結晶生成−イオン架橋による複合ハイドロゲルの開発

材料分野
平成26年度経常研究
結晶生成−イオン架橋による複合ハイドロゲルの開発
担当部所
:
栃木県産業技術センター
材料技術部
背景
傷口を覆い、湿潤状態にすることで治癒を促進する創傷
被覆材の中でも、ハイドロゲル型創傷被覆材は、傷口から
出る液の量に依らず使用できることから注目されている。し
かし、既存のハイドロゲル型創傷被覆材は高価なため、治
癒期間の長い床擦れ等の治療には利用されないことが多
い。本研究では、既存製品の製造法(電子線照射架橋)よ
りも安価で取扱いの容易な結晶生成による架橋とイオン架
橋を組み合わせることで、創傷被覆材としての利用を志向
した安全性、安定性の高いハイドロゲルの調製を試みた。
研究目標と結果
研究目標
●結晶生成−イオン架橋によりデンプン/カルボキシメチルセルロース(CMC)複合ゲルを調製する。
●デンプン/CMCゲルの膨潤度(含水率)、水中安定性(水中における形状保持能)を評価する。
実施内容
② デンプン/CMCゲルの膨潤度
ゲル
室温
105℃
24 h
24 h
Wwet
蒸留水
膨潤度 =
Wwet
Wdry
Wdry
Wwet : 湿潤ゲル重量
Wdry : 乾燥後ゲル重量
膨潤度 [g水/gポリマー]
① デンプン/CMCゲルの調製
コムギ
25
サツマイモ
バレイショ
20
とうもろこし
15
10
5
0
-2
0
2
4
6
8
CMC濃度 [wt%]
Fig. デンプン/CMCゲルの膨潤度
デンプンゲル単独では膨潤度が低く、創傷被覆材等の吸水性を要する材料としては
適さないが、CMCを複合化することで、膨潤度を向上させることができた。
デンプン/CMC水溶液を加熱−冷却する
ことでデンプンの結晶生成を引き起こした後、
塩化カルシウム(CaCl2)水溶液を添加するこ
とでCMCをイオン架橋させる手法により、複
合ゲルを調製した。デンプンゲルは硬く脆い
が、CMCを複合化することで、しなやかなゲ
ルを調製できた。
本手法では、毒性を有する架橋剤を使用
することはなく、また特別な設備を必要としな
いため、生体に安全なハイドロゲルを安価、
容易に調製できる。
③ デンプン/CMCゲルの水中安定性
Table デンプン/CMCゲルの水中安定性
CMC濃度 / wt%
0
2
4
6
コムギ
◎
○
×
×
サツマイモ
◎
◎
△
△
バレイショ
◎
◎
△
×
とうもろこし
◎
○
△
×
◎ : 変化なし ○ : 一部崩壊 △ : 一部形状保持 × : 崩壊
調製したゲルについて、蒸留水浸漬前後の形状変化により安定性を評価した。浸漬
期間は市販のハイドロゲル型創傷被覆材の連続使用期間(約1週間)から、1週間とし
た。サツマイモ、バレイショデンプン/2 wt% CMC複合ゲルは高い安定性を示した。
まとめ
●結晶生成−イオン架橋によりデンプン/CMC複合ハイドロゲルの調製に成功した。
●デンプン/CMCゲルは、デンプンゲルと同等の高い水中安定性を示し、デンプンゲルよりも高い膨潤度
を有することが明らかとなった。
御来場の皆様へ
問い合わせ先:栃木県産業技術センター 材料技術部 TEL 028(670)3397
本手法により、生体に安全なハイドロゲルを従来法よりも安価、容易に調製可能です。
様々な膨潤度、強度等を有するゲルを調製可能です。試作のご相談など、お気軽にお問い合わせください。
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