択一&記述・パーフェクトローラー講座 民法Ⅰ 無料体験冊子

司法書士
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択一&記述・パーフェクトローラー講座
民法Ⅰ
無料体験冊子
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0 001921 105843
SU10584
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■出題傾向の分析■
平 成 17年
4 民法
総則
錯誤
知識
74.10%
5 民法
総則
表見代理
推論
86.00%
6 民法
総則
条件
知識
77.70%
7 民法
総則
消 滅 時 効 の援 用
推論
52.90%
4 民法
総則
代理
知識
87.90%
5 民法
総則
失踪宣告
知識
70.60%
6 民法
総則
意 思 表 示 (詐 欺 ・強 迫 )
知識
83.90%
7 民法
総則
時 効 と除 斥 期 間
知識
68.00%
4 民法
総合
金 銭 消 費 貸 借 契 約 と抵 当 権 設 定 契 約
知識
64.80%
5 民法
総則
復代理
知識
68.60%
6 民法
総則
制限行為能力者
知識
77.80%
7 民法
総則
虚偽表示
知識
87.80%
4 民法
総則
虚偽表示
推論
59.20%
5 民法
総則
錯 誤 と瑕 疵 担 保 責 任
知識
79.80%
6 民法
総則
無 権 代 理 と相 続
知識
86.40%
7 民法
総則
時 効 の援 用 権 者
知識
83.70%
4 民法
総則
条 件 と期 限
知識
78.8%
5 民法
総則
時 効 の中 断
知識
84.9%
6 民法
総則
割 賦 払 い債 務 の消 滅 時 効 の起 算 点
推論
55.1%
7 民法
総則
取 得 時 効 (占 有 の承 継 )
知識
88.1%
4 民法
総則
不 在 者 ・失 踪 宣 告
知識
5 民法
総則
代理
知識
6 民法
総則
意 思 表 示 と観 念 の通 知
知識
平 成 18年
平 成 19年
平 成 20年
平 成 21年
平 成 22年
1
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第1章
第1節
【図表 1
民法の指導原理
自然人
Aランク
民法の指導原理】
権利能力平等の原則
すべての自然人は,階級・職業・年齢等によって差別されることな
く,平等に権利義務の主体となることができるということ
所有権絶対の原則
所有権は何らの人為的拘束を受けない完全な支配権であり,神聖不
可侵であること
私的自治の原則
すべての個人は,自由な意思によらなくては権利を取得し,義務を
負わされることはないという原則
過失責任の原則
人は故意または過失に基づいて他人の権利・利益を侵害し,損失を
与えた場合にのみ損害賠償責任を負う(注)
(注)ただし,過失責任の原則はあくまでも「原則」であり,法律の至るところに無過失責
任の規定が存在する。以下,具体例を挙げておく。
①
②
③
④
復 代 理 人 を 選 任 し た 法 定 代 理 人 の 責 任 ( 106)( ※ 1 )
無 権 代 理 人 の 責 任 ( 117, 最 判 昭 62.7.7)
責 任 転 質 に お け る 「 転 質 を し た こ と に よ っ て 生 じ た 損 失 」( 348)( ※ 2 )
転 貸 に お け る「 転 借 人 の 過 失 に よ る 目 的 物 の 滅 失 ,毀 損 」の 場 合 の 賃 借 人 の 責 任( 大
判 昭 4.6.19)
⑤ 金 銭 債 務 の 不 履 行 に よ る 損 害 賠 償 ( 419Ⅱ )
⑥ 受任者が委任事務を処理するために自己に過失なく損害を受けたときにおける委任
者 の 損 害 賠 償 責 任 ( 650Ⅲ )
⑦ 売 主 の 担 保 責 任 ( 561以 下 )
⑧ 請 負 契 約 に お け る 請 負 人 の 担 保 責 任 ( 634)
⑨ 不 法 行 為 に お け る 土 地 工 作 物 の 所 有 者 の 責 任 ( 717Ⅰ 但 書 )( ※ 3 )
( ※ 1 )や む を 得 な い 事 由 に よ り 復 代 理 人 を 選 任 す る 場 合( 106 但 書・105Ⅰ )や ,任 意 代
理 人 が 復 代 理 人 を 選 任 す る 場 合 ( 105Ⅰ ) は , 選 任 ・ 監 督 に つ い て の み 責 任 を 負 う
( 過 失 責 任 )。
( ※ 2 ) 承 諾 転 質 ( 民 350・ 298Ⅱ 本 文 ) の 場 合 は 過 失 責 任 で あ る 。
( ※ 3 ) 土 地 工 作 物 の 占 有 者 の 場 合 は 過 失 責 任 で あ る ( 717Ⅰ 本 文 )。
2
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第2節
1
能力
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Aランク
総説
【図表 2
年齢と各種の能力】
7
12
~
11
t
死亡
20
歳
18
歳
16
歳
721
886
965
15
歳
歳
歳
~
出生
[昭 56-21-1]
6
権利能力
[昭 63-1-2]
意思能力
責任能力
縁組能力(普通養子)
遺言能力
婚姻能力(女)
婚姻能力(男)
縁組能力(普通養親)
行 為 能 力(注)
(注)
【図表3
753
意思無能力と制限行為能力の二重効
制限行為能力者が意思能力を欠く状態で法律行為を行った場合,当該制限行為能力
者 は , 行 為 の 取 消 し 又 は 無 効 の い ず れ を 主 張 し て も よ い ( 二 重 効 肯 定 説 , 通 説 )。
他 の 法 律 で 学 習 す る 『 能 力 』】
訴訟
当事者能力
(訴訟・供託)
供託
訴訟能力
供託行為能力
民 事 訴 訟 の 当 事 者( 原 告・被 告 )と な る
ことのできる一般的能力
自 己 の 名 に お い て 供 託 手 続 の 当 事 者( 供
託者・被供託者)となりうる能力
自 ら 単 独 で 有 効 に 訴 訟 行 為 を し ,又 は 受 け る た
めに必要な能力
供託手続上の行為を自ら有効に行いうる能力
3
出生
(法人の場合,設立)
20 歳
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4
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2
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権利能力
2-1
原則
権 利 能 力 を 有 す る の は 「 人 」 で あ り ,「 人 」 は 自 然 人 と 法 人 に 分 類 さ れ る 。
自 然 人 は , 出 生 時 か ら 権 利 能 力 を 取 得 す る ( 3Ⅰ )。( 注 )
( 注 )「 出 生 」 と は , 生 き て 母 体 か ら 完 全 に 分 離 す る こ と を い う ( 全 部 露 出 説 , 通 説 )。
Cf. 刑 法 に お い て は 一 部 露 出 説 が 判 例 ( 大 判 大 8.12.13)・ 通 説 で あ る 。 そ の た め ,
母体から一部露出中の者を殺害した場合,その者に対する殺人罪が成立する。
→ 刑法において「出生」時期の判断は堕胎罪と殺人罪の分岐点となる。
2-2
例外
【図表 4
①
②
③
胎 児 に 認 め ら れ る 権 利 能 力 ( 個 別 主 義 )】
不 法 行 為 に 基 づ く 損 害 賠 償 請 求 ( 721)
相 続 ( 886)
遺 贈 ( 965)
(注)胎児に認知請求権は認められない。そのため,母が胎児を代理して強制認知の訴えを
提起することもできない。
cf. 父 が 母 の 同 意 を 得 て 胎 児 を 認 知 す る こ と は 可 能 で あ る ( 783Ⅰ ・ 胎 児 認 知 )。
5
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2-3
胎児の特則の解釈
【図表 5
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[ 昭 54-12-1][ 昭 56-21-4][ 昭 56-21-5][ 平 2-23-2]
「既に生まれたものとみなす」の解釈】
「既に生まれた
も の と み な す 」の
意味
母の法定代理
法定停止条件説
法定解除条件説
生きて生まれることを停止条件と
して胎児のために権利を留保する
死体で生まれることを解除条件とし
て胎児に制限的な権利能力を認める
不
条件成就の効果
可
( 注 1・ 2)
( 注 3)
出生時に取得した権利能力が出生
前に遡及する
権利能力が遡及的に消滅する
( 注 1) 代 理 行 為 の 効 果 が 本 人 に 帰 属 す る た め に は , 以 下 の 要 件 を 満 た す 必 要 が あ る ( 効 果
帰属要件)
①
②
③
④
本人に権利能力があること
代理人に代理権があること
代理人が顕名をすること
契約が有効に成立すること
→
停止条件説では代理不可
( 注 2)
胎児の損害賠償につき,母その他の親族が胎児のため加害者とした和解は,胎児
を 拘 束 し な い ( 大 判 昭 7.10.6)。
( 注 3)
母の法定代理権の範囲については,①全面的に肯定する説と,②胎児の権利の保
存についてだけ認められ処分行為には及ばないとする説とが対立している。
●停止条件説と解除条件説の問題を素早く解くコツ●
1
結 局 ,胎 児 が 胎 児 で あ る 間 に ,権 利 能 力 を 認 め る か 否 か と い う 点 に 両 者 の 根 本 的 な 違 い が あ る
→
停止条件説:胎児である間は権利能力なし。無事に生まれると遡って権利能力を取得。
胎児である間に母が胎児を代理することはできない
解 除 条 件 説:胎 児 で あ る 間 に も 権 利 能 力 あ り 。死 産 と な っ て し ま っ た 場 合 は 権 利 能
力がなかったことになる。
胎 児 を 代 理 す る こ と ,胎 児 名 義 で 登 記 を す る こ と も 可 能 と い う こ と に な る 。
2
胎 児 に 権 利 能 力 が 認 め ら れ う る の は「 相 続 ,遺 贈 ,不 法 行 為 に よ る 損 害 賠 償 請 求 」の み で
あ る と い う 点 は , ど ち ら の 説 に よ っ て も 変 わ ら な い ( 721・ 886・ 965)。
3
意思能力
法 律 行 為 に よ る 権 利 義 務 の 変 動 は ,自 己 の 意 思 に 基 づ い て の み 行 わ れ な け れ ば な ら な い( 私
的自治の原則)から,明文規定はないものの,意思無能力者の法律行為は無効とされる(大判
明 38.5.11, 通 説 )。
6
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4
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行為能力
4-1
制限行為能力者制度
4-1-1
概観
【図表 6
制限行為能力者制度】
○=あり
×= な し
成年被後見人
被 保 佐 人
被 補 助 人
20 歳 未 満 の 者
精神上の障害によ
