公務災害防止啓発映像教材(保育事業)企画書

公務災害防止啓発映像教材(保育事業)企画書(案)
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目的
保育士の公務災害発生率は、地方公務員全体の値からすればそれほど高いものではないが、近年
は上昇傾向にあり、特に平成 26 年度はここ 13 年間で最も高い数値となった。そうした状況を改善
し、公務災害の未然防止、地方公共団体の安全衛生活動を支援するため、保育事業に係る啓発映像
教材を制作し、地方公共団体に提供する。
対象は保育士とし、OJT、ミーティング、職員会議、集合研修、自己学習等において、公務災害
防止活動を分かりやすく解説する映像教材として利用できる内容のものとする。
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構成及び各部のねらい
映像教材の内容としては、平成 26 年度の職場環境改善アドバイザー優良事例活用事業で作成し
た冊子を参考に、公務災害が多く発生する事例にスポットを当て、作業中の危険回避、災害防止
に役立つ DVD 映像教材とする。
(1)「導入」
、
「本編」及び「まとめ」の 3 部構成とし、収録時間は約 25 分程度とする。
(2)
「導入」の部では、保育士の公務災害発生率の上昇や災害の傾向を図表により説明し、保育士
の仕事の特性(幼い子どもを相手にするため、腰部、頸肩腕等を痛めることが多い、子どもに
起因する災害が多い等)について認識させる。
(3)
「本編」の部では、保育所の危険箇所や保育士の行動における問題点を認識させ、公務災害が
多い事例を示しながら、注意点や防止対策について説明する。
(4)
「まとめ」の部では、本編での流れに沿って注意事項をまとめ、特に注意すべき事項等を繰り
返しにより確認する。
3 構成ごとの映像と説明
(1)
「導入」の部(3 分程度)
① 最初に、注意を引くために災害発生時の映像・イラスト(園児を抱っこして腰を痛める・段
差につまずき転倒する・不意に園児が飛びついてきて転倒する等)を入れ、保育士の災害の特
徴を認識させる。
② 次に、保育士の公務災害発生率が上昇していることや、どのような災害が多く発生している
かを、図表等を掲げ説明する。
(2)
「本編」の部(17 分程度)
①
②
まず、保育所を見渡し、災害を起こしやすい場所・設備を、屋内と屋外に分けて説明する。
次に、保育士の危険な行動を、1 日の保育業務の流れに沿って説明する。管理監督者向けに、
調理員の災害についても若干取り上げる。
③
危険箇所や行動は、公務災害の多い事例を挙げ、それぞれ「災害発生→発生原因の解説→
対策の解説」の順に説明する(災害事例及びアドバイスは「別紙」のとおり)。
④
災害事例の数については、発生頻度の高い事例を基本にして選出し、本編映像時間を勘案
して選択する。
(3)
「まとめ」の部(5 分程度)
① 各業務別に注意事項を振り返り、復唱して注意喚起、災害防止を認識させる。
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②
法令では各保育所が一つの事業場と見なされるので、職員数によって衛生推進者等を配置
しなければならないことや、保育所のトップである所長・園長には職員の意見・要望を聴く
場を設ける必要があることを説明する。
③
不幸にも公務災害が発生した場合には、直ちに所属へ報告し、速やかに医療機関を受診し、
認定請求書を所属を通じて地方公務員災害補償基金支部に提出するよう、一連の手続きを図
で説明する。
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監修、著作権及び複製権
公務災害防止啓発映像教材(保育事業)制作委員会が映像教材内容の検討、審査、監修等を行う
こととする。なお、DVD の著作権及び複製権は地方公務員災害補償基金に帰属するものとする。
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その他
(1) DVD 映像教材は、保育士を対象として、自己学習、集団研修、職場内ミーティングに使用
できるものとして作成する。
(2)撮影ロケは、都内の公立保育所の撮影協力を得て、保育施設、遊具等を使用して、当該保育
所の管理の下に実施することとする。
以
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上
別紙
災害事例及びアドバイス
場所・設備
【 屋内 】
1 段差 (つまずき等による転倒)
(事例 1)園児を抱きながら保育室に入ろうとしたところ、入り口の段差につまずいた。
(アドバイス)屋内には、いたるところに段差があります。玄関や保育室の出入り口にある段差をはじ
めとして、手洗い場の前やトイレの出入り口、保育室内の畳敷きやマット敷きの部分、窓のサッシの
レールなど、あらゆる場所にあります。低い段差は見落としてしまうことも多いため、特に注意が必
