今、何故HACCPが 必要とされているのでしょうか? 帯広畜産大学 地域連携推進センター 食品安全マネジメント推進室 渡辺信吾 はじめに 今、食品関連企業は、規模の大小に関わらず「HACCPシステム」の導入が求 められています。 本日は ①HACCPシステムとは? ②何故HACCPの導入が求められているか? ③北海道HACCPの構築と認証審査対応の勘所は! 等を中心にお話ししたいと思います。 HACCPシステムとは? ①歴史 ア.HACCPシステムは1960年代にアメリカ合衆国で「宇宙食」を安全に製造す るために考案された工程管理手法です。 イ.1993年にCodex委員会が「食品衛生の一般原則の付属書:HACCPシス テムとその適用のためのガイドライン」を策定し、各国に普及しました。 ウ.我が国では1995年に厚生労働省の「総合衛生管理製造過程承認制 度」が導入さ、以後、ISO22000、FSSC22000等が続きました。 ②HACCPの語源 H:Hazard (危害) A:Analysis (分析) and C:Critical(重要) C:Control (管理) P:Point (点) HACCPシステムの構造 HACCPシステムは「設備基準・製造基準・人の衛生管理基準等を定めた法律 や各種ガイドラインを遵守する」ことを必須事項として「前提条件プログラム」と 「HACCPプラン」から成り立っています。 そのイメージは以下の通りです。 HACCPシステム(食品の安全) HACCPプラン (CCP:重要管理点の管理) 前提条件プログラム (施設・機械・器具、人等の管理) 法律・各種ガイドライン (設備基準・製造基準・人の衛生管理基準等) HACCPシステムと危害要因 ①製造工程内には人体に害を与える可能性のある微生物的(O-157、黄色 ブドウ球菌等)・物理的(ガラス・金属片等)・化学的(洗剤・殺菌剤等)な危 害要因が潜在しています。 ②HACCPシステムは、その危害要因の発生を未然に防止する又は人体に害 を与えない許容範囲まで低減させて安全な食品を造る仕組みです。 容器・包装資材 水・空気 加工機器・用具 危害要因 原料・添加物 微生物 物理 化学 作業者 HACCPシステム導入前の食品の安全確保 出荷前の最終製品検査により安全性を保証していました。 最終製品 細菌検査 製品出荷 HACCPシステム導入後の食品の安全性保証-1 導入後:CCPやPRPの実施と出荷前検査により安全性を保証します。 尚、工程検査が主体となり出荷前検査への依存度は低くなります。 搾乳 抗生物質、乳温、洗剤・殺菌 剤残留 受入・貯乳 乳温、タンクの洗浄効 果、洗剤残留 殺菌・冷却 温度、装置の殺菌・洗 浄効果、洗剤残留 貯乳 乳温、タンクの殺菌・ 洗浄効果、洗剤残留 出荷 冷蔵保管 製品検査 充填 温度、製品破損 温度、在庫管理(先入先出) 官能・微生物、成分他 充填装置の殺菌・洗浄効 果、洗剤残留、落下細菌 HACCPシステム導入後の食品安全性保証-2 製造工程で使用される水、蒸気、空気の安全性も保証します。 水質の管理 飲用適の水:残留塩素、微 生物、成分 蒸気管理 食品添加物の清缶剤 空気の管理 潤滑油、微生物の混入 HACCPシステムの事例 自分で生乳を入手して飲むことを想定したHACCPシステムの例 工程 危害要因 防止対策 PRP /CCP 生乳 生乳中の有害な微生物の種類 有害な微生物の は何だろう? 汚染が有るか O-157、ブドウ球菌・・なんかは も! 熱に弱いな! 殺菌 ①予測されたO-157、ブドウ球 菌等の63℃30分加熱で死 殺菌が確実にで 滅させることが出来るのを CCP きるかな? 文献確認できた。 ②この殺菌条件の実行と監視 を徹底する。 飲む 有害微生物が 残ってて腹痛・ 下痢するかも! 確実に殺菌されていることが 確認できない牛乳は飲まない。 HACCPシステム認証制度の種類とその信頼度 以下にHACCPシステム認証制度の種類と外部から見た信頼度を紹介します。 (注:信頼度は必ずしも、HACCPシステムの運用精度と比例しません。) 低 世の中の評価 高 ①Codex「食品衛生の一般原則」を 活用した自己認証のHACCPシステム 北海道HACCPは上位 HACCP認証の登竜門 ②北海道HACCP ③ISO22000:2005 FSMS (第三者認証) (第三者認証) ④FSSC22000:2013 FSMS (第三者認証) 何故HACCPの導入が求められているか? 食品事故による 消費 者の不安や海外への 食品輸出 <厚生労働省> 平成27年度から食の安全を強化するため、 食品の製造・加工・販売営業許可を現状と HACCPシステム導入型の2通りとし、将来 HACCPシステムの義務化も視野に入れている。 <農林水産省> 2020年までに農林水産物の輸出額を現状の 約二倍となる一兆円規模まで拡大する計画 が有る。 <大手流通・製造企業> FSSC22000:2013やISO22000:2005、北海道 HACCPの認証取得を食品製造・加工企業に 要請している。 食品製造・加工企業の困惑 ①社内に専門家がいない。 ②お金が掛かるという誤解 HACCPの義務化 厚生労働省は今年4月より食品を製造・販売するために必要な 営業許可を「今まで通り許可制度」と「HACCPシステム導入型許 可制度」の2通にします。 更に将来はHACCPシステムによる食品製造が義務化される時代 が来ると予測されます。 