「持続可能な木材利用総合計画」(2015~2019 年)

No.2, 8 MAY 2015
韓国の「持続可能な木材利用総合計画」(2015~2019 年)の概要
韓国の山林庁は昨年 11 月に、2015 年から 2019 年までの 5 ヵ年計画の「持続
可能な木材利用総合計画」を発表した。その概要は、以下のとおり。
Ⅰ.概要
1.計画樹立の背景
(1)環境材料である木材の使用に対する関心の増加
○ 1990 年代以降から経済及び建設景気の低下にもかかわらず、木造建築分
野においては田園住宅、帰農・帰村拡大などで国民的な関心が増加
○ シックハウス症候群、アトピーの発生など住居環境問題に対する対策と
して生活の中に木材の使用が増加傾向
※近年新設着工木造建築物の増加:2004 年の 2.3 千棟 → 2013 年の 11.7 千
棟(5 倍増)
(2)国内森林蓄積の増加による木材供給力の向上
○ 1970 年代の治山緑化期に造林した森林は現在 OECD 平均蓄積(121m3/ha)
を上回る
※国内森林の 1ha あたりの平均立木蓄積の増加:2004 年の 10m3/ha → 2010
年の 126.5m3/ha
○ 2011 年の気候変動枠組条約により、自国産木材製品が炭素算定に含まれ
ることになることから、国産材の利活用の重要性に対する認識が向上
(3)自由貿易協定(FTA)の拡大に向けた国内木材産業への対策が必要
○ 最近、FTA の締結などで木材製品の輸入が増加
※韓国と中国の間で FTA が締結されると国内製材産業は中国製品の価格競争
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力で約 50%程度が倒産されると推定(約 5 千億 WON の被害予想)
以上のことから、持続可能な木材利用と木材産業の競争力を向上させるため
には総合的な計画と総合的な対策が必要。
2.計画樹立の根拠及び性格
(1)計画樹立の法律的な根拠
○ 「木材の持続可能な利用に関する法律」第6条
-木材の持続可能な利用のためには 5 年ごとに木材の持続的な利用に関す
る総合計画を樹立・施行
○ 「山林資源の造成及び管理に関する法律」第 37 条及び施行規則第 48 条
林産物の利用促進と木材産業の発展のためには施策樹立・推進
木材加工及び木造住宅などの木材産業の育成
○
○
○
○
森林バイオマスエネルギーの利用・普及促進
木材製品の開発及び技術普及など
「山林基本法」第 1 条、第 21 条、第 23 条
「林業及び山村振興促進に関する法律」第 11 条、第 18 条
「低炭素緑成長基本法」第 55 条
「炭素吸収源増進及び利用に関する法律」第 12 条など
(2)計画の範囲と性格
○ 計画期間:5 年(2015~2019 年)
○ 計画の対象
木材生産企業、木材製品の生産・消費・流通業及び国民
山林事業法人、山林事業従事者または国民
○ 第 5 次山林基本計画(2008~2017 年)の木材産業と関連する 5 の核心課
題に対する実行計画の性格
Ⅱ.ビジョン及び戦略
1.ビジョン
持続可能な木材利用の基盤構築
2.目標
(1)木材産業規模:2004 年の 35 兆 WON
(2)国産材自給率:2004 年の 18% →
→ 2019 年の 40 兆 WON
2019 年の 21%
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3.推進課題:4 戦略 14 課題
(1)木材産業の新成長動力の発掘
○ 木材産業に対する選択的な支援で競争力の向上
○ 木造建築、家具などの産業に対する支援強化
○ 森林バイオマスエネルギー産業を育成し、資源循環型体系を構築
○ 徹底的な品質管理で木材製品に対する信頼の確保
(2)持続可能な木材供給体系の構築
○ 国産材の安定供給のための生産拡大
○ 林道など木材生産基盤の拡大で生産コストの減少
○ 国産材に対する流通体系の改善で付加価値の向上
○ 木材の需給安定のための海外木材資源の確保
(3)木材文化の基盤拡大
○ 全生涯の木材使用推進キャンペーン
○ 生活への木材利用の拡大に関する国民認識の向上
○ 総合的な木材文化の活性化関連基盤の構築
(4)木材利用分野別の支援強化