要です。また、園児を抱いていると、ますます足元が見えづらくなったり、注意が園児の方に向いて
足元が疎かになったりして危険です。市販の段差スロープなどを利用して段差を解消しましょう。解
消できないときは、黄色テープで注意表示をするなどの対策をとってください。
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階段 (踏み外し等による墜落・転倒)
(事例 2)机を運んで 2 階から 1 階へ階段を降りていた際、足元が見えず、あと 3 段というところでバラ
ンスを崩し足を踏み外した。
(アドバイス)階段では、バランスを崩しやすい下りでの事故が圧倒的に多く起こっており、特に最後
の 2~3 段での事故が目立ちます。階段の両側に手すりを設置し、降りるときは手すりを持つことを習
慣化しましょう。手すりは 2 段設置しておくと、大人・子ども両方が利用できます。足元が見えない
とき、手すりを使うことができないときは決して急がず、特に最後の 2~3 段は注意を集中してくださ
い。最上段と最下段に黄色の滑り止めテープを貼っておくと、さらに安全です。激突防止のために、
上り方向・下り方向の表示も忘れずしておきましょう。
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通路 (通路上の物への激突・転倒)
(事例 3)保護者対応をしようと保育室から急いで出て行ったら、出入り口そばにある長椅子の角に足を
ぶつけた。
廊下に椅子や机などが置かれていることがありますが、特に出入り口周辺に置いてあると、ぶつか
りや引っ掛けの原因になるので危険です。通路には物を置かないようにしてください。やむをえない
場合は、片側のみの設置とし、テープで設置範囲や高さを示してください。
4
引き戸・開きドア (手などの挟まれ)
(事例 4)トイレで園児の排泄指導後、引き戸を閉めたところ、勢いが付き過ぎて手を挟んだ。
(アドバイス)園内には多くの引き戸があり、開け閉めの際には職員も園児も手を挟みます。滑りの悪
い箇所は滑りをよくするほか、戸の縁にゴムやスポンジのクッションを貼ったり、洗濯ばさみ・消し
ゴム・市販の指挟み防止ストッパーなどを利用してすき間を作ったりと、各園で工夫して指挟み防止
に努めてください。
引き戸だけでなく、開きドアも危険です。玄関や非常口を開放しておく場合は、全開にしてしっか
り固定してください。屋内のドアには指挟み防止ストッパーやガードを設置しましょう。
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防災設備 (火災)
(アドバイス)消火器、消火栓、火災報知器や緊急避難口は、緊急時に使用できるよう日頃から備えて
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おかなければなりません。消火器は所定の場所に必要数が設置され、定期的に点検を行っているか、
防災設備の前には物がなくスペースが確保されているか、防災設備の表示は遠くからでも分かるか確
認してください。また、火災発生時に迷わず行動できるよう、消火器の配置図を作成して全員で場所
を確認しておくとよいでしょう。
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設備の角部 (角部への激突)
(事例 5)園児を抱えて座らせようとしたところ、左足を滑らせバランスを崩して転倒し、木のテーブル
に右頬をぶつけた。
(アドバイス)園児が元気に遊び回る場所では、常に誰かが転倒する可能性があります。転倒した拍子
に、頭をどこかにぶつけるかもしれません。すると、机や棚、流し台、箱、ピアノやオルガン、窓枠
などの角はすべて危険性の高いことが分かります。ぶつかる可能性のある角部にはもれなく角当てを
取り付けることをお勧めします。
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重量物 (倒壊・飛来)
(アドバイス)重量物はめったに倒れることはありませんが、いつ地震が起こるかわからない日本では、
転倒防止対策は必須です。物が倒れたり滑ってきたりすると、けがをするだけでなく、避難経路を塞
がれる可能性もあります。ピアノ・オルガン・テレビ・コピー機・プリンター・棚・ロッカー・靴箱・
長尺物などは固定されているか大人の目線、子どもの目線両方でチェックしてください。
また、地震対策としては物の落下防止にも気をつけてください。棚やロッカーの天板・上部に物を
置いていないか、額縁や時計、ボードなどが壁面にしっかりと固定されているかを確認します。
棚には、横にひもを張ったり、棚板の手前にストッパーとして木の棒を取り付けたりすると、物の
落下防止に効果的です。
物の置き方にも注意が必要です。重い物を下に、軽い物を上に置く、長い物やすわりの悪い物は寝
かせておく、立て掛けた時は縛っておく、転がる物はかませものをするなどしましょう。
