100 草壁 - びわこ成蹊スポーツ大学

運動学習における事例的研究
-後方倒立回転跳びにおける恐怖心の克服に関して-
草壁
克秋
(生涯スポーツ学科 学校スポーツコース)
指導教員 柴田 俊和
キーワード:後方倒立回転跳び,恐怖心,克服
1.緒言
ない世界”に行く運動に恐怖心を持っている
筆者は本学に入学して以来,約 4 年間保健
かどうかは,離足局面において運動者が腕を
体育教員を目指し,様々な教職に関する講義
耳の後ろまで持って行き,顎を上げることが
を受けてきた.講義の中でよく耳にしてきた
できているかどうかで視覚的に判断できる.
ある言葉がある.それは“体育嫌い”という
恐怖心を克服するためには,①全運動経過
言葉である.筆者が本学において教職に関す
を運動者に1通り体験させること,②小さな
る勉強をしてきた中“体育嫌い”の原因の 1
成功体験を多く与えていくこと,③運動者本
つに,
“恐怖心”があると考えた.
人に“コツの命綱”を持たせることが必要で
そこで本研究では,運動学習において生じ
ある.また特に,後方倒立回転跳びにおける
る“恐怖心”の主な原因を明らかにし,また
克服方法は,2~3枚ウレタンマットを重ね
特に,後方倒立回転跳びにおいて生じる“恐
て後ろに倒れる練習と後ろに跳ぶ練習である
怖心”の原因を明らかにしていく.さらに,
ことが実践の結果から明らかになった.
その“恐怖心”を減少させるために,どのよ
4.まとめ
うな方法があるのかを一事例として提案する
後ろ(“見えない世界”
)に進む運動の経験
ことを目的とする.
がない運動者にとっては,後ろに倒れるとい
2.研究方法
うことだけでも恐怖心が生じてしまう.しか
後方倒立回転跳びの習得過程において,
“恐
し,その恐怖心は練習を繰り返し行うことで
怖心”がどんな場面で生じ,どう変化してい
減少する.また,練習段階が上がると新たな
くのかを筆者の動感や被験者(本学の女子学
恐怖心が生じる.基本的な練習(後ろに倒れ
生)との会話や動作,観察結果から明らかに
る練習,後ろに跳ぶ練習)から,補助者2人
していく.また,生じた“恐怖心”を克服さ
が付き初めて後方倒立回転跳びの練習に移る
せていくために必要な練習方法についても考
際には,強い恐怖心が生じる.しかし,その
案していく.
恐怖心もまた繰り返し練習をすることで減少
3.結果と考察
していく.仮に恐怖心が生じてしまった時に
観察と考察から,以下のことが明らかにな
った.
運動学習における恐怖心の原因が,①似た
は,練習段階を戻し踏み切り動作や跳ね起き
動作の確認を行うことが有効である.
引用・参考文献
ような運動経験,もしくは運動感覚が運動者
1.金子明友(1974)マット運動 教師のた
の中にないこと,②過去にその運動で大きな
めの器械運動指導法シリーズ,大修館書
失敗経験があること,③補助がなくなること
店,pp.131-148.
である.またその中でも後方倒立回転跳びに
2.松山尚道(2012)運動指導における事例
おける恐怖心の原因として最も多いと考えら
的研究-倒立の学習における,直立形態
れたのは,後ろに跳ぶこと,つまり“見えな
の獲得をもとにして-,びわこ成蹊スポ
い世界”に行くことである.運動者が“見え
ーツ大学研究紀要第9号,pp.83-91.