り事理弁識能力を
欠く常況にあって,
家庭裁判所の後見
開始の審判を受け
た 者( 7)
[ 平 15-4ア]
精神上の障害によ
り事理弁識能力が
著しく不十分であ
っ て ,家 庭 裁 判 所 の
保佐開始の審判を
受 け た 者 ( 11)
精神上の障害によ
り事理弁識能力が
不 十 分 で あ っ て ,家
庭裁判所の補助開
始の審判を受けた
者( 15Ⅰ )
[ 平 15-4ア]
法律行為をするには
法定代理人の同意が
必 要 ( 5 Ⅰ 本 文 )[ 昭
57-2-5]
自ら法律行為をす
ることはできない
(9 本文)
自ら法律行為をす
ることができる
自ら法律行為をす
ることができる
13 条 1 項 列 挙 の 行
為については保佐
人の同意を要する。
た だ し ,日 用 品 の 購
入その他日常生活
に関する行為は単
独ですることがで
き る ( 13 Ⅰ 柱 書 但
書)
13 条 1 項 列 挙 の 行
為の中から家庭裁
判所が定めた特定
の一部の行為につ
いて補助人に同意
権が与えられた場
合は補助人の同意
を 要 す る ( 17Ⅰ )
意
未 成 年 者
義
原
則
例
行 為 能 力
外
① 単 に 権 利 を 得 ,又 は
義務を免れる行為
( 5Ⅰ 但 書 )
[ 昭 60-1-1]
②許可された財産の
処 分 ( 5Ⅲ )
③許可された営業に
関 す る 行 為 ( 6)
日用品の購入その
他日常生活に関す
る行為は単独です
ることができる(9
但書)
[ 平 15-4-イ ]
保護者
代理権
同意権
追認権
保 護 者 の 権 能
法定代理人
原則:親権者
例外:未成年後見人
成 年 後 見 人 ( 8)
保佐人
( 12)[ 昭 60-1-5]
補 助 人 ( 16)
○
( 824)
○
( 859)( 注 1)
付与の審判があれば
○
( 注 1・ 2)
付与の審判があれば
○
( 注 1・ 2)
○
( 5Ⅰ 本 文 )( 注 4)
○
( 122)
取消権
○
( 120Ⅰ )
×
○
[ 昭 60-1-2 ][ 平
( 13Ⅰ )( 注 3・4)
5-8-3]
[ 平 9-1-1]
[平
[ 平 9-1-1]
19-6-エ ]
○
○
( 122)[ 平 9-1-5] ( 122)[ 平 9-1-5]
○
( 120Ⅰ )
○
( 120Ⅰ )
7
付与の審判があれば
○
( 17Ⅰ )( 注 3・4)
○
( 122)
○
( 120Ⅰ )
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( 注 1)
本 人 の 居 住 用 不 動 産 の 処 分 [ 平 15-4-オ ]
成年後見人及び代理権付与の審判を受けた保佐人・補助人が本人に代わってその居
住用の建物又はその敷地について,売却,賃貸,賃貸借の解除又は抵当権の設定その
他 こ れ ら に 準 ず る 処 分 を す る に は , 家 庭 裁 判 所 の 許 可 を 得 な け れ ば な ら な い ( 859 の
3・ 876 の 5Ⅱ ・ 876 の 10Ⅰ )。
( 注 2) 家 庭 裁 判 所 に よ っ て 保 佐 人 ・ 補 助 人 に 代 理 権 を 付 与 す る こ と が で き る 。
( 1) 代 理 権 付 与 の 審 判 の 請 求 権 者 は , 保 佐 人 の 場 合 ( 876 の 4Ⅰ ) は ① 保 佐 開 始 の
審 判 の 請 求 権 者( 11 本 文 ),② 保 佐 人 ,③ 保 佐 監 督 人 で あ り ,補 助 人 の 場 合( 876
の 9Ⅰ )は ① 補 助 開 始 の 審 判 の 請 求 権 者( 15Ⅰ 本 文 ),② 補 助 人 ,③ 補 助 監 督 人
である。
( 2)
本人の同意
【図表 7
制限行為能力者本人の同意を要するもの】
後見・保佐・補助開始
の審判
( 3)
( 注 3)
( 注 4)
成年被後見人
不要
被保佐人
不要
被補助人
本人以外の請求による場合
は 必 要 ( 17Ⅱ )
保護者に代理権を付与する旨
の審判
本人以外の請求による場合
は必要
( 876 の 4Ⅱ ・ 876 の 9Ⅱ )
代理権の範囲
家庭裁判所は,代理権付与の審判において,保佐人・補助人が代理すること
の で き る 法 律 行 為 を 特 定 し な け れ ば な ら な い ( 876 の 4Ⅰ ・ 876 の 9Ⅰ )。
Cf. 代 理 権 の 範 囲 は 13 条 1 項 所 定 の 法 律 行 為 に 限 ら れ な い ( ⇔ 同 意 権 )。
未成年者の法定代理人や成年後見人とは異なり,保佐人・補助人の代理
権は包括的なものではない。
保佐人・補助人の同意を要する行為について,保佐人・補助人が被保佐人・被補
助 人 の 利 益 を 害 す る お そ れ が な い に も か か わ ら ず 同 意 を し な い と き は ,家 庭 裁 判 所
は ,被 保 佐 人・被 補 助 人 の 請 求 に よ り ,保 佐 人・補 助 人 の 同 意 に 代 わ る 許 可 を 与 え
る こ と が で き る ( 13Ⅲ ・ 17Ⅲ )。 [ 平 15-4-エ ]
同意権付与の審判の比較
同意権付与の審判の対象
保佐人
13 条 1 項 以 外 の 行 為 に つ い て も 同 意 権 を 付 与 す る こ と が で き
る ( 13Ⅱ )
補助人
13 条 1 項 に 規 定 す る 行 為 の 一 部 に つ い て 同 意 権 を 付 与 す る こ
と が で き る ( 17Ⅰ )
8
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4-1-4
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被保佐人
【図表 8
保 佐 人 の 同 意 を 要 す る 行 為 ( 13Ⅰ )[ 昭 60-1-4][ 平 7-21-エ ][ 平 15-4-ウ ]】
13条 1項 の行 為
補足
元本の領収又は利用
当該財産が不合理に投資されることや当該財産が浪費され
ないためにこの規定がある。
なお,元本の領収や利用が保佐人の同意の対象なのだから,
果実の受領は③に該当しない限り単独でなしうる。
また,⑨は①の例外である(長期賃貸借に該当しないなら不
動産の賃貸を単独ですることができる)
ex 利 息 付 金 銭 消 費 貸 借 の 貸 主 に な る こ と
株式や各種債券の購入
②
借財又は保証
消 費 貸 借 に よ る 借 入 れ を 筆 頭 に ,こ れ に 準 じ る 行 為 が 全 て 含
まれる。
ex. 約 束 手 形 の 振 出 し ( 大 判 明 39.5.17)
時 効 完 成 後 の 債 務 の 承 認 に は 13 条 1 項 2 号 が 類 推 適 用 さ れ
る ( 大 判 大 8.5.12)
③
不動産その他重要な財
産に関する権利の得喪
を目的とする行為
動 産 が 重 要 な 財 産 で あ る か ど う か は ,一 般 社 会 の 経 済 状 態 及
び被補佐人の行為当時における財産状態を標準として決す
べきであるとされている。
Ex 抵 当 権 の 設 定 ( 大 判 明 39.6.1)
土 地 賃 貸 借 の 合 意 解 除 ( 大 判 昭 12.5.28)
訴訟行為
民事訴訟において原告となり訴訟を遂行する一切の行為を
指 す 。相 手 方 の 提 起 し た 訴 え 又 は 上 訴 に つ い て 訴 訟 行 為 を す
る 場 合 は 含 ま れ な い ( 民 訴 32Ⅰ )。
また,人事訴訟では,被保佐人(他の制限行為能力者も意思
能力がある限り同様)は完全な行為能力が認められる(人訴
13)。
⑤
贈 与 ,和 解 又 は 仲 裁 合 意
贈 与 ( 549) を す る こ と が 該 当 し , 贈 与 を 受 け る 場 合 は 保 佐
人 の 同 意 は 不 要 で あ る 。和 解 に つ い て は 695 条 以 降 に 規 定 が
ある。仲裁合意とは,民事上の紛争の解決を仲裁人に委ね,
そ の 判 断 に 服 す る 旨 の 合 意 を い う ( 仲 裁 法 2)。
⑥
相 続 の 承 認・放 棄 又 は 遺
産分割
相続の承認には,単純承認,法定単純承認,限定承認のいず
れ も が 含 ま れ る と さ れ て い る ( 反 対 説 も あ る )。
⑦
贈 与・遺 贈 の 拒 絶 又 は 負
担 付 の 贈 与・遺 贈 の 受 諾
贈 与 ( 549), 遺 贈 ( 964) を 拒 絶 す る こ と は 財 産 獲 得 の 機 会
を 失 い , 負 担 付 贈 与 ( 553), 負 担 付 遺 贈 ( 1002) を 受 諾 す る
ことは義務を負担することになるからである。
⑧
新 築 ,改 築 ,増 築 又 は 大
修繕
建物に関し,新築,改築,増築,大修繕をすることについて
他人と契約を締結することを指す。
⑨
長 期 賃 貸 借( 山 林 10 年 , 期 間 の 定 め の な い 賃 貸 借 に は 適 用 さ れ な い 。
土 地 5 年 ,建 物 3 年 ,動
産 6 か月を超える場合)
①
④
9
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4-2
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制限行為能力者の相手方の保護
【図表 9
①
②
③
④
4-2-1
制限行為能力者の相手方の保護に関する諸制度】
相 手 方 の 催 告 権 (20)
制 限 行 為 能 力 者 の 詐 術 (21)
法 定 追 認 (125)
取 消 権 の 短 期 消 滅 時 効 (126)
相 手 方 の 催 告 権 ( 20)
【 図 表 10
制 限 行 為 能 力 者 の 法 律 行 為 の 相 手 方 の 催 告 権 ( 20)】
制限行為能力者
未成年者
催 告 の 時 期
催告の相手方
制限行為能力者
である間
法定代理人
( 注 1)
原 則:追 認 擬 制( Ⅱ )
[ 昭 56-1-5]
例 外 : 特 別 の 方 式 ( ex.後 見 監 督
人 の 同 意 )を 要 す る 場 合 は 取
消擬制(Ⅲ)
本人
追 認 擬 制 ( Ⅰ )[ 平 4-7-ア ]
成年後見人
( 注 1)
原則:追認擬制(Ⅱ)
例 外 : 特 別 の 方 式 ( ex.後 見 監 督
人 の 同 意 )を 要 す る 場 合 は 取
消擬制(Ⅲ)
本人
追認擬制(Ⅰ)
本 人 ( 注 2)
取消擬制(Ⅳ)
保佐人
追認擬制(Ⅱ)
本人
追認擬制(Ⅰ)
本 人 ( 注 2)
取消擬制(Ⅳ)
行為能力者となった後
成年被後見人
制限行為能力者
である間
行為能力者となった後
被保佐人
制限行為能力者
である間
行為能力者となった後
被補助人
制限行為能力者
である間
行為能力者となった後
確 答 不 発 信 の 効 果
補 助 人 ( 注 3) 追 認 擬 制 ( Ⅱ )
本人
追認擬制(Ⅰ)
( 注 1)
未成年者・成年被後見人本人に対する催告は無効であり,追認擬制も取消し擬制
も 生 じ な い ( 98 の 2 類 推 適 用 , 通 説 )。 [ 平 2-14-ウ ]
( 注 2)
被保佐人・被補助人に対する催告は保佐人・補助人の「追認を得るべき旨」の催
告 で あ る こ と を 要 す る ( 20Ⅳ )。 [ 昭 63-3-3]
( 注 3)
補助人に対して同意権付与の審判がされたことを前提とする。
10