○ 協業強化を通じた政府 3.0 実現(規制改善)
○ 木材産業に対するインセンティブ・支援強化
○ 研究・技術開発の拡大を通じた付加価値の向上
Ⅲ.主要な推進計画
1.木材産業に対する選択的な支援による競争力の向上
(1)(合板・製材産業)国産材の加工技術の開発及び施設の現代化
○ 持続的に生産可能なマツを活用して安定的な原材料の需給を図り、合
板・製材産業の競争力の向上
国産材の合板・製材品の原料供給:2015 年の 600 千 m3 → 2019 年の
800 千 m3
○ 製材・乾燥・防腐施設の現代化
木材生産施設の現代化支援:2015 年の 30 箇所 → 2019 年の 50 箇
所
(2)(ボード・パルプ産業)国産材の集材力の向上及び廃木材の利活用の拡大
○ ボード・パルプ産業に安定的な原材料を供給するために不成績林に対す
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○
る樹種更新の拡大及び林地残材の収集の向上
国産材のボード・パルプの原料供給:2015 年の 2,500 千 m3 → 2019
年の 3,000 千 m3
廃木材、廃紙などの再利用の拡大を図るため、関連産業と協力体系を構
築
(3)(産業別の連携)木材産業地域における木材産業クラスター団地の造成
○ 効率的な加工・流通を図るため、主な地域拠点別に木材加工クラスター
団地を造成
木材産業クラスター団地の造成支援:2016 年の 1 箇所 → 2019 年
の 3 箇所
2.木材建築、家具など産業に対する協力強化
(1)関連産業の協議会の構成・運営
○ 合板・ボード、製材品などは建設、家具、インテリアなどとの協力体制
が必要
○ 関連業間の円滑的な原料需要・供給体系の構築
(2)新しい木材需要の創出
○ (都市)共同住宅(アパートなど)に対する木材インテリアの拡大
○ (農山村)山村休養型の木造住宅団地の建設及び田園木造住宅の拡大
○ (公共機関)地域林業と経済活性化のための間伐材の優先利用
(2)木造建築を拡大するための制度及び研究支援の強化
○ 木造技術者制度の強化
木造教育機関:2015 年の 3 箇所 → 2019 年の 8 箇所
木造建築専門家:2015 年の 360 名 → 2019 年の 500 名
○ 大型木造施設の建設による木造建築に対する信頼の増進及び認知度の向
上
○ 産学研の研究協力による木造建築の耐震・耐火性の向上
3.森林バイオマスエネルギー産業の育成による資源循環型体系の構築
(1)木材ペレットの供給基盤の構築を通じて国内生産量の拡大
○ 原材料の確保を考慮したペレット生産施設の拡大(8 箇所)
○ 効率的な改善事業で従来施設に対する生産規模の拡大及び施設の改善
稼働率:2015 年の 60% → 2017 年の 70%
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(2)木材ペレットボイラの普及による需要基盤の拡大と消費市場の活性化
○ 住宅用及び社会福祉用の木材ペレットボイラの普及拡大
木材ペレットボイラの普及(累積数):2015 年の 19 千基 → 2019
年の 27 千基
産業用ボイラの技術水準及び品質の向上
(3)木材ペレットに対する流通網の構築を通じて消費者購買の便利性を拡大
○ 地域山林組合などの販売店を拡大し、消費者購買の便利性を拡大
販売店:2015 年の 125 箇所 → 2019 年の 160 箇所
4.徹底的な品質管理による木材製品に対する信頼の確保
(1)木材製品の規格・品質制度の定着及び流通体系の確立
○
「木材の持続的な利用に関する法律」における品質表記の義務化の対象
品目を全品目に拡大(2015 年)
規格・品質検査工場の指定:2014 年の 0 → 2019 年の 30 箇所
(2)木材製品の品質認証の促進による消費者信頼の向上
○ 木材製品に品質認証マークを付与し、消費者の信頼改善及び木材産業の
品質向上を図る
品質認証の対象品目:2014 の 8 品目 → 2019 年の 15 品目
品質認証の獲得件数:2014 年の 108 件 → 2019 年の 200 件
(3)木材専門人材の養成支援による技術・品質の向上
