目 序 次 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅰ クレワットの種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅱ クレワットの性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) 化学的性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 錯塩(Complex)の生成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) 錯塩と pH ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (4) 反応速度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5) 錯塩の酸化還元性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (6) クレワットの毒性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅲ クレワットと各種リン酸塩との比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅳ クレワットの応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) 石鹸、洗浄剤工業関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 繊維、染色関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) メッキ表面処理工業関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (4) 農水産関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5) 化粧品関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (6) 医療関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (7) 合成樹脂、ゴム関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (8) 鉱業関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (9) 紙、パルプ関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (10) スケース洗浄 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (11) 放射能除染関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅴ クレワットを定量する方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅵ クレワット N による硬度測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 硬水 1ton を軟化するに必要なクレワット量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ クレワット適用例表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 ク レ ワ ッ ト 序 論 銅やコバルト等の金属イオンが水中に存在するとき、アンモニア水や青酸塩を加えると錯化合物と呼ばれる特有 の化合物が形成されて金属イオンの呈色が変り、金属イオンはそのイオンとしての性質を失うことは早くから知ら れています。この化合物の結合は通常の金属塩より強固な結合であって、一般に配位結合と呼ばれる現象により 起こります。コバルトやニッケルとエチレンジアミンとの配位結合の立体構造も昔からいろいろ研究されており、鉄 とクエン酸との結合、金属とアミノ酸や蛋白質との結合又は一般に分析化学の分野において、有機試薬といわれ るものと金属との結合は、これと同一の原理によるものであります。 このような研究の一端として初めてエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)の塩や類似化合物を発見したのは Pfeiffer と Brintzinger(1)でありました。彼等はこれにトリロンなる名称を与え、金属との親和力や配位状態を研 究しました。1945 年になってスイスの Schwarzenbach(2)は EDTA のアルカリ土類金属、その他に対する錯塩 形成の安定度定数を測定して、更に分析化学への応用の道を開きました。Schwarzenbach は、EDTA を Komplexon と呼び、これを使用する分析を Komplexometrie と称しました。特に EDTA はアルカリ側におい てカルシウムイオンに対する親和性が非常に大きかったところから、硬水の軟化処理に用いられるようになりました。 EDTA は、上記のような性質を有するため金属イオン封鎖剤と名付けられていますが、英語では Sequestering agent 又は Chelating agent といいます。 Sequester とは切離すこと、差押えることを意味しますが、この場合は、水中の金属イオンと結合して水溶性の 金属錯塩を形成することを意味します。又、Chelate とはギリシャ語の Kelos (カニの鋏)より派生した言葉で、 分子内の窒素が金属と結合してカニの鋏状に環構造を作ることに由来しています。 EDTA 即ちエチレンジアミンテトラ酢酸塩は、下図の如きキレート結合をして環構造を造りますがそれと同時に 残った水溶性基(カルボキシル基)で水に溶解しているので、 EDTA は Sequestering agent であると共に Chelating agent であるといいます。 弊社では EDTA 等の金属イオン封鎖剤にクレワットなる商品名を与えています。 3 Ⅰ.クレワットの種類 HOOCH2C EDTA 系( エチレンジアミン四酢酸 ) HOOCH2C NCH2CH2N CH2COOH CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 分子量 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 備考 (mg/g) (参考値) クレワット TAA EDTA・4H 白色結晶性粉末 99.0 以上 266.0 以上 クレワット N EDTA・2Na・ クレワット N1 クレワット#300A クレワット T クレワット S1 クレワット S2 クレワット 3Na (20%) 白色結晶性粉末 (参考値) 4.0~4.8 EDTA・3Na・ 白色結晶又は 2H2O 結晶性粉末 EDTA・3Na・ 3H2O EDTA・4Na・ 4H2O 95.0 以上 4.2~4.8 高純度品 日局準拠品 外原規準拠品 高純度品 高純度品 20kg/紙袋 4.0~5.0 0.77 394.2 7.0~9.0 ー 230.0 以上 412.2 7.0~9.0 0.76 216.0 以上 452.2 10.0~12.0 0.83 10.0~12.0 ー 255.0 以上 246.0 以上 20kg/紙袋 ー (参考値) 97.0 以上 1kg/ポリ袋 外原規準拠品 標準品 1kg/ポリ袋 外原規準拠品 20kg/紙袋 高純度品 20kg/紙袋 標準品 (参考値) 白色粉末 白色結晶性粉末 EDTA・4Na・ 95.0 以上 98.0 以上 1kg/ポリ袋 20kg/紙袋 白色の細粒又は EDTA・4Na・ 粉末 97.0 以上 97.2 以上 4H2O 無色ないし微黄 色透明液体 233.0 以上 215.0 以上 416.2 20kg/紙袋 452.2 47.0 以上 10.0~11.5 0.85 標準品 1.12 EDTA 3Na 液 (1%solution) (参考値) 19.5 以上 外原規準拠品 高純度品 (参考値) 2H2O EDTA・3Na 0.95 20kg/紙袋 372.2 266.0 以上 