PDF( 498KB ) - 全国遠洋沖合漁業信用基金協会

第 84 号 (平成 27 年 6 月 1 日発行)
隅田川
1
最大の課題であります道東の陸上流通加工施設の受け入れ態勢が整備されれば、道東沖漁場は再び
日本有数の漁場となるものと大きな期待が寄せられております。
全国遠洋沖合漁業信用基金協会
(参考) 漁期
〒135-0034 東京都江東区永代2-31-1
(いちご永代ビル8階)
電 話 03-5646-2658
URL: http://www.zenkikin.jp
25年
26年
6
20
22
24
マイワシ
9
18
39
―
マサバ
9
21
23
―
平成
出漁隻数
24年
27年(予定)
漁獲量(千トン)
平成26年度大中型まき網漁業の状況及び今後の展開(全まき協会寄稿)
(4)
(1) 平成26年度の大中型まき網漁業の概況
① 我が国周辺水域を主要漁場とする大中型まき網漁業は、昭和63年頃まで220隻程ありましたが、そ
構造改革型漁船建造計画の全国展開
① 大中型まき網漁業の最大の課題は、老朽化した漁船を構造改革型漁船(省エネ・省人・省力化しコス
ト削減と収益性の向上を目指す)へ早急に代船建造することであります。
の後マイワシ資源の減少等により減船が行われ、平成27年1月現在97隻まで激減しています。
このため19年度からは国のもうかる漁業・がんばる漁業予算を積極的に活用し、27年3月末までに網
主要対象魚種であるマアジ、マサバ、マイワシ等多獲性浮魚の資源量はレジームシフト現象(気候・
船27隻(17年度の自主建造網船2隻を含む)、運搬船3隻、探査船1隻を建造しております。
海洋環境変動による数十年周期の魚種転換)により非常に大きく変動するため、漁獲量はマアジが昭
このうち網船18隻は北部太平洋海区に所属しており、その他の海区では沿岸漁業調整、国際漁場環
和30年~40年頃(最大は昭和40年の469千トン)、サバ類が昭和45年~55年頃(最大は昭和53年の
境等の制約のため計画通りに代船建造は進捗してはおりません。
1,326千トン)、マイワシが昭和54年~平成5年頃(最大は昭和63年の3,355千トン)をピークとしており
、周期的魚種転換がはっきりとみられます。
② 平成26年の大中型まき網漁業の水揚量は833千トン(前年787千トン)、水揚金額は1,082億円(前年
1,090億円)で、平成10年以降水揚量は80~90万トン前後で推移しておりますが、依然として我が国
の水産食糧供給産業として、また漁港地域社会経済の発展に大きな貢献をしています。
(2) 大中型まき網漁業の資源管理
① 大中型まき網漁業は、国から当該漁業に配分されたTACを厳格に管理してきました。この結果、近年
主要対象魚であるマサバ、ゴマサバ、マイワシ、マアジ等資源は順調に回復傾向となっております。
特に「マサバ太平洋系群資源回復計画(国の補助事業 平成15~24年度。25年~自主事業)」に
② 漁業者が策定した代船建造5ヶ年計画(26年~30年)では網船17隻、運搬船1隻、探査船3隻の合
計31隻(建造費429億円)の建造予定されておりますが、もうかる漁業・がんばる漁業の事業実施期
間が31年度末とされていることもあり、対応を急ぐ必要があります。
そのためには沿岸漁業者、関係地域住民、広く国民に対して大中型まき網漁業の重要な役割(最大
の水産食糧産業、漁港地域社会経済の中核)、TAC制度の下での厳格な資源管理の実施、過去の
漁獲量重視から収益性向上への転換、居住環境・安全性改善のための大型化等について更に一層
理解を深めて行くこととしております。
(5) 太平洋クロマグロ資源回復への取組み
① WCPFC北小委員会(平成22年9月)で採択された保存管理措置(未成魚(30kg未満)の漁獲量を
基づくマサバ未成魚の保護は産卵親魚量の回復に大きな役割を果たし、平成16年生まれのマサバ卓
02~04年水準より減少させる)に基づき、大中型まき網漁業は、全ての漁業に先駆け、23年から漁獲
越年級群発生以来、太平洋系群のマサバ資源は順調に増大しており、水政審・研究機関で資源回復
量規制(5,000トン以下)を行っています。
の優良事例と評価されています。
しかし第10回(25年12月)、第11回(26年12月)年次会合において、漁獲枠が26年は4,250トン(15%
② 大中型まき網漁業の基本的TAC管理措置は、毎年TAC管理期間の開始前に、当協会TAC委員会
削減)、27年は2,000トン(50%削減。05~09年の平均漁獲実績の68%削減に相当します。)に大幅
において「魚種別会員別四半期別漁獲目標量」を決定し、その目標量の範囲で各会員TAC委員会
削減され厳しい操業が必至であります。
は自主的に船別、月別管理目標等を定め適切に管理しています。
大中型まき網漁業の漁獲量規制導入と同時に、4年前から関係各国及び我が国全ての漁業がWCPF
