公開特許公報 特開2015

〔実 7 頁〕
公開特許公報(A)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-134704
(P2015−134704A)
(43)公開日 平成27年7月27日(2015.7.27)
(51)Int.Cl.
C05G
FI
テーマコード(参考)
3/00
(2006.01)
C05G
3/00
Z
2B121
A01N 25/10
(2006.01)
A01N
25/10
4H011
A01N 25/00
(2006.01)
A01N
25/00
101 4H061
A01N 25/02
(2006.01)
A01N
25/02
C05G
(2006.01)
C05G
5/00
5/00
審査請求
A
有 請求項の数4
OL (全10頁) 最終頁に続く
(21)出願番号
特願2014-250806(P2014-250806)
(71)出願人 000004101
(22)出願日
平成26年12月11日(2014.12.11)
日本合成化学工業株式会社
(11)特許番号
特許第5727087号(P5727087)
大阪府大阪市北区小松原町2番4号
(45)特許公報発行日
平成27年6月3日(2015.6.3)
(31)優先権主張番号
特願2013-263672(P2013-263672)
(32)優先日
平成25年12月20日(2013.12.20)
(33)優先権主張国
日本国(JP)
(74)代理人 100079382
弁理士
西藤 征彦
(74)代理人 100123928
弁理士
井▲崎▼
愛佳
(74)代理人 100136308
弁理士
(72)発明者 風呂
西藤 優子
千津子
大阪府大阪市北区小松原町2番4号
日本
合成化学工業株式会社内
(72)発明者 万代
修作
大阪府大阪市北区小松原町2番4号
日本
合成化学工業株式会社内
最終頁に続く
(54)【発明の名称】農業用液状散布剤
(57)【 要 約 】
【課題】農業や園芸の分野で使用される液状散布剤であり、固着性が高く、かつ散布性に
優れる農業用液状散布剤を提供する。
【解決手段】ケン化度が30∼60モル%のポリビニルアルコール系樹脂を含有する農業
用液状散布剤とする。
【選択図】なし
( 2 )
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【特許請求の範囲】
アルコールを含有する農薬活性成分の固着性組成物が開
【請求項1】
発されている(特許文献1参照)。
ケン化度が30∼60モル%のポリビニルアルコール系
【先行技術文献】
樹脂を含有することを特徴とする農業用液状散布剤。
【特許文献】
【請求項2】
【0005】
上記ポリビニルアルコール系樹脂が、変性ポリビニルア
【特許文献1】特開平8−217604号公報
ルコール系樹脂である請求項1記載の農業用液状散布剤
【発明の概要】
。
【発明が解決しようとする課題】
【請求項3】
【0006】
溶媒として、アルコールを含有する水を用いた請求項1 10
しかしながら、上記特許文献1の固着性組成物に使用さ
または2記載の農業用液状散布剤。
れているポリビニルアルコールは、水溶性の点からケン
【請求項4】
化度が71∼89モル%が好ましいとの記載があり、こ
農業用液状散布剤が葉面散布剤である、請求項1∼3の
れは一般的に部分ケン化ポリビニルアルコールとして市
いずれか一項に記載の農業用液状散布剤。
販されている領域であって、かかるポリビニルアルコー
【発明の詳細な説明】
ルを用いると固着性の点でまだまだ改善の余地があるも
【技術分野】
のであった。
【0001】
【0007】
本発明は、その活性成分の固着性に優れる農業用液状散
また、農業や園芸の分野で使用される液状散布剤には、
布剤に関するものである。
その活性成分のもととなる薬剤として、肥料をはじめ、
【背景技術】
20
農薬、除草剤、防虫剤などの薬剤が加えられるが、水に
【0002】
溶けにくい性質のものも多く、そのようなものを添加し
農業や園芸の分野では、一般に、果実や野菜等の成長促
た場合、溶媒にアルコールを適量使用したほうが溶解性
進のための肥料及び有害生物を駆除するための農薬を、
に優れる場合も多い。しかし、アルコール中にポリビニ
水で希釈してそのまま散布するといった処置が行われる
ルアルコールを配合すると、凝集が生じ散布性が阻害さ
。しかしながら、このように肥料や農薬を水で希釈して
れるおそれもあるため、溶媒にアルコールを使用した場
そのまま植物体上に散布すると、その肥料や農薬の活性
合であっても、散布性が阻害されずに、かつ固着性に優
成分が、降雨等により流亡したり、あるいは風により剥
れる農業用液状散布剤が求められている。
離脱落したりして、効果の持続性がしばしば損なわれる
【0008】
。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、そ
【0003】
30
の目的は、農業や園芸の分野で使用される液状散布剤で
そこで、肥料や農薬の活性成分の植物体への付着性ある
あり、固着性が高く、かつ散布性に優れる農業用液状散
いは固着性を向上させる目的で、通常、肥料や農薬の水
布剤を提供することである。
希釈液に展着剤が加えられる。展着剤としては、散布液
【課題を解決するための手段】
の表面張力を下げ、濡れにくい虫体や作物に対する付着
【0009】
あるいは拡展性を向上させ肥料や農薬の効果を高める性
本発明者は、上記事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、農
質を有する、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエー
業用液状散布剤中のポリビニルアルコールのケン化度を
テル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキ
30∼60モル%とすることにより、固着性に優れ、た
シエチレン脂肪酸エステル、リグニンスルホン酸塩、ナ
とえ溶媒にアルコールを使用した場合であっても、散布
フチルメタンスルホン酸塩等が汎用されているが、これ
性が阻害されることがないことを見出し、本発明を完成
らは水に非常になじみやすい性質を有するため、降雨等 40
した。