白色粉末 2.0 以上 0.91 99.0 以上 2H2O クレワット N2 EDTA 3Na 2H2O 339.0 以上 (飽和溶液) 292.2 394.2 8.7~9.3 20kg/キュビテナー (1%solution) 45.0 以上 クレワット 100C 100.0 以上 10.5~11.5 無色透明液体 (1%solution) (参考値) クレワット T-48 EDTA・4Na 47.0 以上 104.0 以上 1.26 452.2 10.0~12.0 1.27 (1%solution) センナック J-100 淡黄色透明液体 45.0 以上 100.0 以上 4 10.0~11.5 1.26 EDTA 4Na 液 20kg/キュビテナー 高純度品 200kg/ドラム 20kg/キュビテナー 200kg/ドラム EDTA 4Na 液 HOH2CH2C HEDTA 系( ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸 ) HOOCH2C NCH2CH2N CH2COOH CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 分子量 備考 (mg/g) クレワット OH#300 クレワット OH-35 HEDTA・3Na ・3H2O HEDTA・3Na (参考値) 白色結晶性粉末 淡黄色澄明液体 93.5 以上 28.7 以上 235.0 以上 10.8~11.8 0.88 398.3 アルカリ液中の鉄 イオン封鎖剤、 72.0 以上 11.0~13.0 HOOCH2C DTPA 系( ジエチレントリアミン五酢酸 ) 20kg/紙袋 HOOCH2C 1.18 20kg/ キュビテナ - 外原規準拠品 200kg/ドラム NCH2CH2NCH2CH2N CH2COOH CH2COOH CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 分子量 備考 (mg/g) (参考値) クレワット DA DTPA・5H 白色結晶性粉末 99.0 以上 251 以上 (飽和溶液) 393.4 1.7~3.0 0.85 25kg/紙袋 - アルカリ液中の鉄 クレワット DP-80 36.0 以上 DTPA・5Na 80.0 以上 11.5~13.5 1.31 503.3 淡黄色澄明液体 20kg/キュビテナー イオン封鎖剤、 200kg/ドラム 外原規準拠品 (参考値) クレワット DP-100E 50.0 以上 100.0 以上 11.0~12.0 HOOCH2C TTHA 系( トリエチレンテトラミン六酢酸 ) HOOCH2C 1.36 20kg/キュビテナー NCH2CH2NCH2CH2NCH2CH2N CH2COOH HOOCH2C アルカリ液中の鉄 イオン封鎖剤 CH2COOH CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 分子量 見掛 包装単位 比重 (kg) 1.25 20kg/キュビテナー 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 備考 (mg/g) クレワット TH TTHA・6Na 黄色澄明液体 30.0 以上 48.0 以上 NTA 系( ニトリロ三酢酸 ) 626.4 N 11.5~13.0 多価金属イオン 封鎖用 CH2COOH CH2COOH CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 分子量 pH 備考 (mg/g) クレワット PC-C3 NTA・3Na・ H2O (参考値) 白色結晶性粉末 98.5 以上 369.0 以上 5 275.1 10.5~12.0 0.89 25kg/紙袋 洗浄剤、スケール 500kg/フレコン 抑制・除去剤 HOOC グルコン酸系 CH CH CH CH OH OH OH OH CH2OH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 分子量 備考 (mg/g) 強アルカリ液中の クレワット GL グルコン酸 白色又は淡黄色 ナトリウム 結晶性粉末 6.5~7.5 (参考値) 98.0 以上 WG-100C 452.0 以上 218.1 0.90 25kg/紙袋 6.0~8.0 金属イオン封鎖剤 外原規準拠品 環境適合型キレート剤 HIDA 系( ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 ) HOH2CH2C N CH2COOH CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 分子量 備考 (mg/g) (参考値) クレワット Bi-HDS HIDA・2Na 淡黄色澄明液体 24.0 以上 108.0 以上 221.1 1.18 11.0~13.0 20kg/キュビテナー 中性中での鉄イオン 200kg/ドラム 封鎖剤 生分解性 環境適合型キレート剤 HOOCH2C ADSA 系( L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸 ) HOOCHC CH2COOH N CH2COOH キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 分子量 備考 (mg/g) 20kg/キュビテナー (参考値) クレワット Bi-ADS ASDA・4Na 淡黄色澄明液体 45.0 以上 159.0 以上 337.1 11.0~13.0 生分解性 ー 200kg/ドラム 環境適合型キレート剤 NaOOC HIDS 系( ヒドロキシイミノジコハク酸 ) H2 C OH CH H N CH CH COONa COONa COONa キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 分子量 見掛 包装単位 比重 (kg) ー 20kg/キュビテナー pH 備考 (mg/g) (参考値) クレワット Bi-8000 HIDS・4Na 淡黄色澄明液体 49.0 以上 142.0 以上 6 353.1 10.0~14.0 生分解性 O NTMP 系( アミノトリメチレンホスホン酸 ) N CH2 OH P OH 3 色調 製品名 組 成 外 観 含量(%) 淡黄色液体 NTMP わずかに特異臭 47.0 以上 299.1 150.0 以下 HEDP 系( ヒドロキシエタンホスホン酸 ) HO 組 成 外 観 含量(%) 比重 (kg) 1.33 1.5~2.0 O OH O P C P OH CH3 OH 色調 製品名 包装単位 備考 (APHA) ケンロックス 100 見掛 pH 分子量 20kg/鉄缶 - 25kg/ポリ缶 OH 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 分子量 (APHA) 備考 無色ないし微黄色液 HEDP ケンロックス 200 体、わずかに特異臭 57.0 以上 206.0 80.0 以下 1.5~2.0 1.45 20kg/鉄缶 - 特殊混合品 キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) 見掛 包装単位 比重 (kg) pH CaCO3C.V. 備考 (mg/g) クレワット K EDTA 主 体 の 白色結晶性粉末 104.0 以上 11.6~13.0 1.13 190.0 以上 9.5~10.5 1.05 ー 1kg/ポリ袋 20kg/紙袋 混合品 EDTA 特殊 配合品 クレワット C6 20kg/紙袋 農水産業用:微量金属塩 製品名 用 途 外 観 クレワット 一般園芸 暗赤色 101 号 農業肥料 液体 クレワット 32 珪藻類 N K 2O B2O3 MnO Fe Cu Zn Mo 1.5 6.5 0.05 0.1 0.5 0.002 0.005 0.001 Co B Mn Fe Cu Zn Mo 0.017 2.47 0.77 0.38 0.007 0.16 0.63 7 包装単位 比重 (kg) 備考 一般芸・ (原液) 6.0~7.0 1.15 20kg/キュビテナー 農業用肥 料登録品 7.0~9.0 黄色粉末 培養 見掛 pH 金 属 含 量 (%) 1.04 1kg/ポリ袋 水産用 EDTA 誘導体 キレート量 製品名 組 成 外 観 含量(%) CaCO3C.V. 