巻頭 ︱︱足立区を飛び出し、世界を驚かせた﹁落ちこぼれ﹂が、 日本の学校教育に言いたいこと 国際教育支援 NPO 「e-Education」創業者 税所 篤快 税所篤快さん︱︱足立区出身、1989年生まれの 歳。型どおりの授業に意義を見出せず、高校・大学と落ち こぼれていた税所さんですが、世界への憧れと超人的な行動力を発揮、いくつもの失敗を乗り越え、大学在学中に バングラデシュで教育革命を起こし、世界を驚かせました。グローバル人材の養成が喧伝されている日本の学校 ですが、元﹁落ちこぼれ﹂であったにもかかわらず、世界で活躍しておられる税所さんだからこそ気づくことがで きた、日本の学校教育の強みと弱みは何か︱︱まさにバングラデシュに飛び立つ前日に、お話をうかがいました。 だったのです⋮。 を受けるほどでした。高校3年進級時点の偏 差値はなんと そんななかで一念発起して通い出した予備 校が、DVDの映像授業によるもので、ここ なぜ世界をめざしたのか? ●落ちこぼれが世界に出るまで が僕には非常に合っていたのです。おかげで 奇跡的に、第一志望だった早稲田大学の教育 中学時代はそこそこ勉強ができたんですが、 をめざした猛烈な授業が行われていました。 学したんですが、そこは進学校で、大学受験 を知っていますか﹄︵東洋経済新報社︶とい んななか、坪井ひろみ先生の﹃グラミン銀行 せないで悶々とする日々が続きまして⋮。そ しかし、せっかく入学したにもかかわらず、 そこでも何のための授業なのか、意義を見出 学部に入学することができました。 高校では授業についていけず、100点満点 う本を読んで衝撃を受け、すぐに坪井先生の 僕は東京都の足立区出身で、地元の小・中 学校に通いました。高校は都立両国高校に進 とになったのか、経緯を教えてください。 ︱︱税所さんが、どのようにして世界を驚かすこ 28 25 のテストで2点や6点などを連発⋮留年勧告 3 教職研修 2014.12 子どもたちの ﹁好奇心﹂ を刺激して、 ﹁チャレンジ﹂の後押しを! インタビュー そして、バングラデシュの田舎では、学力 があるのに低所得のため予備校に通えず、大 ュのグラミン銀行で働くことになりました。 出会いを経て、大学を休学し、バングラデシ ●なぜ、﹁教育革命﹂か いてました。たくさん吸収しきるまでは帰ら 僕はおもしろい先生が大好きなんですよ。 ひとり見つけると、ずっとその先生にくっつ 元を訪ねて行ったのです。そこからいろんな 学進学を諦めている高校生が多くいることを ︱︱そのなかで、なぜ教育なのでしょうか? のシャッター街を利用してやろうしたのです が、うまくいきませんでした。 その後も多くの失敗をしていまして⋮。 たとえば、六本木ヒルズの企業の利益を少 しずつ集めて、大きな連合ファンドをつくる ﹁六本木ヒルズNGO﹂という試みなんです バングラデシュに活動の場を移してから も、いろいろな試みが頓挫しました⋮。 が、これもストップしてしまいました。 ときなのです。初めて足立区以外の人たちと ︱︱そのような多くの失敗を乗り越えられた理由 ないという感じで。 知って、自分が通っていた予備校のDVDに 僕が教育に興味を持ち始めたのは、足立区 の中学校から、墨田区にある高校に進学した よる映像授業のことを思い出したのです。 交 わ っ た と き、 学 力 を は じ め、﹁ こ ん な に 区 によっていろいろと違うんだな﹂と、東京の e-Education ﹂ を 立 ち 上 げ、 結 果 的 に、 絶 対 不 可 project 能と言われていた超一流大学への合格者を輩 なかにも格差があることを実感したのです。 そこで現地の大学生とともに﹁ 出することになりました。今はこのプロジェ 整理すると、どの試みも、社会のひずみや機 内の所得順位と学力順位を並べてみると、足 立区が、僕の原点であるからですね。 ぱり貧困層が多く、学力も最下位であった足 僕の活動のテーマである﹁格差の是正﹂が ぶれなかったからだと思います。今になって は、どこにあるのでしょうか。 クトを、世界各国で行っているところです。 高校の社会科のレポートで、僕は﹁足立区 はなぜ学力が低いか﹂というテーマを選びま 会の不平等に挑むモデルでした。これはやっ ︱︱そもそも世界に出ようと思ったきっかけは何 した。いろいろ調べているなかで、偶然 区 立 区 が 両 方 と も 最 下 位。﹁ 世 の 中 に は、 こ ん だったのですか? 中学のときの社会科の先生が、海外の日本 人学校で勤務された経験があって、国際感覚 な相関関係があるのか﹂と疑問を抱いたの ﹂だったのです。 e-Education ●なぜ、授業に身が入らなかったのか 日本の学校教育の強みと弱み のが﹁ んできたのですが、現場のリアルなニーズと のある方だったんですね。世界の実状をリア することになるとは︵笑︶ このテーマを追究するために、手を変え品 を変え、さまざまなことに試行錯誤で取り組 また高校時代には、授業についていけず図 書室に逃げ込んでいたんですが、そこで司書 ︱︱足立区でも挑戦しておられますね。 が、教育について考え始めたきっかけでした。 の先生がいろいろ読書指導をしてくださった ﹁タダ塾 ﹂という試みですね。 早稲田の学 生たちを足立区に招いて、塾に行けない子ど ルに話してくださって、 ﹁世界はおもしろい んです。世界のことや国際協力の本などをた もたちの面倒をみるというシステムを、地元 んだな﹂という思いを抱いていました。 くさん勧めてもらったことで、世界への思い 僕たちの考えていたモデルが初めて一致した をいっそう募らせることになりました。 なので、本当は足立区で教育問題に取り組 みたかったんです。まさかバングラデシュで 23 教職研修 2014.12 4
© Copyright 2024 ExpyDoc