第三者からのご意見 という新たな事業機会の紹介としても興味深く拝見しました。 当該分野での御社グループの先駆性を示すと同時に、創業から (株) 日本総合研究所 理事 足達 英一郎 経歴: 経営戦略研究部、技術研究部を経 て、現在、ESGリサーチセンター長。 主に企業の社会的責任の観点から の産業調査、企業評価を手がける。 「飽くなきチャレンジ精神で成長を続けてきた」 というDNAを 象徴していると感じました。 環境問題については、 「海上荷動きが増加することで、 さまざ まな環境問題を深刻化させています」 と率直な認識を示された 点を評価します。多角的な環境負荷低減の取り組みとともに、 環境データの積極的開示を進められている旨の記述は、御社グ ループの事業が、数え切れない直接、間接の顧客企業のサプラ 本書は、名称を 「安全・環境・社会報告書」 と改め、世界一の安 全運航を目指す姿勢を明確にする内容としたと冒頭の編集方 針に掲げられています。通読して、 その意図は十分に果たされて いるとの印象を受けました。 トップコミットメントに 「格差や政情不安に起因する海賊問題 イ・チェーンのうえに位置付けられていることを改めて想起させ るものでした。 今年6月に開催されたG7エルマウサミットでは、首脳宣言に 「責任あるサプライ・チェーン」 という一項が設けられ、 「安全で なく劣悪な労働条件は重大な社会的・経済的損失につながり、 や、地球温暖化がもたらす自然災害の頻発、強大化は安全運航 環境上の損害に関連する」 として対策の緊急性がうたわれたと を脅かし事業継続に影響を及ぼす」 との認識が示され、 「安全運 ころです。御社グループでは船員の人権擁護等への取り組みは 航」 が最重要課題であることが明記されている点には説得力が きめ細かくなされているようですが、今後は荷役や陸上輸送を ありました。実際に、2006年の鹿島沖での事故で爆弾低気圧 含むロジスティクス全般で、特に発展途上国に見られる 「安全で の急激な発生を予見できなかった事実への言及や安全運航支 なく劣悪な労働条件」 を是正していくリーダシップを発揮してい 援センターの記事で開示されている、台風のAlert発信回数や ただくよう期待いたします。 海賊情報発信回数は具体性があり、一方でさまざまな経験を生 結びに、今回、冒頭の編集方針には 「アニュアルレポートは主 かして、ハードとソフトを結集して安全運航に向けた取り組みを に株主・投資家向け、本書は主に顧客をはじめとするそれ以外 重層的に講じられていることが大変よく理解できました。 のステークホルダー向けとして内容を区別して作成した」 との記 特に注目したのは、 自社船では標準的なスペックからコストを 述がありました。 これは、一連の統合報告の流れに逆行すると受 2~3%上乗せしても追加の安全対策を講じている点、安全運航 け取られかねないものですが、 ここまで具体的に重要課題を の実現のためには、優秀な船員を安定的に確保・育成すること 特定し、 リスクと機会の両面から、 その対応策を説明いただけれ が重要であり、新たに制定された 「MOL CHART」 をはじめとし ば、非財務情報を分析しようとする立場のものにも十分に価値 て徹底した人づくりに取り組んでおられる点のふたつでした。海 のある報告書に仕上がっていると感じました。本質を見極めた 運業は、一見すると装置産業のように思えますが、 そればかりで うえで、 個性的な挑戦を選択されたことに敬意を表するとともに、 なく人的要素も極めて重要であることが再認識できました。 これらが御社グループの企業価値にどう結びついているかを 特集3の 「ヤマルLNGプロジェクト」 の記事は、安全運航への 姿勢を詳述するものであると同時に、北極海航路の商業運航 考える役割は、情報を分析しようする側の責任でもあると気付 かされたことに、感謝をしたいと思います。 ご意見をいただいて 本年度より安全を冠し名称変更した 「安全・環境・社会報告書」 に対し過分なお言葉を賜りありがとうございます。お客 様やサプライヤー様のご要請、グループ社員特に船員の意見を踏まえ、CSR・環境対策委員会で当社の本質的な企業価 値について議論し、安全第一の姿勢を明確にお伝えすることがステークホルダーの信頼獲得につながるとの結論に至り ました。そして昨年度の第三者意見で足達様よりご指摘いただきました点について真摯に取り組み、海難事故やコンプラ イアンス、環境負荷等の負の情報についても積極的に開示に努めることが、当社のみならず海運業界ひいては社会の発 展に貢献すると考えました。 今回ご指摘いただきましたロジスティクス全般での労働条件是正についてもリーダシップを発揮して改善していくよう 努めます。引き続きステークホルダーの皆さまの信頼が得られるよう、我々の海図であるMOL CHARTに従って邁進して まいります。 45 商船三井グループ 安全・環境・社会報告書 2015 CSR・環境対策委員長 副社長執行役員 永田 健一
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