分子量 見掛 包装単位 比重 (kg) pH 備考 (mg/g) Fe+3CV.125mg/ クレワット AM 淡黄色結晶性粉末 95.0 以上 150.0 以上 626.0 4.0~4.8 0.65 10kg/パッキンケース g 以上有、アルカリ中 EDTA 特殊 の鉄イオン封鎖剤 アミン塩 Fe CV.79mg/g クレワット BM +3 淡黄色澄明液体 48.0 以上 63.0 以上 739.0 6.6~8.0 1.15 以上有、アルカリ中の 20kg/キュビテナー (参考値) クレワット 2H EDTA・2NH4 クレワット 3H EDTA・3NH4 クレワット 3K EDTA・3K 33.0 以上 無色又は微黄色 澄明液体 (参考値) 50.0 以上 EDTA 2 アンモニウム (無水物) 100.0 以上 145.0 以上 49.0 以上 ー 326.3 4.5~5.5 1.14 6.0~7.5 1.20 塩 20kg/キュビテナー EDTA 3 アンモニウム 200kg/ドラム 塩 1.33 20kg/キュビテナー EDTA 3 カリウム塩 見掛 包装単位 比重 (kg) (無水物) 343.3 (無水物) (原液) 406.5 7.7~8.7 分子量 pH 鉄イオン封鎖剤 EDTA 金属塩 金属含有量 製品名 組 成 外 観 含量(%) (%) クレワット Fe EDTA・Fe・Na ・ 13.2 以上 2H2O 黄色粉末 クレワット Fe 3H2O クレワット Ca EDTA・Fe・Na ・ 403.1 4.0~5.5 備考 0.84 95.0 以上 3H2O EDTA・Ca・2Na 12.6 以上 421.1 3.8 以上 410.3 3.0~6.0 0.75 微量要素用原体 1kg/ポリ袋 25kg/紙袋 EDTA・Mg・2Na クレワット Mn EDTA・Mn・2Na 微量要素用原体 39.0 以上 2.2 以上 430.6 4.6 以上 461.2 5.4 以上 471.6 5.5 以上 451.8 (原液) 6.0~9.0 1.20 1.23 淡紅色澄明液体 クレワット Zn EDTA・Zn・2Na クレワット Cu EDTA・Cu・2Na 20kg/キュビテナー 微量要素用原体 1.22 8 6.0~8.0 その他重合触媒 用 (原液) 青色澄明液体 用 1.23 淡黄色澄明液体 クレワット Mg その他重合触媒 1.22 繊維:染色助剤 包装単位 製品名 外 観 イオン性 pH 溶解性 備考 (kg) アクロマー TS320 アクロマー DH500 反応・直接・含金染料等 8.0 ~ 9.0 淡黄色澄明液体 アニオン アクロマー DH700 11.0 ~ 13.0 均染剤 水に容易に溶解 20kg/キュビテナー 糊抜剤、反応・分散等 染料等均染剤 10.0 ~12.0 スケール溶解剤 包装単位 製品名 外 観 pH 溶解性 備考 (kg) シェリパーク C 淡黄色液体 シェリパーク Y 淡黄色~褐色液体 7.5 ~ 8.5 硫酸カルシウム系溶解剤 水に容易に溶解 20kg/キュビテナー 6.0 ~7.0 シェリパーク Hf 炭酸カルシウム系溶解剤 淡黄色澄明液体 非水系キレート剤 包装単位 キレート量 製品名 外 観 (kg) CaCO3C.V. (mg/g) テークラン DO 褐色ないし茶色細片 備考 酸価 (mg/g) 100.0 以上 260 ~ 330 9 1kg/パッキンケース 樹脂中の促進剤& 触媒の封鎖剤 Ⅱ.クレワットの性質 (1) 化学的性質 エチレンジアミンテトラ酢酸(クレワット TAA)は、無色、無味、無臭の結晶性粉末であり、構造上は四塩基性酸の 性質を持っています。この酸や金属錯塩は極めて熱に安定で 230~240℃で分解します。クレワット TAA は一部 の極性溶剤(DMF 等)を除き、水・アルコール・エーテルその他有機溶剤に殆ど溶けません。苛性アルカリを加え るとモノ、ヂ、テトラ等の塩を作りますが、アンモニア、アミンの如き弱塩基ではトリ塩に止まりテトラ塩を生じませ ん。又、PHが非常に低い場合、クレワット TAA は酸性塩を作り溶解します。 ★クレワット (EDTA) ナトリウム塩の性状 EDTA Mono-Na 酸 Di-Na 塩 Tri-Na 塩 Tetra-Na 塩 塩 溶 22 ℃ 0.02/100cc 1.4 10.8 46.5 60.0 解 80 ℃ 0.3 2.1 23.6 46.5 61.0 度 - - - - - - 2.2 3.5 4.4 8.0 10.8 pH ★クレワット主要製品の水に対する溶解度(水 100g にとけるクレワットの g 数)及び pH 種 別 溶 解 pH 度 22 ℃ 40 ℃ 80 ℃ (5%液) クレワット TAA 0.02 0.1 0.3 2.2 (飽和) クレワット N 10.8 13.7 23.6 4.4 クレワット T 60.0 59.0 61.0 10.8 クレワット AM 66.0 73.0 85.0 4.8 クレワット OH#300 44.0 44.0 47.0 (2)錯塩(Complex)の生成 EDTA-Co(Ⅲ)の構造 10 11.5 N-Co の結合は窒素原子の 1one pair (非結合電子対、孤立電子対)によって Co 原子との間で配位結合を 作っていることを示しています。また酸素と金属の間の結合も酸素イオン原子との配位によるが、この結合はかな りイオン結合性を有しているものと思われます。 金属と EDTA の間で何本の結合を作るかは一般に金属自体の大きさ等によって決定されます。しかし EDTA が水溶液中でどのような結合をしているかは今だ推測の域を脱しておらず、個体についてもわずかのものにつ いてのみ判明しているにすぎません。 しかし金属と EDTA の間の結合は配位結合が大部分を占めていることは明らかですから、これの解離は容易 には起こりません。 もし金属イオンが電荷だけで結合していたら溶液中において金属イオンを遊離させることは容易ですが、この非電 離性の配位のため、遊離が起こりにくいわけです。 金属錯塩の安定度は錯塩の平衡恒数 即ちここで 〔 〕 は濃度、Mは金属を示します。 により知ることができます。 この数値が大きいほど錯塩 〔EDTA-M〕 の安定度が高い事になります。参考までに、各キレート剤と金属との K の価(安定度定数)を列記すれば次のようになります。 これらの数値は EDTA-M 生成に関する理論値であります。 従って実際には、種々の外的条件によって生成濃度に変化を生じます。この条件の一つに pH があります。安 定度定数を pH の関数として求めたものを “みかけの安定度定数” 又は “条件安定度定数”といいますが、 この値は pH の低下と共にすべて小さくなります。しかし実際の生成濃度にはさらに重要な条件が加わるので 一言で書き表わす事は出来ません。 キレート生成定数の比較表 各種 キレート剤 Fe 3+ DTPA HEDTA EDTA NTA 28.6 19.8 25.1 15.9 各種 DTPA HEDTA EDTA Hg 2+ 26.3 20.1 21.8 Cu 2+ 21.1 17.6 18.8 13.2 2+ 20.2 17.0 18.6 11.5 キレート剤 NTA Cr 3+ Lu 3+ 22.4 15.9 19.8 12.5 Ni Yb 3+ 22.6 15.9 19.8 12.4 Pb 2+ 18.6 15.5 18.3 11.4 12.0 Zn 2+ 18.3 14.5 16.7 10.7 2+ 18.4 14.4 16.2 10.4 24.0 Er 3+ Tb 3+ 22.7 15.4 17.6 11.6 Co Gd 3+ 22.5 15.3 17.1 11.5 Cd 2+ 18.9 13.0 16.6 9.8 11.5 Fe 2+ 16.6 11.6 14.3 8.8 Mn 2+ 15.5 10.7 14.0 7.4 Ca 2+ 10.7 8.5 10.9 6.6 2+ 9.0 7.0 8.7 5.4 Eu 3+ Sm 3+ Nd 3+ Y 3+ Pr 3+ Ce 3+ La 3+ Al 3+ 22.7 22.4 22.3 21.6 15.5 15.4 15.4 14.9 19.0 17.4 16.5 16.5 11.5 11.3 22.1 14.7 17.8 11.5 Mg 21.1 14.7 16.2 11.1 Sr 2+ 9.7 6.8 8.6 5.0 10.8 Ba 2+ 8.6 6.2 7.8 4.8 + 7.3 5.4 1.7 2.2 20.5 19.5 14.2 13.5 15.8 15.1 10.4 Ag 16.1 10.9 Na + 11 (3)錯塩 と pH 錯塩生成の減少は各金属によって大いに異なり、例えばカルシウムでは pH 3 以下では全く錯塩を作りません。 