自動運転や高度運転支援を実現するICTの最新動向と今後の課題

15:10~16:00
自動運転や高度運転支援を実現する
ICTの最新動向と今後の課題
~クルマが人工知能を載せて走り更にヒトの運転能力を超える、
そして日本の産業構造の変革~
August 18, 2015
インテル株式会社 戦略企画室 ダイレクター
兼) 名古屋大学 客員准教授
野辺 継男
Intel Confidential — Do Not Forward
Agenda
1. ICTの劇的変化が引き起こした産業構造の変化
2. テクノロジー・シンギュラリティに向かうICTの指
数関数的成長と人工知能
3. 人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
4. それの実装方法と今後の課題
1
ICTの劇的変化が引き起こした産業構造の変化
ICTの構造的変化
- 5年前(2010年)と5年後(2020年) -
 クラウドとビッグデータが定着
2001-2010
流通
Google
Service
Server
製造 交通
医療
2011以降
Amazon
Sales
force
農業
Facebook
Cloud (+ Big Data/IoT)
クラウド企業の協調・競争領域
IP-Network
Webアプリケーション機能を
補完的に相互に利用
Application
HTML5
Middleware
OS
Driver
Windows
OS-X
H/W
Intel
Networked PC
Linux
PCとnon-PCの共存
(Tizen, Android )
Windows
(端末のマルチデバイス化)
iOS, Windows
OS-X
コンテンツ・サービスの製作はPC
閲覧・サービス利用はnon-PCでOK
Intel
Intel/ARM
Fully Networked PC
Non-PC Devices
Smart Phone、TV-STB
NAVI
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ICTの劇的変化が引き起こした産業構造の変化
スマイル・カーブの先 (モノのスマート化)
 Acer Stan Shih`s Smile Curve / Frown Curve
CPU/GPU・センサー
の機能拡大
PCとnon-PC
の共存
(端末の
マルチデバイス化)
Thingsの知能化 (スマート化)
(Smart Things)
(Cyber Physical System)
(Industie 4.0)
中抜き
人工知能ソフトウエア
の機能拡大
クラウド企業の
協調・競争領域
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Agenda
1. ICTの劇的変化が引き起こした産業構造の変化
2. テクノロジー・シンギュラリティに向かうICTの指
数関数的成長と人工知能
3. 人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
4. それの実装方法と今後の課題
4
ICTの指数関数的成長と人工知能
情報処理能力の指数関数的拡大と人工知能への接近
Ray Kurzweil, http://content.time.com/time/interactive/0,31813,2048601,00.html
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ICTの指数関数的成長と人工知能
データセンターの巨大化がもたらしたもの
 音声認識の現在 (Deep Learningの適用)
これまでの開発
(例: 京都大学)
国会答弁
(音声)
現在の方向性
(例: Google)
書き起こし
議事録
(テキスト)
言語
モデル
音響
モデル
Cloud
Server
Deep
Learning
アルゴリズムの
開発
正誤チェック
ユーザの
反応
ユーザ
の発話
•
•
•
•
•
一般ユーザ
自然発話
多様な各国言語
大量なサンプル
グローバル展開
各国の蔵書
スキャンから
自動翻訳へ
発展
ICTの指数関数的成長と人工知能
大規模サーバ群による画像認識 (2012)
• コンピュータに例えば、クルマとバイク
を見分けさせるには、これまで数多の
写真を見せて教え込んで実現した。
• これは途方もない作業量を要す。
• 代わりに我々は、16000個のCPUと
10億以上のコネクションを持つ人工
的神経ネットワークシステムを構築し、
YouTubeからとったいろいろなものが
映っている静止画をコンピュータに見
せ、自己学習とDeep Learningのアル
ゴリズムを走らせた。
• すると、 1週間後、システムは猫の顔
に強く反応するようになった。
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ICTの指数関数的成長と人工知能
Deep Learningによる画像認識の発展 (2012→14)
 ImageNet large-scale visual recognition challenge
 2012年
 2014年
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ICTの指数関数的成長と人工知能
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ICTの指数関数的成長と人工知能
デープラーニングのイメージ
ICTの指数関数的成長と人工知能
デープラーニングのイメージ
 テスト画像と学習によりニューロンが反応した画像パターン
ICTの指数関数的成長と人工知能
脳の構造と機能分化の明確化 (2001以降)
Spaun: Semantic Pointer Architecture
United Network
Identify neurons responsible
for categorizing objects
“Seeking Categories in the Brain, ”Simon J.
