ー インドネシア ー 「日系企業から見た最新の投資環境」

ー インドネシア ー
「日系企業から見た最新の投資環境」
2015年5月
インドネシア投資調整庁・三菱東京UFJ銀行 共催
『グローバル経営支援セミナー』
「インドネシアセミナー ~インドネシア投資のチャンスと経済動向~」
(開催地:大阪・東京・名古屋(開催日順))
BKPM Japan Desk
JICA 投資促進政策アドバイザー
Yamazaki Norio
山﨑 紀雄
Jl. Jendral Gatot Subroto No. 44
5th Floor, Jakarta, INDONESIA 12190
Tel : +6221 520 2052
http://www.pma-japan.or.id/
目次
(1)
投資額(直接投資)の推移と日系投資の近況
(2)
インドネシア投資関連規則のわかりにくさ
(3)
投資環境整備の進展とこれからの課題
(4)
新ワンストップ・サービス
(5)
新税制優遇策
(6)
日系企業から見た投資環境の課題
i.
(PTSP)
(Tax Allowances)
外国人の就労許可と関連ビザ
ii. インドネシア中央銀行(中銀)の各種規制
(1)
投資額(直接投資)の推移と日系投資の近況
569.9
内国投資
外国投資
日本
494.7
432.5
386.4
363
343.7
307
297.8
270.4
246.3
221
208.4
175.8
156.1
Note:
2015-19年は「5ケ年計画」に
基づく。
最終2019年を2014年の倍増と
する極めて意欲的な計画値。
128.2
兆
ル
ピ
ア
92.2
82.1
42.5
22.1
44.5
29.1
15
2012 2013 2014 2015/Q1
(2015 2016 2017 2018 2019)
*Target
日本の直接投資
合計額
①分野別、②地域別、③新旧別:
2012
2013
2014
2015 Q1
$ 2,456.9 Mil
(IDR 22.1 T)
$ 4,712.8 Mil
(IDR 44.5 T)
$ 2,705.1 Mil
(IDR 29.1 T)
$ 1,207.6 Mil
(IDR 15.1 T)
①分野別
 2輪4輪
(部品を含む)
 金属・機械·
エレクトロニクス
 食品・飲料など
 テキスタイル
 化学·製薬など
 その他
61.5 %
63.7 %
46.6 %
40.3%
18.7
12.3
19.0
8.6
1.9
2.3
2.7
12.9
2.9
4.6
3.7
12.8
5.1
2.4
4.7
22.2
3.4
0.3
1.0
13.7
71.2 %
3.5
3.8
8.9
12.6
82.3 %
6.3
2.9
4.7
3.8
79.6%
6.7
6.0
3.9
3.8
68.3%
2.4
12.0
北スマテラ 9.3
0.9
中部ジャワ 3.3
16.4
輸入・国内販売
不動産など
電気・ガス・水
②地域別





西ジャワ州
東ジャワ州
Banten州
ジャカルタ
その他
③新旧別


新設
増設増資など
(案件数)
560 (22.8%) 222件 1,222 (25.9%) 383件 1,431 (52.9%) 651件
1,895 (77.2) 183件 3,499 (74.1)
392件 1,273 (47.1) 359件
405件
1010件
775件
436 (36.1%) 206 件
771 (63.9) 137 件
343 件
15.9
11.6
9.7
(2)
インドネシア投資関連規則のわかりにくさ
1)
関連規定・規則が頻繁に変更・改訂される。
2)
その一方、基本的な法律、大統領令などが長期にわたり据え置かれる。
(詳細の細則・各論を規定する各省庁大臣令・省令の発表が大きく遅れる。)
3)
4)
各省庁の政策は独自性が強く、省庁間での調整が伴わないケースが多い。
⇒
更に地方分権化の民主化の中で、中央政府のみならず地方政府の規制が別箇に加わる。
規定・規則が中央・地方で断続的、独自に発行されている。
(中央政府)
(地方政府)
法律(与野党間の緊張が続く国会、地方分権推進)
大統領令・政令
各省庁/大臣令・省令
地方政府規則
外国投資に関連する法律・法令と、主管省庁が独自に設定する省令・規制
(Legal Uncertainty - 法規制が頻繁に改訂されること、並びに各省庁の縦割り行政が絡み、
準拠すべき規則・制度が分かりにくい。)
BKPM
・ネガティブリスト(最新版)
(大統領令2014年/39号)
・長官規程(省令)
(2013年/5号・12号)
・新投資法
・新会社法
・新労働法
・新工業法
外投
国資
企家
業
主管各省庁及び関連機関
省令・政令などで、就労許可、工業団地、
小売り、農業、フランチャイズ、海運、
倉庫、中古、など各種分野の詳細規定がある。
地方政府
建設許可、環境アセスなど地方自治に
基づく許認可権
基本法・法令等
(2007年/5号)
・国税一般通則法(2007年/28号)
(2007年/40号)
・新海運法 (2008年/17号)
