英語科 自ら学び続ける自律した英語学習者の育成 -パフォーマンス課題とルーブリック評価で「発信力」を問う- 1 研究の概要 本校英語科では, 「発信力」を高め続ける生徒の育成を目指している。ここで言う「発信力」と は, 「学んだ知識や技能を活用し,自分の思いや考えなどを相手と伝え合う総合的な力」のことであ る。この力を高めるために, 「逆向き設計」論に基づく単元構成を行い,パフォーマンス課題を設定 し,その評価をするためにルーブリックを用いた実践を行ってきた。ルーブリックに関しては,生 徒がより高いレベルで自己修正・改善ができるよう段階を踏みながら生徒と共に作成している。こ れまで取り組んできたパフォーマンス課題の見直しや,ルーブリック評価の有効性及びその課題に ついて研究を進めている。また,パフォーマンス課題につながる帯活動や原稿作成の手立てについ てパフォーマンス課題の質を高めるための研究に取り組んできた。 2 今年度の取り組み -公開授業について- (1) 2年4組 Unit 5 A New Language Service ( NEW HORIZON English Course 2 ) 永田康子 「留学生におすすめのスポットを紹介しよう」 留学生を聞き手の中に参加させ,グループ対抗のプレゼンテーションを行うことで,英語を手段 として,テーマに沿った内容を発表させ,その内容について質問やコ メントなどを言わせる活動に取り組ませた。今回のパフォーマンスに 必要な言語活動である「紹介する」や「説明する」の重要な要素に全 体で気づき,自分自身のパフォーマンスの質を向上させるために,お 互いのパフォーマンスを見せ合う場面を設定した。 図1 (2) 2年生発表の様子 3年3組 Unit5 Electronic Dictionaries -For or Against 横山千晴 (NEW HORIZON English Course 3) ミニディベートにチャレンジ ~Who is the best debater?~ 本単元では,自分の意見を,根拠を含めてまとめ,相手に分かりやすく伝えたり,相手の意見の 要旨を掴んで質問したり,反論したりするミニディベートに挑戦 させた。 説得力があり,わかりやすく伝えるためにディベート独特の言 い回しや表現方法を身につけ,今までに習得した知識や技能を活 用させて表現活動に取り組ませることができると考える。そこで, 本単元を貫く問いを「説得力のある主張や反論をするためにはど うすればよいか」とし,上記のようなパフォーマンス課題を設定 した。 図2 3年生発表の様子 3 今年度の研究について (1) 成果 ① 各学年の主な表現活動を決め,3年間を見通したパフォーマンス課題を設定することで,各 学年,生徒に身につけさせたい力を具体的にイメージしながら,系統的な単元構成を行うこと ができた。また,双方向のやりとりを伴うパフォーマンス課題を設定することで,発信内容の 質の向上につなげることができた。 ② ルーブリックを生徒と共に作成することによって,生徒が評価項目をあげたり,各段階での 成功の度合いを考えたりしながら,自分たちが目指すべきゴールの姿を明確にしていくことが できた。評価の観点を関心・意欲・態度だけでなく,内容面の観点を加えることで,生徒が外 国語表現・外国語理解についても自己評価力・自己修正力を高められるようにしている。 ③ 3年間を見通した系統性のあるパフォーマンス課題に即した帯活動に取り組ませることで, 各学年の生徒のパフォーマンスの質が高まったり,質疑応答に即興性が見られるようになった りした。また,モデルパフォーマンスに教師作成のものだけではなく,過去の生徒作品を提示 したことで生徒のモチベーションが上がった。 ④ パフォーマンス課題の原稿作成の際に必要な英作文力の向上のために, 「意味順」writing を 帯活動で取り組んだり,原稿作成時に「意味順」を意識させたりした。その結果,コミュニケ ーションに大きく影響を与える語順の誤りは減ってきた。 ⑤ パフォーマンス課題につながるワークシートを分析し改善していくことで,生徒のパフォー マンスの質の向上につなげることができた。 (2) 課題 ① 3年間を見通したパフォーマンス課題を設定し,系統的な単元構成に基づいて実践を行って いるがグローバル化に対応できる生徒の育成につなげるために自分の考えや自文化について発 信する場面設定を増やしていく必要がある。 ② ルーブリックの評価内容については,教師と生徒で作成しているが,第三者からの視点も参 考にしながら改善していく必要がある。 ③ 自分の意見や思いを英語で表現する際に日本語の語順にとらわれてしまう傾向がいまだ見ら れるため, 「意味順」による語順指導の改善をしていく必要がある。 ④ Classroom English と Useful Expressions を系統的にまとめなおし,毎時間の学習活動やパ フォーマンス課題の充実につなげる必要がある。 ⑤ 他教科との連携を図り,パフォーマンス課題の更なるレベルアップにつなげる必要がある。 例 国語科・・・ディスカッション 4 社会科・・・ディベート など 今後の展望 これまでの研究に引き続き,パフォーマンス課題とルーブリックの見直し・改善を行っていく。小 中連携では,パフォーマンス課題でつなげ,さらに Useful Expressions(パフォーマンス課題や日頃 の授業で役立つ表現集)の共有を図る。また,パフォーマンス課題をルーブリックで評価することと 合わせ長期的な視点で自己評価できるよう,Can-Do-List の作成を行う。これら一連の資料をまとめ 21 世紀型能力育成の一つの方法として示したい。
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