都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率

都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率
 研究背景
近年,都市への人口の集中は都市の発展が避けられない。但し,都市の行
政的に制限されている開発領域と様々な要因により,都市は過密化と高層化
されるだけの発展をもたらした。結局,都市のこういう状況は都市の屋外環境
に種々の悪影響を及ぼし,例えばヒートアイランド,熱帯夜増加,汚染質(排気
ガス等)増加などの社会的な問題をもたらした。特に,現在の都市の形状は都
市のあちこちに,都市内部から発生した汚染質を都市空間内に滞留するように
誘導し,益々都市屋外環境の悪化が増加されている。
これらの都市環境の問題点に対し,様々な研究が行ってきた。特に,都市特
有のストリートキャニオン空間はその内部から発生する汚染質が都市内に滞
留しやすい空間とし,このストリートキャニオン空間に対する研究が検討されて
きた。
 研究目的
建物の配置や高さのバリエーションがストリートキャニオン空間内の流れ場,
濃度場などに及ぼす影響に関して考察し,各ケースにおける換気効率につい
て検討を行った。更に,大気安定度を様々に変えたケースについてもその換
気効率の影響について検討を行った。
都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率
 解析モデル
 研究方法
1.境界層が十分に発達したストリートキャニオン空間を
仮定
2.その空間の流れ場において平均的な容積率,建蔽率
を一定とした条件(但し,ケース4は異なり)
3.建物配置・高さのバリエーションした条件
4.大気安定・不安定条件
建物(X m × Y m × Z m)
ケース
容積率
建蔽率
1.0H × 1.0H × 1.0H :中層
1.0H × 1.0H × 1.0H:中層
1.0H × 1.0H × 1.5H :高層
1.0H × 1.0H × 0.5H :低層
125%
125%
25%
25%
125%
25%
0.816H × 0.816H × 1.5H: 高層
125%
16.64%
15m = 1.0H
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
2H
2H
 CFD解析対象
H
H
C.L
0.5H
H
0.5H
1) ケース 1 - 格子状配置,1.0H
0.5H
0.5H
1.5H
1.5H
0.5H
0.5H
0.5H
1.5H
 基本概念図
H
0.414H
0.5H
C.L
C.L
0.408H
0.5H 1.5H
4) ケース4
0.414H
1.5H
H
2) ケース3
H
2) ケース 2 - 千鳥状配置, 1.0H
2) ケース2
Y
H
0.5H
WIND
X
C.L
0.914H
0.5H
Z
H
WIND
0.5H
1) ケース1
H
0.5H
1.5H
0.5H
H
H
H
0.5H
3) ケース 3 - 格子状配置, 0.5H・1.5H
0.592H
0.592H 0.816H 0.592H
4) ケース 4 - 格子状配置, 1.5H
 解析領域詳細
都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率
 CFD解析条件
 計算条件及び境界条件
k
ε
k
0
X 3

