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第
2部
中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍
事 例
2-1-4
村式株式会社
地域での連携によりイノベーションを起こした事例
は個別のプロジェクトも進められており、鎌倉をよりよく
するために活動する人たちのためのクラウドファンディン
ティング支援のためのシステム開発やコンサルテーショ
グサイト「iikuni」、建長寺で禅の体験とハッカソン 11 を組
8
ン 等のサービスを主力事業としている。中でもeコマー
み合わせて成果を目指す「ZenHack」等が企画されてい
ス 9 やクラウドファンディング 10 のプラットフォーム構築を
る。さらに、地域の経営者が 10 人程度集まって詳細な事
得意としており、大手広告代理店と協業運営するeコマー
業計画を公開し合う会議を開くことで、互いに真剣なアド
スサイトや、鎌倉を盛り上げるためのクラウドファンディ
バイスや厳しい指摘をする関係性が生まれ、協働への発
ングサイトを運営している。
展や、経営の決断のスピードが格段に速まる成果も生じ
住吉ユウ社長は、2006 年に大手印刷会社の同期入社
第2 節
神奈川県鎌倉市の村式株式会社(従業員 16 名、資本
金 1,000 万円)は、ウェブサイトの企画・構築やマーケ
ている。
のエンジニア5 人で東京都内に創業したが、2 年後には
住吉社長は、「カマコンバレーでは参加企業同士が競
鎌倉に移転している。移転当時、鎌倉には IT の産業集積
合にもなり得るが、互いに仲が良いので、地域全体で共
はわずかであり、経済合理性や効率性の観点からいえば
生して成果を出すという価値観が共有できている。その
都内のほうが圧倒的に立地は良かったが、歴史や地域の
ため、互いにノウハウやビジョン、スキルを共有し合える
雰囲気に惹きつけられ、協働する顧客や社員との関係性
関係性ができており、それがイノベーションの源泉となっ
を重視して、最終的には直感を信じて移転を決断した。
ている。」と話している。
鎌倉を盛り上げたいとの思いがあった住吉社長は、鎌
倉に本社をおくIT 企業の経営者らとカマコンバレー有限
責任事業組合を設立し、鎌倉を盛り上げるための活動を
行っている。月に一度開催される定例ミーティングでは、
NPO 法人等の団体や商店主、学生など、鎌倉をよりよく
するための活動をしている人の話を聞き、100 人程度の
参加者が課題を解決するためのブレインストーミングをす
ることで、多種多様なアイデアが生み出されるとともに、
参加者はその活動や地域の課題を「自分ゴト」として捉
え、各自が自発的に支援をするようになっている。この取
組によって培われる地域内の信頼関係や、思いのある人
を応援しようとする関係性が広がっていくことで、参加者
同士の仕事にも発展している。また、カマコンバレーで
■イノベーションのプロセス別に見た課題
カマコンバレーの定例ミーティングの様子(2014 年 11月)
える課題を企業規模別に示したものである。
次に、イノベーションを達成させるために活動
中規模企業の課題は、検討開始の判断の段階で
している企業が抱えている課題について見てい
は「イノベーションの取組の必要性の見極めが難
く。第 2-1-21 図、第 2-1-22 図は、イノベーショ
しい」
、投資の判断の段階では「投資時期・必要
ンの活動のプロセスを、
「検討開始の判断の段階」
、
性の見極めが難しい」、事業化の判断の段階では
「投資の判断の段階」
「事業化の判断の段階」の三
「事業化の時期の見極めが難しい」と回答した企
つの段階に分解し、それぞれのプロセスごとに抱
業が多くなっており、自社の経営資源への課題よ
8 「コンサルテーション」とは、異なる専門性をもつ複数の者が、援助対象である問題状況について検討し、よりよい援助の在り方について話し合うプロセスをいう。
9 「e コマース」とはインターネット等のネットワークを利用して、契約や決済等を行う取引形態をいう。
10「クラウドファンディング」とは、インターネットを介して不特定多数の人々から資金調達をすることをいう。詳細は中小企業白書(2014 年版)第 3 部第 5 章を
参照。
11「ハッカソン」とは、ソフトウェア開発者が、一定期間集中的にプログラムの開発やサービスの考案等の共同作業を行い、その技能やアイデアを競う催しをいう。
中小企業白書 2015
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