第3期中核教員研修報告

研究部だより
平成 27 年5月14日
No.3
第3期中核教員研修報告
運動会が近づき,練習の完成度,児童の体調,天気など気になることが多くあると思います。あと 10
日となりましたが,この行事を通して児童の「主体性」を育てていくことを意識して,指導を継続して
いきましょう。
5月8日(金)に,第3期中核(パイロット)教員研修がありました。演習を通して「パフォーマン
ス評価」を中心に研修しましたので報告します。
【京都大学 西岡准教授の講義より】
○学習評価の「逆向き設計」を意識すべきである。
①求められる結果(目標)を明確にする。
(終了時をイメージする。
)
②承認できる証拠(評価方法)を決定する。(指導の前に評価方法を計画する。
)
③学習経験と指導を計画する。
○パフォーマンス評価・・・知識やスキルを評価するのではなく,知識やスキルを使いこなす(活用す
る)ことを求めるような評価方法。
○パフォーマンス課題・・・様々な知識やスキルを総合して使いこなすことを求めるような,複雑な課
題。具体的には,論説文やレポート,展示物といった完成作品や,スピー
チやプレゼンテーション,実験の実施といった実演を評価する課題。
○パフォーマンス課題の作成手順
①単元を選ぶ。
②単元の中核に位置する重点目標に見当をつける。
③「本質的な問い」を明確にする。
④その問いに対してどのようなレベルの答えに達し
てほしいか「永続的理解」を明文化する。
【パフォーマンス課題作成演習(校内研修等)】
「本質的な問い」
「永続的理解」
第
2
段
階
第
3
段
階
⑤パフォーマンス課題のシナリオを作る。
教科,学年,単元,氏名
第
1
段
階
ゴール(目標)
本質的な問い
永続的理解
知識とスキル
パフォーマンス課題
その他の証拠
学習計画
準備物:A3用紙2枚,マジック
教科,学年,単元,氏名
G…目的は?
R…子どもが担う役割は?
A…だれが相手?
S…想定されている状況は?
P…完成作品は?
S…評価の観点は?
具体例を右のページ
に載せていますの
で,参考にしてくだ
さい。
【パフォーマンス課題作成の実践事例】
(中学校2年社会科)
「本質的な問い」
「永続的理解」
◎時代が変わるとはどういうことか。社会を変
明治維新という政治改革の背景には,欧米に
おける市民革命とアジアへの進出からの影響,
貨幣経済発展を想定していない幕藩体制や年貢
制度の矛盾など国内外の様々な要因があった。
また日本が近代国家として国際的地位を向上
するために,積極的に欧米文化を摂取し,廃藩
置県,富国強兵政策,殖産興業,地租改正,学
制の公布など様々な改革を行った。その結果,
工業のめざましい発展や身分制度の廃止,民主
政治の発展など正の側面が見られた反面,公害
や労働問題の発生,帝国主義萌芽による大陸進
出など負の側面もあらわれた。
えるのは何か。どのように変えていくことが,
民主的で平和な国家・社会をつくりあげること
になるのか。
○明治維新によって,日本社会はどのように変
化したのか。明治維新後の日本において,人々
が幸福で平和に暮らせる社会を築くには,どう
すればよかったのか。
「本質的な問い」
・単純な一つの答えがない。
・個々の知識やスキルが総合されていくような問い。
・様々な文脈で活用できるような問い。
・「だから何なのか?」が見えてくるような問い。
・◎は包括的な問い,○は単元ごとの問い。
(○は1つか2つに絞る)
「永続的理解」
・必ず完全な文(~は~である。
)として書く。
・いろいろな場面で役立つ(転移する)内容。
・大人になっても覚えていてほしい理解。
・学問の中核部分になる内容。
・子どもが誤解しやすい内容。
「パフォーマンス課題」
時は 1900 年。あなたは明治時代の新聞社の社員た
ちであり,社会が大きく変化してきた明治維新を記念
する社説を書くことになりました。社説は,当時を生
きる人々(政治家,産業界の人々,文化人,一般の人々)
に向けた新聞社からのメッセージです。
話し合いの内容や今までの学習を振り返り,今後の
改革のあり方について重要だと考えることを提案し
「パフォーマンス課題のシナリオ」
G…何が目的(Goal)か?
R…子どもが担う役割(role)は何か?
A…誰が相手(Audience)か?
S…想定されている状況(Situation)は?
P…生み出すべき完成作品(Product)は?
S…評価の観点(Standard)は?
以上の6点を明確にして課題のシナリオを
作るが,必ずしも6点が入っていなければな
らないということではない。
てください。
○質の良い課題の条件
①妥当性・・・測りたい学力に対応しているか?「本質的な問い」
「永続的理解」に対応しているか?
②真正性・・・リアルな課題になっているか?現実世界で試されるような力に対応しているか?
③関連性・・・子どもたちの身に迫り,やる気を起こさせるような課題か?
④レディネス・・・子どもたちが背伸びをすれば手が届く程度の,ちょうど良い難度か?
○パフォーマンス課題に対する5段階のルーブリックを作成し,評価していく。
*「パフォーマンス課題作成」
「ルーブリック」には,正しい解答や見本となるものはない。職員で協議
を繰り返し,より良いものを作成していこうとすることが重要である。
*全ての教科・単元で作成しようとすると負担になる。単元を絞って,作成していくべき。