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4-2-2
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詐 術 の 要 件 ( 21)
【 図 表 11
制限行為能力者の詐術の成立要件等】
要
件
①
②
③
④
⑤
効
果
①
②
制 限 行 為 能 力 者 が 自 己 の 能 力 を 偽 る こ と ( 注 1)[ 平 2-14-オ ]
原 則 と し て ,行 為 能 力 を 偽 る に 足 り る 陳 述 を す る こ と( 大 判 昭 2.11.16)
( 注 2)
行 為 能 力 に つ い て 相 手 方 を 誤 信 さ せ る 目 的( 故 意 )が あ る こ と( 最 判 昭 44.2.13)
相 手 方 が 制 限 行 為 能 力 者 を 行 為 能 力 者 で あ る と 誤 信 し た こ と [平 19-6-オ]
(注 3)
詐 術 と 誤 信 と の 間 に 因 果 関 係 が あ る こ と ( 大 判 昭 2.5.24)
制 限 行 為 能 力 者 本 人 は 取 消 権 を 行 使 す る こ と が で き な い [ 昭 56-1-2]
法 定 代 理 人・保 佐 人・補 助 人 は 取 消 権 を 行 使 す る こ と が で き な い [ 平 9-1-4]
( 注 1) 自 己 の 能 力 を 偽 る 例
・ 「自分は制限行為能力者ではない」と偽る
・ 「自分は未成年者(あるいは被保佐人・被補助人)だが,法定代理人(あるいは
保佐人・補助人)の同意を得た」と偽る
・ 成年被後見人が契約を締結するに当たって,成年後見に関する登記記録がない旨
を 証 す る 登 記 事 項 証 明 書 を 偽 造 し て 相 手 方 に 交 付 し て い た 場 合 [平 19-6-オ]
( 注 2) 単 に 制 限 行 為 能 力 者 で あ る こ と を 黙 秘 し て い た だ け で は 詐 術 に 当 た ら な い [ 昭
63-3-5]。た だ し ,判 例 は ,被 保 佐 人 に つ き ,「 黙 秘 が 無 能 力 者( 制 限 行 為 能 力 者 )の
他 の 言 動 な ど と 相 俟 つ て 相 手 方 を 誤 信 さ せ ,又 は 誤 信 を 強 め た も の と 認 め ら れ る と き
は , 詐 術 に 当 た る 。」 と い う 見 解 を 示 し て い る ( 最 判 昭 44.2.13)。
( 注 3) 21 条 は 詐 術 を 用 い ら れ た 相 手 方 を 保 護 す る た め の 規 定 で あ る た め , 制 限 行 為 能 力 者
が 詐 術 を 用 い た と し て も 相 手 方 が 誤 信 し な か っ た( だ ま さ れ な か っ た )場 合 に は な お
取消しが可能である。
11
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第3節
1
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不在者及び失踪宣告
Aランク
不在者
1-1
不在者の意義
不在者とは,従来の住所又は居所を去って容易に帰来する見込みのない者をいう。行方不
明 で あ る か ど う か , あ る い は 生 死 不 明 で あ る か ど う か は 問 わ な い 。 [ 平 7-2-イ ]
1-2
不在者の財産管理
【 図 表 12
不在者の財産管理】
不在者が財産管理人を置いた場合
① 財産管理
人 の 権 限
が消滅
利害関係人又は検察官
の請求により,財産管
理人の選任その他の必
要 な 処 分 を す る ( 25Ⅰ
後段)
② 不在者の
生死が不明
となった
利害関係人又は検察官
の請求により,財産管
理人を改任することが
で き る ( 26)( 注 1)
家庭裁判所
の関与
財産管理人
の関与
不在者が定めた権限
( 注 2)
財産管理人を置かなかった場合
利害関係人又は検察官の請求により,
財産管理人の選任その他の必要な処
分 を す る ( 25Ⅰ 前 段 )
①
②
保存行為,及び
物又は権利の性質を変えない範
囲 内 の 利 用 ・ 改 良 行 為 ( 28・ 103)
( 注 3)
( 注 1) 不 在 者 が 生 死 不 明 と な っ た 場 合 , 管 理 人 に 対 し て 不 在 者 が 監 督 を し え ず , 管 理 が 失
当となる可能性があるためである。
【過去問】
[ 平 22-4-エ ]
不在者Aが財産管理人Dを置いた場合において,DがA所有の財産の管理を著しく
怠っているときは,家庭裁判所は,Aの生存が明らかであっても,利害関係人の請
求により,管理人の任務に適しない事由があるとしてDを改任することができる。
×
( 注 2) 管 理 人 が 不 在 者 の 定 め た 権 限 を 超 え る 行 為 を 必 要 と す る と き は , 家 庭 裁 判 所 の 許 可
を 得 て す る こ と が で き る ( 28 後 段 )。
( 注 3) 管 理 人 が 103 条 の 権 限 を 超 え る 行 為 を 必 要 と す る と き は , 家 庭 裁 判 所 の 許 可 を 得 て
そ の 行 為 を す る こ と が で き る ( 28 前 段 )。
ex. 相 続 放 棄 ,遺 産 分 割 協 議 ,不 在 者 の 財 産 の 売 却 ,訴 え の 取 下 げ ,和 解 な ど は 裁 判 書
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の許可が必要である。
不在者の財産管理人が登記義務者として時効取得を原因とする所有権移転登記を
申 請 す る 場 合 は ,家 庭 裁 判 所 の 許 可 書 の 添 付 を 要 す る( 登 記 研 究 548-165)。相 続 財 産
管 理 人 の 場 合 も 同 様 で あ る ( 953 参 照 )。
不 在 者 の 財 産 管 理 人 が 不 在 者 所 有 の 財 産 の 管 理 費 用 に 充 て る た め に 、財 産 の 一 部 で
あ る 不 動 産 を 売 却 す る と き は ,こ れ に つ い て 裁 判 所 の 許 可 を 得 な け れ ば な ら な い 。
[平
22-4-イ ]
13
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2
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失踪宣告
2-1
失踪宣告の意義及び制度趣旨
失踪宣告とは,ある人の生死が一定期間不明の場合にその人(失踪者)を死亡したものと
みなす制度である。その趣旨は,推定相続人その他の利害関係人の法的地位の安定を図るこ
とにある。
2-2
失 踪 宣 告 の 要 件 及 び 効 果 ( 30・ 31)
【 図 表 13
失 踪 宣 告 の 要 件 及 び 効 果 ( 30・ 31)】
普
通
失
踪
特
①
要
件
失踪者の生死が 7 年間不分明であ
ること
② 利害関係人の請求があること
③ 家庭裁判所の審判があること
効
果
失踪期間満了の時に死亡したものとみ
な さ れ る [ 平 14-1-3]
2-3
別
失
踪
①
死亡の原因たる危難に遭遇した者の
生死が当該危難の去った後 1 年間不分
明 で あ る こ と [ 平 7-2-ア ]
② 利害関係人の請求があること
③ 家庭裁判所の審判があること
危難の去った時に死亡したものとみなさ
れ る [ 平 7-2-ウ ]
失 踪 宣 告 の 取 消 し ( 32)
【 図 表 14
失踪宣告の取消し】
①
要
件
原則
失踪者が生存していること又は失踪宣告によって死亡されたものとされ
る 時 と 異 な る 時 に 死 亡 し た こ と が 立 証 さ れ た こ と [ 平 7-2-オ ]
② 本人又は利害関係人の請求があること
③ 家 庭 裁 判 所 の 審 判 が あ る こ と [ 昭 53-2-2]
失 踪 宣 告 か ら 生 じ た 法 律 関 係 は 遡 及 的 に 消 滅 す る ( 注 1) [ 平 14-1-5]
①
効 果
例外
失踪宣告後その取消し前に当事者が善意でした行為は効力を失わない
( 32Ⅰ 後 段 ) ( 注 2・ 3・ 4) [ 平 14-1-2]
② 善 意 の 不 当 利 得 者 の 返 還 義 務 の 範 囲 は 現 存 利 益 に 制 限 さ れ る( 32Ⅱ 但 書 ,
通 説 ) [ 平 18-5-ア ・ イ ]
( 注 1)
失踪者が生存していること又は異なる時に死亡したことが明らかになっても,取
消 し の 審 判 が な い 限 り , 失 踪 宣 告 の 効 力 は 失 わ れ な い 。[ 平 14-1-4]
( 注 2)
当該行為が契約である場合には,当事者双方が善意であることを要する(大判昭
13.2.7)。 こ こ に い う 「 善 意 」 と は , 失 踪 者 が 生 存 し て い る こ と , あ る い は 宣 告 と
異なる時期に死亡していることを当該行為のときに知らないことをいう。
14
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( 注 3)
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不動産の転得者との関係(通説の見解)
【 図 表 15】
①失踪宣告
↓
②相続
A
↑
⑤生存判明により
失踪宣告取消し
③売買
④転売
B
C
○=不動産を取得できる
Aの生存についての善意・悪意
Cの不動産取得
D
登 記
×= 取 得 で き な い
Dの不動産取得
B
C
D
ケース1
善意
善意
善意
○
○
ケース2
善意
善意
悪意
○
○ [ 平 18-5-オ ]
ケース3
悪意
善意
善意
×[ 平 18-5-ウ ]
○
ケース4
悪意
悪意
善意
×
×[ 平 18-5-エ ]
ケース5
善意
悪意
悪意
×
×
ケース6
善意
悪意
善意
×
×
ケース7
悪意
善意
悪意
×[ 平 18-5-ウ ]
×
ケース8
悪意
悪意
悪意
×
×
( 注 4) 配 偶 者 の 再 婚 に つ い て
②失踪宣告
失踪者A
①婚姻
配偶者B
再婚相手C
②’婚姻解消
③再婚
④失踪宣告取消
※ BC双方が③再婚時に善意であれば,ABの婚姻は復活しない。
↓
重婚状態は発生せず,BCの婚姻は取り消しうべき婚姻とはならない。
※
BCの一方又は双方が悪意であれば,ABの婚姻が復活し,Bは重婚となる
(744・732)。
↓
B C 間 の 婚 姻 は 取 消 原 因 の あ る 婚 姻 と な る (744Ⅰ ・732)。
15
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【 図 表 16
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各種制度の請求権者】
請求権者
①
後見開始の審判(7)
本人,配偶者,4親等内の親族,未成年
後見人,未成年後見監督人,保佐人,保
佐監督人,補助人,補助監督人又は検察
官
②
後 見 開 始 の 審 判 の 取 消 し ( 10)
本 人 ,配 偶 者 ,4 親 等 内 の 親 族 ,後 見 人 ,
後見監督人又は検察官
③
保 佐 開 始 の 審 判 ( 11)
本 人 ,配 偶 者 ,4 親 等 内 の 親 族 ,後 見 人 ,