Thorpe and Michèle Fabre-Thorpe, 2001 January
脳はモノを見た時、形、色、場所、距
離等を別々の部分(機能)に振り分
けて認識
サルの場合80-100msecでモノを
認識
手を動かすといった行為までで
合計180-260msec
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ICTの指数関数的成長と人工知能
人工知能が生まれる時期
 コンピュータがハードウエア構造的に脳に近づく
十層
1024
の入力
X1
1つの
出力
W1
Σ
X2
Y
ニューロン
W2
ヒトの脳でニューロン1000億個
一つのニューロンに1000個のシナプスが結合
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ICTの指数関数的成長と人工知能
今ICTと人間の間に起こっている事
 2020年、世の中はこれに近づく
脳の支援
生活支援
ビッグ
3rd Party
データ API サービス
センター
供給者
遠隔医療
自動運転
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ICTの指数関数的成長と人工知能
Uberの例
 GoogleがUberに$258M投資
 2014年3月3日東京でハイヤー配車サービスを開始
GPSを利用して現在値や指定の場所にハイヤー呼
び、登録済みのクレジットカードで決済。現金不要
でスマートに降車できる。呼んで、乗って、支払いま
でが、すべてアプリ上で完結。ハイヤーを手配する
と、クルマの現在位置や所要時間をリアルタイムに
表示。ドライバーの顔写真や名前、車種やナンバー
もわかります。
ICTの指数関数的成長と人工知能
ICTの指数関数的成長と人工知能
Amazon: 「予測出荷」の特許を取得
― 注文される前に商品を出荷
・個々のカスタマーの購入確率の分析(過
去の経緯やマウスの動き)をエリア毎に計
算し、カスタマーが発注する前に集配セン
ター(ハブ)まで発送してしまう。
・アマゾンからの出荷時点ではStreet
Addressかzip codeまで印字して、配達中
に最終宛先の記入を完了する。
・人気商品等、流量の多いものであれば、
更に各トラックの配達領域規模まで細分
化して発注前の商品を載せておいても大
丈夫。人気のある本や商品を出荷開始日
に欲しい人が多い様な場合に特に効果が
ある。
・「推測を間違って配達した場合、戻すより
も値引きして売った方がコストを抑えられ
る為、ディスカウントするか、時に要らない
ものであればギフトにする事も検討。それ
によってカスタマの好感度を上げる。」
http://jp.techcrunch.com/2014/01/20/20140118amazon-pre-ships/
日ごろからAmazonを使って、ロイヤルカスタマになり自分の好みが理解されると、ある日ほしい物を画面上に映して、
いろいろマウスをクリックして画面に滞留していると、その内、買ってなくてもそれが家に届く事があるかも。
Agenda
1. ICTの劇的変化が引き起こした産業構造の変化
2. テクノロジー・シンギュラリティに向かうICTの指
数関数的成長と人工知能
3. 人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
4. それの実装方法と今後の課題
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
欧米では自動運転の実現時期が
早まっている
Google Self-Driving Car Project
June 25, 2015
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
自動運転の技術的イメージ
 専用レーンを走るのでも、軌道上を走るのでもない
 一般のクルマに混ざって走る
 その中、ドライバはハンドルやアクセル・ブレーキから手足を離し、周りも見ない
 コンピュータがヒトと全く同じ様に周囲を認識・判断・決定し、クルマを運転する
[ 自動運転 ]
GPS
正確な位置情報
Actuator/
Motor
HMI/ECU/
Controller
Switch
System
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
人間はどの様に環境認識をしているのか?
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
自動運転の世界観
 衝突回避と計画的自動運転
Camera, Lader, Rader
+ LTE V2X ?
