「しまなみ海道」魅力向上へ寄与 パーキングエリアや料金所、バス事業で

本四バス開発 株式会社
「しまなみ海道」魅力向上へ寄与
パーキングエリアや料金所、バス事業で
地元のニーズ・観光客の要望に応える
今回お訪ねしたのは、尾道市にある本四バス開発の本社。風光明媚
な「しまなみ海道」を、パーキングエリアの運営や、料金所運営、道
路維持管理で支える企業です。さらに路線バスや貸切バス事業で、
地元住民と観光客のニーズにも応えています。現在、同社をリード
するのは、知的で穏やかな笑顔の山根哲士社長。3年前に入社、昨
年社長に就任し、銀行勤務で積み重ねた知識・ノウハウを生かして、
サービス向上や人材育成に力を注いでいます。内に秘めた熱い情
熱で、前へ、前へと前進を続ける山根社長に、お話を伺いました。
「しまなみ海道」架橋による
転業・転職の受け皿を
「しまなみ海道」は、美しい海や島々の景色を眺めな
がら、尾道市と今治市の間を10本の橋で結ぶルートで
す。
この「しまなみ海道」開通に伴い、
廃業せざるを得な
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尾道駅にほど近い本社事務所
てやっている」
という意識があったそうです。
徐々に
「お客
さまに乗っていただいている」
という姿勢への変換を図り
ながら、
対応を進めてきました。
委託先との三位一体で
「しまなみ海道」の魅力向上へ
くなった尾道∼今治間の定期航路を有していた旅客船
当社が行っている
「しまなみ海道」の料金所での料金
事業者が、
その転業・転職の受け皿として設立したのが
収受と道路維持・管理は、
本州四国連絡高速道路株式
当社の成り立ちです。
会社からの委託、
PA営業についてはそのグループ会社
昭和56年にまず、
因島と向島を結ぶ「因島大橋」が開
のJBハイウェイサービ
通するにあたって中四開発株式会社が設立されました。
ス株式会社からの委
昭和58年に設立された本四バス株式会社と、
「しまなみ
託を受けています。両
海道」が全通した平成11年に合併し、
現在の本四バス
社の施設を利用させて
開発株式会社が誕生しました。
業務の中心は有料道路
いただきながら、
弊社の
の料金所やパーキングエリア
(PA)
の運営、
路線バス・貸
スタッフが業務を行っ
切バスの運行などです。
お客さまと従業員に
「安全」
を提
ています。会社設立に
供することを最優先に、
併せて「安心・快適」
を提供する
至る過程、
また業務委
ことを基本理念としてきました。
当初の従業員は、
旅客、
託開始までの過程では
車両を運搬していた
“海の男”
が中心で、
どこかに「乗せ
紆余曲折があったこと
ワイエムビジネスレポート 2015.9月号 No.83
料金所では接遇マナー向上を目指して
います
企業レポート/本四バス開発 株式会社
ちょっとした問題があったときの接遇の改善です。
現場で
は今
、年
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線
働く従業員は因島などの島の住民がほとんど。
島に暮ら
す皆さんならではの素朴で温かい人柄を生かしながら、
その場に合った対応ができるように、
研修などを実施して
います。
路線バスは「社会の公器」
収益体質を構築して継続を
弊社の事業のもう一つの柱がバス事業です。
尾道市
や因島市、
瀬戸田町など近隣の路線バスと、
広島∼尾
道∼因島
(フラワーライナー)
、
福山∼尾道∼松山
(キララ
エクスプレス)
、
福山∼因島(シトラスライナー)
の高速乗
フードコートから海が見渡せます
人気メニュー
「タコ天丼」
合バス、
さらに貸切バスを運行しています。全国的に乗
合バス事業は、
少子高齢化とモータリゼーションの進展
と思いますが、業務開始以来、相互理解による信頼関
に、
いわゆる
“1000円高速”
によるバス離れが追い打ちを
係を強めてきました。
「しまなみ海道」
を利用する皆さま
かけ、
業界の8割が赤字経営といわれるほど厳しい状況
に安全・安心・快適を提供するために、
三位一体のパー
です。
バスは1台数千万円と高額で、
さらに広い車庫も必
トナーシップを実践しています。
私は銀行出身で、
当社に
要な装置型産業とあって利益が出にくいのは事実です
は平成24年からお世話になっています。
礎を築いてくだ
が、路線バスは地元の皆さんの生活を守る
「社会の公
さった諸先輩方や関係各位には、
感謝してもしきれない
器」
ともいえるものです。
補助金ありきではなく、
新規車輛
思いです。
の導入や停留所の見直しなどの努力を惜しまず、
収益
今年4月3日、大浜PA下り線ハイウェイショップのリ
体質の構築で運行を継続していきたいと思います。
例え
ニューアルオープンにあたっても、
三位一体の力が発揮
ば瀬戸田町には、
好きなところで乗降できる
「フリー乗車
されました。
リニューアルのきっかけは、
JBハイウェイサー
区間」
を設けました。
また、
広島∼尾道∼因島を結ぶフラ
ビス株式会社からの「大浜PAの景色は素晴らしいと評
ワーライナーでは、
広島市内に新白島駅が誕生したこと
判なのに、
今の建物では十分に味わっていただけていな