による流亡を抑えることはできない。
【0010】
また、固着効果を示す展着剤として、ポリオキシエチレ
すなわち、本発明は、ケン化度が30∼60モル%のポ
ン樹脂酸エステル、パラフィン等を主成分とするものが
リビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする
あるが、使用濃度を高くしないと効果がでない、乾いた
農業用液状散布剤に関するものである。
皮膜が水に溶けないため植物体上にいつまでも残留する
【0011】
、等の問題がある。さらに、これらの展着剤は、いずれ
なお、本発明で使用されるポリビニルアルコール系樹脂
も上記水希釈液中での溶解性が悪く、さらには配合量を
は、上記のようにケン化度が低いことから、ビニルエス
多くしないと機能しないという問題もある。
テル系樹脂とも言える。
【0004】
【発明の効果】
これらの問題を解決するものとして、近年、ポリビニル 50
【0012】
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本発明の農業用液状散布剤は、その散布剤中の特定ポリ
性したりして、製造することができる。
ビニルアルコール系樹脂の作用により、固着性に優れる
【0018】
とともに、散布性にも優れるようになる。また、溶媒に
上記「他の不飽和単量体」としては、例えば、エチレン
アルコールを適量使用した場合であっても、凝集を生じ
、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデ
ず、高い散布性を得ることができる。そのため、水に溶
セン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸
けにくくアルコールに溶けやすい性質の農薬等を配合し
、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイ
た場合であっても、散布剤として良好に使用することが
ン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるい
できる。特に、本発明の農業用液状散布剤は、葉面散布
はモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、
剤として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド
10
、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸
【0013】
、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフ
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の
ィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテ
一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるもの
ル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウ
ではない。
ムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライ
以下、本発明について詳細に説明する。
ド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリド
【0014】
ン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン
前記のように、本発明の農業用液状散布剤は、ケン化度
(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ
が30∼60モル%のポリビニルアルコール系樹脂(以
)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)ア
下、「特定PVA系樹脂」と略す。また、ポリビニルア
リルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレー
ルコールのことを「PVA」と略す。)を含有すること 20
ト、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポ
を特徴とする。上記特定PVA系樹脂のケン化度は、好
リオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシ
ましくは30∼60モル%、さらに好ましくは、33∼
エチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレ
50モル%である。
ン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(
かかるケン化度が低すぎると、水に溶けなくなり、水溶
メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メ
性散布剤としての機能を果たさなくなるからであり、逆
タ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エス
に、かかるケン化度が高過ぎると、固着性が低下したり
テル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシ
、アルコールとの凝集反応により散布性が低下する傾向
プロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリル
がみられるからである。なお、上記ケン化度は、残存酢
アミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキ
酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析する
シエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニル
ことができる。
30
アミン等があげられる。
