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The Endocrine Society’s 97th Annual Meeting (ENDO2015) にて研究発表を
行いました(2015/3/5-8)
テーマ:災害ストレスと婦人科疾患
場所:San Diego Convention Center (San Diego, California, USA)
災害産婦人科学分野の研究の一つである「災害ストレスと婦人科疾患」について、当研究所の三
木康宏 講師(災害医学研究部門 災害産婦人科学分野)が発表しました。米国内分泌学会が主催
する The Endocrine Society’s Annual Meeting(ENDO2015)は、世界各国から 8,000
人近い研究者が集う国際色の強い学会であり、内分泌研究を行う臨床医や基礎研究者らが議論を
交わす場となっています。当分野で得られた研究成果の一つである「Cortisol and S100P in
human endometrial carcinoma」について発表を行い、世界各国のトップレベルの研究者とデ
ィスカッションを行うことができました。以下に発表内容を紹介します。
生体はストレスを受けると副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールを分泌しますが、
長期にわたるストレスによって生体はコルチゾール過剰状態となります。我々は悪性度の高い子
宮内膜癌の組織中で、コルチゾールの濃度が高いことを報告してきました(ENDO2014)
。ホル
モンは細胞に存在する受容体と結合することで、その作用を発揮することができます。本研究で
は 1.ストレスホルモンが結合する受容体(グルココルチコイド受容体:GR)が子宮内膜癌に存
在するのか? 2.ストレスホルモンが GR に結合した後、どのようなメカニズムで癌細胞増殖
と関わるのか? に着目して検討を行いました。結果、子宮内膜癌組織では GR は癌細胞そのも
のよりも癌細胞周囲の細胞群(線維芽細胞など)により高く発現することがわかりました。また、
この癌細胞の周囲の GR の発現は、癌細胞の増殖に関与すると考えられている S100P/RAGE
という2つのタンパクの発現と相関することも明らかとなりました。これらのことから、ストレ
スホルモン:コルチゾールは GR と結合したのち、何らかの液性因子を介して S100P の発現を
誘導し、この S100P は RAGE に結合して癌細胞の増殖に関わっていると考えられます。
災害ストレスによって女性生殖器疾患が引き起こされる可能性がありますが、ストレスホルモ
ンの細胞への影響に関与する因子群を明確にしていくことで、その影響を未然に防ぐことができ
ると考えています。
左図:ストレスホルモンによる子宮内膜癌細胞の増殖.
右図:会場の San Diego Convention Center.
文責:三木康宏(災害医学研究部門)