各会員傘下漁業者の漁獲量は毎週JAFIC(漁業情報サービスセンター)を経由して全まき協会に報
Cで合意された「資源回復に最も効果的な未成魚の漁獲量規制措置」を実施していれば、資源回復状
告されます。
況はより良いものとなっていたのではないかと思われます。
当協会では毎週末、会員別魚種別累積漁獲量を集計し、各会員の魚種別漁獲目標量に対し消化率
② また、大中型まき網漁業では平成23年から自主的に日本海産卵期(6~8月)における成魚(30kg以
が一定の水準に達した場合、注意喚起、操業停止勧告等を行っております。
上)の漁獲量規制(2,000トン以下)を実施しておりますが、第11回年次会合において新たに成魚につ
しかし、毎年予期しない良好な漁場を形成する海区がありますので、その場合当協会TAC委員会の
いても「02~04年の平均漁獲量以上に増加させない」ことが合意され、我が国の漁獲量は4,882トン(う
了承を得て、保有する魚種別留保枠から追加配分を行います。
ち大中型まき網漁業の全海区漁獲分は3,098トン)以下に抑制することが求められています。
この様な管理措置により、大中型まき網漁業TAC対象資源は全て増加傾向にありますが、唯一、対馬
最近、日本海における大中型まき網漁業の成魚(産卵親魚)操業についていろいろ意見を聞きますが
暖流系群のマサバ資源が減少しています。
、水産研究機関の資源調査結果を的確に反映しているとは思えないのが残念であります。
その原因は、東シナ海の我が国専管水域付近での中国虎網漁船の集中操業によるものであり、東シ
ナ海地域国際資源管理機関を創設し、沿岸国全体での的確な資源管理をする必要があります。
(3) 道東沖マサバ、マイワシ漁場操業
① 道東沖のサバ漁場は昭和54年頃、マイワシ漁場は平成6年頃に消滅しましたが、その後海洋環境の
水産研究機関の資料によれば「①全産卵量のうち南西諸島で72%、日本海で28%(うち大中型まき網
漁業漁獲相当分は6%)、②産卵親魚が多いと産卵量も多い。産卵親魚量と加入量は相関関係が無
い。」とされております。
まき網漁業者は、近年日本海の海洋環境及びクロマグロ生態が急速に変化していると感じております。
変化、資源管理措置の効果により、これら資源は順調に回復しつつあり、平成24年漁期から良好な漁
水産研究機関により総合的かつ継続的な日本海クロマグロ資源生態調査・海洋環境調査が行われ、
場が形成され、操業隻数、水揚量も毎年増加しております。
早期に科学的な資源評価予測が確立されることを期待しております。
昨年、太平洋クロマグロに係る国際自然保護連合(IUCN)による絶滅危惧種指定(法的拘束力、操
以上の結果、経常収支は前年よりやや減少だったものの、引当関係の繰入れの額が大きく、これ
業規制に直結するものでは有りません。)が話題となりましたが、WCPFCによる資源管理の取組や科
を加味した経常利益金では 6 百万円程度の赤字ですが、これに有価証券の売却益 26 百万円の特別
学的情報を十分に踏まえず規制強化を求める声が大きくなることが危惧されます。
損益を加えて、当期利益 20 百万円と額は少ないものの 5 年連続で黒字計上となりました。
(6) 未来型大中型まき網漁船モデルの検討
高齢社会白書(内閣府。平成24年版)によれば、我が国人口は127百万人(27年)から99百万人(60年)
(3) 平成 27 年度収支見通し
平成 27 年度の経常収支は、有価証券利息の減少等が予定されているものの、受取配当金の水準の確保
に激減かつ超高齢化すると推定されており、毎年就業人口が大きく減少している漁業は深刻な影響を受
等もあり、経常収支としては 40 百万円程度を確保できる見込みです。
けることが必至と見込まれています。
また、当期利益については、新たな長期延滞の発生が見込まれ、そのため債務保証損失引当金は 85
最近代船建造された構改型大中型まき網漁船についても、次の代船時期には船団規模の縮小、個室化
等居住環境の改善、処遇の改善だけでは乗組員確保は極めて難しいことが予測されます。
百万円程の繰入となり、6 期振りに 41 百万円程度の赤字となる見込みです。
このため欧米諸国のような「超省人化された大中型まき網漁船」の日本型モデルの可能性について、まき
有価証券の運用や経費の節減に努め、極力この額を圧縮していきたいと考えております
網業界として研究を開始したいと考えております。
(
2
参 考 )
(単位:百万円)
平成26年度決算、平成27年度収支見込みについて
主な勘定
(1) 平成 26 年度の保証及び求償権の状況
平成26年度末の保証残高は152億円と、前年度末比2億円の減少となりました。
平成26年度も延長された被災地向け漁業者等緊急保証によるきめ細かな保証対応及び無担保・無保
証人型保証によるもうかる漁業等に係る漁船建造資金等への保証を行い、3年連続150億円台の保証残