鉄や銅は、 pH 1 でもまだ錯塩の生成はほとんど定量的に行なわれます。水酸化物の溶解度積が非常に小さい 金属の EDTA 錯塩生成濃度は pH が大きくなるに従って小さくなります。 即ち金属水酸化物の安定度が EDTA の錯塩の安定度より大きいときには金属は EDTA より離れて水酸化 物として沈殿します。例えば鉄は中性以上アルカリ性溶液中では、水酸化鉄の沈殿が生じやすく、pH 12 以上で は完全に EDTA は無効となります。 いいかえれば EDTA によって鉄イオンを不活性ならしめようとする時は pH は中性以下が良いという事になります。 以上の事項は次頁の図により全て明らかとなります。 は、先に述べた安定度定数に対応した値で高い値程安定な錯塩を形成しているという事になります。 従って分析に EDTA を使用する場合にはそれぞれの金属について 使用する場合が多く、又、一般的な金属イオン封鎖剤としての工業的用途には が約 8 以上の pH の領域を >5 以上の領域、さら に極微量の金属イオンも封鎖したい場合、或いは他の錯形成と金属との結合を防止したい場合(例えば染色時 の染料との反応の防止) 等には > 7~8 の領域を使用される事が望まれます。 又、各種に金属が共存している場合、結合の優先順位はそれぞれの pH で 合します。尚 pH を動かすことができない用途で望む の高い金属から順に結 を示していない場合、EDTA を過剰に加える <1 以下の pH 領域での使用は出来るだけ避け 事により、求める効果を出すことが出来ます。しかし た方が良好です。 12 (4)反応速度 錯塩生成反応の速度は安定度定数とは全然別ですが、大体、比較的安定度定数の高い錯塩ほど反応速度は大 です。例えばカルシウム、マグネシウムは直ちに反応が完結しますが、逆にクロムは平衡に達するのに時間を要し ます。 クレワット N はベリリウム、チタン、ウラニウム、ヴアナジウム、プルトニウム、銀等とも錯塩を作りますが、アンモ ニアの存在では水酸化物が沈殿するほど安定度が小さくなります。希土類金属との錯塩生成系列はイツトリウム、 サマリウム、ネオデイミウム、プレソデイミウム、ランタンの順であります。このクレワット N との結合順と、イオン交 換樹脂との結合順との相違から希土類金属の微量分析の分離定量が可能となりました。 (5)錯塩の酸化還元性 二価の鉄塩は協力な還元剤であります。二価の鉄塩は空気中の酸素で三価に戻ります。 (6)クレワットの毒性 クレワットは元来無毒であり、又水によく溶けるため排泄が早いです。動物体内に使用した時の毒性というのは殆 んど血液中に存在するカルシウム量、いわゆる血中カルシウム濃度の急激な減少により起こるものです。急性投 与や慢性投与、静脈内注射や経口投与では非常に差が大きいことに注意すべきであります。従って体内の金属 毒を排泄させるためには、クレワット N の代りにクレワット Ca を投与すると毒性は極めて小さくなることが知られ ています。 白ねずみによる試験では 1g/kg を与えた影響がありませんでした(3)。又ねずみの静脈内注射では MLD=51.2 mg/kg でした。兎の腹腔内注射では 80mg/kg でも毒性を示しませんでしたが、100mg/kg ではけいれんを起こし ました。しかし 40~80mg/kg を毎日、10 日間静脈内注射しましたが、この場合は何ら変化はありませんでした。 犬では 50mg/kg で毒性を示しました(4)。 クレワット N マウスによる経口投与 LD50 =2.05g/kg 24 時間後 マウスによる腹腔内注射 LD50 =2.06g/kg クレワット Ca マウスによる経口投与(5) LD50 =7.50g/kg ラットによる経口投与 LD50 =20.00g/kg 1 週間後 ネズミによる経口投与(7) LD50 =10.00g/kg (6) 13 Ⅲ クレワットと各種リン酸塩との比較 クレワットは、チッ素を持った有機系のキレート剤ですが、無機系のキレート剤として普及しているものに リン酸塩があります。 以下、クレワットとリン酸塩との金属イオン封鎖作用について比較を行ってみます。 (1)安定度定数の比較 Ba 2+ Ca 2+ Cu 2+ Mg 2+ Mn 2+ Ni 2+ EDTA 7.8 10.9 18.8 8.7 14.0 18.6 HEDTA 6.2 8.5 17.6 7.0 10.7 17.0 DTPA 8.6 10.7 21.1 9.1 15.6 20.2 ピロイン酸 - - 6.2 - - - トリポリリン酸 - - 5.8 - - - トリメタリン酸 3.4 3.5 - 3.3 3.6 3.2 - 4.9 - - - - 金属イオン テトラメタリン酸 リン酸塩の安定度数は、EDTA、DTPA などと比較するとはるかに小さく、用途範囲が狭くなっています。 (2)炭酸カルシウム、キレート力(CaCO3C.V. mg/g) ダウ・ケミ法で測定した結果で、各サンプル 1g が水中のカルシウムイオンと結合する力を CaCO3 に換算した値を示します。 各種キレート剤 CaCO3C.V. (mg/g) クレワット 無水ピロリ トリポリリン テトラポリリ ヘキサメタリ 第一リン 第二リン 第三リン TAA ン酸ソーダ 酸ソーダ ン酸ソーダ ン酸ソーダ 酸ソーダ 酸ソーダ 酸ソーダ 342.0 68.5 145.0 148.0 170.0 3.3 5.0 1.7 14 Ⅳ クレワットの応用 キレート剤が実際大量に用いられる分野では、Ca+2、Mg+2 イオンの除去(金属イオン封鎖作用)を中とし、金属 障害を取除く事を目的としています。 (1)石鹸、洗浄剤工業関係 石鹸や洗浄剤を用いる時、クレワットを加える事は工業的に非常に重要であります。石鹸を硬水で用いれば、石 鹸中の高級脂肪酸と水中の硬度成分が反応して、水に不溶性の Ca、Mg 石鹸を生じます。これは石鹸の消費の みでなく、洗浄効果を大いに減退します。クレワットは、それらの金属イオンと水に可溶性塩を作り、金属イオンの 害を封鎖するだけでなく、洗浄効率を上げ石鹸の使用量をも少なく出来ます。 現在、この目的を持つものに、トリポリリン酸ソーダ(STPP)、ポリリン酸ナトリウム(SPP)が工業的に多く用いら れていますが、長時間、特に高温、アルカリ性の条件下では加水分解をして、オルトリン酸になり、金属イオンと不 溶性の塩を作ります。又、液体石鹸なども、その容器や、加える水から来る金属イオンのため、濁りを生じて商品 価値が下がりますが、このような時にはアルカリ性において、大変安定な金属塩を生成するクレワットを用いれば 優れた洗浄力を発揮します。 下記図は、クレワットと SPP の泡立ち効果を示していますが、Ca+2濃度の高い場合特にクレワットは優れています。 又、木綿を洗剤で洗った場合、金属石鹸 が繊維に沈着して、綿の灰分(金属成分) が 5%増えましたが、クレワットで洗浄した 場合、0.1%以下になったというデータもあり ます。 清涼飲料水の瓶やビール瓶は、一般にア ルカリ洗浄しますが、この時種々の金属イ オンの水酸化物が生じたり、ガラスより溶出 する炭酸、リン酸、ケイ酸イオンが金属イオ ンと水に不溶性の塩を作り、作業に障害を 与 え ま す 。 こ の 場 合 、 ク レ ワ ッ ト S2 、 DP80、GL、BM 、などを用いれば沈殿防 止が出来、洗浄効果を高めます。 EDTA、SPP の泡立ち効果(40℃)(8) 15 (2)繊維、染色関係 ①洗浄工程 天然繊維は、本来相当量の金属イオンを持っています。又、合成繊維は装置などから来る金属イオンを含有して います。それらの金属イオンは、以後の操作に非常に悪影響を及ぼします。この理由は洗浄工程で石鹸と金属イ オンが反応し、金属石鹸を生じ繊維内で沈着するためで、この防止にクレワット S2、N2、DP80 などを用いれば それらの弊害をなくす事が出来ます。 又、羊毛洗浄時に除去したラノリンは、クレワット処理を行なえば、金属イオンを含まず、上質の製品となります。 繊物は、精錬や染色の前にアルカリ処理を行ないます。(キャーボイリング、マーセル化処理)。 この際、使用水、苛性ソーダ、装置から来る鉄イオンが混入する事により、次工程の漂白工程で重大な支障をき たします。そのような障害をのぞく目的で、クレワット AM、BM、OH300、DP80 などを前処理時あるいは漂白時 に加えれば、鉄イオンを封鎖し、効力を発揮します。 ②漂白工程 本工程において、一般に過酸化水素が用いられますが、微量の金属イオン(特に、Fe、Cu、Mn)により著しく分解 が促進されます。このため漂白剤の使用量が増え、又まだら漂白の原因となるだけでなく、繊維素の酸化によるオ キシセルロース化を引き起こし、布の劣化原因となります。 この時、クレワット DP80、C6 を加えれば、過酸化水素の分解を防ぎ、更に金属イオンの害も防ぎます(9)(10)。 ③染色工程 染色時における不純金属イオンが存在すれば、染料は金属イオンと塩を作り、不溶性のレーキとして沈着するだ けでなく、染料本来の色が変化します。近年、イオン交換樹脂が普及していますが、イオン交換水を用いても、染 料中、繊維中の不純金属イオンの妨害を防ぐ事は出来ません。 この時、クレワット N2、S2、DP80 などを用いれば、下記のような反応が起こり、染色性を向上し、染料の浪費を 防ぎます。 M-染料+クレワット クレワット・M+染料 (M:金属イオン) 蛍光漂白の場合、とくに鉄などによる着色が生じやすく、クレワット DP80 とハイドロサルファイト、水酸化ナトリウ ムを併用して取除く事が出来ます。 (3)メッキ表面処理工業関係 金属面の塗装やメッキに金属表面処理は重要ですが、アルカリによる脱脂洗浄の場合、クレワット N2、S2、 DP80 などを用いれば、Mg や Ca のリン酸塩やケイ酸塩が表面に沈着するものを防ぐだけでなく、素地面への鉄 電着の防止に大変効果があり(11)、又、メッキ液の寿命を延ばす事も出来ます。一般的な処方で、クレワットにリン 酸塩、クレワット GL、シアン化ナトリウムを加えていますが、リン酸塩は濃アルカリ、高温で分解しますので、出来 るだけさけた方が望ましいです。 クレワットはプリント配線基板製造時に、基板の銅薄膜が高純度銅 EDTA 水溶液の化学還元により作られる際 に使用されております。この処理にはクレワットを大量に使用するため(50~100g/L)、経費節減、公害防止の ためクレワットの回収を行なう事があります。それには硫酸で pH を 2 に下げ、クレワットの溶解度を下げる事によ り、結晶を分離回収しています。 浸せきメッキでは、特に有効で、はがねに銅メッキをする場合、Cu(Ⅱ)-EDTA を用いれば、下式のようになり Fe(Ⅱ)-EDTA の状態になって、安定な溶解状態を保ちます。 16 〔Cu-EDTA〕-2 Cu+2+EDTA-4 Cu+2 +Fe Cu +Fe+2 Fe+2+EDTA-4 〔Fe-EDTA〕-2 又、電気メッキの際、電解液にクレワットを加えれば、メッキする金属面、電極面の洗浄の他に、電解質中の有効 イオン濃度を一定にし、電流効率を高める効果もあります。更に、キレート結合すれば、金属イオンの酸化還元電 位がいくぶん変化し、本来なら同時に折出する 2 種の金属イオンを別々に折出する事が出来、逆に別々に折出す る金属イオンを同時に折出させ、合金メッキに利用する事も可能です。(条件安定度定数の差を利用) メッキ液中の有機物を除去する場合、活性炭を添加し操作していますが、その際、クレワットを加える事により、吸 着効率を高め、又無機の不純金属をクレワットの金属錯体にし、活性炭で分離除去する事も可能であります(12)(13)。 (4)農水産関係 生物体が必要な金属を十分摂取出来ない場合、その生物体の生育障害が起こります。特に植物体ではこのよう な痕跡の金属が得られない場合、生育が衰え収穫が減り、はなはだしい場合には枯死します。植物が痕跡の必須 金属を利用出来なくなる原因として、下記の事が考えられます。 1) 問題の金属が周囲に存在しない場合。 2) 金属が存在していても、不溶性のため植物の根から吸収出来ない場合。 3) 共存金属の妨害のため、植物体が目的の金属を利用出来ない場合(きっ抗作用)。 水に不溶性金属塩を供給する事は、従来より行われてきましたが、多量の金属塩を一時に与えると薬害を起こし、 また中性付近で加水分解したり、土壌成分と反応して不溶性沈殿を生成する場合があります。 この場合、金属キレートの形で植物に供給すれば、常時低濃度レベルで金属イオンを植物体に与える事が可能 で、上記欠点をなくす事が出来ます。 クレワットの金属錯体は、土壌中の微生物による分解、又は化学的な分解も受けにくい性質をもっています。クレ ワット Fe は、鉄欠乏症の植物の治療剤として、微量キレート金属入りのクレワット 101 号は、葉面散布剤、礫耕 栽培、水耕栽培、モミガラくん炭育苗、ウレタン育苗に使用されています。又、エビの養殖等には、必須金属イオン 入りのクレワット 32 が用いられています。 なお、詳細については、農業、水産用パンフレットをご請求下さい。 (5)化粧品関係 クレワット N、T 等は、外原規準拠品であり、化粧品の安定剤としての用途に多く使用されています。 一般軟膏、防臭剤、コールドクリームは、ラノリンを高濃度に含んでいますが、クレワットを添加すれば、非常に滑 らかになり、酸化、腐敗、変色やケーキングからも保護します。又、ヘアートニック、ローション、液体シャンプーなど においても、原料に起因する微量金属イオンの沈殿を防止し、染料の変色をも防止します。コールドウエーブ液や 髪染め液は、Ca、Co、Mn、Cu、Fe 等金属が存在すると酸化をおこし変質しますが、クレワットを加えれば防止出 来ます。 マグネシウムークロロフイリン、銅ークロロフイリンを化粧品に入れると、微量の遊離金属イオンが触媒的に働いて 香料その他の成分を酸化分解します。このときクレワットの添加により金属イオンの触媒作用を防ぎ、品質の変化 を防止出来ます。 第四級アンモニウム塩は殺菌衛生剤、繊維助剤として広範囲に用いられていますが、重金属が含有すれば高濃 度の保存安定性が悪く、更に硬水で溶解した時、沈殿をおこしたり、使用する装置に鈍い色の膜を作ったりします。 17 マグネシウム、バリウム、ニッケル、アルミニウム、錫、銅、鉛、亜鉛、鉄などの金属は第四級アンモニウムと結合し て殺菌作用を減じます。このような問題を解決するのに微量のクレワットを混入すれば効果を発揮します。 下図は、クレワットを使用すれば、植物油のパーオキシド価が激減する事を示しております。 EDTA の共存する場合の大豆油の酸化的安定度 キレート剤 EDTA 濃 度 パーオキシド価(8hr. 100℃) 3+ 2+ 対 照 Fe (0.3ppm) Cu (0.1ppm) 0.01 7.0 - 28 0.00 56.0 - 28 0.01 - 2.4 21 0.00 - 64.0 21 又、アスコルビン酸の自動酸化は、 Cu+2 イオンの共存によって著しく促進され ます。従って、EDTA を加えれば、右図の ように Cu+2イオンを不活性化する事によ りアスコルビン酸の酸化速度を減少させ る事が出来ます(14)。 ハイドロサルファイトは染色時における 繊維の漂白、写真の現像液等に使用さ れる還元剤ですが、鉄、亜鉛などの重金 属により分解されやすいためクレワットを 用いれば分解防止出来ます。 (6)医療関係 近年、重金属汚染がすすみ、これが生体内に侵入であります。又、放射性同位元素が生体内に侵入し沈着する と、長期間にわたり内部から生体を照射し、有害な影響を与える事もよく知られています。これらの重金属や放射 性同位元素が有害な作用を示したり、生体内に沈着するのは、単純なイオンとして存在しているためであります。 クレワットを与えて重金属をキレート化すれば、代謝も変化し、解毒又は排泄促進の作用が得られます。 クレワットは、解毒剤として用いられる条件として、下記の点で優れています。 ⒜ クレワットが、目的の金属と安定なキレートを生成する。 ⒝ クレワット Ca として添加するため、生理 pH での Ca 結合力が比較的少ない。 ⒞ クレワットが目的の金属と生体内で接する事が出来る。 ⒟ 組織内で、キレート反応を妨害する他の化学反応がない。 ⒠ 生じた、クレワット金属キレートは排泄されやすい。 ⒡ 一般的毒性が低い。 ⒢ 薬品安定性が良く、調整しやすく、又、安価である。 18 クレワットによる治療が最も成功し、用いられているのに鉛中毒があり、クレワット Ca の形で静注すれば、鉛は生 体内で安定度の高い、EDTA-Pb になり、これが生理的に不活性になり、すみやかに排泄されます。又、生体が 安全に利用及び貯蔵し得る限度を超えて過剰の鉄を吸収する場合があります。これに対して、クレワットを用いて 治療した場合、静注により鉄の排泄が増加する事が分かっています。 放射性同位元素の解毒において成功しているのは Pb であり、若干の人体に関しての報告もあります。