後見監督人,補助人,補助監督人又は検
察官
④
保 佐 人 の 同 意 を 要 す る 行 為 の 追 加 請 求( 13
Ⅱ)
本 人 ,配 偶 者 ,4 親 等 内 の 親 族 ,後 見 人 ,
後見監督人,補助人,補助監督人又は検
察官,保佐人若しくは保佐監督人
⑤ 保佐人が同意を与えないときにおける家
庭裁判所に対する同意に代わる許可の請求
( 13Ⅲ )
被保佐人
⑥
保 佐 開 始 の 審 判 等 の 取 消 し ( 14)
本人,配偶者,4親等内の親族,未成年
後見人,未成年後見監督人,保佐人,保
佐監督人又は検察官
⑦
補 助 開 始 の 審 判 ( 15)
本 人 ,配 偶 者 ,4 親 等 内 の 親 族 ,後 見 人 ,
後見監督人,保佐人,保佐監督人又は検
察官
⑧
本 人 ,配 偶 者 ,4 親 等 内 の 親 族 ,後 見 人 ,
補 助 人 に 同 意 権 を 与 え る 旨 の 審 判 ( 17Ⅰ ) 後 見 監 督 人 , 保 佐 人 , 保 佐 監 督 人 又 は 検
察官,補助人若しくは補助監督人
⑨ 補助人が同意を与えないときにおける家
庭裁判所に対する同意に代わる許可の請求
( 17Ⅲ )
被補助人
⑩
利害関係人又は検察官
不 在 者 の 財 産 の 管 理 人 の 選 任 ( 25)
⑪ 不在者本人が管理人を置いた場合におけ
る 必 要 な 命 令 の 取 消 し ( 25Ⅱ )
⑫
管理人,利害関係人又は検察官
管 理 人 の 改 任 ( 26)
⑬ 不在者が置いた管理人に対する財産目録
の 作 成 の 請 求 ( 27Ⅱ )
利害関係人又は検察官
⑭
失 踪 の 宣 告 ( 30)
利害関係人
⑮
失 踪 の 宣 告 の 取 消 し ( 32)
本人又は利害関係人
16
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【 図 表 17
民法における現存利益
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横断整理】
32条(失踪の宣告の取消し)
1 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があ
ったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消
さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前
に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現
に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
121条(取消しの効果)
取 り 消 さ れ た 行 為 は 、初 め か ら 無 効 で あ っ た も の と み な す 。た だ し 、制 限 行 為 能 力 者 は 、
その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
191条(占有者による損害賠償)
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回
復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者は
その滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。
ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなけ
ればならない。
462条(委託を受けない保証人の求償権)
1 主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をも
って主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受
けた限度において償還をしなければならない。
2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けてい
る限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前
に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺
によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
702条(管理者による費用の償還請求等)
1 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請
求することができる。
2 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合に
ついて準用する。
3 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けてい
る限度においてのみ、前二項の規定を適用する。
748条(婚姻の取消しの効力)
1 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によ
って財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければ
ならない。
17
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第2章
第1節
1
法人
法人及び権利能力なき社団
Cランク
一般法人法・公益認定法の概要
【 図 表 18
法人の種類】
法人の種類
一般社団法人
一般財団法人
株式会社
持分会社
宗教法人
医療法人
根拠法
一般社団法人及
び一般財団法人
に関する法律
(法人法)
会社法
宗教法人法
医療法
登記手続法
・一 般 社 団 法 人 及
び一般財団法
人に関する法
律
・一 般 社 団 法 人 等
登記規則
・宗教法人法
・各 種 法 人 等 登 記
規則
・組合等登記令
・各 種 法 人 等 登 記
規則
2
・商業登記法
・商業登記規則
一般社団法人
2-1
2-1-1
設立
設立手続の流れ
【 図 表 19
一般社団法人の設立手続の流れ】
→ 株式会社の発起設立とほぼ同じように考えればよい
定款の作成
+
公証人の認証
→
出資
→
18
設立時役員等
の
選任・選定
→
設立登記
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2-1-2
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定款の作成
2-1-2-1
作成権者
一 般 社 団 法 人 の 社 員 に な ろ う と す る 者 ( 設 立 時 社 員 ), 共 同 し て 定 款 を 作 成 し , そ の 全 員
が 署 名 又 は 記 名 押 印 し な け れ ば な ら な い ( 一 般 法 人 10Ⅰ )。
→ 設 立 時 社 員 は 2 名 以 上 い な け れ ば な ら な い ( c.f.「 社 員 が 欠 け た こ と 」 を 解 散 事 由 と
す る 一 般 法 人 148④ )。
2-1-2-2
定款の絶対的記載・記録事項
【 図 表 20
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
一 般 社 団 法 人 の 定 款 の 絶 対 的 記 載 事 項 ( 一 般 法 人 11)】
目的
名称
主たる事務所の所在地
設 立 時 社 員 の 氏 名 又 は 名 称 及 び 住 所 ( 注 1)
社員の資格の得喪に関する規定
公 告 方 法 ( 注 2)
事業年度
( 注 1) 株 式 会 社 だ け を 社 員 と す る 一 般 社 団 法 人 も , 設 立 す る こ と が で き る 。[ 昭 59-1-5]
<参照条文> 社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定
め は , そ の 効 力 を 有 し な い ( 一 般 法 人 11Ⅱ )。
( 注 2) 法 定 の 公 告 媒 体 は , ① 官 報 , ② 時 事 に 関 す る 事 項 を 掲 載 す る 日 刊 新 聞 紙 , ③ 電 子 公 告
④ 主 た る 事 務 所 の 公 衆 の 見 や す い 場 所 へ の 掲 示 で あ る ( 一 般 法 人 331Ⅰ ① ~ ④ , 施 行 規
則 88Ⅰ )。
2-1-3
設立時役員等の選任
【 図 表 21
一般社団法人の機関設計パターン】
一般社団法人の分類
非大規模一般社団法人
機
関
設
計
①
社員総会+理事
②
社員総会+理事
+監事
③
社員総会+理事
+監事+会計監査人
④
社員総会+理事
+理事会+監事
⑤
社員総会+理事
+理事会+監事+会計監査人
⑥
社員総会+理事
+監事+会計監査人
⑦
社員総会+理事
+理事会+監事+会計監査人
大規模一般社団法人
19
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2-1-4
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設立登記
一般社団法人(及び一般財団法人)は,主たる事務所の所在地において設立の登記をした
時 に 成 立 す る ( 一 般 法 人 22)。 [ 昭 55-16-5][ 平 11-1-エ ]
2-2
社員
2-2-1
経費支払義務
【 図 表 22
社員の経費支払義務】
規 定 内 容
社 員 は ,定 款 で 定 め る と こ ろ に よ り ,一 般 社 団 法 人 に 対 し ,経 費 を 支 払
う 義 務 を 負 う ( 一 般 法 人 27)
経 費 の 意 義
一般社団法人の事業活動において経常的に生じる費用
具
事務所の賃料,法人税等の公租公課,決算公告の費用など
2-3
体
例
機関
2-3-1
社員総会
2-3-1-1
【 図 表 23
権限
社員総会の権限】
非理事会設置一般社団法人
理事会設置一般社団法人
権 限 の 範 囲
法定の総会決議事項及び一般社団
法 人 の 組 織 ,運 営 ,管 理 そ の 他 一 般
社 団 法 人 に 関 す る 一 切 の 事 項( 一 般
法 人 35Ⅰ )
法定の総会決議事項及び定款所定
の総会決議事項に限られる
( 一 般 法 人 35Ⅱ )
決 議 禁 止 事 項
社 員 に 剰 余 金 を 分 配 す る 旨 の 決 議 を す る こ と が で き な い( 一 般 法 人 35Ⅲ )
定 款 に よ る
権限移管の制限
法定の総会決議事項の決定権限を他の機関に付与する旨の
定 款 の 定 め は , そ の 効 力 を 有 し な い ( 一 般 法 人 35Ⅳ )
2-3-1-2
【 図 表 24
社員の議決権
社員の議決権】
原
定款による
修
正
則
社 員 は , 各 1 個 の 議 決 権 を 有 す る ( 一 般 法 人 48Ⅰ 本 文 )
一般論
事業への貢献度や経費負担の割合に応じて議決権数に差を設けるな
ど , 別 段 の 定 め を す る こ と が で き る ( 一 般 法 人 48Ⅰ 但 書 )
限
特定の社員が総会の決議事項の全部につき議決権を行使することが
で き な い 旨 の 定 款 の 定 め は , 効 力 を 有 し な い ( 一 般 法 人 48Ⅱ )
界
20