を受けて白島に停留所を追加、
JR山陽本線への乗り換
いのでは」
という助言でした。
バックヤード以外は全面ガ
ラス張りにするというデザインを採用していただき、
開放
感あふれるレストラン・売店とも非常に好評です。
「瀬戸内
海らしい景色を眺めながら食事ができる」
と喜びの声を
いただいています。
レストランのメニューでは、
地元の尾
道ラーメンや海産物を使ったタコ天丼などが人気です。
新メニューの導入にあたっては、
JBハイウェイサービス株
式会社の方々に試食をしていただき、
いつも有益なアドバ
イスをいただいています。
また、
料金所での料金収受業務においては、
現在、
9
割の方がETCをご利用のため、
現金の取り扱いは少なく
なってきています。
課題は、
ETCの障害があったときなど、
活﹁
し
用ま
さな
れみ
る海
貸道
切﹂
バな
スど
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観
光
に
路地
線元
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庫か
せ
な
い
ワイエムビジネスレポート 2015. 9月号 No.83
7
社 是
安全・安心・快適 プラスα
には大浜下り線が広島県最後のPAになります。島なら
ではの味・土産に加え、
熊野筆などの「広島ブランド」、
尾
道帆布などの「尾道ブランド」が非常に好調です。
また、
お土産を買い忘れた方のために、
山陰の代表的なご当
地土産も取り扱うようになりました。
これからもお客さまの
因
島
と
向
島
を
結
ぶ
﹁
因
島
大
橋
﹂
ご希望をくみ取りながら、
商品のバリエーションを豊かに
していきたいと思っています。
一人ひとりの能力開花へ
人事制度や評価制度を見直し
「松下電器は人をつくる会社です。
あわせて電気製品
を作っています」。
これは、
松下幸之助氏の言葉ですが、
当社においてもそうありたいと考えています。
ある意味、
当社では、
これまで人材育成が後回しにされてきた感が
えが便利になりました。今後も、
ご利用いただく皆さまの
あります。
社員の持つ能力を評価し、
それを生かすことで
ニーズから目を離さず、
スピード対応を重視していきます。
従業員も会社もともに成長していきたい、
という願いを込
「よそもの」目線で
地域の宝を発信したい
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めて、昨年から今年にかけて、人事制度や評価制度を
見直しました。
その一例が、
料金所収受員の異動・昇進
のルール化や、
パーキングエリアのパート社員の準社員
「しまなみ海道」は最近、島々と海が織り成す景観を
登用・自己目標管理とその評価です。
「発注ができるよう
目当てに海外のお客さまが急増しています。私どもの貸
になりたい」
「もっと笑顔を出せるようにしたい」
など、
身近
切バスも、
台湾や香港などからのお客さまに多数ご利用
な目標を掲げることで、
日頃の仕事に意欲を感じていた
いただいています。地元にずっと住んでいる方にとって
だければと思っています。人材育成にあたっては、時に
の「当たり前」が、
「宝物」
と評価されているのですから、
厳しいことも言わなくてはなりません。
どのような場合でも、
私のような島の出身ではない「よそもの」だから見えるこ
相手に嫌われたくないといった自分本位な思惑で人に接
と、
できることもあるはずです。
例えば、
因島の除虫菊。
か
することはしないと心に誓い、
相手にとってプラスになるこ
つて因島は除虫菊の一大産地で、
島の斜面を白く染め
とを働きかけていくつもりです。
まだまだ緒についたばか
る様子は初夏の風物詩でした。学生のころ教科書で見
りで、
運用面を含め試行錯誤を繰り返している状況です
た印象的な風景を、
次世代につなぐ力になれればと、
若
が、
「ここで歩みを止めては当社の明日はない」
という気
い社員と一緒に、
個人的に「因島除虫菊の里連絡協議
持ちで臨んでいます。
「この会社で働いてよかった。
何よ
会」に参加させていただいています。地道な活動で、
県
り自分が成長できたから…」
と従業員が実感できるよう、
内外・国外の方に「しまなみ海道」の新しい魅力を発信
息切れすることなく頑張っていきたいと思います。
することも、
私たちの役割だと考えています。
当社の現在の社是は「安全・安心・快適 プラスα」。
広域に目を向けると、
今年3月に中国やまなみ街道が
「プラスα」は、
マニュアルに沿った対応ではなく、
ステー
開通し、松江から尾道まで高速道路で結ばれました。
クホルダーお一人ひとりのニーズを見極めて臨機応変に
それを機に「しまなみ海道」では山陰と四国の往来が目
対応することで生まれる
「付加価値」です。
そのために、
立って増えています。私どもの大浜PAは四国から山陰
私を含めた全社員が感性を磨き、
自由な発想で積極的
に向かう時には大浜上り線が、
山陰から四国に向かう時
にチャレンジする、
そんな職場を目指していきます。
ワイエムビジネスレポート 2015.9月号 No.83
企業レポート/本四バス開発 株式会社
社長に
お聞きしました!