これらは 事故により Pb が体内に入った場合に、クレワットを静注すれば、直ちに尿中放射能が飛躍的に増加し、Pb が体 外に排泄された事を顕著に示します。 その他、血液凝固の防止剤(15)、尿石の除去剤、医薬品の安定剤及び精製、ハブの中和解毒剤(16)、 クレワットの安定度定数が Ca より大きい有害金属物質の体外排泄促進剤、ガンの治療(17)、造影剤など医学にお けるクレワットの用途は数多くあります。 (7)合成樹脂、ゴム関係 従来、ブタジエンースチレンレドックス重合に、ピロリン酸鉄を用いていましたが、クレワット Fe を用いれば、更に酸 化に安定で、重合時間は短縮でき、又均一な重合を行ないます。更にラテックス中には微量の金属が含まれてお り、酸化や老化を進める原因となるので、クレワットを微量加えれば保存が良くなります。 又、ゴムラテックス中には、石鹸、脂肪分、アミノ酸などを含有していますが、クレワットを添加すれば、微量金属イ オンの障害を防止し、腐敗、凝固、沈殿を防止出来ます。 ポリアクリロニトリルは、亜鉛やカルシウム等の金属を含んでいるため、繊維が変質し摩擦堅牢度が悪く、染着性 が劣ります。この時、クレワット溶液で数分洗浄すれば、有害な金属を除去します。 又、ナイロンはそれ自身が持っている窒素基のため、金属を吸着し変色いやすいですが、この場合もクレワット液 に浸漬するだけで効果があります。ラテックスペイントやカゼインペイントにもクレワットを添加して、液の安定性を 上げる事が出来ます。 ブタジエン系合成ゴム製造のレドックス重合に過酸化物 - Fe(Ⅱ)系の触媒が使われますが、クレワットなどを添 加すると、Fe(Ⅱ)、Fe(Ⅲ)の濃度を調節し重合を円滑化し、又鉄の沈殿を防止します(18)。 19 ☆ 代表的な乳化重合 SBR の重合処方例 (単位:重量部) 金属イオン ホットラバー コールドラバー ブタジエン 75 71 スチレン 25 29 水 180 200 脂肪酸セッケン 4.50 - - 4.50 0.28 0.18 - 0.50 0.30 - p-メンタンヒドロペルオキシド - 0.08 FeSO4・7H2O - 0.03 EDTA 4Na 塩(クレワット S2) - 0.05 - 0.08 ロジン酸セッケン t-ドデシルメルカプタン Na3PO4・10H2O K2S2O8 ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート 合成樹脂及びゴム等に相溶性の良いテークラン DO を開発いたしました。 テークラン DO は、合成樹脂あるいはゴムへの練り込みも可能です。 (8) 鉱業関係 浮遊選鉱は、特別の鉱粉のみを界面活性剤と結合させ、その表面を疎水性とする事により、空気泡と一緒に浮上 させる操作であります。しかし金属イオンが存在すると残留分(主に珪酸塩)の表面も活性化され、共に浮上して分 離を悪くします。この金属イオンの封鎖には、毒性の強いシアン化合物のかわりに、クレワットを用いた方が有効で あります。シアン化ナトリウムを用いた場合に得られた銅の純度が、7.1%であったものが、同じ条件で、クレワッ トを用いたものでは 23.5%向上したというデータもあります。 又、クレー中に含有される鉄イオンの除去に、クレワットを用いれば、上質のクレーを得る事が出来、珪石中の鉄 イオンの除去も、同様な効果が得られます。 (9) 紙、パルプ関係 繊維素は製紙過程中によく金属イオンを吸着しますが、このため白紙は変色したり、漂白酸化剤は分解したりして 紙にとって有害であります。特に金属含有の紙がバターや油脂の包装に用いられるときは、食料品を損ず事があ ります。これらはクレワット K:100ppm をビータ中に加えることによって繊維素から完全に金属イオンが除かれ悪 影響をなくします。又、砕木パルプの漂白時やパルプを製紙する際ビータにクレワットを添加すれば白度を増加しま す。一般にパルプ ton 当り 50g の添加量です。又、繊維素には硬度成分を多量含むため、蒸解槽等にスケール の付着が多くありますが、クレワットを添加して重金属を可溶化する事により作業効率を上げることが出来ます。 サイズ剤として用いるロジンは、金属イオンを含有するだけでなく、硬度成分のため水質によって分散性の悪化を きたすので、クレワットの添加で防止出来ます。 パルプは貯蔵中に酸化されて赤色や灰黄色に変色します。この原因として、酸化触媒としての重金属イオンの存 在が考えられるため、クレワットの添加で変色を防止出来ます。 パルプ製造用のグラインダー用シャワー水に、ton 当り 1~2kg のクレワット S2 を添加すれば製品の白度を向上 20 し、ピッチ汚染を防止する事が出来ます。又、木材パルプのスラリー処理の際、クレワットを 2.5%用いればコンデ ンサー製造用紙の比抵抗を増す事が出来ます(19)。尚詳細については、別冊パンフレット(クレワット製紙への応用) に記載しておりますので弊社宛にご請求下さい。 (10) スケール洗浄 工業用水を用いる場合、水質の悪い水を用いる事が多く、特に最近、重金属汚染などで水質が悪くなっています。 これらの水を用いた場合、水中の炭酸塩と重金属が結合し、水に不溶性の沈殿を生じ、後の作業に支障をきたし ます。特に問題となっているのは、熱交換器、クーリングタワーのスケール生成、製品の汚染などで、従来は酸洗 を行ってきましたが、クレワットは、アルカリ性で毒性なく使用出来ますので、多方面に用いられています。 洗浄剤代表的組成例(20) *クレワット TAA *イビット 30B 250 部 1部 *アンモニア水(25%) * -ソルビン酸 115 部 0.5 部 運転状況 この組成の洗浄剤を冷却水に対し約 50%濃度で 85℃、6 時間洗浄を行います。 イオン交換樹脂の鉄皮膜の除鉄剤として次亜塩素酸ソーダを用いていましたが、毒性、亜臭の問題がありました。 クレワットを用いればこれらの問題を解決出来ます(21)。 中性タイプの洗浄剤として特別に配合調製したシェリパークは、即効性で洗浄効果を発揮します。 しかも中性ですから材質を保護すると共に、安全性、作業性に優れ、廃液を中和する手間もかかりません。 詳細については、別冊パンフレットをご請求下さい。 < 炭酸カルシウム系スケール洗浄剤 シェリーパーク Y > いろいろな配合水系統がありますが、とりわけ熱交換系統の配管にはスケールが付着して伝熱効果・冷却効果を 著しく阻害しています。このスケールは水の濃縮や金属表面の腐食、水の中に含まれる無機物質などによって、金 属酸化物スケールやケイ酸スケール、炭酸カルシウムのような難溶性無機物質を生成して配管表面に付着します。 配管内に付着したスケールは極端に成長しますと、水の流れを止めてしまうこともあります。このためスケール除去 作業は欠かせない重要な仕事のひとつとなっています。 炭酸カルシウム系のスケールは、主に空気中の炭酸ガスが水に溶け込み、水中のカルシウムイオンと結合して生 成されます。シェリーパーク Y は、この炭酸カルシウムを主成分としたスケールに浸透してスケールを崩壊および溶 解させて除去することを目的としています。 < 硫酸カルシウム系スケール洗浄剤 シェリパーク C > シェリパーク C は、逆浸透式淡水化装置などに付着する硫酸カルシウムを主成分にしたスケールや、石膏系鋳型 を使用する鋳造物に付着した石膏に浸透して崩壊および溶解させて除去する事を目的にしています。 21 (11) 放射能除染関係 東大清水外科の研究報告によると、ビキニの灰で汚染された患者の頭髪、及び着用衣類の放射性物質の除去に 各種溶媒に対する溶け方及び Padioautography から灰の性質を検討した結果、クレワット T:4 部、クレワット N: 1 部の割合で混入し、約 pH 9.3 にしたものの 0.3%水溶液が最大の放射性物質の除去能力を示しました。このク レワットは人体の皮膚に副作用を与えないので、一部ビキニ被災患者に使用し、かなりの効果を示しました。 各種の洗剤を用い軍手片 0.5mg(4900~7400c.p.m)を 0.3%各液 20cc に浸漬し洗浄効率を比較すると次 のような結果が得られました。 右記中 30 分より長い浸漬ではクレワットが他の 溶剤に比較してはるかに優秀な放射性物質の汚 染除去効果を示しました。米国に於ける放射性物 質を取扱う工場、病院及び実験室での被服、机、 床などの除染にもクレワット N 及びクレワット T が 添加され使用されています。 又、和達等(22)は、綿布における RI 汚染の除染ではキレート安定度定数の大きいキレート剤、とくに EDTA は、 下の図に示すように除去能が高く、pH が高い程効果が顕著であると述べています。 