抗原提示および腫瘍細胞障害に おける共抑制シグナルの関与 新潟大学医学部保健学科 検査技術科学専攻 M12d328k 山口友美 背 景 がん免疫を賦活する腫瘍免疫療法の臨床試験におい ては、必ずしも満足できる成績は得られていない。その 理由としては、抗原提示段階における免疫抑制機構の 存在、および共抑制シグナルを利用した腫瘍細胞の免 疫監視機構からの逃避反応が想定されている。 近年、免疫逃避/抑制機構を阻害することによるがん 免疫療法の有用性が確認され、共抑制シグナルに関 する研究とその応用が注目されている。 目 的 抗腫瘍免疫療法における共抑制シグナルの関与につい て、抗原提示段階および腫瘍細胞傷害段階について以 下の点を明らかにする。 v 抗原提示段階においては、抗原提示細胞(樹状細 胞)の共抑制分子の発現様式およびその成熟度との 関連について v 腫瘍細胞傷害段階においては、混合リンパ球ペプチ ド培養で誘導した抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL) の共抑制分子の発現様式について 樹状細胞ーT細胞間の共刺激/共抑制シグナル ペプチド 樹状細胞 MHC CD80 or 86 CD80 or 86 CD200(OX2) TCR CD28 CD152(CTLA-4) CD200R CD270(HVEM) CD272(BTLA) CD273(PD-L2) CD279(PD-1) CD274(PD-L1) CD279(PD-1) CD276(B7-H3) Gal-9 B7-H4 ? CD366(TIM3) ? T細胞 単球由来樹状細胞(moDC)の誘導法 末梢血附着細胞 (単球) 未熟単球由来樹状細胞 未熟単球由来樹状細胞の誘導 • GM-CSF 100 ng/ml • IL-4 10 ng/ml を加えて CO2 インキュベーターで 37 ℃、6 日間培養する。 成熟単球由来樹状細胞 成熟単球由来樹状細胞の誘導 • LPS 0.1 µg/ml • IFN-γ 1,000 U/ml を加え CO2 インキュベーターで 37℃、24 時間培養する。 単球由来樹状細胞 (moDC)における共刺激/接着分子の発現と 成熟度 との関連(代表例) CD1a CD1d CD29 CD40 5.39 0.94 61.0 7.70 13.1 1.04 88.8 53.0 CD49d CD54 (VLA4α) (ICAM-‐1) 2.95 5.21 未熟moDC 3.89 15.9 成熟moDC CD58 CD80 CD83 (LFA-‐3) (B7/BB1) (HB15) 2.65 2.71 1.13 CD86 (B7-‐2) 24.3 CD209 HLA-‐DR HLA-‐ABC (DC-‐SIGN) 36.6 2.47 5.16 未熟moDC 5.77 成熟moDC 50.0 4.39 240.9 96.3 5.14 3.49 単球由来樹状細胞 (moDC)における共抑制分子の発現と 成熟度との関連(代表例) CD200 (OX2) 1.30 CD270 CD273 (HVEM) (PD-‐L2) 3.44 1.54 CD274 CD276 (PD-‐L1) (B7-‐H3) 9.29 66.4 Gal-‐9 B7-‐H4 1.76 1.06 2.59 1.18 未熟moDC 2.17 成熟moDC 4.99 5.25 128.4 52.6 単球由来樹状細胞 (moDC)における共刺激/抑制分子の発現と 成熟度との関連(n=3) 未熟moDC 成熟moDC 共刺激・接着分子 共抑制分子 樹状細胞ーT細胞間の共抑制シグナル ペプチド 樹状細胞 MHC CD80 or 86 CD80 or 86 CD200(OX2) TCR CD28 CD152(CTLA-4) CD200R CD270(HVEM) CD272(BTLA) CD273(PD-L2) CD279(PD-1) CD274(PD-L1) CD279(PD-1) CD276(B7-H3) Gal-9 B7-H4 ? CD366(TIM3) ? T細胞 混合リンパ球ペプチド培養法(MLPC法) 末梢血20mlを採取 5 U/ml トロンビン加 37℃, 1〜2時間 血漿 血清 細胞数 3×105/100µl, CMVpp65 5µg/ml 5%自己血清加培養液 (RPMI1640) 100µl/well ずつ well に播種 3,000rpm, 10分間遠心 比重遠心 CMVpp65ペプチド TCR CD8 96wellプレート 分離された 末梢血単核球 3日後 5%自己血清, IL-2 50U/ml加培養液100µl/well加える 3日後 MHC classⅠ 抗原提示細胞 CD8+T細胞 各wellから上清を100µlずつ除き、新たに5%自己血清, IL-2 50U/ml加培養液を100µl/wellずつ加える。 活性化 *2日ごとに繰り返す。 CMVpp65ペプチド 特異的TCR 培養2週目 CD8+T細胞 各wellについてCMVpp65 テトラマー 陽性 CD8+T細胞の割合をFACSを用いて解析する。 混合リンパ球ペプチド培養(MLPC)法で誘導した CMVpp65特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の継代培養法 MLPC法で 2週間培養後の 細胞 2日ごとに 半分ずつ培地交換 1週間後 新しい培地を 加える ウェルの細胞を 2つに分ける 1週間後 2つのウェルから 細胞を回収し 24ウェルプレートで培養 1週間後 継代培養22日目 (MLPC開始後36日目)に テトラマー解析 CMVpp65特異的細胞傷害性T細胞(テトラマー陽性 細胞)は共抑制分子を発現していない ウェルNo.1 CMVpp65 tetramer 005/+/PD-1.005 ウェルNo.2 ウェルNo.3 007*/+/CD200R.007 3.33 007/+/CTLA4.006 3.40 10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 CD8 PerCP/Cy5.5 ウェルNo.4 008/+Tim3.008 3.25 10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 CD8 PerCP/Cy5.5 ウェルNo.5 018/+/BTLA.018 3.25 3.28 10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 CD8 PerCP/Cy5.5 10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 CD8 PerCP/Cy5.5 10 0 10 1 10 2 10 3 10 4 CD8 PerCP/Cy5.5 100 CD8 PerCD/Cy5.5 0.47 99.53 BTLA CD272(BTLA) 96.07 0.00 CD366(Tim3) Tim3 91.80 3.93 CTLA4 CD152(CTLA4) 8.20 CD200R PD-1 CD279(PD-1) CD8 PerCP/Cy5.5 0.47 99.53 結論 v 成熟樹状細胞は種々の共抑制分子を発現しており、 樹状細胞の臨床応用に際しては、抗体等による共抑 制分子の阻害処理を併用することにより、その有効 性が高まる可能性が想定された。 v 混合リンパ球ペプチド培養で誘導した抗原特異的細 胞傷害性T細胞においては、共抑制分子の発現が認 められなかったことから、その細胞活性が十分保たれ ていることが確認され、臨床応用における有用性が 示唆された。 謝 辞 v 新潟大学医学部保健学科 内山孝由 成田美和子 高橋益廣
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