【0015】
【0019】
上記特定PVA系樹脂は、通常は、ビニルエステル系化
また、後変性の方法としては、PVAをアセト酢酸エス
合物を重合して得られたビニルエステル系重合体を部分
テル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラ
的にケン化して得ることができる。
フト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方
【0016】
法等があげられる。
上記ビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢
【0020】
酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
そして、上記変性PVAのなかでも、水に対する親和性
ル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル
が高いことから、特に、アニオン変性PVA、ノニオン
、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステ
変性PVAが好ましい。アニオン変性PVAとしては、
アリン酸ビニル、ピバリン酸等が、単独でもしくは二種 40
例えば、カルボキシル基含有PVA、スルホン酸基含有
以上併せて用いられる。なお、実用上は、経済性の観点
PVA、リン酸基含有PVAなどが挙げられる。また、
から、酢酸ビニルが好適に用いられる。
ノニオン変性PVAとしては、オキシアルキレン基含有
【0017】
PVA、アセトアセチル基含有PVA、ジアセトンアク
また、上記特定PVA系樹脂は、未変性のものであって
リルアミド変性PVA、メルカプト基含有PVA、シラ
も、変性されたものであってもよいが、特に変性された
ノール基含有PVA、側鎖1,2ジオール構造単位含有
ものは、アルコールとの親和性がよいことから、農業用
PVAなどが挙げられる。中でもアルコール溶解性の点
液状散布剤の溶媒にアルコールを加える場合には、変性
で、オキシアルキレン基含有PVA、カルボキシル基含
PVAのほうがよい。
有PVAが好ましい。
かかる変性PVAは、ビニルエステル系モノマーと他の
【0021】
不飽和単量体との重合体をケン化したり、PVAを後変 50
なお、本発明の農業用液状散布剤では、上記変性PVA
( 4 )
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の変性率が、通常0.1∼10モル%のものが用いられ
なるよう調製することにより、固着性、散布性等に優れ
る。また、アニオン変性PVAの変性率は、好ましくは
るようになるからである。
0.1∼1モル%、特に好ましくは0.2∼0.5モル
【0028】
%であり、ノニオン変性PVAの変性率は、0.5∼5
また、本発明の農業用液状散布剤における、その活性成
モル%、特に好ましくは1∼2モル%である。
分のもととなる薬剤の濃度は、通常0.1∼5000重
【0022】
量ppm、好ましくは1∼1000重量ppm、更に好
本発明の農業用液状散布剤に用いられる特定PVA系樹
ましくは10∼500重量ppmである。すなわち、こ
脂の平均重合度(JIS
のような濃度になるよう調製することにより、薬剤の活
K
6726に準拠)は、通
常100∼2000、特に150∼1000、さらには
性成分が有効に機能するようになるからである。
200∼800のものが、好適に用いられる。すなわち 10
【0029】
、PVA系樹脂の平均重合度が低すぎると固着性が低下
そして、本発明の農業用液状散布剤は、葉、茎、果実へ
し、逆に平均重合度が高すぎると溶解性が低下するよう
の散布剤、水耕液や供給液への混合剤等として用いるこ
になるからである。
とができる。特に、葉面散布剤として好適に用いられる
【0023】
。
つぎに、本発明の農業用液状散布剤に用いられる溶媒と
【実施例】
しては、水、あるいはアルコールを含有する水等があげ
【0030】
られる。そして、アルコールを含有する水、すなわち、
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本
水/アルコール混合溶媒を用いる場合、その混合比率(
発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定され
重量比)は、水/アルコールが、通常9/1∼1/9、
るものではない。
特に好ましくは7/3∼2/8、更に好ましくは6/4 20
【0031】
∼3/7のものが用いられる。このような溶媒を用いる
〔実施例1〕
ことにより、散布性、薬剤の溶解性、速乾性(早期塗膜
<PVA系樹脂(1)の作製>
形成性)等に優れるようになるからである。
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸
【0024】
ビニル1000重量部、メタノール300重量部を仕込
また、本発明の農業用液状散布剤に用いられる薬剤とし
み、アゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(
ては、上記散布剤の活性成分のもととなる薬剤、すなわ
対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下
ち、農薬、肥料、除草剤、防虫剤等の、植物に対して固
で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始
着性が必要な薬剤が使用される。かかる薬剤は、水やア
2時間後、4時間後にそれぞれアゾビスイソブチロニト
ルコールに溶解または分散するものであれば使用するこ
リルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)追加し
とができるが、本発明の農業用液状散布剤に使用される 30
、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m−ジ
特定PVA系樹脂に対して非反応性のものを使用する必
ニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて
要がある。
、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応
【0025】
の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタ
本発明の農業用液状散布剤には、特定PVA系樹脂、溶
ノール溶
媒、薬剤の他、必要に応じ、乳化剤、水和剤、フロアブ
液を得た。
ル剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤等の、他の成分が添
次いで、上記メタノール溶液を、濃度50%に調整して
加される。ただし、かかる他の成分の配合量は、農業用
ニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水
液状散布剤全体の10重量%以下が好ましい。
酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢
【0026】
酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割
ここで、本発明の農業用液状散布剤は、例えば、(1) 40
合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケ
特定PVA系樹脂溶液と薬剤溶液とを混合する、(2)
ン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸
特定PVA系樹脂溶液に粉末の薬剤を入れて混合する、
を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノ
(3)薬剤溶液に特定PVA系樹脂粉末を入れて混合す
ールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、未変性PV
る、といった方法により調製することができる。なかで
A系樹脂[PVA系樹脂(1)]を得た。
も、(1)に示す方法により調製することが好ましい。
得られたPVA系樹脂(1)のケン化度は、残存酢酸ビ
【0027】
ニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行った
このようにして得られた本発明の農業用液状散布剤にお
ところ49モル%であり、平均重合度は、JIS
ける、特定PVA系樹脂の濃度は、通常0.01∼30
6726に準拠して分析を行ったところ、250であっ
重量%、好ましくは0.1∼20重量%、更に好ましく
た。
は1∼10重量%である。すなわち、このような濃度に 50
【0032】
K
( 5 )
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上記のようにして得られたPVA系樹脂(1)を、水/
上記のようにして得られたPVA系樹脂(2)を、PV
エタノール(重量比)が6/4である混合溶媒に溶解し
A系樹脂(1)に代えて用いた以外は、実施例1と同様
、5重量%濃度のPVA溶液となるように調製した。そ
にして農業用液状散布剤を調製した。
して、かかるPVA溶液100重量部に、非アルコール
【0036】
系の液体肥料(ハイポネックスジャパン社製、ハイポネ
〔実施例4〕
ックス)を指定濃度に希釈して5重量部添加し、農業用
PVA系樹脂(2)の作製方法に準じ、ケン化度43モ
液状散布剤を調製した。
ル%、平均重合度280、変性率1.7モル%の、オキ
【0033】
シアルキレン基含有PVA系樹脂を作製した。そして、
〔実施例2〕
上記作製の変性PVA系樹脂を、PVA系樹脂(1)に
PVA系樹脂(1)の作製方法に準じ、ケン化度34モ 10
代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業
ル%、平均重合度300の未変性PVA系樹脂を作製し
用液状散布剤を調製した。
た。そして、上記作製の未変性PVA系樹脂を、PVA
【0037】
系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と
〔実施例5〕
同様にして農業用液状散布剤を調製した。
<PVA系樹脂(3)の作製>
【0034】
酢酸ビニルと3−メルカプトプロピオン酸をメタノール
〔実施例3〕
中で共重合した。得られた共重合体を水酸化ナトリウム
<PVA系樹脂(2)の作製>
でケン化した。
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸
得られたPVA系樹脂(3)のケン化度は、残存酢酸ビ
ビニル1000重量部、メタノール9580重量部、平
ニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行った
均鎖長n=10のポリオキシエチレンアリルエーテル2 20
ところ38モル%であり、平均重合度は、JIS
37重量部(2モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、
6726に準拠して分析を行ったところ、530であっ
アゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕
た。また、上記PVA系樹脂(3)の変性率[末端カル
込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温
ボキシル基含有量]は、その仕込み量から0.25モル
度を上昇させ、重合を開始した。さらに、13時間かけ
%とした。得られたPVA系樹脂(3)を、メタノール
て、酢酸ビニル1410重量部、メタノール3195重
で48時間ソックスレー抽出による精製を行った後、重
量部、ポリオキシエチレンアリルエーテル2130重量
水に溶解し、核磁気共鳴分析(以下NMRと略記する)
部を滴下、また重合開始4時間後にアゾビスイソブチロ
したところ、PVA系樹脂(3)の末端にCOONa基
ニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)追
の存在が認められ、分子の片末端にNaOOC−CH2
加し、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m