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2-3-1-3
【 図 表 25
決議要件
決議要件】
普
決
定
足
数
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通
決
議
特
別
決
議
なし
原則:出席社員の議決権の過半数
例外:定款で加重することができる
( 一 般 法 人 49Ⅰ )
原 則:総 社 員 の 半 数 以 上 で あ っ て ,総 社 員
の議決権の過半数
例 外 :「 総 社 員 の 議 決 権 の 過 半 数 」 に つ い
ては定款で加重することができる
( 一 般 法 人 49Ⅱ 柱 書 )
( cf.会 社 309Ⅲ )
議
原則:総社員の議決権の過半数
例 外:定 款 で 加 重 ,減 軽 又 は 排 除 す る
こ と が で き る( 一 般 法 人 49Ⅰ )
要
件
表
決
数
①
②
③
決議事項
社 員 の 除 名 ( 一 般 法 人 30Ⅰ )
監 事 の 解 任 ( 一 般 法 人 70Ⅰ )
① 理 事 の 選 任 ・ 解 任 ( 一 般 法 人 63
役員等の責任の一部免除(一般法人
Ⅰ ・ 70Ⅰ )
113Ⅰ )
② 監 事 の 選 任 ( 一 般 法 人 63Ⅰ )
④ 定 款 の 変 更 ( 一 般 法 人 146)
③ 会 計 監 査 人 の 選 任・解 任( 一 般 法
⑤ 事 業 の 全 部 の 譲 渡 ( 一 般 法 人 147)
人 63Ⅰ ・ 70Ⅰ )
⑥ 解 散 ( 一 般 法 人 148③ )
④ 計 算 書 類 の 承 認( 一 般 法 人 126Ⅱ )
⑦ 継 続 ( 一 般 法 人 150)
⑤ 基 金 の 返 還( 一 般 法 人 141Ⅰ )
(注)
⑧ 合 併 契 約 の 承 認 ( 一 般 法 人 247・ 251
など
Ⅰ ・ 257)
( 以 上 , 一 般 法 人 49Ⅱ ① ~ ⑦ )
(注)基金とは,一般社団法人に拠出された金銭その他の財産であって,当該一般社団法人が
拠出者に対して法律及び一般社団法人と当該拠出者との合意の定めるところに従い返還
義務(金銭以外の財産については,拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)
を 負 う も の で あ る ( 131)。
任 意 の 制 度 で あ り ,一 種 の 外 部 負 債 で あ る 。こ れ は ,剰 余 金 の 分 配 を 目 的 と し な い 法 人
に お い て ,寄 付 や 借 入 金 以 外 に そ の 活 動 の 原 資 と な る 資 金 を 調 達 す る 手 段 を 設 け る た め に
創設された制度であり,法人は拠出された財産を自由に活用することができる。
21
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2-3-2
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社員総会以外の機関
【 図 表 26
社 員 総 会 以 外 の 機 関 ( 条 文 番 号 は 一 般 社 団 法 人 法 )】
理事
監事
会計監査人
職務
省略
監 事 は 、理 事 の 職 務 の 執
行 を 監 査 す る ( 99Ⅰ )
会 計 監 査 人 は 、一 般 社 団
法人の計算書類及びそ
の附属明細書を監査す
る ( 107Ⅰ )
設置義務
必 要 的 ( 60Ⅰ )
任 意 的 ( 60Ⅱ )
任 意 的 ( 60Ⅱ )
①理事会設置一般社団
法人
②会計監査人設置一般社
団 法 人( 61)
大 規 模 一 般 社 団 法 人( 最
終事業年度に係る貸借
対照表の負債の部に計
上 し た 額 の 合 計 額 が 200
億円以上である一般社
団 法 人 ) の 場 合 ( 62)
1人以上
1人以上
設置義務
が課せら
れる場合
員数
1人又は2人以上
( 60Ⅰ )( ※ 1 )
選任
社員総会の普通決議
資格
以 下 の も の は 役 員 と な る こ と が で き な い ( 65Ⅰ )
①法人
②成年被後見人もしくは被保佐人又は外国の法令
上これらと同様に取り扱われている者
③一般社団・財団法人法もしくは会社法の規定に
違反し、又は民事再生法等の罪を犯し、刑に処
せられた者(※2)
④上記③以外の法令の規定に違反し、刑に処せら
れた者(※2)
任期
選任後2年以内に終了
する事業年度のうち最
終のものに関する定時
社員総会の終結の時ま
で ( 66)
選任後4年以内に終了
する事業年度のうち最
終のものに関する定時
社員総会の終結の時ま
で ( 67)
選任後1年以内に終了
する事業年度のうち最
終のものに関する定時
社員総会の終結の時ま
で ( 69)
解任
社員総会の普通決議
( 70)
社員総会の特別決議
( 70)
・社員総会の普通決議
( 70)
公認会計士又は監査法
人
・任期の満了又は辞任により退任した者は,新た
に選任された理事(一時理事の職務を行うべき
監 事 は 、一 時 会 計 監 査 人
欠員が生じ
者 を 含 む 。)が 就 任 す る ま で ,な お 理 事 と し て の
の職務を行うべき者を
権 利 義 務 を 有 す る ( 75Ⅰ )。
た場合の措
選任しなければならな
・この場合において,裁判所は,必要があると認
置
い ( 75Ⅳ )。
めるときは,利害関係人の申立てにより,一時
理 事 の 職 務 を 選 任 す る こ と が で き る ( 75Ⅱ )。
(※1) 理事会設置一般社団法人においては、理事は3人以上でなければならない(一般社
団 65Ⅲ )
22
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(※2)
③の罪
欠格事由に該当する刑の種類
限定なし
禁錮以上
執行猶予中の者
欠格事由
欠格事由でない
執行の終了または失効後欠格事由に
該当する期間
2-4
2-4-1
2年を経過する 終了又は失効日
まで
まで
法人の不法行為責任
要件
【 図 表 27
①
②
③
④の罪
法人の不法行為責任成立の要件】
代 表 機 関 の 行 為 に よ っ て 他 人 に 損 害 が 生 じ た こ と ( 注 1)
代表機関が職務を行うについて他人に損害を加えたこと
代 表 機 関 の 行 為 が 不 法 行 為 の 一 般 的 成 立 要 件 ( 709) を 具 備 し て い る こ と
( 注 2)
( 注 1) 一 般 法 人 法 78 条 の「 代 表 者 」に は ,代 表 機 関 の 選 任 し た 代 理 人( 大 判 大 9.6.26),
支 配 人( 大 判 大 6.4.7)を 含 ま な い 。こ れ ら の 者 が 他 人 に 損 害 を 加 え た 場 合 に は ,法
人 の 使 用 者 責 任 ( 715) が 成 立 し 得 る 。 [ 昭 62-1-4][ 平 6-3-3]
( 注 2)
2-4-2
理事その他の代表機関の責任
① 代 表 機 関 も 個 人 と し て 不 法 行 為 責 任 ( 709) を 負 う 。 [ 平 10-1-4]
② 代表機関は損害額全額につき法人と不真正連帯債務者の関係に立つ(大判昭
7.5.27)。 [ 昭 55-9-4]
78 の 「 職 務 を 行 う に つ い て 」 の 解 釈
【 図 表 28
78 条 の 「 職 務 を 行 う に つ い て 」 の 解 釈 】
取
引 的 不 法 行
(詐欺的取引など)
為
事
原則
客 観 的 に 行 為 の 外 形 か ら 判 断 し て ,法 人 の
目 的 の 範 囲 内 の 行 為( 職 務 行 為 )と 認 め ら
れ る 場 合 の ほ か ,社 会 観 念 上 職 務 行 為 と 相
当な牽連関係に立つ場合を含む(外形理
論 , 大 判 昭 15.2.27)
例外
外形上職務行為に属する行為から損害が
生 じ た 場 合 で あ っ て も ,当 該 行 為 が 実 際 に
は職務行為に属さないことについて相手
方が悪意又は善意・重過失であるときは,
法人は相手方に対して損害賠償責任を負
わ な い ( 最 判 昭 50.7.14) [ 平 10-1-3]
23
実 的 不 法 行
(交通事故など)
同 左
( 最 判 昭 37.11.8)
為
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2-5
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解散
【 図 表 29
解散事由】
○=継続可能
×= 継 続 不 可
解散事由にあたるか
○ → あ た る ×→ あ た ら な い
継続の可否
○ → 継 続 可 ×→ 継 続 不 可
社団
(一般法人
148)
財団
(一般法人
202)
社団
(一般法人
150)
財団
(一般法人
204)
ア
定款で定めた存続期間の
満了
○
○
○
×
イ
定款で定めた解散の事由
の発生
○
○
○
×
ウ
社員総会の特別決議
○
×
○
エ
社員が欠けたこと。
○
×
×
オ
合併(合併により当該法
人が消滅する場合に限
る 。)
○
○
×
×
カ
破産手続開始の決定
○
○
×
×
キ
解散を命ずる裁判
○
○
×
×
ク
みなし解散
○
○
○
○
コ
基本財産の滅失その他の
事由による一般財団法人
の目的である事業の成功
の不能
×
○
×
サ
純資産額が2期連続して
300 万 円 を 下 回 っ た 場 合
×
○
○
24
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3
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一般財団法人
3-1
設立
3-1-1
設立手続の流れ
【 図 表 30
一般財団法人の設立手続の流れ】
定款の作成
+
公証人の認証
3-1-2
→
設立者による
→
設立時評議員
→
設立登記
等 の 選 任 ・選 定
財産の拠出
定款の作成
3-1-2-1
【 図 表 31
作成権者
一般財団法人の定款作成権者】
生前処分による設立の場合
遺言による設立の場合
設立者(2名以上あるときはその全員)が定
款 を 作 成 し ( 一 般 法 人 152Ⅰ )
遺言執行者が設立者の遺言の内容に従って定
款 を 作 成 ( 一 般 法 人 152Ⅱ )
25
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3-1-2-2
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定款の絶対的記載事項
【 図 表 32
一 般 財 団 法 人 の 定 款 の 絶 対 的 記 載 事 項 ( 一 般 法 人 153)】
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
目的
名称
主たる事務所の所在地
設立者の氏名又は名称及び住所
設 立 に 際 し て 設 立 者( 2 名 以 上 あ る と き は 各 設 立 者 )が 拠 出 す る 財 産 及 び そ の 価 額( 注 1)
設立時評議員,設立時理事及び設立時監事の選任に関する事項
設 立 し よ う と す る 一 般 財 団 法 人 が 会 計 監 査 人 設 置 一 般 財 団 法 人 で あ る と き は ,設 立 時 会 計
監査人の選任に関する事項