Collision
Edge Computing
Collision
Collision
may
unavoidable
occur
条件反射、衝突回避行動
小脳
4G/5G
Risk has
appeared
Cloud
RiskComputing
has not yet appeared
計画的自動運転
大脳
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
衝突回避: センサーで周囲を360度、全天候、昼夜認識
Short Range Radar Systems
- Blind Spot Warning
- Pedestrian Detection
LiDAR
- 3D Cloud Points
Stereo
Camera
- Lane Departure Warning
- Lane Keeping Assist
- Auto High Beam
- Traffic Sign Recognition
- Speed advisory
Lear Camera
- Lane Change Assist
90 degrees
130 m
18 degrees
200 m
Ultra Sonic
- Low speed collision avoidance
- Parking assist
Side Camera
- Surround View
- Parking Assist
Driver
Monitor
- Drowsiness
- Distraction detect
Long Range Radar Systems
- Adaptive Cruise Control
- Forward Collision Warning
- Autonomous Emergency Braking
- Distance Alert
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
計画的自動運転:
 車載装着したセンサーで正確に認識できるのは高々100~200m
 余裕をもって運転をドライバに戻すには2分は必要 (Level 3)
200 m
例えばこの先に
200m走るのに
•
•
•
•
時速36Kmで20秒
時速72Kmで10秒
時速108Kmで6.67秒
:
時速200Kmで1.8秒
•
•
白線の劣化
工事等による車線減少
などが有った場合
200m
2Km
2分走ると
•
•
•
•
時速36Kmで1.2Km
時速72Kmで2.4Km
時速108Kmで3.6Km
:
時速200Kmで6.6Km
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
計画的自動運転の実現策
今後走る場所の情報 (走行開始前にDL可)
3次元マップ
データベース
(逐次更新)
統計処理・予測
ビッグデータ
デープラーニング
通信:
携帯網、DSRC等
プローブデータ
(1分、1時間、1日、1週間、1ヶ月前。。。。)
過去
200m以上先の地点
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
自動運転の分類と想定実現時期
 クルマの自動化を拘束条件と速度で分類
Vehicle IoT
クラウド上の
3次元マップデータベース
センサーネットワーク化した
クルマのプローブ情報を用い構築
生活道路
周囲拘束条件の予測困難性
多様な障害物把握
高度画像認識
Probes
Services
(動体・不動体)
歩行者・自転車・
バイク
通行可能性
Daimlerの発表
(2014.4.14)
2025
以降 主要幹線道路
信号・道路標識
交通流把握
左折制御・タイミング
歩行者飛び出し
2015頃
既に出来ている
自動
駐車
交通渋滞内
自動運転
低速
2020頃 高速道路
車間距離追従
車線キーピング
速度・加速度・横G制御
前車追従・コンボイ走行
中速
高速
速度
ヒューマンファクタ
人工知能
法整備
人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
デープラーニングのクルマへの適用
 ぶつからない進路の学習
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
自動運転ソフトウェア:Autoware
ユーザーインタフェース
ネットワーク
インタフェース
高性能計算・
並列処理
10TFlops~
センサー
組込み技術 ~100MFlops
アクチュエータ
環境認識
運転
モデル
行動
計画
振舞い
モデル
システム
監視
モデル生成に
要100TB~
高性能計算・並列処理
10TFlops~
経路
計画
高性能計算・並列処理
10TFlops~
(バイワイヤ制御)
データロガー(クラウド連携で100TB~)
コンピュータプラットフォーム
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
自動運転ソフトウェア:Autoware
 Autoware



レーザレーダ、カメラ、GNSSなどの環境センサを利用して、自車位置や周囲物体を
認識しながら、カーナビから与えられたルート上を自律走行できる
自動運転システム用オープンソースソフトウェア、LinuxとROSをベース
名古屋大学、長崎大学、産総研による共同成果の一部
 基本機能

3次元自己位置推定、3次元地図生成、ナビアプリ、経路生成、経路追従(0~