平成27年度より 従来からの営業許可 義務化は平成Ⅹ年度 廃止?? HACCPシステム導入型営業許可 FSSC22000:2013の導入 ①導入が加速されている理由は、大手の食品製造企業が消費者の食品に 対する不安を取り除くためや海外へ食品を輸出する目的でFSSC22000: 2013の導入を進めております。 ②更に、その企業へ原料や資材を納入する企業にも導入を要請したり、推 奨したりしています。 ③加えて国内で大量の食品を販売する大手流通企業も、店舗へ食品を納 入している企業に対して導入を推奨しているためです。 ①日本コカコーラ: 2011年春に日本国内29工場でFSSC取得、2013年度までに原材 料メーカー170社、飲料委託先40社に取得を要請 ②イオン: 国内PB加工食品の委託工場450箇所にFSSCの取得を要請中 ③キリン: 2013年に飲料工場で取得、ビール工場でも検討 ④サントリー: ウイスキー・清涼飲料水工場で取得、ビール3工場でも取得予 定キッコーマン:海外工場で取得済み、国内でも取得予定 ⑤明治: 直営3工場で取得済み、グループ全菓子工場10箇所で取得す る方針 ⑥キューピー: 2015年11月までに国内82工場、海外5工場で取得見込み 北海道HACCPの構築手順と 帯広市HACCPアドバイザーの役割 企業がHACCPシステム構築 アドバイザーが助言 企業が自己評価(評価調書) アドバイザーが検証 保健所による審査(評価調書) 評価6以上 評価6以下 第三者認証機関が審査(評価調書) 合格:評価7 企業がHACCPシステム再構築 アドバイザーが助言 評価6以下 食品企業へ認証書の交付 アドバイザーが助言 北海道HACCPの評価調書 HACCPシステム構築の着眼点 項目 アドバイザーの助言事例 評価調書の内容 食品の製造や販売に関する営業許可の施設・ 設備要件を満たしているのであれば、新たな施 設・設備の導入は最小限に止まります。 ①手洗いの温水化 ②蛍光灯の飛散防止 ③防虫トラップ ④粘着ローラー ・・・等 製造作業手順書 ①最初に今実施していることを文書化します。 ②次に北海道HACCP評価調書で要求されてい る事項を付け加えて、文書化します。 ①受入れ検査 ②殺菌温度等のモニタリング ③機械・器具等の洗浄、殺菌・・・等 前提条件 プログラム 北海道HACCP評価調書の9頁(3)にある10項 目と、現状ある手順書・記録とをひも付します。 もし、無ければ新たに作成します。 ①施設設備・機械器具の衛生管理 ②施設設備・機械器具の保守点検 ③従業員の衛生管理 ④従業員の教育訓練 ⑤そ族昆虫の防除 ⑥食品等の衛生的な取扱い ⑦排水及び廃棄物の衛生管理 ⑧使用水の衛生管理 ⑨苦情返品対応、緊急時対応、回収プログラム ⑩自主検査 7原則12手順の 文書 北海道HACCP評価調書の10頁Bにある15項 目の内、現状ある文書で転用可能な文書を探し ます。 無ければ新たに作成します。 ④HACCPチームを編成 ⑤製品説明書 ⑥施設の図面及び作業動線図 (従業員と食品) ⑦詳細な製造工程図(フローダイアグラム) ⑪危害分析結果表(危害リスト) ⑫重要管理点整理表(CCP整理表) 施設・設備 HACCPシステム構築作業のイメージ 構築前 構築後 製造作業手順書・記録 社内に作業手順書・記録が点在した状態 北海道HACCP 評価調書を参考に並 び替えと項目追加を 行います。 追加した項目 原料受入れ手順書 原料確認記録 製造加工手順書 殺菌記録 品質検査手順書 検査記録 機器洗浄・殺菌手順書 洗浄・殺菌記録 出荷関連伝票 前提条件プログラム・記録 製造加工手順書 健康管理手順書 従業員検便実施記録 防虫・防鼠手順書 防虫・防鼠の記録 製品回収手順書 出荷関連伝票 審査を受ける準備の勘所 審査員が工場の食品安全活動を容易に把握できるように文書を整えます。 尚、これは審査員が理解できような表現で作業手順書を作り直すことでは ありません。(原則:作業手順書は現場の人が解れば良いのです。) 手順書・文書の種類(群)毎にファイリングして審査員が確認したい作業手 順書を直ぐに提示できるように工夫することが大切です。 製造作業手順書・記録 HACCP関連文書 製造加工手順書 殺菌記録 品質検査手順書 洗浄・殺菌記録 前提条件プログラム 健康管理手順書 従業員検便実施記録 防虫・防鼠手順書 防虫・防鼠の記録 製品回収手順書 出荷関連伝票 HACCPチーム組織図 ・ 記録 プログラム 検査記録 機器洗浄・殺菌手順書 HACCP関連文書 製品説明書 HACCP関連文書 原料確認記録 前提条件 原料受入れ手順書 施設の図面及び作業動線 図(従業員と食品) 詳細な製造工程図 (フローダイアグラム) 危害分析結果表 (危害リスト) 重要管理点整理表 (CCP整理表) まとめ 既に米国、欧州各国では自国内で製造・販売される食品はHACCPシステムに より製造することを義務化しており、当然、これらの国へ食品を輸出する企 業にもHACCPシステムでの製造を要求してきます。 また、国内でも近い将来、HACCPシステムの義務化が見込まれるため、今後 食品を製造・販売・流通させるにはHACCPシステムの導入が必須となります。 今後、HACCPシステムの導入を目指す企業を帯広保健所、帯広市、十勝財 団、帯広畜産大学はしっかり応援します。 (問合せアドレス [email protected]) 終り
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