⑧ 評 議 員 の 選 任 及 び 解 任 に 関 す る 事 項 ( 注 2・ 3)
⑨ 公告方法
⑩ 事業年度
( 注 1) 設 立 に 際 し て 設 立 者 が 拠 出 す る 財 産 の 価 額 の 合 計 額 は ,300 万 円 を 下 回 っ て は な ら な
い ( 一 般 法 人 153Ⅱ )。
( 注 2)
次 に 掲 げ る 定 款 の 定 め は , 無 効 で あ る ( 一 般 法 人 153Ⅲ ① ・ ② )。
① 理事又は理事会が評議員を選任し,又は解任する旨の定め
② 設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定め
( 注 3)
一 般 財 団 法 人 成 立 後 に 「評 議 員 の 選 任 及 び 解 任 に 関 す る 事 項 」を 変 更 す る こ と の 可 否
原 則 : で き な い ( 一 般 法 人 200Ⅰ 但 書 )。
例外:変更できる旨を設立者が定款で定めている場合(同Ⅱ)
3-1-3
設立時評議員等の選任
【 図 表 33
一般財団法人の機関設計パターン】
一般財団法人の分類
機
関
設
計
①
評議員+評議員会+理事+理事会+監事
②
評議員+評議員会+理事+理事会+監事
+会計監査人
③
評議員+評議員会+理事+理事会+監事
+会計監査人
非大規模一般財団法人
大規模一般財団法人
26
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【 図 表 34
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一般財団法人の定款例】
一般財団法人○○会定款(抜粋)
(名称)
第1条 この法人は,一般財団法人○○会と称する。
(事務所)
第2条 この法人は,主たる事務所を○県○市に置く。
(目的)
第3条 当法人は,○○を社会に普及させることを目的とする。
(事業)
第4条 この法人は,前条の目的を達成するため,次の事業を行う。
一 ○○に関する調査及び研究
二 ○○に関する広報活動
三 ○○に関する意見の表明
(設立者及び財産の拠出)
第5条 設立者の氏名及び住所並びに拠出をする財産及びその価額は以下のとおりとす
る。
氏名
住所
財産
価額
○○○○ ○県○市○町○丁目○番○号
金銭 ○○○万円
○○○○ ○県○市○町○丁目○番○号
金銭 ○○○万円
○○○○ ○県○市○町○丁目○番○号
絵画 ○○○万円
(評議員)
第9条 この法人に評議員○○名以上○○名以内を置く。
(評議員の選任及び解任)
第10条 評議員の選任及び解任は,評議員選定委員会において行う。
2 評議員選定委員会は,評議員1名,監事1名,事務局員1名,次項の定めに基
づいて選任された外部委員2名の合計5名で構成する。
3 評議員選定委員会の外部委員は,理事会において選任する。
(定款の変更)
第31条 この定款は,評議員会の決議によって変更することができる。
2 前項の規定は,この定款の第3条,第4条及び第10条についても適用する。
(残余財産の帰属)
第 3 3 条 こ の 法 人 が 清 算 を す る 場 合 に お い て 有 す る 残 余 財 産 は ,評 議 員 会 の 決 議 を 経 て ,
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条第17号に掲げる法
人又は国若しくは地方公共団体に贈与するものとする。
第9章 公告の方法
第34条 この法人の公告は,官報に掲載する方法により行う。
1
附 則
設立時評議員,設立時理事及び設立時監事は,設立者の決議によって選任する。
2
この法人の設立時代表理事は,設立時理事の互選によって選定する。
以上,一般財団法人○○会の設立のため,この定款を作成し,設立者が
次に記名押印する。
平成○○年○○月○○日
設立者 ○○ ○○
設立者 ○○ ○○
設立者 ○○ ○○
27
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3-2
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機関
【 図 表 35
設置義務
機 関 ( 条 文 番 号 は 一 般 社 団 法 人 法 )】
評議員
理事
監事
会計監査人
必 要 的 ( 170Ⅰ )
必 要 的 ( 170Ⅰ )
必 要 的 ( 170Ⅰ )
任 意 的 ( 170Ⅱ )
大規模一般財団法
人(最終事業年度
に係る貸借対照表
の負債の部に計上
した額の合計額が
二百億円以上であ
る一般財団法人)
は、会計監査人を
置かなければなら
な い ( 171)
設置義務
が課せら
れる場合
員数
選任
資格
任期
解任
欠員が生じ
た場合の措
置
3 人 以 上 ( 170Ⅰ )
3 人 以 上 ( 170Ⅰ )
1人以上
1人以上
定款で定めた方法
評 議 員 会 の 決 議 ( 177)
( 153Ⅰ ⑧ )
以 下 の も の は 役 員 と な る こ と が で き な い ( 160・ 65Ⅰ )
①法人
②成年被後見人もしくは被保佐人又は外国の法令上これら
公認会計士
と同様に取り扱われている者
又は監査法人
③ 一 般 社 団・ 財 団 法 人 法 も し く は 会 社 法 の 規 定 に 違 反 し 、 又
( 160・ 68)
は民事再生法等の罪を犯し、刑に処せられた者(※1)
④ 上 記 ③ 以 外 の 法 令 の 規 定 に 違 反 し 、刑 に 処 せ ら れ た 者( ※
1)
選任後4年以内に 選任後2年以内に 選任後4年以内に 選任後1年以内に
終了する事業年度 終了する事業年度 終了する事業年度 終了する事業年度
のうち最終のもの のうち最終のもの のうち最終のもの のうち最終のもの
に関する定時社員 に関する定時社員 に関する定時社員 に関する定時社員
総会の終結の時ま 総会の終結の時ま 総会の終結の時ま 総会の終結の時ま
で ( 174)
で ( 177・ 66)
で ( 177・ 67)
で ( 177・ 69)
評議員会の普通決
評議員会の特別決
評議員会の普通決
定款で定めた方法
議
議
議
( 153Ⅰ ⑧ )
( 176Ⅰ )
( 176Ⅰ )
( 176Ⅰ )
・ 任 期 の 満 了 又 は 辞 任 に よ り 退 任 し た 者 は ,新 た に 選 任 さ れ
た 理 事 ( 一 時 理 事 の 職 務 を 行 う べ き 者 を 含 む 。) が 就 任 す 監 事 は 、 一 時 会 計
る ま で ,な お 理 事 と し て の 権 利 義 務 を 有 す る( 175Ⅰ・177・ 監 査 人 の 職 務 を 行
75Ⅰ )。
うべき者を選任し
・こ の 場 合 に お い て ,裁 判 所 は ,必 要 が あ る と 認 め る と き は , な け れ ば な ら な い
利 害 関 係 人 の 申 立 て に よ り ,一 時 理 事 の 職 務 を 選 任 す る こ ( 177・ 75Ⅳ )。
と が で き る ( 175Ⅱ ・ 177・ 75Ⅱ )。
(※1)一般社団法人と同様。
28
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第2節
1
権利能力なき社団
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Aランク
総説
1-1
権利能力なき社団の意義
権利能力なき社団とは,実質的には社団法人と同様の実体を持ちながら法人格のない団体
をいう。
→ 目 的 の 営 利 性 の 有 無 を 問 わ な い 。 [ 平 11-1-オ ]
1-2
権利能力なき社団の成立要件
【 図 表 36
①
②
③
④
権 利 能 力 な き 社 団 の 成 立 要 件 ( 最 判 昭 39.10.15)】
[ 平 11-1-エ ]
団体としての組織を備えていること
多 数 決 の 原 則 が 行 わ れ て い る こ と [ 平 3-4-ア ]
構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続すること
その組織によって代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が
確定しているものであること
(注)
資格要件に関する規定の改正は,特段の事情がない限り,当該改正決議について承
諾 を し て い な か っ た 者 を 含 む す べ て の 社 団 構 成 員 に 適 用 さ れ る ( 最 判 平 12.10.20)。
[ 平 16-4-ウ ]
29
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2
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権利能力なき社団の法律関係
【 図 表 37
権利能力なき社団の法律関係】
一
般
論
具
体
的
問
題
権利能力なき社団の各社員は当該財産に対し
て持分権及び分割請求権を有しない(最判昭
32.11.14) ( 注 1)
積極財産
の 帰 属
権利能力なき社団の財産は,実質
的には社団を構成する総社員のい
わゆる総有に属する
消極財産
の 帰 属
① 社団の構成員各自は取引の相手方に対し
権利能力なき社団の代表者が社団
直接には個人的債務ないし責任を負わない
の名においてした取引上の債務
( 最 判 昭 48.10.9)
は,その社団の構成員全員に 1 個
[ 平 3-4-ウ ][ 平 11-1-ウ ][ 平 16-4-ア ]
の義務として総有的に帰属すると
② 社団の代表者も取引の相手方に対し個人
ともに,社団の総有財産だけがそ
として責任を負わない(財団法人につき最
の 責 任 財 産 と な る [ 平 11-1-ウ ]
判 昭 44.11.4) [ 平 3-4-エ ]
[ 平 16-4-ア ]
①
不動産の
登記名義
民事訴訟
権利能力なき社団の資産たる不動
産について,当該社団自身の名義
で所有権の登記をすることはでき
な い [ 平 11-1-ア ]( 注 2)
社団の代表者が社団の構成員全員の受託
者たる地位において個人の名義で登記する
こ と が で き る ( 最 判 昭 47.6.2)
② 社団の代表者がその肩書を付した個人の
名義で登記をすることはできない(同上)
③ 代表者以外に構成員が社団の構成員全員
の受託者たる地位において個人の名義で登
記 を す る こ と が で き る ( 最 判 平 6.5.31)
④ 社団の構成員全員の共有名義で登記をす
る こ と が で き る [ 平 3-4-イ ]
権利能力なき社団は民事訴訟の
「 当 事 者 能 力 」を 有 す る( 民 訴 29)
が,社団自身に帰属し得ない権利
関係については「当事者適格」が
否定される
権利能力なき社団の資産たる不動産につき登
記簿上所有名義人となった代表者がその地位
を失ったときは,新代表者は自ら原告となっ
て旧代表者に対し当該不動産につき自己の個
人名義への所有権移転登記手続を請求するこ
と が で き る ( 最 判 昭 47.6.2) [ 平 3-4-オ ]
( 注 1) 総 有 廃 止 の 定 め に 関 す る 特 段 の 合 意 を し て い る 場 合 に は , 財 産 の 分 割 請 求 も 認 め ら
れ る 。 [ 平 16-4-イ ]
( 注 2)
①
権利能力なき社団名義
×
②
社団代表者たる肩書付の代表者個人名義(先例)
×
ex.「・・登記法令普及協会代表理事
