業協同組合は東京新聞販売事
年施行)、協同組合基本法(2012年施行)が
業協同組合の専売所が1か所、そして、ワー
制定され、現在、社会的経済基本法が制定
カーズ・コープセンター事業団が学童保育
されようとしている。着々と非営利・協同
7か所、児童館2か所と福祉センターの業
陣営の活性化、地域経済の力を強くする基
務を受託している。それぞれの運営者と利
盤整備がすすんでいる。翻って日本は、農
用者を合わせると相当な数になる。先の生
協法が改定され協同組合の本質が失われよ
活クラブ関連の団体とこれらの団体が連携
うとしている。20数年求め続けているワー
できるとかなり大きな影響力をもち、地域
カーズ協同組合法も未だに制定されていな
主体の面白い活動ができるのではないか?
い。しかし、めげずに協同組合は自身の本
この思いは、2006年に生活クラブ連合会
質を見失うことなく、連携し合って、様々
の視察旅行で韓国の原州(ウォンジュ)市を
な暮らしを支えていこうではありません
訪問した時から持ち始めている。原州は韓
か。あなたの住むまちにはどんな協同組合
国における協同組合運動の先駆的な地域で
がありますか?
あり、原州協同組合運動協議会が形成され
3
2015.6
協同総合研究所は、労働者、 市民が自らの力で自律的に仕事と生活の
豊かさを求める活動を支援するシンクタンクです。わが国にも「大量
失業の時代」が到来する中で、労働者、市民が自主的に仕事おこしを
する労働者協同組合
(ワーカーズコープ)
への注目が増しています。
研究所は、
わが国唯一の「労働者協同組合」に関する専門研究機関です。
研究活動をネットワークし、蓄積された情報を資源
として支援する「協同の發見」を会員のみなさま
に毎月お届けいたします。