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休憩室・休養室 (整理整頓)
(事例 6)休養室で休もうとしたが、多くの物品が置いてあり、横になるスペースがなかった。
(アドバイス)休憩室や休養室に物品などを山積みにしていると、職員が横になるスペースが確保でき
ません。本来の目的のために整理整頓を徹底し、横になれるスペースをつくってください。
「整理」とは必要な物と不要な物を区別し、不要な物を捨てること、
「整頓」とは必要な時に必要な
分をすぐに取り出せるよう並べて収納することです。休憩室・休養室に限らず、倉庫の中や事務室な
ど、施設内はどこでも整理整頓が必要です。整理整頓を徹底すると、広いスペースで作業でき、必要
な物がすぐ取り出せるので、事故が起きないだけでなく作業の能率もアップします。整理整頓に努め
ましょう。
なお、休憩設備・休養室の設置は法令で規定されていますので、保育所の規模に合わせた休憩設備
や休養室の整備が必要です。
【 屋外 】
9 段差 (つまずき・踏み外し等による転倒)
(事例 15)テラスから園庭に出ようとしたとき、テラスの 10 ㎝ほどの段差でバランスを崩し、右足首
をひねって転倒した。
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(アドバイス)テラス、洗い場、玄関周辺や門など、屋外にも段差は数多くあり、転倒災害が起こって
います。特に、テラスの段差や玄関ポーチのステップで災害が多発しています。市販の段差ステップ
が使用できないか検討し、無理な場合は滑り止め付きの黄色テープなどを貼って注意喚起しましょう。
10 地面の凹凸 (転倒・無理な動作)
(事例 16)鬼ごっこ中に後ろを見ながら走り出したとき、地面から突き出ていた木の切り株に気付かず
右足が接触し、転倒して顔面を打った。
(アドバイス)園児が穴を掘ったり、木の根が飛び出していたり、園庭の地面には凹凸があります。足
を取られたり園児の乗る三輪車やスクーターが転倒したりする危険があるので、園児が遊んだ後はす
ぐに点検して穴を埋め戻し、木の根などには周囲にプランターを置くなどしてガードしてください。
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側溝 (滑りによる転倒)
(事例 17)プールの水を止めようと走っていたとき、側溝の蓋(グレーチング)で滑り転倒した。
(アドバイス)側溝の蓋の表面が滑らかになっていると、水などに濡れたとき転倒のおそれがあります。
滑り止めの付いた蓋に替えることをお勧めします。また、側溝の周囲に段差がある場合は色表示して
注意喚起してください。蓋が古くなって腐食が進行していると、踏み抜くおそれもあります。定期的
に点検が必要です。
12 門 (防犯対策)
(アドバイス)門に施錠していますが、外側から容易に開けられる状態です。いつ不審者が侵入してく
るか分かりません。外側からは解錠できないような施錠方法を考えてください。
13 駐車場 (つまずきによる転倒)
(事例 18)退勤時、雨天の上に駐車場付近には外灯がなく真っ暗だったため、車止めの縁石につまずき
転倒した。
(アドバイス)駐車場には白線やロープを引いて駐車位置を表示し、車止めには目立つ色で表示をして
おきましょう。暗い場所には外灯を設けるなどの措置も必要です。職員用と外来者用の場所を分けて
おけば、外来者の来訪が直ぐにわかり、防犯にも役立ちます。駐輪場も同様にしてください。
14 散歩場所 (激突・転倒など)
(事例 20)市内公園にて、保育散歩中に高さ 50 ㎝の円形ステージから足を踏み外し、落ちそうな子どもを両
手で受け止めた際、体勢を崩し、顔面をコンクリートの地面に打ち付けたことにより負傷した。
(アドバイス)散歩などの園外保育は、日頃慣れている園内と違って危険箇所を見落としがちです。利
用する散歩道や公園などには事前に下見に行き、危険箇所をチェックしておきましょう。遊具につい
ても、園内の遊具と同様の点検をして、危険箇所がないか調べておくと安心です。
また、事故が起こった箇所、ヒヤリとしたりハッとしたりした箇所は、地図に落とし込んでヒヤリ
マップを作り、皆で情報共有しましょう。
保育士の行動
【室内遊び】
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園児の行動に起因する災害
(事例 7)遊戯室で女児を抱っこして座っていたところ、後ろから 5 歳男児が勢いよく背中に飛び乗った
ため、首が前方に折れ曲がった。時間の経過と共に首の痛みが増し、動かせなくなった。
(アドバイス)園児が飛びついてきたり、おもちゃを振り回して当てられたり、突然立ち上がって頭を
ぶつけられたりと、園児に関係する災害は後を絶ちません。園児の行動は予測しがたく、対策をあき
らめてしまいがちです。実際、設備的な対策が取りにくく、職員一人ひとりの危険に対する感受性に
