「労働基準法などの改正要綱」に対する談話

2 0 1 5 年 2 月
2 3 日
「労働基準法などの改正要綱」に対する談話
ものづくり産業労働組合JAM
書 記 長
宮 本 礼 一
1.厚生労働省は、2月 13 日開催の労働政策審議会労働条件分科会で、労働時間でなく成果で評価する
「残業代ゼロ制度」などを盛り込んだ「労働基準法等の改正要綱案」を示した。
2.中小企業に対して適用猶予措置が講じられてきた「月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金率」
は、施行から既に5年近く経過したが、見直し案では、平成 31 年4月まで現状を維持することにな
っている。この問題についてJAMは、「二重規制となっている労働基準法の早期解消」を訴えてき
た。中小企業の経営環境のみに主眼を置いた適用猶予の継続措置に今後も強く反対していく。
3.現行の労働基準法では、法定労働時間を超える残業や深夜・休日労働に対して割増賃金率の支払い
を義務付けているが、新たに制度化しようとしている「高度プロフェッショナル制度」の対象者には、
この規定が適用されないため、対象労働者の命と健康を脅かすことが懸念される。この制度が導入さ
れると、過労死認定基準である 80 時間以上の時間外労働を命じても合法となり、深夜労働等にも歯
止めがかからないなど、2014 年に制定した「過労死防止対策推進法」に逆行することになり、過労死
の増加に歯止めがきかない状況をつくりだすことになる。
既に多くの企業では、成果主義賃金制度が導入されるなどして、現状では過大な業務命令やノルマ
によって長時間労働は減少していない。このような労働環境の中では、不合理な降格や賃下げを恐れ
たり、採用の際の雇用契約の条件とされたりすることも予想され、不本意に合意せざるを得なくなる
ことも懸念される。
経営側は、同分科会での審議において年収要件の引き下げも含めて、新制度の対象の拡大を求めて
いくこと考えを示している。一般労働者へのなし崩し的な拡大もしかねないことから、安易な人件費
コスト削減や長時間労働を強いるための手段とならないよう、労働基準監督署等による適切な運用の
ためのチェックが不可欠となる。
派遣法の改悪により、派遣労働者の対象職種が徐々に緩和されてきたように、今回の労働時間制度
の見直しが、労働者の犠牲に上に立った政策として進められることになれば、長時間労働による過労
死の増加のみならず、働く者の尊厳も権利もない労働環境になる。JAMは、今第 189 回国会での審
議を注視しつつ、津田やたろう参議院議員とともに、断固として反対していく。
以上