着任の挨拶 - 東京都立一橋高等学校

着任の挨拶
東京都立一橋高等学校長
小宮山英明
本年4月1日をもって着任いたしました小宮山英明です。本校の学校教育を通し、生徒たちの進路の自己
実現に向けた支援に、全力で当たりたいと考えております。
本校は定時制と通信制が併設された単位制高校です。神田の一等地の手狭な敷地を最大限に生かす、1日
12時間・月曜から土曜まで週6日、教育活動をしている新たなタイプの単位制高校です。午前、午後、夜
間の3部に分かれた定時制は4時間の授業時間を基準として、他部の授業も受講できる、自分の学ぶ時間を
自分で作り上げることのできるシステムとなっております。通信制は、土曜のスクーリングを中心に登校
し、指導も受けますが、レポートの作成とまとめの単位認定試験で学力の定着と向上は評価され、科目の履
修、および修得が認定されます。自分の生活リズムに合わせ、定時制か通信制かを選んで、入学してきた生
徒は「自ら学ぶ」を実践している生徒たちです。
さて、生徒への支援と冒頭に書きましたのは、通信制に通う生徒はもちろんですが、定時制に通う生徒で
あっても、「自ら学ぶ」を実践しようとしている生徒であるし、また、高校の学習は自学自習を旨とすべき
であると思っているからです。何らかの目的をもって高校に入学してきているはずです。その達成のため
に、自ら学ぶ姿勢を持てなければ、仕事との両立のような、ハンディキャップの克服は難しいと考えていま
す。とはいえ、実際は不登校経験や学習の遅れから学習を放棄してしまった者、様々事情で学齢時に進学で
きなかった方の学び直し、今の仕事の中でさらにスキルアップするうえで、ぜひとも高卒資格を得ようとし
ている方など、様々なニーズや過去の経験を持った生徒が集っています。その生徒たちが、堅い決心の下、
集ってきたのが本校と考えています。
これらのニーズを集約し、都民の期待を加味すれば、本校の使命は「生徒の自己実現に資する、学力を定
着・伸長し、自主的な学びの中で資質・能力を育み、社会貢献を意識できる人材へと育成する」となると考
えています。学齢の生徒を中心に指導することになりますので地域コミュニティーの一員として共生してい
くための「生きる力」のコアをきちっと持たせることに目標を絞りたいと思います。また、その中の学力に
ついては、基礎的な知識及び技能の外、思考力、判断力、表現力といった課題を解決するための能力、そし
て主体的に学習に取り組む態度を育て、真に知識を使えるようにすることを目指します。
社会を生き抜くうえで必要なのは、知識はもちろんですが、それを操るスキル(技能)も大切です。知識を
使うことで技能が高まり、技能を高めるためにさらに知識を求めていくことになります。知識、技能を活用
して、できるようになった物や事があるとき、それを見て、周囲は能力のある人と認めてくれます。そこに
特異性があったり、専門性があったりしたときに、そのことの資質があるねと言ったりします。学校が生徒
の資質、能力を育てるということは、教師が与え、鍛える知識と技能の量を増やし、生徒自身が個々に持つ
部分と結び付けさせていくことなのかもしれません。
本校に集う生徒の多くは、なにがしかのつらい体験をしていることから、自らを大切な存在と見ることの
できない者がおります。その生徒にも、自己理解を進めさせ、自分の強みとそして弱みを知り、「私だっ
て、できる子なんだ。」と思わせたいと思います。自分自身を知ることと、知ってもらうこと、それができ
て、自分らしい生き方ができるようになります。本校で学んで卒業するときに自分らしさを見つけられるこ
とを願っています。
生徒たちは本校の投げ掛けた「一橋で、夢を実現」に魅力を感じて入学してきたものと思います。それに
は、小さな「できた」を積み重ね、大きな「できる」に育てることだと思います。今日はできない自分も、
明日はできる自分に変われると信じて、挑戦させていきます。日々の努力を重ねていけば、きっと彼らなら
できると私は思っています。