会長メッセージ 企 業 活 動 の 原 点 を 忘 れ ること なく、 2015 年 4 月、田辺三菱製薬は、日本の医薬品産業発祥の地である道修町に再び本社を 移しました。当社は、田辺製薬と三菱ウェルファーマとの合併により 2007 年に発足しま したが、その創業は 330 年以上前にさかのぼります。現在の本社所在地に店舗を構えた のは、およそ 260 年前。幾星霜を経て、国内だけではなく、世界に向けて新薬を創製する 企業へと成長しました。 その長い歴史の中で、当社を取り巻く事業環境は絶えず変化してきました。近年の 変化はとりわけ急激で、かつ、私たち新薬メーカーにとって想定以上に厳しい方向に 向かっています。新薬創出確率の低下、市場構造の変化といった世界的な大きな流れ に加えて、国内では、医療費抑制を目的とした薬剤費削減策の強化が一層進みました。 長期収載品に対するジェネリック医薬品の影響が急速に拡大しており、これまで国内の 新薬メーカーが重要な収益源としてきた長期収載品の収益力は大幅に低下しました。 このような変化に対応するために、製薬企業各社はビジネスモデルの転換を図ってい ます。研究、開発、生産、営業など、すべての機能を自社単独で完結させるようなビジネ スモデルは限界を迎えており、M&A や他社との協業、経営資源を投下する事業の選択 と集中など、あらゆる手段を用いて、新たなビジネスモデルの構築を進めています。 また、創出される新薬の数が限られてくる中で、その一つひとつの価値を高めていく 「育薬」がこれまで以上に重要となっています。新薬の開発に再投資する資金を確保 するためには、営業活動やライフサイクルマネジメント戦略を通じて、収益の最大化を 図る必要があり、加えてそのスピードアップも求められます。 18 田辺三菱製薬コーポレートレポート 2015 新たな 価 値 の 創 造に挑 み つづける 当社も事業環境の変化に対応し、自らを変えていかなければなりません。 「中期経営 「新たな価値を創造しつづける企業」への変革を進めてきました 計画 11-15 」のもと、 が、その取り組みをさらに加速させていかなければ、この急激な変化には対応すること はできないと認識しています。 しかし、いかなる変化の中にあっても、私たちのあらゆる事業活動の原点には、 「すべ ては患者さんのために」という共通の思いがあります。 「中期経営計画 11-15 」は最終 年度を迎えましたが、 「新たな価値の創造」に向けた挑戦は、患者さんがいる限り終わる ことはありません。アンメット・メディカル・ニーズに応える新薬を創製し、その価値を最 大化することで、世界の人々の健康に貢献する。それこそが、当社が持続的成長を実現 する上で成し遂げるべき最大の課題であり、製薬企業としての社会的責任であると考え ています。株主・投資家をはじめとしたステークホルダーの皆様には、今後とも当社へ の一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。 2015 年 8 月 代表取締役会長 田辺三菱製薬コーポレートレポート 2015 19
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