(2015 年9月号掲載) 森林資源を利用した「上野村」の地方創生への取り組み 一般財団法人群馬経済研究所 主任研究員 ~ 要 約 伊勢 和広 ~ 1. 上野村は群馬県の最南西部に位置し、県内で最も人口・世帯数の少ない村である。村 の面積の約 96%が森林であり、産業立地として不利な地理的条件にある一方、東京電力 神流川発電所関連の固定資産税収入によって財政面では比較的恵まれた環境にある。 2.上野村は過疎からの脱却を目指し、「上野村第5次総合計画」を実施している。同計 画では、村内の森林資源を活かした林業の6次産業化を進めることによって、雇用の場 を創出することに力を入れている。 3. 林業の6次産業化では、① 林業ときのこ栽培(第1次産業)、② 間伐材・端材を原 料とした固形燃料である「木質ペレット」や木材・木製品、きのこ加工品等の製造(第2 次産業)、③ 木製品・きのこ等の販売や木質ペレットを利用したバイオマス発電(第3次 産業)、などを行っている。 4. 雇用の場の増加で、村外から移住してきた世帯の定住が進み、村の人口減少のペース もやや緩やかになり、世帯数はほぼ横ばいで推移している。 5.上野村の今後の課題としては、① 財政面の制約による限界があるため、今後いかに村 の活性化の先導役を民間へシフトするか、② 村を牽引するリーダーをいかに育てるか、 の2点が挙げられる。 6.上野村から学べることは、①「身近な森林資源を活用」して、②「雇用がある地域社 会」を目指し、③「いち早く活動を開始した」ことである。財政状況が異なる他の市町 村が上野村の手法をそのまま利用することは困難と思われるが、「森林資源」を利用で きる市町村は県内にも複数あり、林業の6次産業化をきっかけとして地域活性化を進め る価値はあると思われる。 7.「地方創生」によって近隣の市町村同士の生き残り競争が始まっている。上野村から 学ぶ、①「身近な資源の活用」、②「雇用のある地域社会」、③「いち早く活動を開始 する」、という3つのキーワードは全ての市町村の活性化策にとって必要になると思わ れる。
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