(2003年/13号)
・新鉱山法 (2009年/4号)
(2014年/3号)
・新通商法 (2014年/7号)
など多数
(3)
投資環境整備の進展とこれからの課題
1)新ワンストップサービス (PTSP)
2015年1月実行
2)新タックスアローワンス制度
同 5月発効
実行中
3)工業団地の増設
注力中
4)電力・港湾・道路などのインフラ整備
注力中
___________________________________________________________________
5)PTSP の 進捗 (地方政府など)
6)タックスアローワンスの進捗(対象案件など)
実行後の
フォロー
アップ
___________________________________________________________________
7)外国人の就労許可と関連ビザ
8)インドネシア中央銀行(中銀)の各種規制
9) 中央政府と地方政府の綱引き
足元の大き
な課題
(4) 新ワンストップサービス/PTSP (画期的な新制度)
2004
2009
(大統領令29号) (大統領令27号他)
基本制度の制定→
詳細な実施手順
の発表
2011 2013
2014
(BKPM長官規程6号他)(大統領令97号)
→
改訂と追則
の発表
→
新ワンストップ
→
の発表(27号の破棄)
基本制度の制定は10年も前であるが、実質的には全く動いていなかったものを
昨年に新制度に切り替えた後、新政権発足とともに間髪をおかずに実施。
特に昨年11月にAPEC会議(北京)で世界に向け発表した後、2カ月後には正式に
立ち上げたスピードと関連22省庁をBKPM内に出向させた政治力はかって類を
見ないリーダーシップと評価される。
2015/1月
正式開始
PTSPの課題
投資許認可のワンストップ化が真に実現すれば、インフラ整備等への民間投資の拡大、
地方への投資拡大を促進する有効な手立てとなり得る。一方で、次のような課題が指摘される。
① 2015年内にワンストップ化を目指している全国120ヶ所の各地方が担当している投資許認
可システムをPTSPに一体化できるか(妨害法許可(UUG/HO)や建設許可、環境関連許認可
など地方政府が主管する投資許認可手続とPTSP中央との一体化)。
② 既にワンストップに移行した22省庁の許認可の中で、BKPMに移行した許認可、
本省に残している許認可と分散しているが、完全移行がいつ頃までになされるのか。
今後の進め方
① 22省庁から77名のリエゾンオフィサーを配置し、150の許認可申請をOne Stop Service
Center (PTSP)の中で実施中。
② 今後、2015年12月までに24州+120市を対象に、地方の投資許認可をPTSP化。
③ 2016年までに、34州+561市を対象に、投資許認可をPTSP化。
PTSPに集約された省庁許認可(例)
エネルギー鉱物資源省
(大臣令2014年第35号)
発電事業許可、操業許可、事業地域許可、電力補助サービス事業許可、
複数の州にわたる電力事業許可、情報通信・マルチメディア向け送配電
利用許可、地熱発電許可、地熱発電事前調査指名、地熱発電補助サービス
事業許可、地熱発電用爆発物保管許可
公共事業・国民住宅省 (大臣令
2014年第22号)
高速道路事業許可、上水道事業許可、不動産事業開発許可、外国建設会社
事業許可、外国建設コンサル事業許可、住宅事業許可
(5) 新税制優遇策(新Tax Allowance)
2011
2012
2015/5月
(財務大臣令130号)(政令52号)
(財務大臣令144号)
(政令18号)
___________________________________________________________________
タックスホリディ制度
所得税の優遇策として
タックスアローワンス制度
(52業種+特定地域77業種=129)
Tax Holiday
--Master List
輸入関税
(一般的)
政令52号を改訂
(66業種+特定地域77
業種=143)
(現実的には採用が極めて難しい)
Tax Allowance
所得税他
(条件を大幅緩和し対象案件を拡大)
優遇策の整備
投資拡大を確実に実現する為にはPTSPの推進のみならず他の課題の改善を進めること、投資
優遇策の見直しを通じ更に歓迎される投資環境を作って行くことが必要であるという認識の
もとで、今般一部税制優遇策が改訂された。
従来の優遇策として、
1)マスターリスト方式:製造業における生産設備の輸入機械及び、2年間に限り生産の為の
原材料の輸入に関し輸入関税を免除。(生産設備の機械に就いて国内調達率が30%以上である
場合は原材料の輸入関税免除が4年間に延長可能。)
2)タックスホリディ‐: 2011年財務大臣(決定)130号
(2014年8月までの時限措置として発布、その後延長。)
 優遇内容:生産開始後5-10年間の法人税免除、その後(条件次第で)2年間は法人税50%の
軽減措置。
 対象業種:パイオニア産業として、基礎金属、石油精製・石化(ガス化学)、機械、再生可
