収縮時の筋束動態からみた関節角度-トルク関係 瀧下 渡 , 竹中 睦 , 長岡 大地 , 小木曽 一之 (皇學館大学大学院教育研究科) 第70回日本体力医学会大会, 和歌山県民文化会館/ホテルアバローム紀の国. 2015.9.18-20 KKKogakkan University INTRODUCTION 強度にともなう羽状角の増加が大きくなる傾向を RESULTS 示した。その一因としては、電気刺激の強度を高 随意収縮時には、全ての膝関節角度でEMGと膝 伝えられ、また、腱組織の粘弾性により関節を回 伸展トルクとの間に強い関係がみられた。一方、 転させることで発現する。しかし、関節で発揮され 電気刺激による収縮では、膝関節角度30°時の 度に依存して変化する。このことは、関節角度によ り、力を生み出す筋腱複合体の動態が変化する可 膝伸展トルクが刺激強度に関わらずほぼ一定と なった。しかし、それは膝関節角度の増加に伴い、 討した。 (deg) (Nm) 2 膝関節角度30° 15 5 -5 膝関節角度60° 電気刺激 15 y = -0.31x2 + 1.34x R² = 0.98 10 5 0 1 -5 0 y = -0.2x2 + 0.5x + 0.65 R² = 0.94 膝関節角度60° 膝伸展トルク 2 y = -0.96x2 + 1.93x R² = 0.98 羽状角 METHODS 男子大学生および大学院生15名(年齢21.2±1.0歳、身 膝関節角度30° 10 15 ●Subjects 電気刺激 0 随意収縮 膝伸展トルク せ、その角度に対する筋束動態の特徴について検 随意収縮 少しずつ増加する傾向を示した。 能性を示している。そこで、本研究では、異なる関 節角度で随意的あるいは電気的に筋収縮を行わ 考えられた。 羽状角 るトルクは一様ではなく、各関節そしてその関節角 めるにしたがい、深部腱膜に生じた大きな歪みが 羽状角 身体運動は、筋収縮の力が腱組織を介して骨へと ∠F5 P ∠D5 ∠F15 P ∠D15 膝関節角度90° ∠F10 P ∠D10 10 5 0 1 -5 rest 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% rest 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% Fig.5 随意収縮(左図)および電気刺激時(右図)における 0 長172.0±5.8 cm、体重68.5±7.1 kg) 各関節角度と羽状角の増加量. X軸は安静時を0とした時 膝関節角度90° ●Protocol ◆随意的な筋収縮 ・膝関節角度30°、60°、90°の最大等尺性膝伸展 膝伸展トルク 2 y= y = 0.872 - 0.34x + 0.43 R² = 0.97 -0.38x2 + 1.37x R² = 0.99 1 の増加量で, Y軸は最大膝伸展および電気刺激強度. DISCUSSION 0 0 0.5 1 1.5 2 0 1 aEMG 2 随意収縮では、膝関節の伸展に伴い、その発揮ト 電気刺激強度 (0°=最大伸展位) Fig.3 膝伸展トルクと 随意収縮時における外側広筋の aEMG(左図)および電気刺激時におけるその刺激強度 (右図)との関係. X軸、Y軸ともに、最大膝伸展時の値を 1とした時の比率. ルクは小さくなり、力発揮に伴うP点の移動量も小 随意収縮時には、膝関節の屈曲に伴い、膝伸展ト 90°ではそのような増加は見られなかった。これ ルクが増加し、P点移動量も大きくなった。一方、電 は、力発揮に対する腱組織の影響と考えられ、屈 気刺激による収縮では、膝関節角度30°の時にP 曲位にある膝関節で見られた傾向は、VL筋腱複 ・3秒間に1段階ずつ強度を増加 点移動量が最も大きくなった。これは随意収縮時 合体全体が伸張されていたため生じた結果である ・27秒後に最大トルク発揮強度に到達 のP点の移動量とは正反対の結果であった。 と考えられた。 ・最大トルクから10段階の膝伸展強度を設定 ◆電気刺激による筋収縮 ・外側広筋(VL)に20Hzの電気刺激 ・耐えうる最大強度(38.1±14.9 mA)の電流から10段階の 電流強度を設定 ◆試技中における外側広筋EMGと超音波画像 有意な羽状角の増加が見られたが、屈曲位である 一方、電気刺激時には、膝伸展位で刺激強度に伴 100 90 80 70 60 50 40 30 20 0 随意収縮 (Nm) 3s 膝伸展トルク 電気刺激 膝関節角度30° 2.5 y = -1.08x + 0.04 R² = 0.91 2 y = -3.97x + 0.26 R² = 0.71 1.5 う膝伸展トルクの変化は見られず、屈曲位になる に従いトルクがわずかに増加する傾向を示した。 2.52±2.49Nm 66.8±31.5Nm 1 また、電気刺激に伴うP点の移動量が伸展位でよ 0.5 0 り大きくなった傾向は、これらの結果が関節角度に 0 3 6 9 12 15 18 時間(秒) 21 24 27 膝関節角度60° 2.5 y = -0.58x + 0.03 R² = 0.97 2 Fig.1 筋収縮もしくは刺激強度の増加プロトコル ●Measurement 膝伸展トルク 収縮強度(%) ◆筋収縮の強度 さくなった。膝関節角度30°では、力の増加に伴う y = -2.03x + 0.23 R² = 0.92 121.4±34.2Nm 1.5 いる。本研究で用いた電気刺激強度では、その発 5.82±7.85Nm 1 0.5 揮トルクが小さく、伸展位ではその緩んだ腱を随意 0 収縮時のように引っ張り切れなかったすなわち、筋 ◆超音波測定 (外側広筋) 膝関節角度90° 2.5 ・筋束と深部腱膜との交点 (P点)の移動量 (cm) ・P点から0.5, 1.0, 1.5cm離れた位置で形作った3種類の 膝伸展トルク 2 ・P点垂直線上の筋厚 (cm) y = -0.55x + 0.004 R² = 0.92 0.5 加に伴い発揮トルクが向上した結果はこれを支持 0 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 P点移動量(cm) Fig.4 随意収縮時(左図)および電気刺激時(右図)にお ける膝伸展トルクとP点の移動量の関係. X軸は安静時 を0とした時の移動量. 負の値は近位方向への移動を示 す. Y軸は最大膝伸展時のトルク値を1とした時の比率. ・随意収縮時 遠位→ ←近位 1.5cm S点 表面腱膜 1.0cm 0.5cm 筋束 F1.5 F1.0 D1.5 D1.0 D0.5 Fig.2 外側広筋における超音波画像とその分析点 本研究の結果は、リハビリやトレーニング等で伸 筋に電気刺激を用いる場合、特定の筋に伸展位で 電気刺激を行うと、腱組織への負担を軽くした状 態で筋収縮を行うことができ、逆に屈曲位になると、 羽状角は、その力の増加とともに有意に大きくなっ 腱組織により負荷をかける状態になることを示して た。しかし、膝関節角度が60°, 90°と屈曲位にな いる。 るにしたがって、そのような有意な増加はみられな REFERENCE るにしたがい、羽状角の増加が大きくなる傾向を P点 している。 随意収縮時の膝関節角度30°における3種類の くなった。また、全体として、膝関節が伸展位にな F0.5 収縮による力を効率よく伝達できなかったと考えら れる。腱組織が伸張する屈曲位で、電流強度の増 5.91±7.54Nm 1 P点移動量(cm) ◆EMG測定 (外側広筋) y = -1.65x + 0.15 R² = 0.88 138.7±49.4Nm 1.5 -2 羽状角 (deg) 深部腱膜 依存した腱組織のたるみに起因することを示して 示した。一方、電気刺激時は、随意収縮時とは反 対に、膝関節が屈曲位になるにしたがって、刺激 金子公宥, 福永哲夫: バイオメカニクス-身体運動 の科学的基礎. 杏林書院, 東京, 2004, pp20-49. ACKNOWLEDGMENT 本研究の一部は、2015年度ミズノスポーツ振興財 団助成金を受けて行われた。
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