西脇隆夫先生のご退職にあたって 外国語学部長 湯 浅 康 正 西脇先生には 19 年の間,本学の研究と教育にご尽力をいただき,ありがとうございました。 先生のお姿がキャンパスで見られなくなったのは寂しいですが,今後も機会あるたびにお会いで きるのを期待しております。 西脇先生は東京のお生まれ。東京都立大学(現在の首都大学東京)人文学部中国文学専攻をご 卒業の後,同大学大学院人文科学研究科中国文学専攻博士課程を単位取得の後,退学されていま す。 大学院在学中の 1972 年,埼玉大学教養部非常勤講師として教職を開始され,博士課程を終え られた後は,1978 年島根大学法文学部へ助教授として赴任されています。8 年後の 1986 年には教 授に昇任され,本学外国語学部へは,1995 年,学部開設後 6 年目に教授として着任されました。 研究の面では,中国少数民族文学,現代中国文学の専門家として,比較民族学会,日本口承文 芸学会,日本昔話学会に所属されながら,モンゴル族をはじめ,主に中国西部,南部に住むキル ギス族,ウィグル族,タジク族,チワン族その他の神話,民話,説話,伝承,叙事詩などを中心 に研究され,著書 8 冊,論文 61 篇というおびただしいお仕事を残されています。そのうち 2001 年サンレム出版より上梓された『中国の少数民族文学』に対しては,中国当代文学研究会,中国 当代少数民族文学研究会より,栄誉証書を授与されました。おそらく先生はこの分野にあって, 門外の者には容易に想像しがたいほどの業績を積まれ,貢献をされたことと拝察します。 また,特筆すべき社会活動としては,2009 年より 2 年間,大学入試センター試験の出題委員を 務められました。 学内の教育面では, 「中国文学入門」 「中国文学」 「中国文学史」 「中国少数民族の文化」 「入門 中国語」「基礎中国語」 「時事中国語」 「中国語リーディング」「中国語演習」などの科目を担当さ れ,「演習」の指導にあたられました。 学内行政の面では,学部の教務主任を 2 度にわたり務められた他,教務委員,総合研究所委員, 研修委員,学生部委員として学部の教育研究の運営に従事されました。 西脇先生といえば,索漠とした現代日本へ迷い込んで来られた伝統中国の文人を思わせる風貌 の方で,先生の寡黙,含羞は異郷にあることの困惑を連想させましたが,同時に,悠揚,泰然と した趣をも漂わせておられました。先生が大学人として研究活動を重視しておられたことには疑 問の余地がありませんが,本学に赴任された 1990 年代から日本の大学は大きく二つに機能分化 するようになり,本学は教育に主力をそそぐ路線を固めていったため,従来のような研究と教育 の均衡のとれた在り方を追求されたなら,多くの先生方のように大変なご苦労があったと思われ ― i ― ます。また,研究に比重を置かれたとすれば,かなり居心地の悪い思いをされたのではないかと 危惧しております。 先生にとって研究は天職であり,退職された後も当然,継続されていることと思います。学内 の雑用から解放された自由な時間を思う存分お使いになって,日本における中国少数民族文学研 究を支え,発展させていただきたいと願っております。 ― ii ―
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