−CH2 −S−のカルボキシル基を有するPVA系樹脂
−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続 30
(3)が確認できた。
いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未
【0038】
反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体の
上記のようにして得られたPVA系樹脂(3)を、PV
メタノール溶液を得た。
A系樹脂(1)に代えて用いた以外は、実施例1と同様
次いで、上記メタノール溶液を、濃度40%に調整して
にして農業用液状散布剤を調製した。
ニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水
【0039】
酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢
〔比較例1〕
酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割
PVA系樹脂(1)の作製方法に準じ、ケン化度80モ
合で加えてケン化を1.5時間行った。中和用の酢酸を
ル%、平均重合度350の未変性PVA系樹脂を作製し
水酸化ナトリウムの0.8当量添加した後、攪拌しなが
た。そして、上記作製の未変性PVA系樹脂を、PVA
ら過熱してメタノールを完全に追い出した後、水を追加 40
系樹脂(1)に代えて用い、さらに、水/エタノール混
して溶解し、40%水溶液のオキシアルキレン基含有P
合溶媒において、その水/エタノール(重量比)を9/
VA系樹脂[PVA系樹脂(2)]を得た。
1にした。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液
得られたPVA系樹脂(2)のケン化度は、残存酢酸ビ
状散布剤を調製した。
ニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行った
【0040】
ところ48モル%であり、平均重合度は、JIS
〔比較例2〕
K
K
6726に準拠して分析を行ったところ、260であっ
PVA系樹脂(1)の作製方法に準じ、ケン化度88モ
た。また、上記PVA系樹脂(2)の変性率[オキシア
ル%、平均重合度600の未変性PVA系樹脂を作製し
ルキレン基含有量]は、その仕込み量から1.8モル%
た。そして、上記作製の未変性PVA系樹脂を、PVA
とした。
系樹脂(1)に代えて用い、さらに、水/エタノール混
【0035】
50
合溶媒において、その水/エタノール(重量比)を9/
( 6 )
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1にした。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液
【0045】
状散布剤を調製した。
また、実施例および比較例の農業用液状散布剤に関し、
【0041】
下記の基準に従って溶解性評価を行った。その結果を、
このようにして得られた実施例および比較例の農業用液
後記の表2に併せて示す。
状散布剤に関し、下記の基準に従って固着性評価を行っ
≪溶解性評価≫
た。その結果を、後記の表1に併せて示す。
水/エタノールの割合(重量比)を下記に示す割合にし
【0042】
た溶媒に、濃度5%となるように実施例および比較例の
≪固着性評価≫
PVA系樹脂を室温にて混合し、撹拌し下記の評価基準
農業用液状散布剤105重量部に対し、着色剤(食紅)
A∼Cに従い、溶解挙動を観察した。
を0.1重量部添加した後、植物(ベンジャミンエスタ 10
A:溶解
)の葉面に対し、霧吹きにて農業用液状散布剤を散布し
B:不溶(安定に分散)
た。そして、24時間放置後、その葉面(農業用液状散
C:不溶(分散後に沈殿)
布剤の散布面)に対し、霧吹きにて水を噴きかけた。そ
【0046】
して、落ちずに残った着色面を目視観察し、その着色面
【表2】
が、葉面(農業用液状散布剤の散布面)の面積に対して
80%以上残ったものを「○」と評価した。なお、葉面
(農業用液状散布剤の散布面)の面積に対して30%以
上60%未満残ったものを「△」、30%未満しか残ら
なかったものを「×」と評価した。
【0043】
20
【表1】
【0047】
上記表2の結果より、実施例のPVA系樹脂は、比較例
のPVA系樹脂に比べ、水/アルコールの混合比が変化
しても溶解又は分散する範囲が広く、特に、実施例3∼
5の変性PVA系樹脂は、水/アルコールの混合比が変
化しても溶解又は分散する範囲がより広かった。
30
【0048】
【0044】
なお、ケン化度が25モル%程度のPVA系樹脂を用い
上記表1の結果より、実施例の農業用液状散布剤は、固
た場合、溶媒に水のみを用いた場合であっても、PVA
着性が高く、また均一に葉面散布がなされたことから散
系樹脂の溶解がされなくなり、水溶性散布剤としての機
布性も良好であった。これに対し、比較例の農業用液状
能を果たすことができないと推測される。
散布剤は、水/エタノール(重量比)が6/4の混合溶
【産業上の利用可能性】
媒を用いた際、溶媒にPVA系樹脂が溶けなかったため
【0049】
、散布することができず、固着性の評価ができなかった
本発明の農業用液状散布剤は、その特定PVA系樹脂の
ために、水/エタノール(重量比)が9/1の混合溶媒
作用により、固着性が高く、かつ散布性に優れることか
を用いたが、その場合であっても、実施例に比べ、固着
ら、農業や園芸の分野で使用される液状散布剤、例えば
性評価に劣る結果となった。
40
、葉、茎、果実等への散布剤への適用に有効である。
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(51)Int.Cl.
A01M
FI
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(2006.01)
テーマコード(参考)
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2015-134704
A
2015.7.27