平成26年度 13号(3月25日発行)

附属札幌中学校「学校だより」
藤 房
1年を振り返って
北海道教育大学
附属札幌中学校
学校だより
平成 27 年 3 月 25 日発行
№13
校長 佐藤 昌彦
今年度を終えるにあたりまして、保護者の皆様・関係者の方々には、
共に創るという「共創の学校」の理念のもと、歌原邦芳PTA会長さ
んや紺谷綾人ふじづる会・会長さんを中心に、本校の充実・発展のた
め、多大なご支援をいただき誠にありがとうございました。教職員を
代表しまして心から御礼申し上げます。
今回は、冒頭に「身体で把握すること」と記しました。教育の重要
な基盤として人間の身体に関する基本的な考え方を再確認したいと思
ったからです。以前、本校の「学校だより」
(平成 26 年度、No.1)に
「どうすれば身体の根源的能力を充分に働かせることができるのか」と記載しました。「身体の根源的
能力」とは、
「共通感覚」と呼ばれる身体の働きであり、視覚や触覚などの諸感覚を統合する(つなぐ)
能力を指します(註1)
。身体の根源的能力が機能しなくなった状況として、
「音楽を聞いても美しいと
感じない」
「絵を見ても何の意味も感じない」「高い木を見ても高いと感じない」「鉄製のものを見ても
重いと感じない」などの事例も示しました(註2)。では、どうすれば身体の根源的能力を充分に働か
せることができるのでしょうか。結論から述べれば、その基本は「視覚だけではなく様々な感覚を働か
せながら『身体で覚える』という実体験を積み重ねていくこと」と言えます。触る、握る、持つ、歩く
など、視覚とともに他の感覚(触覚など)も働かせることによって、外界を実感として把握することが
できるからです。
それでは「身体で覚える」という実体験の積み重ねを重視した教育実践としてはどのような具体例を
提示することができるでしょうか。北海道に着目すれば、アイヌの人々の伝統的な楽器である口琴(こ
うきん/ムックリ)製作をその一例として取り上げることができます。見るだけではなく実際に自分の
手でつくってみるのです。口琴(ムックリ)製作の第一人者である鈴木紀美代さんから直接その製作プ
ロセスを指導していただきました(註3)
。音色に深く関わる弁(竹)をマキリ(小刀)で削る際には、
特に「
(弁の先を弾いて)何度も音を出しては耳を傾けること」
「よい響きを求めて真剣に口琴と向き合
うこと」が大切になります。こうした口琴製作の追体験はまさに「身体で覚える」という実体験の積み
重ねそのものです。さらに言えば、自然の尊重という価値を学ぶことにも結び付きます。なぜなら、自
然素材としての竹を削るプロセスは「自然に逆らっていないか」
「自然に無理をかけていないか」
「自然
の理にかなっているか」という問いに自らが答えるプロセスとも言えるからです。原発事故の根本原因
は「生命」を守るという責任感の欠如(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会『国会事故調報告書』
徳間書店、2012)。
「生命」を守る基本は「自然」の尊重(人間は自然の一部。自然に支えられてこそ生
きることができる)
。それらを思い起こせば、口琴製作の追体験の意味はいっそう大きくなります。
身体への眼差し。言い換えれば、教育における本質の探究。人間形成の根本的な視座に基づいて、日々
の授業をこれからも構想していきたいと考えます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
註1
中村雄二郎『共通感覚論』岩波書店、1979.
註2
木村敏『自覚の精神病理』紀伊國屋書店、1978.
註3
鈴木紀美代:2001 年北海道ムックリ(口琴)演奏大会優勝、2011 年世界口琴大会製作の部(金属以外)
「最優秀賞」
受賞.著書は『父からの伝言』
(アイヌ文化振興・研究推進機構出版助成図書)藤田印刷、2007.
大変お世話になりました
副校長 中村 邦彦
毎朝、全体打ち合わせが終わると、職員室を出て各階の教室をゆっ
くりと見て回ります。何やらプリントに書き込んでいる生徒、友達と
談笑している生徒、日直として黒板に連絡事項を記載している生徒、
様々に朝を過ごす様子が見られます。どの生徒も目が合うと元気に挨
拶をしてくれます。時折、全体打ち合わせの後の学年の打ち合わせが
長引いて、担任の先生が遅れることがありますが、チャイムと同時に、
子どもたちだけで朝の学活が整然と始まります。朝の学活の最後は、1分間スピーチ。どの子の発表も
工夫に富んでいて楽しく、聞いていて感心させられます。スピーチの後には、必ず級友が感想を述べる
のですが、この感想がまた心温まるものが多いのです。私の毎朝の密やかな楽しみです。
学校運営の合言葉として、
「生徒にとって附属中で学んでよかった、保護者にとって附属中に通わせ
てよかった、教職員にとっては附属中で働いてよかったと言ってもらえるような学校を作ろう」と、常々
教職員に伝えてきました。しかし、振り返ってみますと、自分が一番、「附属中で働いてよかった」と
実感していることに気付かされます。何よりも、本校生徒たちの成長の速さと無限の可能性、そして何
よりも人としての温かさに触れることができたからです。毎朝、学級を回っているとそれが実感できま
す。昨日できなかったことが今日できるようになっている、同じ失敗を繰り返さない、そして何よりも、
男女分け隔てなく明るい笑顔と思いやりある言動に満ち溢れている。それが附属中の生徒です。副校長