○ 原木生産業・製材産業などの専門人材を養成するための多様な教材開発
○ 専門人材の養成機関における教育課程の専門化・多様化による技術向上
の推進
5.国産材の安定供給のための生産拡大
(1)成長・経済性を勘案した地域別主要樹種の造成
○ 地域別に持続的な木材供給が可能な樹種及び主要な樹種の用材林の造林
(2)基準伐期齢の改善による国産材生産の拡大
○ 主な樹種を中心に基準伐期齢を段階的に緩和
(私有林)材積収穫最大伐期齢 → 市場需要に合う適正伐期齢(森林
所有者の所得拡大)
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マツ(50 年→40 年)、カラマツ(40 年→30 年)、ナラ類(50 年
→25 年)
(国有林)保護中心 → 原材料供給のための材積収穫最大伐期齢
(3)不成績林に対する伐採の促進による樹種の更新
○ 数値化された不成績林の基準を構築・適用し、樹種の更新を促進
○ 不成績林の伐採で生産された木材をパルプ・ボード産業に供給
年次別の樹種更新(2014 年の 12 千 ha → 2019 年の 17 千 ha
6.林道など木材生産基盤の拡大による生産コストの削減
(1)森林経営、木材生産の特性を考慮した林道の増設
○ 経済林育成団地と先導森林経営団地における林道の増設による生産性の
向上
○
2019 年まで林道 26 千 km を新たに建設し、林道密度を 4.1m/ha まで
引き上げる
高性能林業機械及び大型運送機械が利用できる既存林道の改善
(2)生産性の向上を図るための高性能林業機械の促進
○ 多機能木材生産機械の開発、普及による木材生産性の向上
○ 小・中径材から中・大径材生産に合う伐採機械の開発・普及
○ 生産性が高い架線集材システムの拡大
架線集材率:2014 年の 2% → 2019 年の 50%
7.国産材流通体系の改善による付加価値の向上
(1)圏域別の主要樹種の付加価値製品生産及び流通機能の拡大
○ 国産材の供給及び需要先を考慮した圏域別の木材総合流通センターの設
立
木材総合流通センターの造成:現在の 2 箇所 → 2019 年の 4 箇所
○ 先導森林経営団地と連携し、圏域別に主な生産樹種及び用度に合う特化
木材加工施設の拡大
圏域別に木材産業支援センターの設立(韓国林業振興院)
(2)K-Wood Auction の構築でスマート取引システムの活性化
○ 森林所有者、原木生産業者、加工企業、消費者が国産材を直接的に取引
できる情報基盤の流通システムを構築し、流通コストの減少及び製品品
質の信頼確保
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中期的にはオンラインのみならず実際に販売店を設置して特殊原木・製
材品・薪・樹皮などの直取引市場を運営(2018 年)
(3)主要経済林団地における国産材を特化した総合加工工場を設置
○ 圏域別に製材・乾燥・木屑・ペレット生産施設の一貫システムをそろえ
た総合加工工場の設置で流通コストの減少及び加工歩留まりの向上を図
る
総合加工工場:2014 年の 10 箇所 → 2019 年の 30 箇所
総合加工生産量:2014 年 6 万 m3 → 2019 年の 9 万 m3
○ マツ中径材に対する加工労働力の減少及び加工副産物を製品化できる国
産材専用製材機械及び製材工程の開発
平均製材歩留まり:マツ 43~46%、カラマツ 50~53%、輸入材 53~
55%
8.木材需給の安定を図るための海外木材資源の確保
(1)海外造林事業の拡大による安定な木材資源の確保
○ 森林資源が豊富な中南米地域など森林開発投資地域の多様化
2018 年まで 14 ヵ国に 35 ヵ企業が投資し、483 千 ha(累積)造林
○ 海外森林資源開発の拡大のための政策資金の支援拡大
融資支援規模:2015 年の 250 億 WON → 2019 年の 400 億 WON
(2)海外森林投資の促進を図るための事例モデル開発及び相互協力の拡大
○ 主な新・再生エネルギー資源である木材ペレットの海外供給基盤を構築
するための木材バイオマス造林事業を拡大
○ 森林分野の相互協力強化で企業の海外造林投資を促進