能エネルギー、通信機器の5業種を基本としている。
 適用条件:上記業種指定に加え、すそ野が広い高付加価値プロジェクトであり先進的技術
を用い国家経済や他産業にも戦略的な影響を与え得えるもので、投資金額は1兆ルピア以上
という厳しい条件。
 承認案件:チャンドラアスリ(石化、タイ・SCG)、ユニリーバ(油脂化学、英蘭)シナルマ
ス(油脂化学、現地及び星)の3社のみと言われる。
3)タックスアローワンス: 2011年政令52号、2012年財務大臣規定144号。
 優遇内容:総投資額の5%相当を6年間、課税所得から控除する。
(合計で総投資額の30%を上限とする。)
加えて配当に対する源泉税の軽減、欠損繰延べの期間延長、減価償却の加速化などが認められる。
 対象業種:上記財務大臣規定にて従来よりも対象を広げ、再生エネルギー、インフラなど52業種と、
特定地域に限定した77業種、合計129業種を指定している。
4)新タックスアローワンス: 2015年政令18号
BKPM長官規程8号
2015年5月6日から発効
条件が厳しすぎ適用例が増えないタックスホリディを補完するためのタックスアローワンス制度を改善
することで、税制優遇策のより弾力的な運用を目指し、よりメリハリのついた投資環境を実現する検討
が続いていた。
 優遇内容:従来の制度とほぼ同じであるが、減価償却の対象や欠損金の繰延べ期間などが拡大されて
いる。
 対象業種:従来の129業種から144業種に拡大され(日系企業にとっては製鉄、化学など産業素材の
分野で拡大されており、よりインパクトは大きいと思われる)、生産量の30%以上を輸出している企
業、現地従業員の長期雇用に貢献している企業、現地調達率の高い企業、更にルピア安定化に貢献し
ている企業などは優先的に考慮されるとしている。
 選定期間:従来は財務大臣が最終決定者であり、BKPM推薦があっても長期間審議された挙句に財務
省で却下されるようなケースが多々あったが、新制度ではBKPM推薦に基づき財務省及び主管省庁で
構成される審査委員会にて短期間で決定されるとし(1-2か月程度)、BKPM及びPTSPの制度改善が
強く反映されるものと期待される。
(6)日系企業から見た足元の投資環境の課題
1)外国人就労許可と関連ビザ
毎年200万人程度と言われる新規雇用を賄う必要もあり、外国人の就労許可に就いて
非常に厳しい対応を取っている。
関連諸規定と2015年1月労働省公示を中心とした最近の動き-
•
商業、サービス業、コンサル業など製造業以外の業種における非管理職(アド
バイザー職など)に就いては、半年間の就労許可しか認めない。
•
特に現職の延長申請を認めず新規申請に限定している為、半年ごとに(帯同の
場合は家族も含め)関連ビザと合わせ一連の申請手続きが必要となっている。
•
就労許可と関連ビザ(法務人権省・イミグレ総局担当)は連動するものの担当省
庁は別個であり、ヨコの連絡がスムーズでない上に、其々1日当たりの受付制限
(労働省毎日500件、イミグレ総局は800件)が有ることから申請実務が滞っている。
•
役職員(取締役と監査役(コミサリス))に就いての規制として、特に経営責任を持つ
取締役に就いては非居住者であっても就労許可(IMTA)を取得すべきとし、非取得者
に罰金措置の例がある。(コミサリスには求めていない模様。)
• 高卒者や高齢者(現地企業の一般的定年退職55歳を目安)には最長6ヶ月の労働許可
(IMTA)しか発給されず、従来の期間一年を取得できない。但し、役員とコミッサ
リスであればそれにあらず。
• イミグレ総局の新オンラインシステム導入に伴い、試運転でテクニカルな問題も発
生したことから一時停止という不安定な立ち上がりの中で旧システムも稼動されて
いる。新システムではスポンサー企業(外国人を雇用する側)或いは申請者の銀行
残高証明が求められるなど、以前と異なる点も要注意。
• 日系企業の集積が多い東ジャカルタではイミグレ総局の現場立入りに於いて、規制
管理の名のもとで不当な要求(パスポートのオリジナル提示など)の例もある。イン
ドネシア語の語学試験は中止になった模様。
2)インドネシア中央銀行(中銀)の各種規制:
① 外貨建対外債務(貿易債務を含む)のヘッジ
(中銀総裁令 2014年第21号)2015年1月1日から導入。
民間の対外債務急増に対応するとして、一部例外規定を除き買掛金、ローンなど
全ての外貨借り入れに対し、一定比率でのヘッジと四半期ごとの報告が義務付けられた。
国内の為替資金市場は大きなものではない為、ヘッジコストが膨らむなど実務面での
さまざまな対応策が求められる。
②
国内取引ルピア決済
(中銀規定 2015年第3号) 2015年7月1日より導入予定。
ルピアの対ドルレート下落への対応の為、貿易取引等一定の例外を除き、国内における
現金取引、非現金取引全てにおいてルピア決済を義務付けた。対象となる取引は全て
ルピア建ての価格表示が必要であり、各方面への大きな影響が予想される。会計原則の
変更など、今後運用上の細則の発表を待った上で、対応策の検討が必要となる。
~
Thank you ~