~白谷よもやま話~ 【 第40回 鰻の柴木漁 】 鰻やメジ(アナゴ)漁と言えば、昔から「ウゲ」漁に決まっていました。「ウゲ」とは、寿司を巻く 時の簀(す)のように竹ヒゴ(竹を幅3㎜ほどに細く削ったもの)を簀に編んだものを筒状(径12㎝、 長さ60㎝程度)に丸めて、タケノコ形にします。タケノコの根っこに当たる部分の中側に、鰻の入る 口となる漏斗型の竹簀をはめ込みます。タケノコ形の頭のところは全部簀編みにせず、径4~5㎝の輪 を頭からはめて口を締めます。鰻を出すときは、その輪を外して出します。 漁場に設置するときは、ウゲの中に鰻の好物である鰯など小魚を入れます。細いロープに7~8m位 の間隔でウゲ1個を付けて、夕方に船のエンジンをスローにして投入して行きます。そして夜中に引き 上げます。設置する時間帯は、鰻が餌を食べに動き出す夕方を見込んでのようでした。以上がウゲ漁の 大まかな様子でした。 さて、本題の柴木漁は、鰻漁の元祖だったように聞いていましたが、本当のところは分かりません。 鰻の習性を利用した漁であることは、ウゲ漁も同様であります。この柴木漁に使用する柴木には、椎、 樫、モチ等の枝葉の密なものが良いとされていました。枝葉の長さは70~80㎝ほどのものを10本 前後、適当な束厚に束ねて、吊り下げたときに束が水平になるように縄を結んでおきます。 漁場設置の時は、道縄に15m位の間隔で付けて沈めていきます。漁具として大事な道具は、大タモ (魚をすくい上げる網)であります。柴木の束が入るほどのタモは大きくて軽いものが必要です。その ため、木の枝を利用して作ったものが使われていました。 使用する柴木束の数も30~40束を一連としていたように覚えています。見廻り・引き上げの時間 は、午前中も朝のうちが良いとされていました。その理由として、鰻が夜、餌を取りに動き回って、朝 になり柴木の束に入り眠る、そのときに引き上げるのだと教えられていました。 引き上げる時は、できるだけ静かにロープ(縄)にショックを与えないように、ゆっくり静かに引き 上げます。しかし、鰻が眠りから覚めて逃げることがしばしばありました。柴木束が水面まで来た所で、 大タモを持って柴木共にすくい入れます。タモに入った柴木束を大きく揺らして、束の内で眠っている 鰻や蟹、海老、小魚などをタモの中に落とします。 色々と入っている時、何も入っていない時とありましたが、原始的な楽しい漁でありました。 原始的な鰻の漁と言えば、竹筒漁もありました。竹の内径3~4㎝位のものを、長さ、50~60㎝ 位に切り、片方は節止めにして中間の節を綺麗に抜いて鰻が入り易くします。その竹を3~4本一束に 束ねます。竹束の引手縄は、竹筒の口の方が上になるように取り付けます。 漁場に設置する方法は柴木漁と同様でありますが、見廻り・引き上げの時は、竹筒束を船内に取込み、 カンコ(船体の中の魚の生かし場)の中の鰻籠に水共に流し込みます。鰻がいるか、いないかは、竹束 の水を籠に流してからのお楽しみということになります。2~3本同時に出ることもありましたが、出 ない時が多かったように思います。小魚や海老なども獲れて、楽しむことができました。 〔26. 7 鈴木 信夫〕
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