甲野一郎」
③
代表者個人名義(先例)
○
④
社団構成員全員の共有名義(先例)
○
⑤
代表者以外の構成員個人名義(判例)
○
30
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【 図 表 38
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団 体 の 比 較 [平 11-1]参 照 】
成立要件
団体の目的
一般社団法人
一般財団法人
権利能力なき社団
手続の履行+登記
権利能力なき社団の
成立要件を備えるこ
と
目的による制限はな
い
目的による制限はな
ただし,剰余金の分
い
配を目的にしてはな
ら な い( 法 人 法 11Ⅱ )
組
合
組合契約の締結
( 667Ⅰ )
目的による制限はな
い
法人格
○
×
×
団体名義での不動産
登記
○
×
×
団体の財産について
構成員は持分を有す
るか
×
×
(総有)
△
(合有)
団体の債務について
構成員が責任を負う
か
×
×
○
( 675)
構成員の債務につい
て団体が責任を負う
か
×
×
×
( 676Ⅰ )( 注 )
(注)
持 分 の 処 分 は 組 合 及 び 組 合 と 取 引 を し た 第 三 者 に は 対 抗 で き な い ( 676Ⅰ )。
→ 組合員の債権者も持分を差し押えることはできない。
31
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第3章
1
権利の客体
Aランク
意義
【 図 表 39
物
物 権 の 客 体 と し て の 「 物 」「 有 体 物 」 の 意 義 】
有 体 物 ( 85)
有体物
空 間 の 一 部 を 占 め て 有 形 的 存 在 を 有 す る 物 ( 液 体 ・ 気 体 ・ 固 体 )( 注 )
( 注 ) 物 権 の 客 体 は 全 面 的・排 他 的 支 配 の 客 体 と な る の に 適 し た も の で な け れ ば な ら な い た め ,
物 権 の 客 体 と な る 物 は 有 体 物 に 限 ら れ て い る 。そ の た め ,自 然 力 ,債 権 ,著 作 権 な ど の「 無
体物」は物権の客体とならないのが原則である。
しかし,実際には以下のとおり例外がいくつかある。
① 地 上 権 ・ 永 小 作 権 に 抵 当 権 を 設 定 す る こ と が で き る ( 369Ⅱ )
② 債 権 に 質 権 を 設 定 す る こ と が で き る ( 362)
2
動産と不動産
【 図 表 40
動産と不動産の違い】
公示方法
公信力
用益物権
相隣関係
不動産
動産
登 記 ( 177)
引 渡 ( 178)
な
し
あ
認められる
あ
り ( 192)
認められない
り
な
し
無主物
国 庫 に 帰 属 ( 239Ⅱ )
先 占 者 が 所 有 権 取 得 ( 239Ⅰ )
付合の要件・効果
242
243~ 246
特別先取特権
特 定 不 動 産 上 に 成 立 ( 325)
登記を要件とする
特 定 動 産 上 に 成 立 ( 311)
占有を要件としない
成立要件
占 有 移 転 ( 344)
占 有 移 転 ( 344)
対抗要件
登 記 ( 177)
占 有 継 続 ( 352)
質権
抵当権の客体
原則
例外
客体となる
32
客体とならない
自動車・航空機等
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3
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主物と従物
3-1
意義
【 図 表 41
従物の意義】
独 立 の 物 で あ り な が ら ,客 観 的・経 済 的 に は 他 の 物 に 従 属 し て ,そ の 効 用 を 助
け る も の ( 注 1)
従物
刀に対する鞘
母屋に対する物置
宅 地 に 対 す る 石 灯 籠 ・ 取 り 外 し 可 能 な 庭 石 ( 注 2)
具体例
関係
従 物 は 主 物 の 処 分 に 従 う ( 87Ⅱ , 任 意 規 定 )
( 注 1) 権 利 に 対 し て も 87 条 2 項 が 類 推 適 用 さ れ る ( 最 判 昭 47.3.9)。
ex. 建 物 所 有 権 に つ い て の 借 地 権 ( 建 物 の 所 有 権 に 抵 当 権 が 設 定 さ れ た 場 合 , そ
の効力は借地権にも及ぶ)
⇔ 付合
不 動 産 の 付 合 ( 不 動 産 + 動 産 ) ex. 建 物 の 床 を 張 り 替 え る ・ 土 地 に 植 林 す る
動産の付合(動産+動産)
ex. 車 に ペ ン キ を 塗 る
( 注 2) あ る 土 地 の 構 成 部 分 と 認 め ら れ る も の ( 石 垣 ・ 敷 石 ・ 取 り 外 し 困 難 な 庭 石 ・ 井 戸 ・
ト ン ネ ル )は 従 物 で は な く ,独 立 の 所 有 権 の 客 体 と は な ら な い 。な お ,建 物 は 土 地 と
は 別 個 の 不 動 産 で あ る ( 370 参 照 )。
3-2
要件
【 図 表 42
①
②
③
④
従物の要件】
継続的に主物の効用を助けること
主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること
主物と同一の所有者に属すること
独立性を有すること
33
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4
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元物と果実
【 図 表 43
果実の収取権者】
天然果実
それが元物から分離するときに果実を収取する権利を有する者に帰属する
( 89Ⅰ )
法定果実
これを収取する権利の存続期間に応じ,日割をもって前後両権利者に帰属
す る ( 89Ⅱ )
【 図 表 44
天然果実の収取権者】
収取権者
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
収取権のないもの
善 意 の 占 有 者 ( 189Ⅰ )
所 有 権 者 ( 206)
地 上 権 者 ( 265)
永 小 作 権 者 ( 270)
不 動 産 質 権 者 ( 356)
特 定 物 の 引 渡 前 の 売 主 ( 575)
使 用 借 人 ( 594Ⅰ )
賃 借 人 ( 601)
受 遺 者 ( 992 本 文 )( 注 1)
①
②
③
④
⑤
地役権者
抵 当 権 者 ( 注 2)
受任者
受寄者
事務管理者
( 注 1) 遺 言 者 が 別 段 の 意 思 を 表 示 し た 場 合 は 不 可 。
( 注 2) た だ し , 担 保 す る 債 権 に つ い て 不 履 行 が あ っ た 後 に 生 じ た 果 実 に つ い て は 抵 当 権 の
効 力 が 及 ぶ ( 371)。
【 図 表 45
その他果実収取権】
備
考
条
文
留置権者
動産質権者
目的物を使用・収益できるわけではない。
ただし,債権の弁済に充当するために,果実を収取す
ることができる。
297 条 ・ 350 条
買戻しの買主
別段の意思表示がない限り,不動産の果実と代金の利
息は相殺したものとみなされる。
579 条 た だ し 書
親権者
親権者が負担した養育費・財産管理費用と,子の財産
の収益とは相殺したものとみなされる。
828 条 た だ し 書
34
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第5章
1
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法律行為
Aランク
分類
【 図 表 46
法 律 行 為 の 分 類 ( 意 思 表 示 の 結 合 の 仕 方 に よ る 分 類 )】
解 除 ( 541), 債 務 の 免 除 ( 519)
遺 言 ( 960)
単独行為
売 買 契 約 ( 555), 賃 貸 借 契 約 ( 601)
消 費 貸 借 契 約 ( 587)
契約
合同行為
一 般 社 団 法 人 の 設 立 ( 一 般 法 人 10~ )
決議
社 員 総 会 の 決 議 ( 一 般 法 人 49)
協約
労働協約
【 図 表 47
法 律 行 為 の 分 類 ( 要 式 行 為 と 不 要 式 行 為 )】
不要式行為
要式行為
方式の自由が認められる法律行為
通常の法律行為(要式行為以外の行為)
法の要求する一定の方式に従わな
いと不成立ないし無効となる法律
行為
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
35
保 証 契 約 ( 446Ⅱ Ⅲ )
婚 姻 ( 739)
協 議 離 婚 ( 764・ 739)
認 知 ( 781)
養 子 縁 組 ( 799)
協 議 離 縁 ( 812・ 739)
遺 言 ( 967)
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2
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単独行為の分類
【 図 表 48
単独行為分類】
相手方のある単独行為
(受領を要するもの)
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
3
相手方のない単独行為
(受領を要しないもの)
法定代理人の同意
取消し
解除
追認及び追認の拒絶
期限の利益の放棄
時効完成後の時効利益の放棄
制限物権の放棄
債権の放棄
債務免除
相殺
選択債権における選択権の行使
第三者のためにする契約における受益の
意思表示
①
②
③
④
所有権の放棄
占有の放棄
一般財団法人設立における寄附行為
相続の放棄(ただし,相続放棄は家庭裁
判所への申述が必要)
⑤ 遺言
法律行為の客観的有効要件
【 図 表 49
①
②
③
④
法律行為の客観的有効要件】
→
下記①~④を一つでも欠く法律行為は無効
確 定 可 能 性 (「 A が B に 何 か い い 物 を 売 る 」 と い う 約 束 )( 注 )
実 現 可 能 性 (「 太 陽 ま で 連 れ て 行 っ て あ げ る 」 と い う 約 束 ・ 禁 制 物 の 売 買 契 約 )
適法性(既にAと婚姻済みのBが,Cとも婚姻するという合意をABCがした場合)
社会的妥当性(犯罪の対価として金を与えるという約束・妾契約・企業の定年制におけ
る男女差別)
(注)強制的に契約を実現させることができず,また,契約内容も定まらないため損害賠償額
も定まらず,法的拘束力を与える意味がない。
4
意思表示
法律効果を発生させようとする当事者の意思に基づきなされる行為であり,それによりその法
律 効 果 が 発 生 す る も の を い う 。[ 平 22-6]
○ = 意 思 表 示 に あ た る ×= あ た ら な い
契約の申込みと承諾
○(法律行為である)
債務の履行の催告
×( 準 法 律 行 為 で あ る )
遺失物の拾得
×( 準 法 律 行 為 で あ る )
指名債権譲渡の債務者に対する通知
×( 準 法 律 行 為 で あ る )
不動産売却の広告
×( は 申 込 み の 誘 引 に あ た る )
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第6章