0
X 3
風速
Free slip
上空面
U 2
U 1
 0 , U3 = 0
0,
X 3
X 3
対称境界条件
側面
流入面
流出面
Cyclic ((Δp/Δx) 0.008/30 [Pa/m]),
地表面
建物
表面

0
X 2
k
0
X 2
U 3
U 1
0
 0 , U2 = 0,
X 2
X 2
Z0 型対数則
(Z0 = 0.01 m)文 4)
k
0
X 3

0
X 3
k
0
Xi

0
Xi
(Xi : 壁面垂直方向)
上空面
濃度
温度
C=0
T = 303K(固定)
• 周期境界条件(Cyclic)
圧力差勾配 (Δp/Δx) を0.008/30 [Pa/m]で一定
• 差分スキーム
移流項:一次風上差分スキーム
他の空間差分:2次精度中心差分である
 濃度の発生条件
• 0.5H 高さの空間で濃度を単位体積当たり1μg/m3
発生,但し,ケース4は建蔽率が異なるので単位体
積当たり0.899μg/m3濃度発生
大気安定度によるケースの温度とRb数
対称境界条件
C
0
X 2
側面
流入面
流出面
大気温度[K]
表面温度[K]
Rb
ケース
大気安定度
ケース1
中立
ケース5
安定
303
302
0.0444
ケース6
弱不安定
303
308
-0.3171
ケース7
不安定
303
313
-0.6511
303
0
Cyclic
C
0
X 3
地表面
建物
表面
T
0
X 2
T
0
Xn
(Xn : 壁面垂直方向)
T = 302K (安定)
T = 308K (弱不安定)
T = 313K (不安定)
都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率
 等温ケースのCFD解析結果
0
245 [kg/m³]
 C.L断面における濃度
の分布はケース3 が最も
小さくなりケース4が一番
大きくなった。
1.5H
1.0H
0.5H
(1) ケース1
(2) ケース2
(3) ケース3
(4) ケース4
2.5
Z/H
2.5
Z/H
Z/H
C.L.断面における濃度の鉛直分布図
2.5
2
2
2
1.5
1.5
1.5
1
1
1
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
0.5
0
0
2
4
lUl=
U12
 U2
2
0
6
lUl[m/s]
(1) 風速(lUl)
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
0.5
0
0.5
0.5
0
1
k[m²/s²]
(2) 乱流エネルギーk
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
0
100
200
300
(3) 濃度(C)
 U 32
水平面平均の鉛直方向のプロファイル
400
C[kg/m³]
 水平面平均の鉛直分布の風速
(lUl)はケース1が大きくなりケース4
が小さくなった。
 水平面平均の鉛直分布の乱流エ
ネルギーkはケース3が大きくなり
ケース4が小さくなった。
 水平面平均の鉛直分布の濃度は
ケース4が最も大きくなり,ケース3
が一番小さくなった。
 これらの結果,濃度の拡散に関し
ては乱流エネルギーk 影響を及ぼ
していると推測される。
都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率
 非等温ケースのCFD解析結果
0
360 [kg/m³]
1.0H
2.5
ケース1
ケース5
2
ケース6 (2) ケース5
(1) ケース1
ケース7
ケース1
ケース5
ケース6
ケース7
1.5
1
0.5
0.5H
2.5
2.5
0
0
0
2
1.5
1.5
1.5
1
1
1
0.5
0.5
ケース1
ケース5
ケース6
ケース7
0
2
4
0
(1) 風速(lUl)
6
lUl[m/s]
2
2.5
2
0.5
0.5
ケース1
ケース5
ケース6
ケース7
Z/H
Z/H
Z/H
2.5
1
(4) ケース7
C.L.断面における濃度の鉛直分布図
1.5
2
(3) ケース6
Z/H
Z/H
0.5H
0
0.5
1
1.5
k[m²/s²]
4
6
lUl[m/s]
(2) 乱流エネルギーk
0
ケース1
ケース5
ケース6
ケース7
2
0
28
29
30
31
32
33
T[℃]
C.L断面における濃度の分布は
ケース5 が最も小さくなりケース7
が一番大きくなった。
 水平面平均の鉛直分布の風速
(lUl)はケース5の方がケース1より
やや大きくなった。
 水平面平均の鉛直分布の乱流エ
ネルギーkはケース7が最も大きく
なり,ケース5が一番小さくなった。
 水平面平均の鉛直分布の濃度
はケース5が最も大きくなり,ケー
ス7が一番小さくなった。
 大気不安定の場合,
浮力効果による気流
が鉛直方向に動き,
乱流拡散が増加した
が,大気安定の場合
は大気を抑える効果
C[kg/m³]
が大きいので乱流拡
散が減少すると推測
(4) 濃度(C)
される。
0
(3) 温度(T)
水平面平均の鉛直方向のプロファイル
100
200
300
400
都市ストリートキャニオン空間の流れ場と換気効率
 換気量とPFRによる換気効率評価
 換気量とPFR(実質的な換気量)
qdv /

0.07
(式1)
[m³/s/m²]

1
Cds
S S
V
PFR = VP / (VF×TP) = qp / Cp
Q[m 3 / sec] 
単位地表面積当たり換気量・PFR
(式2)
換気量
0.06
PFR
等温
非等温
0.05
0.04
Q : 換気量 [m3/sec]。ここで,式 1の右辺の分子は体積発生全濃度,
分母は面積当たり発生濃度を意味し,q : 単位体積当たりの発生濃度
値[μg /m3],C:濃度の発生濃度値[μg /m3],C:濃度が移流する面 S の
平均濃度値。VP:局所領域Pの体積[m3],TP:局所領域Pにおける
particleの平均滞在時間[sec/1回の滞在],CP:局所領域Pの平均濃度
[μg/m3],qp:単位時間当たり局所領域P内で発生する汚染質量[m3/sec],
VF:訪問回数,汚染質の再帰率を意味する。
0.03
0.02
0.01
0
ケース1
Case 1
ケース2
Case 2
ケース3
Case 3
ケース4
Case 4
ケース5
Case 5
ケース6
Case 6
ケース7
Case 7
 Rbと単位地表面積当たり換気量の関係
ここで,対象領域内の換気効率については
0.06
Case 7
0.05
Case 6
0.04 Case 1
0.03
0.02
Case 5
換気量[m³/s/m²]
対象領域の上端と上空との間で交換される
単位地表面積当たりの換気量
単位地表面積当たりの実質的な換気量PFR
用いて評価した。
0.07
 換気量と等温の場合ケース3が良くなり,非等
0.01
温の場合ケース7が最も良くなった。
0
 PFRも等温の場合ケース3が,非等温の場合
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
Rb
不安定
安定
中立
ケース7が良くなった。
結局,換気量はストリートキャニオン空間の形 大気安定度により換気量が変化されることが
状と大気安定度(大気不安定)に大きな影響を受 明確になり,不安定になるほど換気量が高くな
り,換気効率が向上されることが推測できる。
けていると推定される。