依存せざるをえない面があります。園児一人ひとりの行動特性を皆で共有する、災害事例の情報を積
み重ねてそれを定期的に教育する、危険予知訓練を活用するなど、日頃から危険に対する意識を培っ
ておくことが大事です。
【おむつ交換・排泄】
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腰痛
(事例 8)おむつ交換のため中腰の姿勢で乳児を持ち上げたところ、腰を痛めた。
(アドバイス)保育士は園児と接する際に、前かがみや中腰といった腰に負担のかかる姿勢になりがち
です。園児を抱き上げるときは、腰を落として園児を体に近づけ、前かがみになったり体をひねった
りしないようにしましょう。正しい作業姿勢・動作を身につけるとともに、ストレッチ体操などを行
うと腰痛予防に効果的です。
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腰痛
(事例 9)汚物槽の高さが低く、作業するたびに腰が痛くなる。
(アドバイス)汚物槽や浴槽の高さが低いと前かがみの作業になり、腰に負担がかかります。設備の更
新時には、適切な高さ、深さの汚物槽にするようにしてください。
一般的に、作業する際の作業面の高さは、肘の高さに合わせると、肩や前腕、腰への負担が最小に
なると言われています。作業面が低いときは作業面を上げる、作業面が高いときは踏み台を使用する
などして肘の高さに近づけ、体への負担を減らしましょう。
【園庭等での遊び】
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無理な動作
(事例 21)鬼ごっこで鬼役として園児を追いかけ、方向転換しようとした時に右アキレス腱を負傷した。
(アドバイス)運動中では、鬼ごっこのほか、サッカーやドッジボール、ダンスなどで災害が多く起こ
っており、走り始めやジャンプしたとき、方向転換したときに集中しています。特に 40 歳から 50 歳
代の中高年齢者は、体力も運動能力も衰えてくることをしっかりと意識して行動してください。朝礼
時に全員で体操を行うとともに、運動の前にはストレッチをしましょう。
中高年齢者が注意しなければならないのは、運動だけではありません。日常の業務の中でも、特に
転倒災害には注意が必要です。物につまずく、階段や段差などでバランスを崩す、園児のとっさの動
きに対応できない、といったことから転倒災害が起こっています。業務中だけでなく、日頃から筋力
や体の柔軟性を鍛える運動を生活の中に取り入れることも大切です。
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プール
滑りによる転倒
(事例 19)プールを清掃中、水に濡れた部分に足を滑らせ、左腕と臀部を強打した。
(アドバイス)プールに限らず、濡れた床は転倒災害が非常に起こりやすい場所です。プールを清掃す
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る時は耐滑性の靴・サンダルを履く、プールの床面に塗料などで滑り止め措置を施す、などの対策を
考えてください。
【散歩等の園外保育】
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熱中症
(事例 22)園児を引率しての散歩中、めまいや頭痛が起こって次第に立っていられなくなり、吐き気や
嘔吐も始まったため医療機関を受診したところ、熱中症と診断された。
(アドバイス)熱中症は、屋内外を問わず、高温多湿の環境ならどこででも起こり得ます。天気予報で
その日の熱中症情報を確認し、危険度を目立つ場所に掲示して注意喚起しましょう。
なお、職員は自分のことは後回しにしがちですが、自身に対してもしっかり対策をとってください。
熱中症を予防するには、日頃の健康管理も重要ですから、朝礼時にチェックリストなどを活用して健
康状態を確認し、体調の優れない職員には無理をさせないよう配慮しましょう。
【給食・おやつ】
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調理員の災害
(事例 10)かぼちゃのヘタを取ろうとした際、皮が硬いため力が入ってしまい、左手親指に包丁が当た
り負傷した。
(アドバイス)同じ食材を切るときでも、人によって切り方が異なる場合があります。安全な作業とす
るためには「正しい作業を行うこと」が大原則です。作業方法を統一して手順書・マニュアルにまと
め、常にその手順通りに作業を行ってください。特に、新規採用職員を迎える際は、
「包丁の使い方く
らい知っているはず」と決めつけず、基本的な教育をしっかり行い、正しい作業の知識を身につけさ
せましょう。一度で身につかない場合は、教育を繰り返し行ってしっかり習得させます。
なお、労働安全衛生規則の改正により、平成 25 年 10 月から、食品加工機械について、機械の危険
な部分への覆いの設置や、食品の原材料の送給・取り出しの運転禁止、用具の使用などが義務付けら
