技能五輪へ選手を送り出す会社 株式会社大沼建築は山形県のほぼ中央

株式会社大沼建築
技能五輪へ選手を送り出す会社
株式会社大沼建築は山形県のほぼ中央の寒河江市(さがえし)にあり、代表取締役の大
沼仁社長を含めて 8 人の建築会社である。大沼 仁社長(1969・昭和 44 年生、1992・平成
4 年社長就任)は 3 代目であるが、最高時 2 億 3 千万円あった売り上げが 6 千万円まで落
ち込むなか、試行錯誤の末、新ブランドの「ウィズホーム」を立ち上げた苦労人である。
その会社が、1995(平成 7)年以来、7 度も技能五輪全国大会に社員を出場させ、2015
(平成 25)年 8 月にブラジル・サンパウロに開催される技能五輪国際大会では日本代表選
手を出場させることとなった。大沼社長自身、技能五輪での選手経験はないが、社長就任
3 年目から社員を技能五輪に派遣してきている。
「夢や目標を持っている職人はやる気が違う。全国の同年代の技術レベルを知ることで
より技術の向上につながり、自分の仕事に誇りを持つことができる」
と、積極的に社員の後押しをする。国内大会はもとより、ブラジルまでも応援に出かけ
るそうだ。
大沼社長は山形県立山形工業高校建築科を卒業後、山形市内の建設会社に 5 年間勤務し
た後、家業の大沼建築に入社した。
大沼建築は 1930(昭和 5)年、現社長の祖父、大沼哲蔵さんが創業。哲蔵さんは一から
腕を磨いて「宮大工」と呼ばれるまでになり、建築士会全国大会で表彰を受けるほどにな
った。2 代目大沼保勝さんは、顧客ニーズを反映し、デザイン性に優れた家づくりを手が
けて事業を拡大させ、作業場・事務所を現本社場所に新築した。3 代目を継いだ大沼社長
は売り上げ絶頂と奈落の底を共に経験することになったが、そうした経験から若い社員の
人材育成の重要性を悟ったという。
「事業にしても、人の育成にしても、継続することが大切であり、挑戦する人に対して
チャンスや環境を整える事が企業の役割だと考えています」
技能五輪国際大会に出場する選手
技能五輪国際大会に出場する若林信さんは、大沼建築に 2012(平成 24)年に入社した 3
年目の社員。2013(平成 25)年、2014(平成 26)年と技能五輪全国大会に連続して出場し、
2014(平成 26)年に見事金賞を獲得し、国際大会出場選手に選ばれた。
山形県立山形工業高校、山形県立山形職業能力開発専門校と進むが、在学中に2級建築
大工技能士を取得した。元々技能五輪には興味があり、過去に会社の先輩が出場していた
ため自分も技能五輪の舞台で活躍したいと思うようになり、挑戦した。大沼社長の若林さ
ん評は次のようなものである。
「仕事ぶりを見てきて性格的にも落ち着いており、細かい作業が好きで住宅の模型やペ
ーパークラフトをつくったりしてとても繊細である。また、常に問題や課題を見つけ改善
して日々成長し、素直で繰り返し続け、決してあきらめない」
全国大会前の約 3 カ月間、選手は仕事から離れて練習に集中することになる。ましてや、
国際大会ともなるとそれが、ほぼ半年になる。少人数の会社にとって大きな負担となる。
練習経費や選手派遣費用については一部の資金援助を受けるとはいうものの、これも大き
な負担となる。それだけに、会社の一層の発展と若林さんを含めた若手社員の活躍を祈る。
2016(平成 28)年秋には山形県で第 54 回技能五輪全国大会・第 36 回全国アビリンピッ
クが開催される。若人の活躍と周囲のみなさんの継続的な支援を期待する。
接客室での懇談
若林信さんが 2014 年技能五輪全国大会で
金賞を獲得したときの課題作品
大沼 仁社長
ブラジルで開催される技能五輪国際大会
に向けて集中訓練を受ける若林さん