片頭痛の予防療法 もし,あなたの片頭痛がより高頻度に

 片頭痛の予防療法
もし,あなたの片頭痛がより高頻度になったら,もし,あなたが最適な急性期治療にもかかわらず,
片頭痛に苦しんでいるなら,もし,あなたがより多くの日数,頭痛に悩まされているなら,あるいは,も
しあなたの片頭痛が連日あるいは連日に近い状態になったなら,予防療法を考慮するときです.もし
,あなたの片頭痛が“慢性化”し,連日あるいは連日に近い状態になった場合,反復性片頭痛への回
帰に奏効する予防療法を考慮するときです.
急性期治療と同様に,片頭痛の予防療法は薬物療法だけでなく非薬物療法も含まれるかもしれま
せん.非薬物療法の実例として,有酸素運動,片頭痛発作の“引き金”回避,良眠の維持励行が含ま
れます.急性期片頭痛は,非薬物療法の介入に反応するかもしれませんが,慢性片頭痛は典型的
には,急性期治療と予防療法の両者を必要とします.効果的な予防療法を選択する前に留意すべき
治療上の問題点がいくつかあります.
・十分な量の薬物療法を十分な期間行いなさい.
多くの患者がクリニックへ来院し,彼らが試した片頭痛の予防療法の“すべて”がうまくいかなかっ
たと報告します.しかしながら,片頭痛予防薬について尋ねると,患者が処方された薬剤をごく少量,
短期間しか内服していなかったり,副作用のため,治療を中断していたことがしばしば判明します.
片頭痛の予防に有効とされる薬剤が,何らかの臨床的にとらえられる有効性を発揮するには治療
量で相当の期間を要するかもしれません.そして,症例の中には薬剤の副作用を最小限にするため
,少量で始め,数週間かけて治療用量まで漸増する必要があります.これは連日ないしはそれに近
い頻度で頭痛を経験する患者にとって特に辛い期間になります.片頭痛の予防療法において,50%
以上の有意な改善をもたらす治療は現在のところ存在しません.そして,担当医により処方された治
療薬が有効であるか,前もって予見するのは困難です.というわけで,片頭痛の予防を意図した薬物
治療は,経験に基づく試行錯誤であり,患者も医師も同様にあとで挫折感を抱くプロセスなのです.
・失敗を我慢する必要はない.
もし,あなたが十分な量の片頭痛予防薬を十分な期間内服し,有意な改善が実感できなければ,
それはあなたにとって,誤った用量か誤った薬剤のどちらかです.薬剤変更のときです.担当医に相
談しなさい.
・頭痛発作を積極的に治療し“突破”しなさい.
急性期片頭痛の積極的治療もしくは強化は,続いて起こる発作の可能性を減らし,慢性片頭痛を
緩和させ,反復性片頭痛へ回帰させることに寄与するでしょう.頭痛は頭痛を生じさせる傾向があり
ます.もし,あなたが頭痛の頻度を減らしたり,あるいは頭痛の慢性化過程を転換させようとするなら
ば,重度片頭痛の持続発作はその努力の妨げとなるでしょう.早期治療を忘れてはいけません.
・症状に関連した(急性期)治療薬の乱用は避けなさい.
症状に関連した薬物乱用が慢性化を助長し,薬物乱用の中止が臨床的改善をもたらすことを示 す確固たる科学的根拠が存在します.単一成分の鎮痛薬を月に 15 日以内に,実質的な急性期片頭痛
治療の処方薬は月 10 日以内に制限しなさい.急性期片頭痛に対して使用可能なすべての薬剤の中で
,NSAIDs は薬物乱用頭痛を招く可能性が最も低いです.
・慢性的に期限不定で片頭痛予防薬を使用する必要はめったにありません.
多くの患者が 6 か月を超え 1 年に達するような期間,予防薬に関する慢性的治療を必要としないでし
ょう.予防療法の目標は,最小限の副作用の代償を払って,“頭痛のない状態もしくはそれに準じる状
態”に達することです.1 度あなたがその地点に到達し,4~6 か月間その場に留まれば,予防薬を漸減
することが可能で,数カ月~数年の間,再度そのような治療を必要としないでしょう.
あなたの頭痛管理改善のための“すべき”チェックリスト
1. 有酸素運動を始めなさい(そして継続しなさい).
2. 注意深く頭痛ダイアリーを継続しなさい.
3. 良眠を維持しなさい.
4. バランスのよい食事を摂りなさい.
5. 急性期の片頭痛発作を早期に積極的に治療しなさい.
6. 薬物を乱用してはいけません.
7. もし,予防療法が必要ならば,効果的な治療薬を適切な機会に使用しなさい.
8. もし,慢性的な不眠,不安,抑うつもしくは他の片頭痛の“共存症”に苦しむのならば,その状況に対
する治療を求めなさい.
9. 定期的に個人的な休養やストレス軽減のための時間を取っておきなさい.
10. あなたの家族,友人,地域に戻りなさない.たとえ,頭痛がどんなにひどくとも,あなたの周りの世界
に積極的に携わることができれば,頭痛に対し,より効果的に対処できるでしょう.
John F. Rothrock, MD
Editor-in-Chief, Headache
Professor and Vice Chair
Director, Headache Treatment and Research Program
University of Alabama
Birmingham, AL, USA
Translated by
Yuji Kato, MD, PhD
Assistant Professor
Department of Neurology and Cerebrovascular Medicine,
Saitama International Medical Center,
Saitama Medical University