れました。現在使用中の機械にも適用されるので、野菜裁断機、皮むき機やミキサーなどを使用して
いる場合は適切な措置をとってください。
他に調理員の災害では、熱湯や蒸気によるやけど、濡れている床やグレーチングでの転倒が問題に
なっています。熱湯や蒸気を浴びるおそれのある作業は保護手袋をするなど正しい手順通りに作業を
行うこと、床面は濡れたらすぐふき取るようにし、グレーチングは凹凸の付いたものを設置するか滑
り止め加工をしてください。グレーチングや調理員の靴底が摩耗していないかを定期点検することも
大事です。
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腰痛
(事例 11)給食の際、しゃがんだ状態で園児の食事を介助していたら腰が痛くなった。
(アドバイス)中腰やしゃがんだ姿勢で体を曲げる・ひねるなどの動作をすると、腰部に負担がかかり
ます。椅子に腰かけて作業するか、床に膝をつけて作業することをお勧めします。膝をつく場合は、
膝パットの装着や膝パット付き作業ズボンの着用で、膝を保護するとよいでしょう。
また、給食時には机・椅子や配膳台などを室内に出すので、足をぶつけたりつまずいたりすること
が多くなります。動作がしやすいよう、スペースを確保しておくことも大切です。
【睡眠・午睡、休憩、準備】
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腰痛・視力低下
(事例 12)午睡中の暗い部屋で、子ども用の椅子と机を使って連絡ノートを書いていたら、腰が痛くな
った。
(アドバイス)カーテンを閉め暗くした部屋で、子ども用の小さい椅子、低い机を用いてに日誌や記録
をつけています。照度が不足しているだけでなく、足腰を痛める可能性もあります。成人用の机・椅
子を用意し、スポットライトなどで必要な照度を確保してください。
10 高所からの墜落
(事例 13)保育室内の装飾作業を、ロッカー上の棚の上に乗って行っていた。棚から降りようとした際
に、踏み台にしていたピアノ椅子がぐらつき、転落して床に後頭部を強打した。
(アドバイス)高所で作業するときは、折り畳み椅子やピアノ椅子のような不安定な足場を使用せず、
脚立や上枠付きの踏み台を使ってください。
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高所からの墜落
(事例 14)壁に掲示していた園児の絵を外すため脚立に上がったところ、脚立が急に開き出し、右足を
はさまれたまま脚立ごと転倒し、下半身を強打した。
(アドバイス)高所で作業する際に用いる脚立は、使い方を誤ると大けがを引き起こすこともあります。
水平で安定した床面に設置し、開き止め金具を確実にロックする、2 人で作業する、物を持って昇降し
ない、天板に乗って作業しない、踏み桟を背にして作業をしない、などの使用法を管理監督者は作業
者に確認してください。職員を集め、簡単な講習会を開くと効果的です。
【屋外作業】
12 剪定等による受傷
(事例 23) 園庭の木の剪定を、電気のこぎりを使用して行っていたところ、電気のこぎりの歯が左人
差し指先端に触れ、受傷した。
(アドバイス)樹木の剪定や草刈りに電気のこぎりやヘッジトリマー、刈払い機などを用いる場合は、
予め作業マニュアルを作って正しい作業手順を示し、その手順通りに作業を行うようにしましょう。
安全な作業をするためには、正しい作業方法を行うことが大事です。たぶん大丈夫だろう、といい加
減な理解のままで使用すると、取り返しのつかない災害になることもあります。
また、屋外作業では、ハチや蚊、毛虫などの虫に刺されることも少なくありません。長袖、長ズボ
ン、手袋、帽子など、服装についてもマニュアルに記載して徹底しましょう。
【その他~行事】
13 慌てた行動による転倒など
(事例 24)保育業務中、運動会リハーサルの準備のスケジュールを確認する必要があったため、保育室
から事務室へ急いで走って向かっていたところ、中庭を通り過ぎる際に、足がもつれてバランスを崩
し、壁に倒れ込むように衝突した。
(アドバイス)保育所にはさまざまな行事があります。しかし、普段やり慣れている作業と異なるため、
想定通りに進行しないこともしばしばあります。なんとか時間に間に合わせようと、急いで移動した
り慌てて作業を行ったりすると、災害が起こりやすい状態になります。
原因を突き止めるためには、
「なぜなぜ分析」をしてみましょう。
「なぜ」
「なぜ」を繰り返して原因
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を掘り下げていくと、物事の因果関係や、その裏に潜む本当の原因を突き止めることができ、本質的
な対策に結びつけることができます。ただ単に「あわてず注意する」というだけでは、本当の解決に
はなりません。
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