第1節
意思表示の瑕疵・欠缺
1
全体像
1-1
意思の欠缺
【 図 表 50
意
意思表示
AAランク
心裡留保・虚偽表示・錯誤】
義
共通点
心 裡 留 保 ( 93)
虚 偽 表 示 ( 94)
表意者が表示行為に対応す
る効果意思のないことを知
りながらする意思表示
表意者が相手方と通謀し
て表示行為に対応する効
果意思のないことを知り
ながらする意思表示
誤( 95)
表意者が表示行為に対
応する効果意思のない
ことを知らずにする意
思表示
効果意思と表示行為の不一致(意思の欠缺)
原則
意思表示は有効
例外
相手方が表意者に効果意思
のないこと(真意)につい
て悪意又は善意・有過失で
ある場合は無効
[ 平 3-8-ア ]
効果
錯
意思表示は無効
[ 平 3-8-イ ]
[ 平 15-5-ウ ]
法律行為の要素に錯誤
があるときは意思表示
は無効
意思表示の無効は善意の
第三者に対抗できない
表示者に重過失がある
ときは無効の主張がで
きない
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1-2
瑕疵ある意思表示
【 図 表 51
瑕疵ある意思表示】
詐
意
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義
原則
欺( 96Ⅰ ~ Ⅲ )
強
迫( 96Ⅰ )
人を欺罔して錯誤に陥れ,瑕疵ある意
思表示を行わせる行為(注1・2)
人に害悪を示して恐怖心を生じさせ瑕
疵ある意思表示を行わせる行為
表示者は詐欺による意思表示を取り消
すことができる
表意者は強迫による意思表示を取り消
すことができる
[ 昭 59-2-4]
[ 昭 63-14-ウ ]
[ 平 3-8-ウ ]
①
効果
例外
第三者の詐欺による意思表示は,
相手方が悪意であるときに限り取り
消 す こ と が で き る [ 平 13-1-ウ ]
② 詐欺による意思表示の取消しは善
意の第三者に対抗できない(取り消
すことは可能)
[ 平 12-3-5]
(注1)
信 義 則 上 , 告 知 義 務 が あ る 場 合 は 沈 黙 も 欺 罔 行 為 に あ た る ( 大 判 昭 16.11.18)。
(注2)
詐 欺 が 成 立 す る た め に は ,① 相 手 方 を 欺 罔 し て 錯 誤 に 陥 れ よ う と す る 故 意 と ,②
こ の 錯 誤 に よ っ て 意 思 表 示 を さ せ よ う と す る 故 意 が あ る こ と が 必 要 で あ る 。[ 平
13-1-イ ]
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2
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心 裡 留 保 ( 93)
2-1
適用範囲
【 図 表 52
民 法 93 条 ・ 心 裡 留 保 の 適 用 範 囲 】
①純粋な身分行為(婚姻,縁組)
適 用 な し ( 最 判 昭 23.12.23, 742① ・ 802① 参 照 )
→ 当事者の意思の尊重が徹底されるため,常に無効
②相手方のない意思表示(寄附行為・
遺言)
適 用 あ り ( 93 条 本 文 の み )
③相手方のある単独行為(債務免除・
契約解除)
適用あり
④設立時発行株式・募集株式の引受
け・割当て・総数引受契約
適 用 な し ( 会 社 51Ⅰ ・ 211Ⅰ )
3
→
常に有効
虚 偽 表 示 ( 94)
3-1
適用範囲
【 図 表 53
民 法 94 条 ・ 虚 偽 表 示 の 適 用 範 囲 】
①純粋な身分行為(婚姻,縁組)
②相手方のない単独行為(寄附行為・
遺言)
→
適 用 な し ( 742① ・ 802① 参 照 )
当事者の意思の尊重が徹底されるため,常に無効
→
適用なし
相手方があってこそ虚偽表示があり得るから
③相手方のある単独行為(債務免除・
契約解除)
適用あり
(注1)
④要物契約(消費貸借契約,質権)
適用あり
(注2)
⑤設立時発行株式・募集株式の引受
け・割当て・総数引受契約
適 用 な し ( 会 社 51Ⅰ ・ 211Ⅰ )
( 注 1 ) あ る 共 有 者 が 他 の 共 有 者 と 通 謀 し た 持 分 の 放 棄 ( 最 判 昭 42.6.22)。
(注2)基本となる意思表示の外形作出によって要物契約の外形行為が成立する。
ex. 金 銭 の 授 受 の な い 仮 装 の 公 正 証 書 に よ る 消 費 貸 借 ( 大 決 大 15.9.4)
仮 装 の 消 費 貸 借 に よ る 登 記 上 だ け の 不 動 産 質 権 の 設 定 ( 大 判 昭 6.6.9)
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3-2
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94 条 2 項 の 「 第 三 者 」 の 解 釈
【 図 表 54
94 条 2 項 の 「 第 三 者 」 の 解 釈 】
義
虚 偽 表 示 の 当 事 者 及 び そ の 包 括 承 継 人 以 外 の 者 で ,虚 偽 表 示 に つ き 法 律 上 利 害 関 係
を 有 す る に 至 っ た 者 ( 最 判 昭 45.7.24 等 )
要
件
①
②
③
④
効
果
表 意 者 の 意 思 表 示 は 無 効 で あ る が ,表 意 者 は そ の 無 効 を 善 意 の 第 三 者 に 対 抗 す る こ
と が で き な い ( 注 5)
意
虚 偽 表 示 の 外 形 を 信 頼 し て 新 た に 利 害 関 係 を 取 得 す る こ と ( 注 1)
独 立 の 経 済 的 利 益 を 有 す る こ と ( 注 2)
そ の 経 済 的 利 益 が 法 的 保 護 に 値 す る 程 度 に 強 い も の で あ る こ と ( 注 3)
善 意 で あ る こ と ( 注 4)
( 注 1~ 3)
【 図 表 55
第三者に該当するか否かに関する判例
94 条 2 項 の 「 第 三 者 に 該 当 す る か 否 か に 関 す る 判 例 」】
○=該当する
事
①
注1
×= 該 当 し な い
例
仮 装 の 譲 受 人 か ら 目 的 物 を 譲 り 受 け た 者 ( 最 判 昭 28.10.1)
結論
○
②
仮装の譲受人から目的物につき抵当権の設定を受けた者(大判大
4.12.17)
○
③
仮装譲渡の目的物に対して差押えをした譲受人の債権者(最判昭
48.6.28)
[ 平 11-3-ウ ][ 平 15-5-オ ][ 平 19-7-エ ]
○
④
仮 装 の 債 権 者 か ら 債 権 を 譲 り 受 け た 者 ( 大 判 昭 13.12.17)
[ 昭 56-3-3][ 平 15-5-エ ][ 平 19-7-オ ]
○
⑤
仮装の抵当権者から転抵当権の設定を受けたが原抵当権設定者に対する
対 抗 要 件 ( 377Ⅰ ) を 具 備 し て い な い 者 ( 最 判 昭 55.9.11)
○
⑥
土 地 の 仮 装 譲 受 人 が 右 土 地 上 に 建 物 を 建 築 し た 場 合 の 建 物 賃 借 人( 最 判 昭
57.6.8) [ 平 15-5-ア ]
×
注2
債 権 の 仮 装 譲 受 人 か ら 取 立 の た め に 債 権 を 譲 り 受 け た 者 ( 大 決 大 9.10.18)
×
注3
仮 装 譲 渡 の 譲 受 人 の 一 般 債 権 者 ( 大 判 大 9.7.23)
×
[ 平 11-3-ア ]
( 注 4) 「 善 意 」 以 外 の 要 件 に つ い て
① 「 無 過 失 」 は 不 要 で あ る ( 大 判 大 12.8.10)。
② 「 登 記 」 は 不 要 で あ る ( 大 判 大 9.7.23 等 )。 [ 昭 57-19-4][ 平 19-7-ア ]
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( 注 5)
【 図 表 56
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表意者からの譲受人と善意の第三者との関係
虚偽表示の表意者からの譲受人と善意の第三者との関係】
虚偽表示
甲
[ 昭 58-13-3][ 平 19-7-イ ]
(善意)
丁
丙
対抗関係
乙
∴乙は登記なくしては丁に所有権の
取得を対抗することができない
cf. 甲 と 丙 は 当 事 者 の 関 係 で あ り , 対 抗 関 係 に は な い 。 ま た , 甲 も 丁 に は 無 効 を 主 張 で き
ない
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3-3
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転得者の保護
【 図 表 57
虚偽表示における転得者の保護】
○=Dは保護される
事
A
A
(注)
虚偽表示
虚偽表示
例
理由
批判
結
論
B
第 三 者
C
(悪意)
転 得 者
D
(善意)
○
(最判昭 45.7.24)
[ 平 11-3-エ ]
[ 平 15-5-イ ]
[ 平 19-7-ウ ]
B
第 三 者
C
(善意)
転 得 者
D
(悪意)
○(注)
( 大 判 大 6.10.24)
[ 平 11-3-オ ]
[ 平 12-4 参 照 ]
「 絶 対 的 構 成 」 と 「 相 対 的 構 成 」[ 平 12-4][ 平 20-4] 参 照
絶 対 的 構 成 ( 大 判 昭 6.10.24)
結論
×= 保 護 さ れ な い
悪意の転得者Dは保護される。
→ AはDから取戻し×
相対的構成
悪意の転得者Dは保護されない。
→ AはDから取戻し○
ひ と た び 善 意 の C が 94 条 2 項 で 保 護 さ
れ た 以 上 ,そ の 時 点 で C が 絶 対 的 確 定 的
に 権 利 を 取 得 す る の で ,そ の 後 の 悪 意 の
転得者Dも有効に権利を取得する。
C や D が 94 条 2 項 で 保 護 さ れ る か 否 か
は ,各 当 事 者 ご と に 相 対 的 個 別 的 に 判 断
す べ き で あ り ,悪 意 の 転 得 者 D は 保 護 す
るに値しない。
悪 意 者 D が 善 意 者 C を ダ ミ ー( わ ら 人
形 )と し て 介 在 さ せ て ,有 効 に 権 利 を
取得できてしまう。
①Dが取引関係について綿密に調査を
するほど悪意となり保護されず,逆
に ,調 査 を 怠 る ほ ど 善 意 と な り 保 護 さ
れる。
② D が A か ら 目 的 物 を 追 奪 さ れ ,そ の 結
果 C が D か ら 追 奪 担 保 責 任 ( 561) を
問 わ れ る こ と に な り ,善 意 の 第 三 者 を
保 護 し よ う と し た 94 条 2 項 の 趣 旨 に
反する。
③ C が 有 効 に 転 売 し よ う と 思 え ば ,善 意
の 転 得 者 に 転 売 す る し か な く ,権 利 の
譲渡性・流通性が大幅に制限される。
④善意者が出現すればAは権利を喪失
し ,悪 意 者 が 出 現 す れ ば A は 権 利 を 回
復 す る の で ,い つ ま で た っ て も 法 律 関
係が安定しない。
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