丹下寛先生:Cell. 2014 159(2):428-39. doi: 10.1016/j.cell.2014.09.040. ES 細胞と iPS 細胞から機能的ヒト β 細胞樹立!! Generation of functional human pancreatic β cells in vitro. 【背景】1型糖尿病の子供をもつ研究者が、iPhoneでインスリンとグルカゴンのアルゴリズムを計算 し、自動で血糖を制御する人工膵臓開発を行い話題になっていますが、今回は、同様に1型糖尿病二 児を持つメルトン教授率いるハーバード大の研究室が、ES,iPS細胞からヒトのβ細胞機能に近い細 胞をin vitroで樹立した論文を、丹下博士に紹介いただきました。 【方法】ヒト多能性幹細胞(ES,iPS)に対し、11種類の遺伝子を導入、これまでは、培養ディッシュ に細胞を接着させて分化誘導を行なっていたが、細胞塊を浮遊させて培養する3次元培養法を確立 し、β細胞(SC-β)を樹立、その機能について、これまでの方法でのβ細胞(PH)およびヒト成人由 来β細胞(1 β)と比較検討した。 【結果】SC-β細胞は、PH細胞では達成できなかったブドウ糖濃度依存性にインスリン濃度上昇を認 め、1 β細胞とほぼ同等の機能を有していた。また、糖尿病マウスに、約500万個の細胞を移植し た結果、PH 細胞では高血糖進展を認めたが、SC-β細胞移植では112日間高血糖進展を認めなかった。 また、移植2週間後にブドウ糖負荷試験を行った結果。73%のマウスで耐糖能が正常化していた。 【結論】メルトン教授は、実験に成功するまでに 15 年の歳月を必要とした。「研究は臨床試験の前 段階にあり、実用化するまでに多くの研究が必要だが、数年内に再生した β 細胞をヒトに移植する 試験に着手したい」とのこと。後は自己免疫の再発予防が問題ですが、いよいよ、1 型糖尿病も根治 の時代が近づいています。 (文責 阿比留)
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