宮脇 由衣

第 3 回 H/ASCA 展
入賞者香港表彰旅行(平成 27 年 3 月)を終えて
名古屋芸術大学
名古屋芸術大学 4 年 宮脇 由衣
はじめに、この香港への表彰旅行と作品展示の機会を与えて下さ
った堀科学芸術振興財団様に感謝を申し上げます。
今回の香港アートバーゼル視察において私が強く感じたこと、そ
れは作品が持つ惹きつける力です。あれだけ多くの作品があるな
か、どの作品もその作品だけがもつ魅力を持っていました。4 日間
あってバーゼルの会場を見きれなかったと感じる要因は出展ギャ
ラリー、作品の数の多さだけではなくその惹きつける力が作品達
にあったからです。
多数の作品を鑑賞して実際に目の前にする第一の作品の印象には、
その内容よりも物質としての迫力が魅力として先行するのだと気
づきがありました。物質の迫力でもって見るものを惹きつけ、足
を止めさせる。それを導入してより深い鑑賞に誘い、内容やコン
セプトで再び惹きつける。その二つが鑑賞者を魅了するのです。
さて、今回の視察では鑑賞者としてだけでなく、一人の作家とし
てこのような場での発表をいずれする、したい、という姿勢は持つべきものでした。
このバーゼルに私の作品が並ぶと考えてみると圧倒的に惹きつける力、物質としての魅力、迫力に欠けているこ
とを痛感します。
私は一般的に販売されている木枠やパネルにキャンバス地という支持体を疑いなく用いてきました。一方、今回
の視察では“普通”な素材や素材の使い方をしているものは無く、どれも工夫が凝らされ他に見たことのない唯
一の物体として魅力的でした。
これからの制作において、作品の物質としての存在感を強いものにすることを素材、それを使う際の技法などに
改めて着目してまいります。また、多くのコレクター、ギャラリストの方々との交流ではポートフォリオに対し
てアドバイスの言葉を頂きました。私のポートフォリオは大学四年間で制作した作品を詰め込んだものでしたが、
成長は感じ取ってもらえてもコンセプトの説得力や私が何をしたいのかが伝わらなかったと感じました。それは
ポートフォリオの内容に統一感や見せ方に配慮がなかったためです。
私は大学の 4 年間で自分の表現を模索した結果、最後になってやっと己の作品のスタイルを作ることができまし
た。そのため自信を持って今の私の作品だといえるものが少ないのです。他の大学の皆さんとの交流でポートフ
ォリオを見せてもらいましたが、皆それぞれに工夫をした魅力的で作家の個性を表すポートフォリオでした。個
性的なポートフォリオはそれだけで作家性に説得力をもたせます。
言葉で伝えて自分の表現について知ってもらうこともとても大切ですが、作品集という形あるものを手でめくっ
て、見て、感じ取ってもらうことの大切さを知ることができました。大学院では今までより芯をもって制作をし
ていけると確信しています。多数の作品ができたその時にはこの交流で学んだことを生かして魅力的なポートフ
ォリオを作り、再び多くの方にご意見いただきたいです。
この表彰旅行と H/ASCA 展への出展、入賞を経験し私は一層の精進をし、美術の世界において活躍せねばならぬ
と感じる次第です。この貴重な経験をさせて頂いた以上、より素晴らしい作品を世に送り出す、それが私にも出
来るという自信をもって邁進することが感謝の現れになればと、僭越ながらこの思いを今後のモチベーションに
させて頂きたいと思います。