私の朝時間
朝は4時ごろ起床して、血圧・体温を測
り、朝風呂に入ってから体重測定をする
のが日課。健康管理は、社会人として最
低限の自己管理です。自分の体調不良
のために、周囲に迷惑をかけたり不快感
を与えてはいけません。入浴中は、
その
日予定している商談やミーティングのイ
メージトレーニングをしたり、前日の自らの
言動で誰かを傷つけたりしなかったかを
振り返る時間にしています。
好きな言葉
「私の悪口はすべて報告せよ。
しかし、
言った人の名は言うな」。これは永野重
雄・元新日本製鉄会長の言葉です。人
の縁に恵まれ、思いがけず企業の経営
に携わらせてもらっている自分が、
ともす
れば己を過信して、知らぬ間に「裸の王
様」になってしまうのではないか…という
恐れから、
自戒の念を込めていつも意識
しています。銀行員時代の経験から、
さま
ざまな企業の盛衰を目の当たりにしたこ
とが、
ある種の
“トラウマ”
になっているの
かもしれません。
代表取締役社長
山根 哲士
概 要
<所在地>
広島県尾道市東御所町11番15号
< 設 立 >
昭和58年
<資 本 金>
5,260万円
< 従業員数 >
177名(パート、
アルバイト含む)
< 営業内容 >
一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス)/一般貸
切旅客自動車運送事業(貸切バス)/旅行業/有料
道路料金収受事業/造園土木事業(有料道路維持管
理事業)
/産業廃棄物収集運搬業/料理飲食・売店業
(パーキングエリア)
企業沿革
【中四開発株式会社】
昭和56年
持管理作業、
「 大浜レストラン」
( 現 大浜PA下り線ハイ
ウェイショップ)
を営業開始
(現 大浜PA上り線ハイウェイショップ)
を営
昭和61年 「ふれあい」
業開始
平成11年
私 の お 気 に 入り
本四バス株式会社に吸収合併され、解散
【本四バス株式会社】
昭和58年
1960∼90年代のレコード・CDのコレク
ションは300枚ほどあるでしょうか。
「あの
ころがあって現在の自分がある」
という、
自分を肯定する上で欠かせない宝物で
す。
また、
中学時代からの同級生とのサッ
カー
(実質はサッカーボールとのじゃれあ
い、
ですが)
や、友人のライブを聴きに行
く時間は、心身が癒やされる時間です。
併せて、
いろいろな人の話を聴きながら酒
を酌み交わす時間も貴重です。人の話
を聴くとそれだけで成長できる…といいま
すが、生来、天の邪鬼なところがあるため
か、
お酒が入った時のほうが素直に他人
の話に耳を傾けられるような気がします。
中四開発株式会社設立
昭和58年 「因島大橋」開通に伴い因島大橋料金収受、有料道路維
本四バス株式会社設立
路線バス運行開始
(因島∼尾道)
昭和60年
貸切バス営業開始
昭和61年
瀬戸田町営バスを譲受
平成 8年
高速バス運行開始(因島∼尾道∼広島「フラワーライ
平成 9年
高速バス運行開始
(因島∼福山「シトラスライナー」)
平成11年
現在地に本社社屋を新築移転。中四開発株式会社を吸収
ナー」)
合併し、
名称を本四バス開発株式会社と改める
【本四バス開発株式会社】
平成11年 「しまなみ海道」全通に伴い、
福山∼松山線
(キララエクス
プレス)
など路線バスを運行開始。3か所の料金所の運営
を開始。瀬戸田PA上り線ハイウェイショップを営業開始
広島営業所
(貸切バス)
開設
平成27年
大浜PA下り線ハイウェイショップをリニューアルオープン
ワイエムビジネスレポート 2015. 9月号 No.83
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