60km/h)、交差点右左折/一旦停止、自動停止、車両認識、歩行者認識、レー
ン認識、標識認識、路上サイン認識、信号認識
 構成・特徴

以下の環境で利用可能
–
–
–
–
–
–
–
–
–
ZMP社のロボカー製品を車両として
アイサンテクノロジー社の高精度3次元地図
測位衛星技術社、Javad社のGNSS測位機
北陽電機社、Velodyne社の3次元スキャナ
インクリメントP社のAndroid端末用ナビアプリ
インテルCPU,Linuxが稼働する環境
NVIDIA社のGPGPU技術(GeForce, Tegra)
イーソル社の車載向け組込みシステム
インターネット上のデータベース接続
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人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
SLAMとCloud Points Map
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Agenda
1. ICTの劇的変化が引き起こした産業構造の変化
2. テクノロジー・シンギュラリティに向かうICTの指
数関数的成長と人工知能
3. 人工知能が何故自動運転の実現に必要なのか
4. 実装方法と今後の課題
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実装方法と今後の課題
高度安全支援/自動運転向けICT
外部環境把握
ADASマップ
ナビゲーション
Android Auto
CarPlay
Side
Cameras
コンピュータビジョン
IVI端末
Sonar
第三者
ソリューション
サーバ
人工知能
クルマ会社
データセンター
(オプション)
ブレイン
コンピュータ
I/O
現在は自動運転用に
ECU/
ここをPCで処理している
センサー
データ処理
Get
クルマの状態把握
低速 CAN
ECU ECU ECU
高速 CAN
3次元マップ
データベース
Internet
(旧ナビゲーション)
セントラルゲートウエイ
センサーゲートウエイ
フュージョン
Get
Milliwave
Radar
ビッグデータ
人工知能
或いは内蔵通信機
Front/Rear
Cameras
LIDAR
3次元
ADASマップ
スマートフォン
ネットワーク
コントローラ
ディスプレイ
Set
ディスプレイ
ディスプレイ
BCM
TCM EBCM ECM
SDM
安全及びADAS情報
注意警告や運転支援情報
交通標識
センターライン、停止線
危険予知/ 事故防止
危険カーブ/スリップ予測
車線減少/増加
横断歩道/停止線
工事区間
ダイナミック情報
白線劣化予測
ゲリラ豪雨/非常時情報
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実装方法と今後の課題
自動運転実現に向けた課題 (Level3以降)
課題
概要
自動運転に必要な三
次元HAD MAP構築
欧米で利用可能となる自動運転用地図(3次元HAD MAP)と互換性
のある地図が国内でも必要。また、自動運転車が認識した差分をク
+ 中国の話
ラウド経由でアップデートするシステムが必要。
DSRCの国際互換性の 周波数帯のズレ(5.8GHz v.s.5.9GHz)以上に、国内DSRCの仕様は欧米
と同様にWiFiと互換性を持たせ、市場性を高める事が必要。
実現
79GHz ミリ波レーダ ミリ波レーダの利用帯域の国際標準化が必要。(可視光/赤外/レー
のグローバルな周波 ザー等の光ベースのセンサーよりも波長が長く、雨・雪・霧等を透
過し悪天候の影響を受けにくく、汚れにも強く堅牢。中・近距離で
数割り当て確保
の自動車や歩行者検知に有効。距離のみならずドップラー効果で相
対速度の検出も可能。日本では2012年12月に規格化済み。)
4G/5Gの利用拡大と
760MHz帯域の有効
活用
海外に先行している国内テレマティクスとナビの知見を活かし
4G/5Gに対するITS要件定義(車車間、路車間、歩車間通信)を3GPP等
へ提案要。国内760MHz ITS端末の有効利用も平行して議論要。
ネットワークセキュ
リティに関する国際
的異業種協力体制
ICT領域と車載制御系領域間のネットワークセキュリティの定義・
研究・実証に関し、各国間の協力のみならず、クルマ業界とICT業
NAVTEQ
界間の協力体制の早期構築が必要。
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まとめ:
 ICTの指数関数的発達により、既にクラウド上に人工知能が
宿り始めておりシンギュラリティが始まっている
 自動運転は脳の代わりに人工知能がセンサーデータを分析し
認知・判断・決定することで実現される
 自動運転をIoTの代表例として、今後ウェアラブル端末等から
収集されたセンサーデータをクラウド上で分析しAPI化される
 クラウド上でAPIを結び付けプログラミングする事で新しい産業
の付加価値は容易に生み出され、今後国際競争はアイデア
勝負となる
 データは産業のコメ、データを持ちそれを国際的に分析できる
企業が市場を獲得する (クルマ会社も然り)
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ご清聴
大変ありがとうございました
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