として、生徒の日々の成長を実感できたことは本当に幸せでした。
歴史と伝統のある附属中学校に着任して3年。仲間を思いやり、自主的に行動する生徒の姿、学校教
育に心から賛同し応援してくださる保護者の方々の姿、熱心
に教育に打ち込む教職員の姿に感心し続けた3年間でした。
副校長として何ができるだろうと常に自分に問いながらの
日々ではありましたが、素晴らしい生徒の皆さん、保護者の
方々、校長先生、教職員、大学関係者の方々、地域の人々に
支えられて、何とか役目を果たすことができました。末尾と
なりますが、学校を支えてくださった全ての皆様に感謝申し
上げます。3年間、ありがとうございました。
【卒業生に向けた副校長先生からの講話】
News & Information
3 月 13 日、第 67 回卒業証書授与式が行われました。式
に向けた練習から、すでにどの学年の生徒も気持ちが入っ
ており、毎日が本番さながらの真剣さでのぞめていました。
その結果、当日は厳粛な空気に包まれるなか、温かさを感
じる大変感動的な卒業式になりました。
3 年前、入学式で踏みしめた赤絨毯。その感触を思い出
しながら、卒業生 133 名は、見違えるほどたくましく成長
した姿で本校を巣立っていきました。卒業生を感謝の気持
ちで見つめていた 1、2 年生。凛とした姿勢で後輩たちに
語っていた卒業生。目に見えないバトンがしっかり引き継
【卒業式を待つ式場】
がれたのではないでしょうか。
1、2 年生は 4 月から新 2、3 年生として、この附属札幌中学校を支え、リードしていく存在となりま
す。単に学年が上がるということだけでなく、附属中の 2 年生とはどのような役割を担っているのか、
3 年生は、最高学年としてどうあるべきなのか、卒業式を通じて感じたことから、生徒一人一人が理想
の姿をしっかり描いて新年度を迎えることを大いに期待しています。
◆新年度当初の予定
4月
6日(月)
7日(火)
8日(水)
9日(木)
10日(金)
13日(月)
14日(火)
15日(水)
16日(木)
17日(金)
18日(土)
始業式・新任式〈簡易給食〉
第70回入学式 〈簡易給食〉
学級写真撮影
内科検診(3年)
学力テスト(全学年)
昼短縮日課
授業参観、学級懇談会、PTA各委員会、ふじづる委員会、内科検診(2年)
内科検診(1年)、研究日
口腔検査(全学年)
前期委員承認式
午前3時間授業、第1回学年懇談会、PTA・ふじづる総会(午後)
、
PTA役員会①
20日(月) 振替休業日
21日(火) 全国学力・学習状況調査(3年)
22日(水) 教育相談①、体位測定、研究日
23日(木) 教育相談②、職員会議(5時間日課)
24日(金) 教育相談③、尿検査 1 次
25日(土) 部活動結成集会
27日(月) 耳鼻科検診(1年)
※すでに配付されている行事予定から若干、変更が生じています。今後、職員会議で最終調整を行い
ます。詳細は4月6日に配付される月行事予定・年間行事予定でご確認ください。
□新年度は4月6日(月)から始まります。上靴を忘れないように気を付け、1、2 年時の教室で待機
してください。また、この日、新しい教科書が配付されます。教科書を持ち帰ることができるカバン
の準備を忘れずにお願いします。
お世話になりました
教職員の異動
今年度は 7名の教職員が転出・退任することとなりました。
中村
上田
佐藤
原島
佐藤
室永
菅原
邦彦
雅也
美和
康子
達郎
瑞貴
博子
副校長先生(副校長3年)
先生 (数学科9年)
先生 (養護教諭1年)
先生 (国語科3年)
先生 (社会科1年)
先生 (理科2年)
先生 (心の相談員)
札幌市立明園中学校長へ
札幌市教育委員会指導室へ
札幌市立八軒西小学校へ
ご退任
北海道大学へ
札幌市立札苗北中学校へ
ご退任
春はお別れの季節であるとともに、新しい出会いの季節でもあります。別れを惜しみつつ、お世話に
なった方々に感謝し、そして、新しい出会いに期待する季節でしょう。これからのよき出会いを互いに
大切にしていきたいものです。
離任される教職員を代表して、上田先生にお言葉を頂きました。
離任するにあたって
上田 雅也
3月をもって附属札幌中学校を離れ、4月からは札幌市教育委員会で指導主事として勤務することに
なりました。この間、多くの生徒とかかわることができ、併せて保護者の皆様には大変お世話になりま
した。
附属中学校の授業は、生徒とともに創る授業です。今日の授業では、どんなことを考えてくれるかな
あとわくわくしながら毎日の授業を行っていました。ときには、私の予想をはるかに超える考え方が出
され、すばらしい発想に驚き、感動したこともあります。生徒に数学のおもしろさ、美しさを伝えてい
きたいとの思いで授業をすすめていましたが、生徒から新たな数学の価値に私自身が気づかされました。
附属中学校は広域通学のため、保護者の皆様には遠路お越しいただくことが多い学校です。にもかかわ
らず、PTAの活動に精力的に関わってくださる姿に頭の下がる思いでいました。共創の学校の理念が
浸透し、保護者とともに生徒のための学校づくりができた9年間でした。体験学習
の受け入れ先のご協力、校舎環境整備、総合的な学習の時間における生徒との座談
会など、本校の教育を理解され協力的な保護者の皆様に囲まれていた環境だからこ
そ、学校教育のあり方を見つめ直し様々なことを行うことができました。
末筆になりましたが、本校生徒並びに保護者の皆様のご多幸を心からお祈りいた
しております。本当にありがとうございました。