高を確保しています。
一方、平成26年度末の求償権残高は230億円となり、1件の代位弁済(2.5億円)が生じたにも拘わら
ず償却及び回収を行った結果、前年度末から更に42億円の減少となりました。求償権の償却について
は、回収の見込みが無い案件について、理事会の承認を得て総額44億円を実施し、バランスシートの改
善を更に進めました。
(2) 平成 26 年度決算
平成 26 年度の決算は、20 百万円の当期利益計上となりました。
当協会としての経営努力を反映する経常収支は、前年度に比べて、有価証券利息の減少やシステム
改修のための経費増により、前期比 13 百万円減の 50 百万円となりました。
(事業計画比では 25 百万
平成 25 年度
平成 26 年度
平成 27 年度
(実績)
(実績)
(見通し)
12
11
13
有価証券利息
197
191
186
事業管理費
201
206
211
その他(ネット損益)
55
54
52
経常収支
63
50
40
求償権償却引当金繰入(▲戻入)
・償却
33
52
-
債務保証損失引当金繰入(▲戻入)
31
16
85
2
2
1
有価証券売却損益(ネット)
79
27
2
その他(ネット損益)
13
13
3
当期利益金
89
20
▲41
保証料―保険料(差引)
保証責任準備金繰入(▲戻入)
※経常収支における事業管理費は支出額
※引当金の▲戻入は収益、繰入は支出として計上
円の増)
なお、各種引当金の状況は以下のとおりとなっています。
ア
求償権償却引当金
求償権の償却に備えるための引当金で求償権残高から 5 年間の回収見込み額を差し引いた金額に
なります。26 年度末では 5,595 百万円となり、前年度末の 6,494 百万円に対して 899 百万円の戻
入れとなっていますが、求償権償却費 951 百万円を加味した求償権関係費用としてネットで 52
百万円の繰入れを計上しています。
イ
ウ
債務保証損失引当金
3
平成26年度漁業者等緊急保証対策事業の実績について
東日本大震災により被災した中小漁業者等へ円滑な債務保証が可能となるように、国の平成 23 年度第1
次補正予算により措置された漁業者等緊急保証対策事業は、協会に対しては将来的な事故時の代位弁済額
のリスクを 3%まで削減、保証利用漁業者に対しては追加出資も必要なく、保証料について国が全額助成
するという仕組みで、平成 26 年度も事業が延長され、当協会の引き受け実績は以下のとおり 170 件、62
億円弱となりました。
当期以前に行った債務保証により、将来発生する可能性の高い損失に対して計上する引当金で、
県
26 年度末では新たに2件の長期延滞の発生により 95 百万円となり、前年度末の 79 百万円に対
青森県
12
し 16 百万円の繰入れを計上しています。
宮城県
152
福島県
6
170,000
170
6,197,800
保証責任準備金
別
通常の予測を超えて発生する事故による損失に備えるための準備金で、保証債務の額を基礎とし
て算出されます。前年度末の 68 百万円に対して 26 年度末では 70 百万円となり 2 百万円程の繰
入れとなっています。
合
計
引受件数(件)
引受金額(千円)
備
337,000
5,690,800 漁労運転資金
考
4
平成 26 年度無保証人型漁業融資促進事業の実績について
保証人は法人の代表者及びこれに準じる者に限定し、担保は漁業関係資産以外新たに徴求を行わないと
ともに、漁業収入からのみ返済を求めるタイプの融資を推進し、その融資への保証を支援することにより、
積極的な設備投資を推進する目的で、国の平成 23 年度当初予算により措置されたもので、平成 26 年度の
当協会の引き受け実績は以下のとおり 54 件、31.4 億円となりました。
県
別
引受件数(件)
引受金額(千円)
宮崎県
2
120,000
鹿児島県
52
3,024,202
合
54
3,144,202
5
計
備
考
設備資金、設備つなぎ資金、
漁労運転資金
当協会人事異動等
(1) 当協会役員の異動
退任(3月31日付)
理事
阿部達男
(2)当協会職員の人事異動
採用(3月1日付)
総務管理部長
退任(5月31日付) 審査役
編集後記
松崎時久
三隅耕一
ついこの前までコートを着て通勤していたのが、あっという間にクールビズの季節
となってしまいました。光陰矢のごとしと言いますが季節の進むスピードはそれ以上
かもしれません。
今年も総会シーズンが終了したらほっと一息・・・と行きたい
ところでしたが、協会の設立60周年とか10年に一度の
関東・東海地区協議会の幹事協会なので、結構下期も
忙しくなりそうです。
会員の皆様方も暑い夏に負けないように、くれぐれも
ご自愛をお願い申し上げます。
水無月や 鯛はあれども 塩鯨( 芭 蕉 )
平成27年
向夏