導体中のヘルムホルツの方程式 - オプティカルソリューションズ

presented by
株式会社 オプティカルソリューションズ
1
TEL: 03-5833-1332
月刊 牛山 善太 ノーツ
光学設計ノーツ 62 (ver.1.0)
導体中のヘルムホルツの方程式
前回は厚みのあるホログラムについて考えさせていただいた。そこでは体積内に多層
的な干渉縞が形成されることや、情報再生のためには、薄いホログラムの場合とは異なり、
厳しい再生の条件が存在すること、つまり、複数のホログラム原稿が一つの体積ホログラム
中に多重露光されていても、再生光照射時に角度、波長等において、それぞれのホログラム
に固有の条件のみを満たすことにより、所望のホログラムのみの再生が可能になるという
選択性が存在すること等について解説させていただいた。本連載、以降ではこの選択性、或
いは Bragg 条件についての考察を、さらに進めさせて頂きたい。そこで、最初に、波数 k
のより一般的な表示を行う際に必要になる、吸収などを含む、導体中の光波の挙動を表現す
る方程式について解説させていただく。
1. 緩和時間τを含む電荷密度ρの表現



媒質中の電荷密度をρ、媒質中に生じる電流を j として、電束密度 D 、磁束密度 B 、


電場の強さ E 、磁場の強さ H とすれば、Maxwell の方程式より以下の関係が得られる。
(参
考文献[3],P.1)

  D
rot H  j 
t
(0)
この(0)式の両辺に div をとると、ベクトル公式、

div rot A  0
© COPYRIGHT 2014 Optical Solutions Corporation | ALL RIGHTS RESERVED Optical Solutions Corporation
2
光学設計ノーツ 62
から



D
div(rot H )  div
 div j  0
t

(1)

また、オームの法則により電流密度 j と E は電導率 σ を用いて以下の様に表せる。


j  E
(2)
この(2)式の関係と、

div D  
(3)
さらに、εr は比誘電率、εは誘電率、μr は比透磁率、μは透磁率であり、真空中の誘電率、
透磁率をそれぞれ、ε0、μ0 とするとき



D   r 0 E  E
(4)
と表わせて,これらの式より(1)式は


  div E  0
t


D
  div  0
t

 
  0
t 
(5)
となる。時間 t で積分すると
© COPYRIGHT 2014 Optical Solutions Corporation | ALL RIGHTS RESERVED Optical Solutions Corporation
光学設計ノーツ 62
  

dt

であり、解は
 t 

  
   0 exp  
であって、ここで緩和時間、τを用いて



(6)
と置けば、解は
 t
   0 exp   
 
(7)
となる。この(7)式より、電導率σが 0 に近い値を持つ場合以外は、電荷密度ρは時間経
過と共に指数関数的に減少していくことが分かる。
© COPYRIGHT 2014 Optical Solutions Corporation | ALL RIGHTS RESERVED Optical Solutions Corporation
3
4
光学設計ノーツ 62
2. 導体中のヘルムホルツの方程式
さて、ここで、誘電率εが不均一な場合のマクスウェルの方程式より得られる以下の式
(c は真空中の光速)
(参考文献[3],p.251)





n2  2 E


J


  2 E  grad log  r  rot E  grad   E grad log  r   
0
2
2
t
c t


(8)
を考えれば、媒質が等方均一であって、誘電率、透磁率が一定であるとして、



n  E

E
2


E

grad


0
c 2 t 2

t
2
2
(9)
となる。
ある程度の電導率σを持った媒質においては、緩和時間(relaxation
time)、τは極め
て小さい値となり、特に金属の場合には緩和時間 τ は可視光の振動周期と比べても非常に
小さな値であり(約 10-18S 程度)
(参考文献[1])
、ρ は時間と共に急激に減少する。従って
  0 とすることが出来る。媒質が等方、均一であり、上述の様にもし  =0 と考えられれ
ば、(2)式も考慮して



n  E
E
  2 E  
0
2
2
t
c t
2
2
(10)
が得られる。ここで、


Ex, y, z, t   u x, y, z exp  it 
(11)
なる、時間項を分離した波動の式を(10)式に代入し、微分を計算して整理すれば


 n 2  exp  it 
2
 iu 2
  E  iu exp  it   0
t
c
© COPYRIGHT 2014 Optical Solutions Corporation | ALL RIGHTS RESERVED Optical Solutions Corporation
光学設計ノーツ 62


n2

2
  u exp  it  2   E  iu exp  it   0
c
2
2

i 
2 n
 E    2    E  0
 
 c
2
(12)
ここで、媒質中の光波の速度 v を考えると(参考文献[3],pp.4-7)、
n
c
v
(13)
であり、また、
v
1

(14)
なので、
n 2  c 2
従って(12)式は、

 
2
 E      i  E  0


2
(15)
となる。
© COPYRIGHT 2014 Optical Solutions Corporation | ALL RIGHTS RESERVED Optical Solutions Corporation
5
6
光学設計ノーツ 62
3. 参考文献
[1] M.Born & E.Wolf :Principles of Optics,6th edition(Pergamon Press,
Oxford,1993)/草川徹、横田英嗣訳:光学の原理(東海大学出版会,1977),p236.
[2] 辻内順平:光学概論Ⅰ(朝倉書店、東京、1979),p42.
[3] 牛山善太:波動光学エンジニアリングの基礎(オプトロニクス、東京、2005)
執筆者:牛山 善太
博士(工学)
元東海大学工学部光・画像工学科(レンズ設計)非常勤講師
(株)タイコ 代表取締役
(株)オプティカルソリューションズ 顧問
提供:
株式会社オプティカルソリューションズ
TEL: 03-5833-1332
Mail: [email protected]
Web: http://www.osc-japan.com
〒101-0032
東京都千代田区岩本町 2-15-8 MAS 三田ビル 3 階
© COPYRIGHT 2014 Optical Solutions Corporation | ALL RIGHTS RESERVED Optical Solutions Corporation