今後、原子力発電の発展により汚染が増えるにつれ、除染剤としてクレワットの使用量が増える事が予想されます。 22 Ⅴ クレワットを定量する方法 錯塩を作らないクレワットがどの程度残っているかを知る方法は、クレワット錯体の金属が Ca 及び Mg の場合に は硬度測定法で逆算できます。クレワット錯体が Ca 及び Mg 以外の金属である時、錯塩となったクレワット及び錯 塩になっていないクレワットの全量を測定するには次の方法があります。 (1) ビスマス定量法 クレワット錯塩に Bi を加えると錯体となっている金属と Bi が置換えする事を利用しています。 ① 0.01M ビスマス標準液 硝酸ビスマス結晶(Bi(NO3)35H2O3):4.85g を過塩素酸(60%):6ml と共に水に溶解して加熱蒸発し、 過塩素酸の白煙を約 5 分間発生させた後、全量 1L とする。 〈標定法〉 0.01M クレワット N 標準液:25ml をとり、pH3.0 モノクロル酢酸ーモノクロル酢酸ナトリウム緩衝液: 5ml、XO 指示薬:2~3 滴を加えて、未標定の 0.01M ビスマス標準液で滴定する。終点は黄→赤。 ② pH3.0 モノクロロ酢酸ナトリウム緩衝液 モノクロロ酢酸 ClCH2COOH:47.5g を水に溶かし、水酸化ナトリウム溶液(30%)にて pH を 3.0 に合わせ、 水を加えて 250ml とする。 ③ pH10.7 アンモニア性塩化アンモニウム緩衝液 塩化アンモニウム(試薬特級):67.5g を蒸留水に溶かし 28%アンモニア水:570ml を加え、水にて 1000ml とします。 ④ キシレノールオレンジ指示薬 キシレノールオレンジ指示薬:0.1g を水にとかして 100ml とします。 ⑤ 0.01M クレワットN標準液 クレワット N:3.72g を蒸留水に溶かして 1000ml とします。 試料溶液25mlを正確に三角フラスコにとり、必要ならば NaOH 又は HCl にて pH を中性近辺とし、pH3.0 モノク ロル酢酸ナトリウム緩衝液:5ml、キシレノールオレンジ指示薬:2~3 滴を加え、0.01M ビスマス標準溶液で滴定し ます。終点において黄色が赤色を呈します。消費されたビスマス標準溶液の量から対応するクレワット N の量を計 算により求めてください。 (注) a) 0.01M クレワット N は亜鉛標準液によって検定しておきます。 b) pH を調整する際、水酸化物の沈殿を生じない様に注意する必要があります。 (2) 呈色確認法 クレワットが 1%以上添加されている場合、次の方法が簡単であります。 試料液:2ml をとり、1N 塩酸:0.1ml を加えて pH2 以下となり、0.5%重クロム酸カリ液:2ml と 0.2N 亜砒酸溶液: 2ml 添加、沸騰水中で過熱すると紫色を呈します。 23 Ⅵ クレワットNによる硬度測定 水の硬度測定法は従来重量分析又は石鹸法によるものでありましたが、操作の煩雑さと誤差の多い事が欠点で あり、これに代り正確かつ簡便な分析法を発見する事は多年の研究題目でありました。ところが 1947 年スイスの チューリッヒ大学のシュヴァルツェンバッハ教授がポリアミノカルボン酸とアルカリ土類金属及び他の金属イオンと の錯化合物生成に関する研究を発表後、この領域に於ける研究が非常に発達し、その結果、この原理による新し い硬度測定法は勿論のこと、広く一般分析への応用が提案されました。EDTA 試薬を使用する硬度測定法は従来 の方法より正確でかつ簡単なため、各国で採用されるに至っています。 〔クレワット N の性質〕 クレワット N は Disodium ethylenediaminetetraacetate なる化学名を有する無色無臭の結晶性粉末で 二分子の結晶水をもち、水に可溶、有機溶媒にほとんど不溶であります。 〔硬度測定の原理〕 クレワット N は中性或いはアルカリ性水溶液中に、存在する Ca++や Mg++と定量的に極めて安定な錯化合物を 形成します。 この場合 Ca++と Mg++との間には、クレワットとの結合に選択性があって Ca++が Mg++より優先的にクレワット と結合します。即ち Ca++全量がクレワットと結合した後、はじめて Mg++がクレワット錯化合物を作ります。従って クレワットの結合能力より過剰の Mg++が存在するとこれはクレワットと結合せず、エリオクロムブラックT指示薬と 反応してはじめてブドウ酒色を呈します。逆にクレワットが過剰に存在すると指示薬より Mg++を奪うため、赤色は 消えて青色を呈します。この変色により終点を決定します。 硬度の測定法 〔全硬度測定法〕 (1) 試薬の調整 ① 緩衝液 :特級塩化アンモン(NH4Cl):67.5g を特級 28%アンモニア水(NH4OH):570ml に 溶解し蒸留水で稀釈して全量を 1000ml とします。 本液はよく密栓して冷暗所に貯えます。 24 ② 硬度測定用指示薬:メチルアルコール:100ml 中に攪拌しながら塩酸ヒドロキシルアミン:4.5g を加 える。完全に溶解後エリオクロムブラック T:0.5g を入れて約30分間攪拌します。本液はよく密着し て日光の直射を避けて保存すれば約 6 ヶ月間有効です。 ③ 硬度標準液 :110℃で恒量となるまで乾燥した特級分析用炭酸カルシウム:1.00g を正確に秤取し 少量の塩酸溶解、約 500ml の水を加え煮沸して炭酸ガスを出し、蒸留水で稀釈して特級苛性ソーダにて中和後、 正確に全量を 1000ml とします。本液は 1ml=1mgCaCO3=0.56mgCaO に相当します。 ④ 硬度測定用滴定液;クレワット N 約 4g と塩化マグネシウム(MgCl22・6H2O)0.1g とを蒸留水に溶 解し全量を 1000ml とします。本液の力価の検定は前記の硬度標準液で行います。 ⑤ 滴定液の力価検定:硬度標準液 25ml を 250ml の三角フラスコに取り、蒸留水を加えて 50ml とし、 これに 1ml の緩衝液と 3 滴ないし 4 滴の硬度測定用指示薬とトリエタノールアミン:2~3 滴を加え、 よくふりまぜながら硬度測定用液を赤色から青色に変化するまで滴下します。この滴定に要した滴定 数T(ml 数)から次の式によって力価(Factor)を算出します。 (2) 全硬度の測定 試料水(検水)100ml を 250ml の三角フラスコに取り必要に応じて、NaOH 又は HCl にて中和し、2ml の緩衝液、 トリエタノールアミン:2~3 滴を加えて硬度測定用指示薬 3 滴ないし 4 滴を滴下しすると硬度が存在すれば試料水は 赤色を呈します。これをよくふりまぜながら硬度測定用滴定液を滴下し、赤色が完全に青色に変化する時を終点と します。この滴定に要した T(ml 数)より次の式により全硬度を算出します。硬度測定用滴下液を 1ml=0.5mg CaO に調整した場合は滴定ml数が直ちにドイツ硬度を示しますが、1ml=1mgCaCO3 に調整した時は滴定 ml 数 を 10 倍にすれば ppmCaCO3 硬度を示します。 尚、ppmCaCO3 硬度に 0.056 を乗ずればドイツ硬度に換算でき、ドイツ硬度に 17.86 を乗ずれば ppmCaCO3 硬度に換算出来ます。 〔簡易硬度測定法〕 (1) 試薬の調整 クレワット N:0.42g を蒸留水に溶解して全量 1000ml とします。本液 8ml はドイツ硬度 1°の水:50ml に相当 します。 (2) 操作法 50ml のシリンダーに上記クレワット N 液:8ml を取り前述の硬度測定用指示液 3~4 滴を滴下し緩衝液を加え て 10ml とします。液は青色を呈します。試料水を少量ずつふりまぜながら赤色を呈する迄加え、試料水の表面 の目盛りを読みます。次の式によって全硬度を算出します。 25 〔例〕30ml の目盛で完全に赤色に変化したりすると、 〔注〕硬度 1 度以下の場合はクレワット N 液:10 倍に稀釈して上記と同様に操作します。 〔永久硬度及び一時硬度測定法〕 試料水:50ml を 250ml の三角フラスコに取り蒸発する水を蒸留水で補いながら 30 分間沸騰し冷後濾過し、 濾液について総硬度の測定の操作を同様にして行います。全硬度と永久硬度との差を一時硬度とします。 〔全硬度精密測定法〕(逆滴法) (1)試薬の調整 ①クレワット N 溶液 :クレワット N 10g に蒸留水を加えて 1000ml とします。 