9.生活における木材利用の拡大を図るための国民認識の向上
(1)「I LOVE WOOD」国民キャンペーンの推進
○ Wood Camping などいろいろなイベントの開発、普及
木材文化ドキュメンタリー、放送 PPL、広告映像などメディアを通じ
て PR の強化
○ 社会・文化的な流れを反映した木材経験イベントを実施
(2)大規模な展示会・大会などのイベントを通じたアピール
○ 自治体と協力して首都圏のみならず地方を巡回する木材産業博覧会の開
催
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建築博覧会・家具博覧会など
大韓民国木造建築博覧会、木材科学オリンピアードなど
(3)木材製品関連消費者ガイドブックの発刊・普及
○ 消費者の視点に立った木材製品ガイドブックの製作(2015 年)
(4)木材製品の炭素貯蔵量の表記
○ 合板・ボード類製品を始め、木材製品の炭素貯蔵量を測定・表記する制
度を導入(2016 年)
2019 年まで 15 品目の木材製品まで拡大
○ 建築物の炭素貯蔵量及び炭素貯蔵率の測定・公表(2017 年)
○ 全国を対象に木材文化指数を測定し、自治体別に木材文化普及度を判断
し、地域の持続的な木材利用を促進(2015 年)
(5)木材文化体験場を拡大し木材文化の活性化を図る
○ 多様な木材文化体験場を拡大造成
木材文化体験場:2015 年の 39 箇所 → 2019 年の 60 箇所
10.体系的な木材文化の活性化に対する基盤の構築
(1)木材文化を先導する機関として木材文化振興会を育成
○ 木材文化体験場の運営など全国自治体の業務を行う支部運営
木材文化振興会の支部運営:2014 年の 0 → 2019 年の 10 箇所
(2)木材文化の活性化のための教育・広告事業の強化
○ 木材文化・教育関連の DIY・ウッドクラフトなどの企画及び広告の強化
○ 木材(ウッドクラフト)体験プログラムの開発・普及
11.協業強化を通じた政府 3.0 の実現(規制改善)
(1)林木副産物を廃棄物から除外(環境部、国土交通部)
○ 森林事業で発生された林木副産物及び産地開発で発生された木の幹・
枝・根(以上 1 等級廃木材)を廃棄物から除外
(2)木材関連 REC(新再生エネルギー供給認証書)加重値の調整で木材再活用
の拡大(産業資源部)
○ 産業界における活用価値が低い林木副産物の REC 加重値を高め、木材ペ
レットなどの森林バイオマスエネルギー源としての販路を図る
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「新再生エネルギー供給義務化制度の管理及び運営指針」によると再
活用が可能な廃木材及び森林事業・山地開発で発生した原木は供給認
証書発給の加重値を未適用
12.木材産業に対するインセンティブ・支援強化
(1)国産材及び品質認証木材製品の生産企業に対するインセンティブ提供
○ 公共機関における国産材の優先購買制度の拡大
国家機関、自治体、公共機関などで国産木材製品を優先購買できるよ
うに持続的な協力体系の構築
・ 法令根拠:林業及び山村振興促進に関する法律第 11 条
自然休養林、木材体験場などの森林施設には国産材及び品質認証製品
の使用が義務化
(2)木材産業に対する税制及び金融支援の拡大
○ 擬制買取税額の控除及び森林開発所特税の減免
国内原木を原材料として付加価値税が課税される製材品、木材チップ、
MDF などを製造・供給する場合は税額を控除する擬制買取税額の控除
を推進
・ 原木購入費用に対する控除率(6/106)を掛けて買取税額で擬制
して控除
森林経営計画樹立の対象地である林地内で生産する原木に対しては
森林開発所得税の減免(50/100)
○ 零細事業者に対する森林事業総合資金の融資用度及び資金の拡大
森林事業総合資金規模:2014 年の 184 億 WON → 2019 年の 500 億
WON
○ 木材産業分野に対する政府支援融資金の金利引き下げ
木材生産事業の総合資金金利:2014 年の 3~4% → 2016 年の 2%
(本文は現地レポートを基に編集したもの)
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