00 8.22 「全国空襲都市ネット」について(改) - HP用 -

「全国空襲都市ネット」
総務省「一般戦災ホームページ」の充実に向けて
前大戦において、多くの市町村で機銃掃射を含む空襲や艦砲射撃で被害を受
け、沖縄では地上戦などよって多数の犠牲者を出しました。空襲都市には、
「記
録する会」
「語り継ぐ会」
「遺族会」、資料館、図書館などがあります。それぞれ
にホームページがあり、関係する個人ブログがあります。これらの目的には、
当時の悲惨な人的・物的被害状況を記録するとともに、追悼の意義も含めて、
公的に死者数を把握する作業が含まれると思います。
毎年 8 月 15 日の終戦記念日に、軍人軍属の死者 230 万人、民間死者 80 万人
(内 50 万人が国内、30 万人が海外)、計 310 万人という死者数が報道されます。
軍人軍属は、厚生省で把握し靖国神社に名簿が送られているようです(遺骨は
別として)。
一方、民間人死者の 80 万人は、総務省は何かを根拠として把握したのでしょ
う。戦時中に空襲を受けた市区町村は、ある基準に沿って死者数や負傷者、財
的被害を調査していると考えられます。混乱する状況下で調査が困難であった
としても、戦後において公的調査をするのは自治体としての重要な役目。戦中
は「戦時災害保護法」があり、執行されていたのです。
終戦当時、日本国家は混迷状態で、占領下 GHQ の支配下にあって、新憲法
(1946/11/3) が発行してもなお、戦争被害に関わる情報と政策(国民の人権)
は制限されました。政治や社会はアメリカナイズされ、その風土は独立(1952)
後の今も続いています。
前大戦で日本が勝ったとしても、又は他国間の戦争に巻き込まれた結果で犠
牲者がでたとしても、被害調査は行うべき役目があるでしょう。そして対象国
に賠償を求めることができない状況にあれば、わが国民、すなわち国会と行政
は、日本国憲法の下、被害を受けた人たちを救済・援護をするのが当然です。
戦後の地震、台風など自然災害による被災者の損害に対して、憲法の定める
最低限の生活を保障するために、「災害救助法」(昭和 22 年)、災害対策基本法
(昭和 36 年)、「災害弔慰金法」(昭和 48 年)、「被災者生活再建支援法」(平成
10 年)、などが制定されています。これら救済・援護法を執行するに当たって
は、詳細な被害調査がお行われていることでしょう。
▼ 総務省の『一般戦災ホームページ』の中に、「国内各都市の戦災の状況」と
いうページがあります。
「先の大戦において被害を受けた各都市の戦災の状況を
ご確認いただけます。」とあり、全国の 93 市区の軍・民を含む戦災状況を紹介
しています。しかし被害都市の一部で、その被害状況記事は画一的、平淡に感
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じます。最大の欠陥は、全国死者数の統計をとることを考慮していないという
ことです。
その他に、全国各地 180 余の追悼施設と追悼式などを紹介しています。
今後、掲載内容を追加していく予定なのかも知れませんが、総務省の外注業
者は被害都市の調査記録から取材していると思われます。人的にも物理的にも
限界があります。
▼ やはり戦争被害調査は、自治体の各被害市区町村が自ら主体になって調査・
整理し、独自の記録を作成、ホームページに公開するのが適切ではないか。
調査で作成された「空襲等死者名簿」あるいは遺族が了解する死者の「名簿」
を公開するかしないかは、その市区町村によるが、実際の男女別・年齢別死者
数は公開するのがよいでしょう(全国の市区町村数は、1920 年当時は 2,000 以
上)。
そして総務省の「一般戦災ホームページ」は、各市区町村のホームページに
リンクすることがベターでしょう。死者数・負傷者数は、市区町村ホームペー
ジから転記して集計・更新、全国に公表する。
▼ 東京大空襲・資料センターの山辺昌彦さんが、「本土空襲地域別死者数諸調
査」(『決定版 東京空襲写真集』東京大空襲・資料センター)を作成し、11 の
資料について全国市区町村(831)ごとの死者数を載せています。
上記諸調査で挙げられている諸表の下表合計死者数は、それぞれに大きな違
いがあることを提示しています。しかし、全国的な調査では原爆を除く一般空
襲の民間人の死者数は約 20 万で、数万人の違いはあって大きな違いはありませ
ん。一般に報道されている総務省の、民間人 80 万人(国内 50 万人、海外 30
万人)という数字の根拠は、国内は原爆の死者約 20 万人、一般空襲の死者約
20 万人、沖縄戦の死者約 10 万人と思われます。
第 1 復員省(1945)「大東亜戦争戦災害状況概見図」
238,475
5,026
同上復員省第 2 次調査(1946)
アメリカ戦略爆撃調査団報告(1947)
266,452
経済安定本部(1949)「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」
277,471
戦災都市連盟(1956)「太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔」
510,539
戦災都市(1959)建設省編『戦災復興史』
330,665
非戦災都市(1959) ―― 同上 ――
6,073
戦災遺族会報告書(1977) 日本戦災遺族会「全国戦災都市別被害状況表」
186,446
日本の空襲(1981)三省堂刊『日本の空襲』の「全国都市の被災一覧」
455,711
東京新聞(1994)東京新聞日曜版
557,848
地域史
413,058
各地域史等に載る資料から軍人軍属を除く民間死者
(原爆死を含む)
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▼ ホームページ「全国空襲都市ネット」
この中の「空襲被災都市死者数」のページには、
「空襲統計資料」の「本土空
襲地域別死者数諸調査」表における地域史の欄から、831 市区町村の死者数を
転記しています。
その右側に、総務省「一般戦災ホームページ」の国内 93 都市の戦災の状況の
文章に現れた死者数を並記し、比較しています。
この表で、皆様の属する自治体の地域史に記されている死者数をチェックし、
出来るだけ自治体として公表できる死者数に変え、総務省「一般戦災ホームペ
ージ」の死者数との違いを総務省に連絡・修正をお願いする作業を提案します。
同時に、
「一般戦災ホームページ」で皆様の属する市区町村の「戦災状況」を
チェックし、更新をお願いする。状況未記入の市区町村の皆様は、該当自治体
と共に状況を調査・作成し、総務省「一般戦災ホームページ」に追加を申請す
ること。
「空襲被災都市死者数」には、軍人軍属の欄を設けています。本来、軍・民
は同じ国民で人権と命の重さに変りはありません。死者は出身市区町村で把握
し、記録にとどめるのが筋でしょう。この問題はいずれ日本遺族会との関係で
協議などする必要があります。このホームページの目的は、
「空襲被災都市死者
数」を完成させることよりも、総務省の「一般戦災ホームページ」の充実への
要望の手段と位置づけましょう。
戦後 70 年の節目を、全国の「記録する会」等が、前記趣旨に基づき、空襲等
死者数の調査について、総務省との協同へ向けて再出発する年と位置付け、今
後、フェイスブックを通して、皆様の相互協力への発展を期待します。
東京空襲犠牲者遺族会
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西沢 俊次