塩化マグネシウム溶液 :特級塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O 分子量 203.32)7.5g に蒸留水 を加えて 1000ml とします。 ②標準亜鉛溶液 :亜鉛(標準試薬)3.269g(亜鉛の表面が酸化しているおそれのある場は、6N 塩酸、 水、アセトンで順次洗い、110℃で 5 分間乾燥したもの)に水約:50ml、塩酸(2+1):20ml 臭素水:5 滴を 加え加熱溶解させます。煮沸して臭素を除いたのち冷却。水を加えて 100ml とします。 (2)力価の測定 ①塩化マグネシウム溶液の力価測定 250ml のフラスコにクレワット N 溶液:50ml をホールピペットに秤取しエリオクロムブラック T 指示薬:4 滴 を入れると赤くなります。これに緩衝液5mlを加えると青くなります。塩化マゲネシウム溶液をビューレットより 滴下して、赤色を呈する点を以って終点とし、消費された ml 数から、力価(F)を求めます。 ②クレワット N 溶液のモル濃度係数の測定 クレワット N 溶液:50ml を正確にピペットで秤取し、250ml のフラスコに入れます。これに蒸留水:50ml を入れ、緩衝液5ml指示薬:4~5 滴を加え 亜鉛標準溶液で滴定し、赤変した点を終点として消費 ml を読みます。クレワット N 溶液のモル濃度係数〔M〕は次式で計算されます。 〔注〕 M はクレワット N 溶液 1000ml 中にクレワット N が何モル溶存するかを示す。 26 (3)全硬度の測定 試飲水(検水)を 100ml ホールピペットで秤取しこれにクレワット N 溶液:40ml をピペットで秤取して加え、 次に指示薬:3~4 滴を入れると赤くなります。これに緩衝溶液を 10ml 入れると青くなります。 これを塩化マグネシウム溶液で滴定し、赤変した点を終点として消費ml数を読みます。 (4)共存イオンの影響 検水中に Ca,Mg 以外に、Fe や Al があっても 20ppm 程度迄は影響を与えません。これらのイオンが多量で あって変色が不十分の時には 1%Na2S を数滴加えるか、又は 3%NaCN 数滴を加えてこれらの共存イオン の妨害を除去しておけば上記方法通りに硬度を滴定出来ます。Zn、Ba,Cd の共存する場合はそれらの共 存分だけ高い硬度が得られます。 〔Ca 硬度直接測定法〕 (1-(2-ヒドロキシ-4-スルホ-1-ナフチルアゾ)-2 ヒドロキシ-3-ナフトエ酸) (1)試薬の調整 ①緩衝液 : 8N の水酸化カリウム溶液を作ります。 ②硬度測定用指示薬 : ドータイト NN 稀釈粉末を使用します。 ③硬度測定用滴定液 : クレワット N:約 4g を蒸留水に溶解し全量を 1000ml とします。 ④滴定後の力価調整 : 前記硬度標準液:25ml を正確に秤取しこれに緩衝液約1mlを加え、更に ドータイト NN 稀釈粉末:約 0.1g を加えて攪拌すると溶液は赤色に呈色します。これを滴定 液で滴定すると約 25ml 付近で青色になります。この時を終点として ml 数を読みますが、 25ml より低い場合は適当量の蒸留水を加えて 25ml で変色を起こすように調整すると、 この滴定液は 1ml = 1mgCaCO3 になります。 尚、エリオクロムブラック T 試薬の場合とことなり滴定液にはマグネシウムを含まぬ方が 望ましいです。 (2)カルシウム硬度の測定 検水 100ml をとり、必要ならば NaOH 又は HCl にて中性としたのち緩衝液:約 4ml を加え、更にドータイト MX 試薬を少量(約 0.2g)加えてよく混ぜると溶液は赤色となります。滴定液で滴定しこの色が青色となる時を 終点とします。所要滴定ml数を 20 倍すると、米国硬度(CaCO3 含量を ppm で示す)となり、更にこれに 0.056 を乗ずればドイツ硬度に換算できます。 (3)備 考 簡易硬度測定法は前述と同様に行えます。即ち、クレワット N 液:8ml に緩衝液及び指示薬を加えて 10ml と すると液はピンク色となります。このメスシリンダーに検水を加えてブドウ酒色を呈したその目盛を読みグラフで 硬度を求めます。 〔鉄の測定法〕 検水 100ml をホールピペットにてビーカーにとり、アンモニア水(1+1)を加えて中性近辺とし、これに塩酸(1+2) を 6ml 加えて加熱し、液量を約 60~75ml とする。ついてこれを室温冷却し、100ml のメスフラスコに移しいれる。 これに塩酸ヒドロキシルアミン溶液(100W /V%)1ml、O-フェナトロリン溶液(0.1W/V%)5ml、酢酸アンモニウム 27 溶液(50W /V%)10ml をそれぞれ加え、水を標線まで加えて、振りまぜて約 20 分間放置。その一部を吸収セル 10mm に移し、波長 510nm でその吸光度を測定し、あらかじめ作成し検量線から鉄量を求め、鉄の ppm を算出 する。全操作にわたって空試験を行ない結果を補正する。 28 【 文 献 】 (1)Pfeiffer P.Simon, H : B, 75 (1943) (18)浅井 : 日本ゴム協会誌 VOL 50, 76 , 847 (1943) 12 P67 (1977) (2)Schwarzenbach, G,et al : Helv., 28,828 (1945) (19)日本特許 : 7338329 (1975) (3)Varela,Sanehez : Arch.inst. farmacol.exptl.(Madrid) (20)日本公開特許 : 51 - 29322 (21)日本公開特許 : 42 - 2686 4,5 (1952) (4)Proescher : Proc.Soc.Expl.Biol.Med,76,619 (1951) 37 - 7605 (22)和達 等 : JAERI 1165 (5)新潟県衛生研究所業務報告 (6)柴田章次 : Ca-EDTA の毒性に関する慢性実験. (7)Oser,B,L : Toxicol. Appl.Pharmacol,5,142 (63) (8)上野景平 : 金属キレートⅢ P97 (9)生田 直 : 「過酸化水素漂白と金属イオン封鎖剤の利用」 (10)三菱化成工業㈱ : 「バルプ漂白における SATA の使用に ついて」 S44 年 3 月 (11)榎本、中川等 : 金属表面技術 VOL23, No.5 P1~(1972) (12)九州工業技術試験所報告 : No.22,P59 (1979) (13)日本公開特許 : 51 - 149133 (14)Chabereks : “Organic Sequestering Agents” P358 (15)菊池弘実 : 臨床検査 12, 64 (68) (16)薬事日報 : S35 年 8 月 6 日 (17)Furst, A : “Chemistry of Chelation in Cancer” (1963) 29 P19 (1968) キ レ ー ト 剤 の 適 用 例 表 業 種 別 石鹸・洗剤 化粧品 洗浄剤 紙・パルプ 金属表面処理剤 用 途 別 使用されるクレワットの種類 化粧石鹸 T、N、TAA、T- 48、OH35、OH300 合成洗剤 N2、TAA、S2、PC-C3、DP80 洗瓶剤 S2、GL、T- 48 酸化防止剤 変色剤 T、N、TAA、T- 48、OH35、OH300、DP80 業務用洗剤 S2、N2、TAA、T- 48、PC-C3、シェリパーク 水処理剤 S2、N2、TAA、T- 48、PC-C3、2H、シェリパーク 前処理工程 N2、S2、PC - C3 漂白処理工程 DP80、OH35 脱脂工程 BM、AM、DP80、OH35、GL、S2 メッキ液・安定剤 N2、TAA、S2、OH300、DP80、GL、3K メッキの剥離剤 N2、DP80 精練工程 繊 維 漂白工程 S2、K、DP80、C6、アクロマーシリーズ 染色工程 合成樹脂 農業・水産 その他 合成ゴム:安定剤 S2、Fe ラテックス:安定剤 S2、J-100、テークラン DO 葉面・水耕栽培肥料 101 号、各種金属塩 海産クロレラ:要素補給剤 32、各種金属塩 希土類金属精製 TAA、N2、DP80、OH300 排ガス処理 N2、S2、Fe 30 機能化学品本部 (大阪) 〒550-8668 大阪市西区新町 1-1-17 Tel 06-6535-2542 Fax 06-6535-2544 (東京) 〒103-8355 東京都中央区日本橋小舟町 5-1 Tel 03-3660-5901 Fax 03-3665-3451 31 130430 32
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